第五色 魔色のビームは男の憧れなのですよ
「僕は、人を、殺したのか。」
「そうだな、相手は世界から抹消されているから。実際には人を殺したことにならないけどな。」
「…」
「フォローにはならないと思うが、俺も、沢山の能力者を殺してきた、そうしなければ、自分が死ぬ。
能力者同士の戦闘はほぼ必ず自分か相手、どちらかが死なないと終わらない。逃げたりすれば別だけどな、覚醒なんて使われれば。逃げるか殺すかしないと、より多くの犠牲が出る。」
「覚醒?」
突然出てきた単語に疑問を持つ。
「言い忘れてたな、覚醒というのは、魔色の能力者が、使える、最後の切り札の一つだ。」
切り札?なんかかっこいい。
「この切り札は絶対に負けられない戦いの時にだけ使うことが出来る。だが、代償が大きすぎる。」
「どんな感じなの?」
「それはな、”残りの寿命全て”と引き変えに莫大な力を得るんだ。当然、対象を倒せば、覚醒が切れ、死ぬ。」
「…」
意味が分からなかった。何故命を捨ててまで力を得なくてはならないのかが、それと同時にその”覚醒”をいつか使わざるを得ない状況下に置かれたら、どうしようかを考えていると、兄さんが。
「あっそうそう、物理特化でも遠距離攻撃は出来なくとも、中距離攻撃なら出来るんだぜ。」
「どういう事なの?」
「ビームみたいなの撃てるぞ。」
「!!!」
ロボット、ビーム、それは男の憧れとも言えるだろう。それが撃てる、そう思うとさっきまでの悩みが嘘の様に吹っ飛んだ。
「どうすれば撃てるの?」
「物理特化じゃないから分からないけど、特殊特化の様に光線を放出するイメージをすれば撃てるんじゃないか?」
「やってみる。」
魔腕を前に突き出し、何となく力んでみる。
「んんんんん!」
「おっ、光った。」
魔腕が攻撃する時の様に光る。ただ光る。
「結構光るな、てか眩しっ。」
「んんんんん!!!!」
「なんか暖かくなってきたな。」
数十分が経過した。どう頑張っても周囲が暖かくなるだけで、光線は出なかった。
「ま、最初はこんなものだろ、毎日やればいつか出るだろ。」
「白熱電球の仕事でもしようかな。」
「それ傑作。」
2人で談笑していると、兄さんのスマホがいきなり鳴った。兄さんはそれを見るなり。
「ケイ、ごめん、仕事が入っちまった。先帰っててくれないか?アイス
はお土産に買っていくから。」
「うん。」
もう少し話していたかったが、しょうがない。帰ろう。
会社を出ると、空は曇りがかったように薄暗かった、冬はやはり日が落ちるのが早い。少し残念だ、でもその分夜が長いと考えれば良い。
しばらく歩いていると、森を抜け、町が見える。町には大きなビルがいくつも建てられ、窓には星の様に無数の光が、夜の町を照らしている。星空は見えなくとも、これはこれで、なかなか綺麗だな。
「はぁ…」
一つため息。吐いた息は白く、すぐに消えていく、なんとなく楽しい。
そしてある事を思い出す。
「アレ、今日…日曜日だよね、課題やってないな、明日世界史のマメテストあるよね…家まで、6キロあるし、全速力で帰らないと。」
楽しい気分が一転、血の気が引いていくのが感じた。
そうして僕は高速で夜闇に消えていくのであった。
ps課題は間に合いました、やったぁ。