前世
「私の前世が亀だって言ったらどうする?」
部屋では夕日が眩しく照りつける。彼女はフワッフワッの髪をるんるんと揺らしながらなんだかよく分からないことを言っている。
「ならその亀を全力で可愛がるかなぁ。」
答えにもなっていない答えに我が姫君は納得するのだろうか。
「なにその答えになってない答えは〜。」
頰を膨らましている。僕の予想通りでどうやらお気に召さなかったようだ。
「なんて答えて欲しかったの?」
こういう場面なら相手が欲するものを考えてそれを提供するというのが定石だろう。だが相手は彼女だ。彼女の場合こちらが考えても想像の斜め上をいくため考えても考えても読めない。だからもつ素直に聞くことにしている。そっちの方が問題を解決でき時間も短縮できて一石二鳥だ。
「それでも愛してるよマイハニーって言って欲しかったの!」
いや、いつの時代のキザ野郎だ。そんなの僕の柄じゃない。
「ほら、なら私の前世が猫だと思って可愛がって!」
全然前世関係ないじゃん。というツッコミを入れる前に彼女が僕に膝枕を求めてきた。あ、いまだ。
「前世がなにであろうと僕は君のことが好きだよ。」
むきゅうと彼女が僕の太ももに顔をうずめる。よし、勝った。
こんな感じで今日も僕と彼女との関係は良好だ。