俺強いハーレムしてる正義マンを虐めたら世界から追い掛けられたけど気にしない続
夜。
焚火〈パチパチ〉
リンゴン「・・」
狼女「〈ニコニコ〉」
リンゴン「はあ・・俺は勇者と穴兄弟になる気はないって言ってんだろ?」
狼女「〈ニコニコ〉」
リンゴン「勇者んトコ帰れよ」
狼女「やー〈ニコニコ〉」
リンゴン「あのなあ・・お前は勇者の嫁だろ?そんなホイホイ男変える女は俺は嫌いだってば」
狼女「勇者も私のテクにはあへあへ言った、貴方もきっと喜ぶ、だから今夜試す!〈脱ぎ脱ぎ〉」
リンゴン「は~~~」頭を抱える。
狼女「・・どう?綺麗な形?」
上半身裸。
リンゴン「お前には興味ない、帰れ」 スープをすする。
狼女「・・ねえ・・もっと見て?」
リンゴン「どうしたら解ってくれる?本当にお前には興味ないんだ」
狼女「・・」
リンゴン「勇者の夜の相手は代わる代わるしてたんだろうが、俺はそんな低い奴じゃない、俺はどっちかっていうと神様に近いモノだと思っていい、俺は高みにいるんだ、だから低い奴には欲情しない、むしろ気持ち悪い」
狼女「〈ガーン〉き、きもち気持ち悪いって・・」
リンゴン「俺は誰でもいい訳じゃないんだ・・遊びでもしないから、俺に媚びるだけ時間の無駄だ・・さ・・解ったろ?帰れ」
焚火〈パチパチ〉
狼女「・・」 服を着た。
リンゴン「(解ったのかな?)」
狼女「・・」
リンゴン「・・」
狼女「・・どうしたら、貴方の女になれる?」
リンゴン「・・は~~・・だから~~・・」
狼女「例えば!」
リンゴン「・・」
狼女「・・」
リンゴン「・・ったく・・ん~~~~・・そうだな~~~」
狼女「・・」
リンゴン「例えば・・俺が無様に勇者にやられてたら・・お前今ここに居る?」
狼女「あははは居る訳ないじゃん」
リンゴン「それと一緒」
狼女「・・へ?」
リンゴン「お前は戦闘力で低い奴か高い奴か分けている、だろ?」
狼女「うん」
リンゴン「俺は、魂の質で低いか高いかを分けている」
狼女「魂?」
リンゴン「ほらな?こんな簡単な話にさえお前はついてこれない、だから俺がお前を好きになる事はない」
狼女「私、強い、貴方も強い、二人の子供、絶対強い!〈ポロポロ〉それでも?」
リンゴン「・・俺は・・ふう・・俺は、強い、弱い、あへあへで判断しない、俺の基準は、魂だ・・物質や、肉体じゃないんだ・・根本的に、お前ら低いモノとは・・違うんだ・・ごめんな・・」
狼女「・・ぐ・・うぐわああああああん、う”あ“あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ん”!いいじゃああああああん、別にいいいいいいい、なああんんでええええええ?、うわああああああああん」
リンゴン「・・」
朝。
リンゴン「じゃあ・・お別れだ!元気でな?まだ人間界へ続く洞窟からは近い、早く戻れよ?昨日は俺が気配消す結界張ったから眠れたんだぞ?俺なしじゃお前はとっくに魔獣共の腹の中だ、解ったな?」
狼女「・・ん・・」
リンゴン「じゃ・・じゃな・・」
狼女は・・リンゴンが見えなくなるまで動かなかった。
リンゴンが見えなくなった。
狼女「・・」
人間界へ戻るー・・。
狼女「・・」 その場にうずくまった。
人狼族からは小さい頃に追い出された。
人間に容姿が近すぎた為だった。
奴隷として、時には戦い、時には殺し、時にはご主人様の慰み者として全身を舐められた。
そして飽きたからとまた奴隷市場へ出品される。
売れ残ったら扱いは酷い。
必死に奴隷商人へ媚びを売った。
生きたかった。
死にたくなかった。
性サービスを必死に覚えた。
嫌われたらー・・そう思ったら・・不安で潰れそうだった。
そうして5度目の奴隷市場へ出品され、痩せ細っていたせいで売れ残った。
森の中。
他の売れ残った奴隷達が並べられた。
どんどん切られていった。
狼女の番になった。
振り上げられた長い剣・・太陽で眩しい・・楽になれる・・そう思った。
その時、偶々通った勇者の一行に助けられた。
勇者にも、うんとサービスした。
勇者はしなくていいって言ってたけど、本心はして欲しそうだった。
だからうんとした。
嫌われたくなかったから。
その内、他の女ともしてると気づいた。
でも不思議と誰もその事には会話で触れない。
まるでー・・話す事は禁忌とでも言うように。
そんな中。
突然、圧倒的な強さで勇者を倒した男に出会った。
それどころか手加減までしてくれた。
勇者が喜んだ・・いや、全ての男達があへあへしていた服装を激しく注意された。
この人に。
この人に着いて行きたい。
この人は今まで出会ったどの『人間』とも『種族』とも『欲望』とも違う。
この人は何なのだろう?
人生という世界で検索してみても全然解らない・・理解出来ない・・。
でも。
キラキラしてる。
それだけはー・・。
狼女「・・解ったのに・・」
茂み《パキキ》
狼女「・・帰る場所・・ないわよ・・」
《サワサワアア》森が騒ぐ。
狼女「・・ここで・・待ってれば食べてくれるかな?」
茂み《グルルルルルル》
狼女「・・あはは・・私・・美味しいよ?」
《ガサガサ》茂みから出てきたのはタイラントベア。
首が長い熊で通称ろくろ熊。
伸縮自在の首は最長で12M。
狼女「・・低い?・・高い?・・何それ・・意味分かんない・・分かんないよ・・」
タイラントベア「グルルルフシフシ、グルルル」罠か?と周りを警戒。
狼女「・・私・・結構・・頑張ったよね?」
タイラントベア「グルル・・フシフシ・・ジュルル・・フシフシ!・・スンスン」
狼女「・・」 目を瞑った。
タイラントベア〈ガパアア〉
狼女「・・」タイラントベアの口の中に消えたー・・。
狼女「・・・・?・・ん?」
小さい川のほとりに居た。
狼女「ありゃ?」
リンゴン「〈ムシャムシャ〉・・お前も食うか?魚・・旨いぞ?」
リンゴンが焚火の傍で魚を食べている。
狼女「・・〈ブワ〉・・ど・・どうして?・・わた・・き・・嫌いな癖に・・〈ゴシゴシ〉」
リンゴン「・・・・普通は・・死ぬなんて考えない」
狼女「・・?」
リンゴン「・・また勇者に戻るか、娼館で働こうとする筈だ・・冒険者としてでも人間界ならお前ならやってけるだろう・・それらの可能性を捨てて死を選ぶ・・行き詰まったのか?そんなに強い子供が欲しかったのか?」
狼女「・・分からない・・でも・・もう疲れたから・・」
リンゴン「・・俺は・・お前に興味はない」
狼女「・・ん」
リンゴン「が」
狼女「?」
リンゴン「お前が・・高いか・・低いかの違いが解るまで・・一緒に居てやる」
狼女「!?」
リンゴン「死ぬ間際言ったな?魂が、低い、高いの意味が解らないって」
狼女「〈コクコクコクコク〉」
リンゴン「それは・・俺と一緒に旅をすれば解る事だろう」
狼女「傍に置いてくれるのか!?〈フリフリフリ〉」
リンゴン「但し!」
狼女「〈ビク!?〉」
リンゴン「性サービスも、余計な気遣いもなしだ!もししたら・・お前を人間界へ強制ワープさせる、物凄い魔力使うから嫌だけど、やろうと思えば出来るからな!」
狼女「〈コクコクコクコク〉」
リンゴン「・・は~~~~~~・・取り合えず食え、朝飯だ」
狼女「~~~ありがとおおおダあああリゃあ”あ”あ”あ”あ”」抱きつく。
リンゴン「どうわ!?よせひっつくな!俺はダーリンじゃねえ!リンゴンって呼べリンゴンって!」
狼女「うわあああああん、だー・・じゃない・・りんごんん~~~・・あたし・・ばりさ~~~」
リンゴン「バリサね!解ったから!離れろおお〈グイイイイ〉」
バリサ「うあああああん、うれじいいいいい」
リンゴン「解ったから、解ったから離れろおお」
それから2年が過ぎた。
色んな亜人達に出会った。
人間達にも会った。
魔人と呼ばれる人種だ。
魔力が普通の人間とは格が違う。
外見的特徴として肌色が普通より紫よりという事以外はいたって普通な人間。
ただ、魔眼持ちは瞳だけでなく眼球自体が特殊で様々な色、模様だった。
戦闘も、何度もした。
魔眼の力はコピー出来なかった。
眼球を食べても何も起こらなかった。
魔量だけが増えた。
魔人の人種は人間には好戦的だった。
戦闘戦闘の日々。
その度に強くなっていくリンゴン。
バリサはリンゴンの背中を見ているだけしか出来ない。
最初は。
野宿での着替えでも、リンゴンの前で裸になった。
簡単に裸になれた。
好きな男には見られたい。
だから自分は簡単に見せられるんだと思っていた。
思っていた。
そう思っていたのにー・・。
いつからだろう?
リンゴンから少し離れて歩くようになったのは。
いつからだろう?
着替えの時にリンゴンの視線がないか気にするようになったのは。
いつからだろう?
リンゴンと一緒に街の夜景を見ても、流れ星を、花火を、花畑を、祭りを。
それらをみても。
静かに。
リンゴンの顔をちらっと見て、自分を見ていないか確認するようになったのは。
無邪気にはしゃげなくなったのは。
いつからだろうか。
リンゴンと。
手を繋ぐ事さえー・・。
道中魔獣に襲われていた自称商人という魔人の案内役と共に次の魔人の国へ移動中。
ハイバーンという国からもう少しで出る所。
その国境の崖の上の細い道を3人一角馬で登りきった。
綺麗なオレンジ色の夕焼け。
眩しい。
日陰から一気に日向へ。
暖かい。
リンゴン「あ~・・あったか~」
バリサ「・・」
リンゴン「・・今日はここで野宿だな」
案内男「了解しました、では早速準備します」
リンゴン「うん、ほらバリサ、お前もー・・・・・どうした?」
バリサ「・・」
太陽を見ながら、声を震わす。
バリサ「・・私・・あんたが・・好きだ・・」
リンゴン「・・」
バリサ「・・」
案内男「・・」 黙って離れる。
リンゴン「・・そうか」
バリサ「・・あんたを・・好きになれば成程・・遠くなって・・く」
リンゴン「・・そうか」
バリサ「・・うっく・・何で?・・で・・何で?・・何で遠くなってくの?意味分かんない!」下を向く。
リンゴン「・・そうか〈ニコ〉」
バリサ「〈ボボボカアアアアア〉はあ?な!?何で笑う!?」
リンゴン「嬉しくて」
バリサ「意味分からん!」視線を逸らす。
リンゴン「バリサ」近づく。
バリサ「ひ」 馬を下がらせる。
リンゴン「・・大丈夫」
バリサ「・・」 留まる。
リンゴン「・・バリサ・・それが・・『高い』・・だ」
バリサ「?」
リンゴン「自分を差し出す事に躊躇しない・・それは素晴らしい事だと思う・・好きな男の為ならば、裸なんてってな・・でも・・同時に・・悲しくも思う・・それはな・・相手に捧げてるようで・・実の所は何も捧げてない・・むしろ脅迫だ・・恩の押し売りなんだ・・裸を見せた、性の関係になってあげた、だから捨てない
{昔の幼いバリサ ~ 少し前のバリサ『だからお願い!捨てないで!』}
バリサ「(ハ!!)」
リンゴン「で」
バリサ「・・」
リンゴン「好きになれば成程・・近くになれば成程に・・遠く感じたのはな?」
バリサ「・・」
リンゴン「脅迫が出来なくなったからだ」
バリサ「・・」
リンゴン「脅迫をしたら・・嫌われるって・・そう思えたからなんだ」
バリサ「・・」
リンゴン「バリサ・・それはとても素敵な事だよ」
バリサ「・・」
リンゴン「高みとは・・脅迫をせずに、真正面から話をする事だ」
バリサ「・・〈ポロポロ〉」
リンゴン「・・お前は何も持たないで、何も考えないで、俺に告白してくれた、嬉しいよバリサ〈ニコ〉」
バリサ「・・」 馬から降りた。
リンゴン「・・」 馬から降りる。
バリサ「・・」 静かに・・リンゴンに抱き着いた。
リンゴン「・・」 受け止めた。
バリサ「・・」
リンゴン「・・」
二人の影が一つになって長くー・・。
バリサ「・・で?」
リンゴン「ん?」
バリサ「・・〈ブッスー〉返事」
リンゴン「・・前にも言っただろ?タイプじゃないって」
バリサ「・・ふう・・・・だよねえ・・あははははは・・」 離れる。
リンゴン「ごめんな、でも嬉しかった、ありがとう、こんな不細工にどうも」
バリサ「・・うむ!どういたしまして!」
リンゴン、バリサ『あ~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!』
案内男「・・早く下ごしらえしたいなあ・・」
その夜。
バリサの鳴き声が響いた。
リンゴン「・・」
案内男「・・」
響いて、響いて、うるさくて・・遠吠えのようなその鳴き声は・・結界内で、夜空に響いた。
朝。
バリサは以前のバリサに態度が戻った。
やんちゃで、はしゃぐお姉さんに。
でも。
いちゃつく事はしても。
必要以上に踏み込まない。
魅力的なお姉さんになっていた。
3日後。
エノワールという国真近。
木陰で休憩中。
バリサ「あはははは・・・・えっと・・発表があります!・・私・・人間界に帰るね」
案内男「そんな!何故!?」
バリサ「魔人の男は私には合わないから・・振られたしね〈チラ〉」
リンゴン「・・ん”ん”」
案内男「・・そうですか・・残念です・・もっと・・一緒に旅をしたかった・・」
バリサ「あんら~?もしかしてあたしに惚れてたあ?にっしっしっし」
案内男「はい、惚れてました!貴方は、お美しい方です!」
バリサ「・・ふふ・・ありがとう」
案内男「・・」
リンゴン「・・じゃあ・・行くぞ・・〈フユンフユン、キイイイイイイイイイイイ〉」
バリサの周囲に魔法陣と様々な数字が縦横無尽に巡る。
バリサ「・・リンゴン・・私・・良い女になれたかな?」
リンゴン「ああ、お前は良い女だ、良いお嫁さんになる」
バリサ「・・〈ニコ〉」
リンゴン「〈ドキ〉」
〈ヒュン〉 ワープ。
木陰が風に騒ぐ。
案内男「・・本当に・・行ってしまわれたのですね」
リンゴン「・・ああ」
案内男「本当に宜しかったので?」
リンゴン「ああ」
案内男「バリサさん・・本気で貴方の事を」
リンゴン「・・まあ・・こればっかはなあ・・本当にタイプじゃなかったんだ、仕方ないだろ」
案内男「ぜ、贅沢過ぎます!あんな美人居ませんよ!?二度と現れませんよ!?」
リンゴン「バリサの事が好きじゃないのに一緒になれと?それじゃバリサが可哀そうだ、違うか?」
案内男「・・そ・・それは・・そう・・ですが・・」
リンゴン「・・さ!旅の続きだ!休憩終わり!ほらほら!行くぞ行くぞお!」
案内男「あ、あの!」
リンゴン「ん?」
案内男「一つだけ教えてください!」
リンゴン「あん?」
案内男「貴方はどんな女性がタイプなんですか?」
リンゴン「・・そうだな」
案内男「・・」
リンゴン「ん~・・」
案内男「〈ドキドキ〉」
リンゴン「・・分からん」
案内男「へ?」
リンゴン「まあ、よく言うだろ?ピーンときたらだよピーンってな」
案内男「・・もう・・いいです(泣)」
エノワール国領土境門。
魔人警備兵2「止まれ!」
案内男「はいはい」
リンゴン「・・」
魔人警備兵1「その男は人間ではないのか?」
案内男「はいはい、そうですが」
警備兵2「(これが人間・・初めて見た)何故人間なんかと一緒なのだ?他にいるか?こいつだけか?」
警備兵1「取り合えず、そこの支所までご同行願おうか」
門の外側に支所。
案内男「はいはい」
きちんとした取り調べ室。
木材がふんだんに使われ、いい匂い。
南区2ー3-401区警備兵団長「・・つまりその・・勇者?みたいなもんを痛めつけた為に、人間達から必要とされて、探されて、それが嫌で?人間界から出てきた・・と?」
リンゴン「そうだ」
案内男は別室。
団長「・・おい」 警備兵に呼びかける。
水晶の玉をリンゴンの前に置いた。
団長「それに触れ」
リンゴン「・・」 左手を乗せた。
団長「魔量、魔質を測る装置みたいなモンだ」
リンゴン「・・(へえ)」
団長「魔力を一気に込めろ」
リンゴン「・・多分割れるぞ?」
一団『はははははははははははははははは』
団長「いいからいいから」
リンゴン「・・んじゃ〈グン!〉《バキャ!!ボパアアアアアアアン!!パラパラパラ・・》」
一団『おわああああ!?くわ!?うお!?』
リンゴン「ほらな、割れた、片付け宜しく」
一団『・・・・・・』
リンゴン「んで?次は?」
団長『・・ふふ・・ふふははははははは・・面白い・・おい!最上玉持ってこい!!」
警備兵36「はは!」 どっか行った。
団長「・・〈ニコニコ〉」
リンゴン「・・〈ヒク〉一応言うが・・国に肩入れはしないからな?」
団長「まあ、まあまあ〈ニコニコ〉」
リンゴン「・・(解ったのかな?)」
暫く待つと小さい箱?を持って36が現れた。
小さいビー玉?みたいなモノが入っていた。
団長「それは魔力を吸い取るカラメという、水晶の特殊版みたいなモノだ、それに触れ」
リンゴン「・・」
36「危ないと思ったら直ぐに離してください」
リンゴン「・・」 手を触れた。
カラメ〈フイイイイ〉 綺麗な虹色になり、様々な模様が沢山浮かんで来た。
36「・・駄目ですね、虹色になったという事は7段階を超えたという事・・測れません」
団長「・・カラメでも測れんのか・・く、くくくくくくくくくくくく」
リンゴン「(怖いなあこのおっさん、俺もおっさんだけど)」
団長「・・〈ガタ!〉私がこの国を案内しよう!」
リンゴン「いや・・許可証さえ貰えれば」
団長「いやいや、近頃は許可証の偽造も頻発しておってな!こっちも新しい許可証を再発行して手は尽くしているんだが何分広い国土では間に合わん、即ち、お前が国内で問題を起こした場合、誰からも信用されない可能性があるのだ」
36「団長・・それは流石にまずいかと、団長がこの場を離れたら統括するモノが不在となります」
団長「・・ふむ・・では誰か・・別の者・・そうだ!ガリンは?」
36男「ガリン・・ですか?」 離れたくないようだ。
団長「そうだ、あやつは凄腕だし、護衛に丁度いい!ガリンにしよう!」
リンゴン「護衛?俺に?」
団長「政治的、社会的な護衛だ、暴力では解決しない事が山のようにあるのだ」
リンゴン「・・」
36男「・・」
団長「それにあやつは美女だ!がははははは、きっとリンゴン殿も気に入るでしょう!」
リンゴン「・・」36男が深いため息をしたのを見た。
ガリン「お呼びで?」
現れたのは20代前半の真紫色の肌で魔眼持ちのボン、キュ、ボンの女性大剣士。
髪は青っぽい銀色の長髪。
身長180CM、体重は解らない。
背中には2Mくらいの大剣をからっている。
ガタイは細いのに。
肌は一切見せていない軍服の上から、ガリン個人のモノであろう濃い緑のコートが似合っている。
リンゴン「(多分魔剣か)」
団長「おうおう、よく来たな!」
ガリン「いや、呼ばれたから来たんだけど・・」
団長「こちらは旅のリンゴンという者だ、リンゴンはカラメでも測れん魔量の持ち主でな、人間の癖に・・おっと失礼?・・それでだ!こんな者が国に入ればややこしい事にならんか?んん?なるだろう?なるに違いない、そこで、だ、ガリン、お前には政治的、社会的にこの人間を護衛する事を任務とする、いいな?」
ガリン「・・ふう・・(問題を起こして目立たせろ・・ね)了解しました」
リンゴン「・・」 落ち込む36に近づく。
リンゴン「安心しろ、彼女には興味ないし、何かあれば俺が守る」
36「・・あ・・い、いえ・・俺はとっくに振られているんです・・」
リンゴン「吹っ切れてないようだが?」
36「・・彼女をどうか宜しくお願いします」 頭を下げ、出て行った。
出て行った36をチラリとも見ないガリン。
団長と話し込んでいる。
リンゴン「・・途中で逃げよう」
すっかり夜なので、支所に一泊。
朝。
アイテムボックスの鞄からモンスターらを取り出し、大金に変えて、街を散策。
カメレオン能力で肌を紫へ変える事を今更思いつき、実行。
民衆『おい・・軍人だぜ・・何かあったのかな?・・一緒の奴何かしたのか?さあ?・・ざわざわ』
リンゴン「・・」
軍服は目立つからと、服屋に行き、ガリンを着替えさせた。
ガリン「・・ふん、こんなモノか」
春の陽気だから、結構薄手のモノを選んだようだ。
しかし、肌は見せない。
コートは今は暑いからと折りたたんで腰に巻く。
リンゴン「地味だな」
ガリン「うるさい、デートじゃあるまいし」
リンゴン「いや、安心したんだ、良かった良かった」
ガリン「・・ほら、行くぞ」
リンゴン「あいあい(あの剣熱くならないのかな?魔剣は温度も上がらないのか?)」
リンゴン「そういやさあ・・その魔剣・・この気温で熱くならないん?」
ガリン「・・・・いや・・夏は冷たい、冬はあったかくなる、そういう魔法をかけてる」
リンゴン「!?まじ!?へええ~~~」
ガリン「お前もそれくらい出来るだろう?」
リンゴン「まあ出来るけど・・へえ・・自分にはかけないのか?」
さーじゃ「・・お前と違って魔量を節約してるんだ、この剣は造る段階でルーン魔法を何度も打ち込んでて、私が魔力を消耗しなくても温度調節は全部自動だ」
リンゴン「ルーン魔法?何それ?」
ガリン「はあ・・ほら・・あの店も、あの店も鉄板に大きい文字が彫ってあるだろ?あれがルーン文字だ、ルーン文字を彫る際に魔力を流しながら彫ると、ただの文字ではなくなる」
リンゴン「・・じゃあ・・魔法陣も、書いてから魔力を流すんじゃなくて、流しながら書いたら効果は永続って事?」
ガリン「・・いや・・普通の魔法陣で使われている古代語にそんな力はない、そんな便利な文字は今の所ルーン文字しか確認されていない」
リンゴン「サージャリー文字って知ってる?アジャリ文字っていう事もあるらしいけど」
ガリン「貴様!?何故貴様がそれを知っている!!まさか貴様バクレム領の関係者か!?」襟首を掴む。
リンゴン「いや、昔、人間界で森のドラゴン族に教えて貰ったんだ、この文字は特別なんだって」
ガリン「・・・・・グニングル族?」
リンゴン「お?知ってるのか?」
ガリン「・・そうか・・人間界に居たのか・・そうか・・そっかああ・・良かったあ・・生き延びていたのだな・・」 離し、膝をついた。
リンゴン「おい?あの?え?どうした?」
ガリン「ひっぐ、ひっぐ、ひっぐ」
リンゴン「あのう?もしも~し?」
リンゴンがいくら聞いても教えてくれなかった。
ガリン「・・いつか・・私を人間界に連れて行ってくれないか?グニングル族と会いたいんだ」
リンゴン「うん?いいよ?今から行く?」
ガリン「・・え?」
一度行った場所にはワープできる事を話す。
ガリン「・・そうか・・行けるのか・・」
リンゴン「ん」
ガリン「・・頼む・・伝えたい事がある奴が居るんだ」
リンゴン「・・あ~・・非常に言いにくいんだが・・その・・一人だけだけど・・正式に決闘して食った」
ガリン「・・は?」
リンゴン「お互い納得した決闘だった」
ガリン「そいつの名前は!?」 肩を揺する。
リンゴン「シュ・・シュリガンんん」
ガリン「ホウ・・違う・・つか・・あいつは戦闘向きではなかったな」
リンゴン「ホウ・・違うか・・良かったあ・・んじゃ行くか?」
ガリン「うむ」
〈ヒュン〉
グニングル族達
ガリン達はグニングル族の聖地である巨大な石の前に現れた。
丁度神事が行われて、その後の宴の最中であった。
グニングル族達『・・・・』
リンゴン「あ・・お邪魔します」ぺこり。
ガリン「ミヒャムうううう!ミヒャムうううう!ミヒャムううううゲゼロバッチェエエエエエ!!」
リンゴン「!?(は?何語?ああ・・竜語か・・解るんだ・・へえ・・)」
ミヒャム「がりいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
リンゴン「お?居たか?にしてもゴツイ声だな」
見ると走ってくるのは大きいトカゲ人間。
二人は走って行き、抱き合い、ガリンを振り回した。
何やら話しているが・・全く分からない。
ただ・・凄く・・お互いに嬉しそうだ。
〈ヒュボ!!〉石がリンゴン目掛けて飛んできた。
リンゴンはそれをノールックで指先で軌道をずらした。
敵意の壁に頼らない癖がついているのだ。
リンゴン「・・あ?〈ギロ〉」
周囲の大人達がやれやれという呆れジェスチャー。
酔っ払い不良ら『ザバロ!(躱した!)テンナザバアアアロ!(あいつ躱したぞ?)(げっはっはっはっはっはっは』 中指を下に向けて、挑発する者も居る。
若いヤンキー的なグニングル族達が絡んで来たのだ。
リンゴンの実力を知っている他の者らの一人「リハイ、ゲガ、スンハッド」 殴るジェスチャー。
少し懲らしめてやってくれという意味に聞こえた。
不良ら『げははははははははは、ベッテンナ!ジャゾ!(やんのか?殺すぞ!)』
リンゴン「ふ・・はははははははは・・どこの国でも・・村でも・・馬鹿はやっぱ居るモンだなあ」
不良ら『《ピク》』 13人全員歩いてくる。
リンゴンも歩き出す。
《ザ、ザ、ザ、ザ、ザ、ザ、ザ、ザ、ザ、ザ》
腕、足が生えかかった若いヤンキー達『ゼバンヌ(すいませんした)・・・・ボッチシ(反省してます)・・ゼバンヌ(すいませんした)』 正座。
村長の息子が腕組みしてるリンゴンの横でガミガミ怒っている。
息子がシュリガンと発音した途端に不良らは顔色が変わった。
ガタガタと震えだした。
リンゴン「そりゃそうだろうなあ・・シュリガンと俺の戦いは・・」
後ろの巨大な石の横の石碑に絵と共に記してある。
この巨大な聖なる石はシュリガンが蹴飛ばし、リンゴンが弾いてこの位置まで『滑って』来たモノだ。
その滑った跡は大きい道となり、SS冒険者達を驚かせた。
リンゴン「激しかったモンなあ・・〈しみじみ〉」
ガリン「終わったよ!」
リンゴン「お?もういいのか?」
ガリン「ん!」
ミヒャム「・・グッドタム(彼女を)・・ゼンガ(よろしく)・・タヒロム(頼みます)」リンゴンに頭を下げる。
リンゴン「?」
ガリン「村長の所に行きたいから、・・そうだ・・あんたも来て?」
村長宅。
ガリンと何か話してるが全く分からない。
ただ、何か真剣な話のようだ。
二人共に・・リンゴンを見た。
リンゴン「・・何?」
また会話を始める二人。
リンゴン「ええ~~~・・」
暗い雰囲気の中、ガリンが立ち上がった。
終わったようだ。
すっかり夜だ。
リンゴン「・・いいのか?帰るか?」
ガリン「・・うん、今日は泊まれってさ」
リンゴン「そうか・・何だよ?」
ガリン「・・あんたに・・話そうと思う」
リンゴン「・・聞くだけなら、だが、肩入れはしないぞ」
ガリン「・・逆よ・・どこかに絶対属さないで」
リンゴン「え?お、おう?」
ガリン「例え私達の先祖が過去に酷い悪者だったとしても」
リンゴン「・・」
ガリン「もう時代は違う、戦争を起こしたいなんて思ってない!でも私達の祖先は・・欲望に目が眩んで・・」
リンゴン「復讐されそうなのか?」
ガリン「・・そう」
リンゴン「・・そうか」
ガリン「グニングル族は私達祖先と結託した民族だった、ある時に私達の祖先から裏切られて・・嵌められて・・」
リンゴン「・・」
ガリン「でも今の王政は違う!シュナード様は本当に立派な方なの!過去に犯した先祖の過ちを必死になって償ってらっしゃるわ!」
リンゴン「・・」
ガリン「過去は過去よ!違う?私が・・私達の世代が犯した罪じゃない!そうでしょう?」
リンゴン「・・」
ガリン「・・」
リンゴン「・・復讐される前に・・やってしまおうってか?」
ガリン「・・その為に・・グニングル族の村長に掛け合ったけど・・断られたわ」
リンゴン「・・まあ・・そりゃそうだわな」
ガリン「・・でもそれでも・・私達は勝つ・・」
リンゴン「細菌兵器でも使うのか?」
ガリン「・・だったら?」
〈ヒュオオオ〉 まだまだ夜は冷える。
リンゴン「話し合いは?」
ガリン「・・シュナード様は何度も特使を派遣されたわ」
リンゴン「駄目か」
ガリン「全面降伏、及び、王族、軍隊の全員処刑が条件よ」
リンゴン「・・うわあ・・そりゃまあ、何というか・・」
ガリン「これは噂だけど・・シュナード様は心労が祟って・・ご病気らしいの」
リンゴン「・・」
ガリン「もし私達がそうやって勝っても・・あなたは・・敵にならない?」
リンゴン「ならないな、味方でもないがな」
ガリン「・・ホッ・・そう、良かった」
その夜。
リンゴン「・・」 眠れなかった。
〈コンコン〉
リンゴン「うん?誰?開いてるよ」
ミヒャムだった。
リンゴン「ん?どうした?」
ミヒャム「・・話がある」
リンゴン「え?人間の言葉?」
ミヒャム「・・まあ過去は誰にでもある・・だろ?」
リンゴン「・・」
ミヒャム「・・入っても?」
リンゴン「どうぞ」
〈バタン〉
朝。
またエノワール国に戻った。
ガリンと一緒に露店を歩く。
一緒に食べた、飲んだ、宿で一部屋しか空いてなくて、仕方なく一緒の部屋になって寝た。
何も起きなかったが、ガリンは一睡もできなかったようだった。
日差しが強い。
騒がしい子供達の朝の声が聞こえ、朝市場の活気ある声が3階のここの部屋まで聞こえてくる。
朝ごはん中。
一階の食堂はほぼ満席。
ガリンは眠そうにシチューにパンを浸して食べている。
リンゴン「・・ガリン・・」
ガリン「ん?どうした?」
リンゴン「・・大切な話がある」
ガリン「〈ピク〉」
民衆『ザワザワザワザワザワ』賑やかな風景の中。
リンゴン「この国は負ける」
ガリン「・・え?は?え?」 ザワザワに混じって聞き間違えたと思いたかった。
リンゴン「昨日、お前に催眠をかけて、俺、シュナード様に会って来た」
ガリン「・・は?え?」
リンゴン「・・シュナード様に赤ちゃんを託された、今は生き物専用ボックスに入れてる、この中では時間は止まらないから、お腹すかしてると思うんだ・・シチュー食べさせていいか?」
ガリン「え?え?ええ?ちょ待」
リンゴン「・・〈ヒュン〉」
赤ちゃん「ああうう・・うぶ・・うぶぶきゃあ・・」
リンゴン「おう、よしよし、ほおら・・シチューだぞお」
ガリン「・・」 開いた口が塞がらない。
リンゴン「俺にこの子を託しに賢者のじじいが現れた、俺がこの子供を預かった時の、最後のシュナード様の言葉は・・王族など忘れ・・軍人を・・
シュナード「軍人を忘れ・・幸せに・・生きて・・生きて・・生き・・よ・・〈スウウウウー・・〉
賢者爺「シュナード様?・・シュナード様あああああ・・ああああ・・うあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」
リンゴン「・・」
ガリン「・・」
リンゴン「あの・・お前に告白してきた男居ただろ?」
ガリン「・・そんな事今はどうだっていい、教えろ、何故この国が負けるのだ?」 睨む。
リンゴン「スペラード爆弾」
ガリン「?何だそれは?」
リンゴン「細菌兵器なんかよりやばい代物だ、古代で使われた爆弾らしい」
ガリン「それを開発したっていうのか?は!そんな噂全く聞いてないぞ!?」
リンゴン「エノワールのお偉いさん方はお前らを売った」
ガリン「・・は?」
リンゴン「圧倒的大差でエノワールに勝ったっていう歴史的事実が欲しいんだと、賢者が話してくれた」
ガリン「え・・ちょ・・ちょっと待て」
リンゴン「国民の60%で手を売ったそうだ、その対価として亡命するんだと」
ガリン「じゃ・・じゃあ・・最初から」
リンゴン「そんな爆弾、直ぐには真似できないからな・・ではどうやって負けるか・・どうやったら丸く収まるか・・そんなトコだろうな」
ガリン「・・何故だ・・何故お前はシュナード様に会いに行った?きっかけは?答えろ!」
《ザワザワザワザワ》 周囲の会話は途切れない。
リンゴン「・・ミヒャムからの伝言だ」
ガリン「・・止めろ・・」
リンゴン「我々は・・エノワールと敵対する事が会議で決まっていた、裏切られた恨みは根深く・・すまない」
ガリン「中立だって・・言ったじゃないか・・」
リンゴン「・・騙して
ミヒャム「悪かったとガリンに伝えてくれ、それから・・辛いだろうが・・西のトヘンガローという国は完全中立国家だ、だから・・そこへ逃げて・・幸せになって欲しい・・俺は一族からは逃げられないし、逃げる気もない、でも、ガリン・・あいつだけは生きて欲しいんだ、だから・・勝手なのは解ってる、が、お前にしか頼めないんだ・・あいつをー」
リンゴン「逃がしてやってくれ」
ガリン「・・今すぐミヒャムの場所まで連れて行けえええ!!」大声で叫びリンゴンに掴みかかる。
周囲が二人を見る。
リンゴン「約束したんだ、この赤ん坊も、お前も!無事に逃がす!あいつとも約束した!」
ガリン「はあ?誰?」
リンゴン「お前に告白した男、お前を頼むって言われた」
ガリン「だから誰よ?」
リンゴン「・・思い出せないか・・なら・・迎えは必要ないな《フユインフユイイイイイイイイイ》」
ガリン「な!?これ・・ワープ魔法?ちょ何で今なの!?」
リンゴン「・・何でかって?時間だからだよ」
《ヒュン》
周囲の客達『ザワザワザワザワザワアアアアアアアアアア』
主婦「ちょ!?あんたああ!?あの変わった客!消えちまったよお!?」
店主「なあに!料金はたんまり貰ってんだ!どこへなりと行きゃあ良いさあ!」
主婦「まあ・・そりゃそうなんだけど・・ああ・・そうだ・・あんたあ・・今日お隣のパーティどうすんの~?」
店主「ああ~~そうだったなあ!そりゃお《《《カ!!!!!!!!!!!》》》
その後。
爆弾の復讐としてエノワール軍隊が出動。
だが、攻めてきたのは最強の種族グニングル達。
エノワール軍隊は壊滅させられ、滞在していた善良な政治官僚達は全員、家族諸共処刑された。
エノワールと敵対した国の名はスルガンドラ。
かつてエノワールから残虐な謀略を受けながらも何とか耐えた苦難の国。
スルガンドラ国王「政治関係者の血筋は跡形もなく消し去れ!誰一人としてだ!誰一人として生かしてはならぬ!例えそれがまだ赤ん坊だろうがだ!!徹底的に復讐の芽を摘むのだ!もう二度とこのような戦争は起こしてはならぬぞ!決して心得よ!」
団長「ガリン・・お前・・ラッキーだったなあ・・生きろよ!うらあああああああああああ」 グニングル族の一人に団長達が突っ込んで行く。
そこには36の姿もあった。
グニングル族1「ギックス(来いや)、バジャンニガチ(雑魚共)」
春。
天気晴れ。
少し小雨。
雨の色は透明。
トヘンガローへの道中。
ガリン「・・」 死んだ目。
右側の山々の遥か上、本当は遠いのだがあまりに巨大な為、近くに見えるキノコ雲。
赤ちゃん「うああ・・うぶぶ・・いきゃああい・・きゃっきゃ」
リンゴン「・・ほら・・もう行くしかないんだからさあ・・」 立ち止まり振り返る。
ガリン「・・その子供・・あんた解ってんの?その子供は新たな戦争の火種よ!殺すべきじゃないの?」
リンゴン「う~~ん・・バレなきゃいいんじゃね?いざとなったら俺が記憶操作するさ、んね~あぶぶぶ」
赤ちゃん「あっきゃああ、きゃっきゃ」
ガリン「・・」
リンゴン「・・お前も、この子もさ・・もういいんじゃね?」
ガリン「え?」
リンゴン「好きに生きようぜ、世界は広いんだ!軍人とか、王族とか・・どうでもいいじゃねえか・・俺達は風さ!誰も縛れない風!びゅううううう、びゅうわああああ」
赤ん坊の脇を抱え、回す。
赤ちゃん「ぶうううう、うううううううん、きゃっきゃ」
ガリン「・・はあ・・皆・・死んじゃった・・」
リンゴン「・・ああ・・そうだな」
ガリン「あんたは寂しくないの?」
リンゴン「別っつにいい?」
ガリン「何で?何で寂しくないの?」
リンゴン「また友達作るから!」
ガリン「え・・」
リンゴン「うっわ虹!すっげ二重虹だあ・・綺麗だねえあぶぶぶ」
赤ちゃん「あ~ぶぶぶぶうきいいくしゅん!あ~・・」 鼻水。
リンゴン「うっわやっば!風邪引いた?」
赤ちゃん「あ~・・ぶしゅぐ!ぶしゅ!あ~~ぶしゅ!」
リンゴン「あ~こりゃ完璧に引いたわ」
ガリン「・・貸しなさい」
リンゴン「んえ?」
ガリン「貸して」
リンゴン「・・殺すなよ?」
ガリン「んな事しないわよ、早く」
リンゴン「・・」 渡した。
ガリン「汗が冷えたのよ・・着替えがないなら・・このコートで代用するわよ」
リンゴン「いや・・お前・・コートにウンチされるぞ?いいのか?」
ガリン「ウンチくらい上等よ、・・私達は・・臓物を見過ぎたわ」
リンゴン「・・ふ・・そうだな・・でも・・ふははははは」
ガリン「?何よ?」
リンゴン「いやいや・・その姿お母さんだぞ?」
ガリン「《ボボカアアアアア》や、やかましい!仕方ないじゃない!」
リンゴン「まあそうだな」
ガリン「ったく・・ほら・・これであったかでしょう?」
赤ちゃん「あっ、あっ」 手を伸ばす。
ガリン「・・」 指を握らせる。
赤ちゃん「ばあ~う~?くっぺ・・あ~う~?」
ガリン「あったかい・・」
リンゴン「・・そろそろ行くぞ?」
ガリン「・・」 キノコ雲を見る。
ガリン「何で人って・・小さい時はこんなに可愛いのに・・何で・・何でなんだろう?」
リンゴン「・・雨は・・誰にでも降る」
ガリン「え?」
リンゴン「風は誰にでも吹く」
ガリン「・・」
リンゴン「リンゴの木は誰にでもその実を与える」
ガリン「・・」
リンゴン「じゃあ人間は?」
ガリン「・・」
リンゴン「誰かが言った愛の定義さ、特別な人間というのが出来たら、逆を言えば、特別でない人間ができたと同じなんだと」
ガリン「・・」
リンゴン「差別の誕生だ」
ガリン「・・」
リンゴン「恋人や、夫、妻、それらに気に入られようとする事は、王様に媚びへつらう部下と大差ないんだと」
ガリン「・・そんな」
リンゴン「・・神様の仕事がこんなに綺麗なのになあ・・」 二重虹を見る。
ガリン「・・」
リンゴン「人間の心にも・・差別ない愛って・・あると思うか?」
ガリン「・・あんたはどう思う?」
リンゴン「・・怖くて皆出せないだけなのさ・・本当は持ってる、俺はそう思う」
ガリン「・・あははははは」
リンゴン「なんだよ?」
ガリン「そりゃあね、あんたは強いからねえ、いいなあ、強い人は」
リンゴン「・・ふん、ほら、行くぞ?」 歩き出す。
ガリン「・・」 歩き出した。
目指すは中立国家トヘンガロー。
巨大な砂漠トカゲを手下にし、背中に乗って移動中。
隣から砂漠ムルカの群れが泳ぐ。
時速は110km。
リンゴン「ひゃっはああああ、早い早いいい、いやっほおおお」
ガリン「タムカは大丈夫うう~?」
リンゴン「ボックスの中は見れるから大丈夫!スカピー寝てるよおお」
ガリン「そおおおおお」
リンゴン「やっぱ旅っておんもしれええ!!いやっほおおおおお」
巨大砂漠トカゲ「(俺ん家こっちじゃねえんだけどなあ・・)」
《END》