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忘却の命彩  作者: うどんこくろな
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第三色 最初の忘却

僕はヒトを殺してしまった。頭部を撃たれたからか、頭の中が痛い。

死体が消えていく、消える。


「あれ…僕は何してたんだろう?」


思い返してみる。たしか何かと戦ったような…左手が、左手が謎の力を使えるんだ。

試しに近くの手頃な石を左手で拾い上げる、そして強めに握る。すると石は泥団子を潰すように崩れていった。

大体の事は思い出した。特別な力を持つ光る左手と、何かと戦ったこと、人を…殺したことも。でも死体がない、隠した心当たりもない。相手の顔も思い出せない。

時刻が気になりふとスマホを見てみる、大量のラインと着信履歴。時間は、12時を過ぎていた。門限の10時を過ぎている。

「とにかく急いで帰らないと。」

走る。速い。自転車よりも速いかもしれない。2キロ程離れていたが数分で家に到着、そっと玄関のドアを開けた。家の中は明かりがついていない、好都合だ、ゆっくり…。

「どこ行ってたの!?」

「ひゃっ!」

急に明かりが付いたと同時に母の声、かなり驚いた。

「よく見なくとも泥だらけじゃない!先にお風呂入って!」


風呂から出ると母がぼやいていた。

「何したらこんなに服がボロボロになるのかね、まったく。」

穴だらけのズボンと服を見ながら母は言った。お風呂に入ったらとても体が楽になった、今すぐふかふかのベッドで眠りたい気分だ。

早く眠りたいから部屋へ急ぐ、すると部屋の前の廊下で兄、篠木 司と、ばったり会った。

「おっ、ケイ、遅かっじゃん。」

「ちょっと色々あってね。」

心配をかけたくないから家族には力を持った左手の事は話さないでおこう。

「ケイ、唐突だが話がある、俺の部屋に来な。」

「眠いのになぁ。」

「その腕の事を教えてやる。」

正直すごく驚いた、何故兄さんがこの事を知っているのだろうか。

「そこの座布団に座りな、あと はい、ココア。」

「ありがとう、兄さん。」

受け取ったココアを1口、程よい甘さとミルクのまろやかさがちょうど良くてとても美味しい。

「本題に入るが、何故俺がお前の腕の異変に気づいたかだ。

ケイ、お前の腕は生まれつき黄色いだろう?だからいつかこの日が来ると思っていた、至極簡単な話だ。」

「いや、なんで兄さんはこの日が来ることを知ってたの!?」

兄さんはココアを1口飲んでから答えた。

「しッ、母さんが起きるから静かに、話を戻すが、能力者同士は数メートル以内にいると感知し合えるんだ、それでさっき気づいたんだ、ケイが能力に目覚めたって事をな。」

「のうりょく…しゃ?かん…ち?」

「そう、能力者同士は感知し合える、いいな?」

「って事は兄さん、」

「察しの通り能力者だ、ケイとはかなり違うがな。」

そう言って兄さんは僕に右手の掌を見せてきた。掌の中心に黄緑色に光る5cm程の円がある。

思考が停止した、兄さんが能力者?何故?今まで掌に色がついてることすら知らなかったのに、どうなってるのか全く分からない。

「わけがわからないって顔をしてるな。ごめんな、この手の事は家族全員に隠してたんだ。」

「なんで隠してたんだ?兄さん。」

「何となく。」

なんとなくかよ…。兄さんは少し、申し訳なさそうな顔をしている。

「まぁ、なんだ、隠してたお詫びに俺の知ってる事なら何でも教える。その為にも今日、何があったか説明してくれ。」

兄さんの目は本気だ。そして僕は話した、今日あった事、殺されそうになったことも、人を殺したかもしれない事、戦った相手の事を全て忘れてしまった事、その他諸々全てを話した。

兄さんは辛そうな顔をしながら僕の頭を撫でながら言った。

「よく頑張ったな、ケイ、怖かっただろう?、痛かっただろう?生きて帰って来てくれてありがとう。本当に無事でよかった…。」

泣きそうな兄さんの言葉を聞いてやっと、今まで溜まっていた不安が全て吹き飛んだ。嬉しかった。そして兄さんは恥ずかしそうに。

「スマン、話を戻すが、死の淵かは蘇る事が出来たのは分かってると思うがその左腕の力のお陰だ。」

「次は能力者についてだ、まずこの色の力を俺達能力者は”魔色”と呼んでいる。」

「魔色…」

なんとなく復唱してみる。

「まず、魔色の力は生まれつきの物で、ごく稀に身体のどこかにうっすらと色を持った赤ん坊が産まれてくる、その色は成長と共に広がり、濃くなっていく。そして17歳から18歳を境に能力に目覚める、お前は死の淵に立ったおかげで無理矢理能力が目覚めさせられているから何かしら能力に欠陥があるかもしれないな。」

「欠陥ってどんな感じ?老化が早いとか?」

「うーん例えるなら、さっき俺と会った際に俺が廊下にいるということを感知出来なかっただろう?大体そんな感じだ。」

思ったよりも軽くて安心した。

「じゃあ死んだりはしないのか、よかった。」

「次に能力者になるとどうなるかだ、能力者にはざっくり言うと2種類ある1つは物理特化型、もう1つは特殊特化型だ。お前は物理特化、俺は特殊特化だ。」

「どうやって見分けるの?」

思わず聞いてしまった。

「簡単だ、物理特化は色のつき方が 広くて、殴ったりするのに使う箇所にある。逆に特殊特化は色のつき方かま狭く、掌とかが多いな。」

「その2種類は使える力が異なるの?」

「そうだ、物理とっ。」

言いかけた瞬間、兄のドアが開き。

「ま〜だ起きてるの?早く寝なさい。」

母の声が妙に優しい声だったがその中に恐怖を感じた。

「ま、まぁこんな感じだ、続きは明日な!おやすみっ!」

逃げた。ありえない速度でベッドに入って行った。

「何の話であんなに2人で盛り上がってたの?」

まずい、なんて答えようか、生半可な誤魔化だとすぐに見破られる。嘘もつきたくない。

「ひみつ。」

これしかないな。 (←全然良くない)

「ふーん…まぁいいけど、早く寝なさいね。」

と言い残し、なんとも言えない顔をしながら母は部屋から出て言った。誤魔化せたか?…もう寝よう。

自室に戻り、倒れるようにベッドに寝転びすぐに瞼を閉じた、この左手の事はあまり考えないようにして、僕は深い眠りに落ちた―――。


悪いところがあったらばしばし言ってください!

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