EPISODE.02(邂逅)
三人が外に出た瞬間、目の前の道路を駆け抜ける異能者。
かなりの速度で覚醒者が増えているようだった。
神崎は黒木に提案をした。
神崎「黒木、進藤連れて先に行ってろ。俺はちょっと警視庁に寄ってくる。」
黒木「わかりました。道中お気をつけて。」
神崎「あぁ、そっちもな。」
神崎は、黒木・進藤と別れ一人警視庁へ向かう。
神崎と別れた黒木・進藤はとりあえず、先程の異能者を追うことにした。
進藤「つってもよ、アテあんのかよ?」
黒木「ない。が、やるしかあるまい。」
進藤「うわぁ、マジかよ!行き当たりばったりとかまじだりぃ!」
黒木「なら特殊牢に戻るか?」
進藤「チッ、わーったよ!で、さっきの奴追うんだよな?どうやって追うんだよ?」
黒木「徒歩だが?」
進藤「黒木、お前バカなの?」
黒木「なに?」
進藤「飛べばいいじゃん。俺達も異能者なんだし。」
黒木「私の能力では飛べないんだ。」
進藤「は?水の水圧利用すりゃいいじゃん。」
黒木「そう簡単に出来ないんだ。」
進藤「黒木、あんた異能者になって何年だ?」
黒木「三ヶ月だが。」
進藤「は、話にならねぇ・・・。マジかよ・・・。」
進藤はがっかりした。
黒木が俺に協力を求めてきた時、正直嬉しかった。
俺の強さが理解出来てる奴がいる。俺の能力を理解してくれる奴がいる、と。
しかし、まさかここまでヘボな異能者だとは思っていなかった。
進藤は頭を抱えた。だが、すぐに答えを導き出す。
進藤「黒木、俺は空から行く。あんたは歩いて向かってくれ。不安なら俺に発信器なりつければいい。」
黒木「いや、だがしかしな。」
進藤「のんびりしてたら俺が起こした悲劇が繰り返されるんだぞ!」
黒木「だが・・・。」
進藤「あーもう、優柔不断もいい加減にしやがれ!」
進藤は黒木の胸ぐらを掴み、黒木を壁に叩きつける。
進藤「どうすんだよ!やるのか!やらねぇのか!!」
黒木「わかった。お前を信用する。私は下から向かう。進藤、お前は空から頼む!」
進藤「あいよ!んじゃ、またあとでな!」
進藤はそう言うと、両腕両足に炎を纏い、凄まじい勢いで飛んでいった。
黒木は、足元に水のフィールドを形成し、サーフィンをしているかのように、滑りながら移動を開始した。
進藤は空から、先程見かけた風を操る異能者を探した。そして、呆気なく見つけた。
進藤「あいつだな。」
進藤は空から風を操る異能者に近付き、背後に降り立つ。
進藤「よう!」
??「あ?あんた誰?」
進藤「お前と同じ異能者だ。」
??「ハァ?なにいってんの?異能者?頭大丈夫かよオッサン。」
進藤「あっそ。しらばっくれるんだな。燃えろ!」
??「は?なに言って・・・、な、ななななんだよこれ!うわっ!燃えてる!!」
黒木「進藤!お前はまた!!」
そこに黒木が追い付いてやってきた。
黒木は、燃えてる男に水をかけるが、火が消えない。火が水を蒸発している。黒木は火をよくみた。すると黒い炎だった。
進藤が説明していた火球の一つ、黒炎球。
熱量を自在に操り、何をかけても消化不可能な炎。その炎で風使いは燃えていた。
黒木「進藤!」
進藤「大丈夫だっつの。零度にしてあるし、燃えても火傷すらしねーよ。それにな、あいつは異能者だ。すぐに出てくるさ。」
そう言ってると、黒炎がその男の周りから霧散した。黒炎を散らした男の周りに漂う風。ビンゴだった。
風使い「やるじゃん。でも俺を怒らせてタダで済むと思うなよな!オッサン!!」
風使いは、風を集めている。竜巻でも起こそうとしているらしいが、黒木がその風ごと水球で包んだ。
風使いはもがいた。纏っていた風は霧散し、風使いは水球の中でひたすらもがく。だが、いくらもがいても水が消えずに数十秒して意識を失った。
黒木「とりあえず一人目だ。」
進藤「なんかよわっ!」
黒木「お前を捕まえた時と同じなんだがな・・・。」
進藤は押し黙るしかなかった。ついこの間のことだが、進藤はこの風使いが捕まった技と似たような技にやられて捕まったのだ。
進藤は、真っ赤な顔を隠す為に炎で全身を覆った。
黒木はそんなことに構わず話しかけてきた。
黒木「進藤、私は一度署に戻る。お前は引き続き捜索に当たってくれ。こいつを特殊牢に入れたらすぐに戻る。それまでは無茶はするなよ。」
進藤「わかってるっつーの。」
黒木と進藤は別れ、黒木は警察署内の特殊牢へ。進藤は新しい異能者を探しに空を飛んだ。??「ンーンンーンンッンー♪」
鼻歌を歌いながら洗濯物を干している男がいる。
髪から足の爪先まで紫。服も瞳の色も全てが紫。紫づくしの男(女)の名は、天桐凍弥。異能者の一人で、電撃使い。
電撃を自由自在に操る。雷なども自分の力として扱う男(女)。
天桐「フフッ、今日は誰にしようかしら。」
天桐は、部屋の壁に貼り付けられた写真を眺めている。全てイケメンの写真である。天桐は、いわゆるオネエだ。
毎日毎日壁に貼り付けられたイケメンの写真を見て、標的を選ぶ。
選ばれた標的は天桐の力により麻痺状態にされて、秘密の隠れ家に運ばれる。
そこで一夜を共にした後、電撃を標的に流して内臓等を焼き付くして殺す。
天桐はそれを毎日行っている。
今は警察にも感電死として扱われており、まだ犯罪者とは世に知られていない。
知っているのは、天桐本人と殺されたイケメンだけだが、天桐がベランダで洗濯物を干している時、空を飛んでいる男と目があった。
天桐「あらまあイイ男♪」
進藤「んっ?みーっけ!」
電撃使いと火使いがここに邂逅した。
進藤は着地に邪魔だった洗濯物を全て灰に変えた。
進藤「よっと。よう、あんた異能者だな。」
天桐「ちょっと!いきなり人の洗濯物燃やしてベランダに入ってくるなりなんなのよぉ!(イケメンだわぁ!しかもすっごくタイプのっ!)」
進藤「なんだテメェ。なんかキモい。」
天桐「キモいだなんて酷いわ!」
進藤「あぁ、お前はオネエか!なるほど、納得言ったわ・・・。きっも!近寄んな!」
天桐「酷いわね。イケメンでも言っていいことと悪いことがあるわ!許せない!!」
天桐にまとわりつくように電撃が走っている。
ジジ、ジジジと電気独特の音が鳴っている。
おそらく100万ボルトはあると思われる。進藤は白い炎の壁を作り様子を見ることにした。
天桐「フーン、白い炎の壁・・・。貴方が進藤恭丞ね。はじめまして、私は天桐凍弥よ。」
進藤「ア?自己紹介なんて急にどうした?」
天桐「貴方と手を組もうと思ってね。」
進藤「手を組んでどうする?」
天桐「異能者だけの都市を作るわ。そして、一般人と戦争するのよ!私たち新人類が勝って世界をリードするの!どう?私と手を組まない?」
天桐は、進藤に手を差し出した。握手を求めている。が、進藤はその手を払いのけた。
進藤「ワリィな、先約がいるんだ。」
天桐「そう、残念ね〜。仕方ないわ。貴方を倒して作戦を実行するわ!覚悟なさいっ!」
天桐は本気のようだ。電撃が、壁を焼き焦がし窓を吹き飛ばす。
進藤は白炎の壁で電撃を完全に防いでいる。
だがこのままでは埒があかないと思った進藤は、壁を発動したまま外に出る。
天桐は逃がすまいと着いてくる。
空を飛び、天桐の住むマンションの屋上へ降り立つ進藤と天桐。
天桐は変わらず電撃を放ち続けているが、進藤の白炎の壁を打ち破れないでいた。
一方進藤は、白炎の壁の内側で黒炎球を出現させていた。
進藤「なぁ天桐。このままじゃお前は黒焦げになるぜ?そうなる前に投降したらどうよ?」
天桐「お断りね!」
天桐は、無闇に放っていた電撃を抑えた。
右手を前に突きだし、右手に電撃を蓄えている。
その量は、どんどん増えている。青白かった電撃が色を変え、紫になっていた。
そして天桐は行動を起こす!
天桐「これで終わりよ!これを耐えられた異能者はいないわ!」
進藤「へぇ?それはおもしれぇ!やれるもんならやってみやがれオカマ野郎!!」
天桐「ぶっ殺す!!」
天桐は、溜めていた電撃を右腕から進藤に向けて放った。
進藤は白炎の壁で迎え撃つ!
天桐の電撃がレーザーのごとく進藤の壁を襲う。
白炎は全てを灰に変える。だが、天桐の電撃は凝縮された密度の高い電撃。
その電撃が白炎の壁を直撃貫通した。
進藤は、それを予想していたかのごとく、身軽にかわして黒炎を天桐に放つ。
天桐は、自らの周りに無数の電撃を出現させて、黒炎を防いだ。
どちらも攻めあぐねている。いや、天桐の方が有利だった。
進藤ジリジリと圧されている。電撃使い、かなりの強敵である。
だが、戦況は悪いというのに進藤は笑っていた。
天桐は、笑っている進藤に不気味なものを感じた。
進藤「ハハハッ!」
天桐「(なにこいつ。何で笑ってるの?)」
進藤「やっぱつええ奴はおもしれえ!!」
天桐「貴方、何言ってるの?大丈夫?」
進藤「大丈夫さ。さぁて、本気でいくぜ!天桐、覚悟しな!!」
天桐「!?」
天桐は空気が震えるのを感じた。進藤は本気で行くと言った。空気がビリビリと震えている。
進藤の周りには紫色の炎が無数に現れている。紫色の炎柱。
その炎柱が進藤自身を包む。完全に進藤が見えなくなった。
天桐は、進藤が何をしてくるかわからない以上下手に動けない。
そして進藤を覆っていた紫色の炎柱が消えていく。
そこに進藤はいなかった。
天桐は進藤の姿を探すが見当たらない。どうやら進藤は戦闘放棄し逃げたようた。
紫色の炎柱は単なるフェイク。天桐は笑いを堪えられなかった。
あの進藤を倒した異能者。
これで仲間をより集めやすくなると笑っていた。
だが進藤は逃げたわけではなかった。
“煉獄”
その力を溜めていた。
煉獄は一つの街を焼失させるだけの力を持つ。
前と同様に“煉獄”を放てば、悲劇を繰り返す。進藤は“煉獄”の力を人一人に対しての威力に減衰させるため、一度天桐から離れたのだ。
そして“煉獄”の調整が終わり、進藤は天桐の前に姿を現した。
握り締めた右手の中に“煉獄”を隠して。
天桐「あらぁ?逃げたのかと思ったのにぃ。」
進藤「ハッ!誰が逃げるかよ!」
天桐「じゃあ、さっさと終わらせましょうか。雷電!」
天桐は右腕に電撃を集中させる。白炎の壁を突き破ったレーザーだ。
進藤は前回と同じく白炎の壁を発動する。
天桐「バカの一つ覚えかしら?フフッ、それじゃアタシには勝てないわよ?」
進藤「言ってろ。お前はもうすぐ後悔する。」
天桐「後悔するですって?笑わせてくれるわね。いいわ、後悔させてみなサイ?」
天桐は右腕に集めた電撃を放つ。進藤は白炎の壁で電撃を止めた。
前回は貫通した電撃が、今回は完全に阻まれた。
天桐は驚愕した。ありえないという顔。顔が歪んでいる。
進藤は微笑んだ。そう、前回は加減していたのだ。相手の実力がどれほどなのかを知るために。だが今回は本気。
完全に電撃を凌いだのち、白炎の壁を解除。進藤は天桐に右腕を翳す。
進藤「天桐、これを見ろ。」
天桐「な、なに?」
進藤「こいつは“煉獄”。半年ほど前に、都内のある街が焼失したのは知ってるな?」
天桐「え、えぇ。死者と行方不明者合わせて五万人が被害にあったっていうあれよね?ま、まさか・・・!?」
進藤「そう、そのまさかだ。あれよりは威力は格段に落ちるが、人一人なら確実に殺せる。骨も残さない。白炎は全てを灰に変えるが、“煉獄”は無だ。」
天桐「そんなっ!?ま、待って!と、取引しましょう!!」
進藤「焦りすぎだな。取引ってのは勝ってる側から提示するもんだぜ。」
天桐「ひっ・・・!!」
黒木「進藤、そこまでだ。」
進藤「ちっ、いいとこだったのによ」
進藤「つか、風の野郎はどうしたんだよ?」
黒木「署内の特殊牢に入れてある。」
進藤「で、この短時間でここまで来たのか。どうやって?」
黒木「水圧を利用して飛んできたんだが?」
進藤「やるぅ!」
黒木「無駄話はいい、こいつか?」
進藤「あぁ、天桐凍弥。電撃を扱う異能者だ。」
黒木「わかった。天桐凍弥、君を逮捕する。」
天桐「なんでもいいわ、命が助かるならね。」
黒木「ではこの特殊な腕輪と首輪を・・・っ!?」
突如天桐と黒木・進藤の間に黒いフードつきローブを纏った者が現れた。
??「彼を渡すわけには行かぬ。」
黒木「何者だ!」
??「名など無意味だ。」
黒木「進藤!!」
進藤「あいよ!黒炎竜!!」
??「ふっ・・・。」
謎の黒フードは進藤の黒炎竜をいともあっさり消し飛ばした。
黒木と進藤は唖然とした。進藤の能力は、現異能者の中でも群を抜いている。それをあっさりと消し飛ばした。
ただ左手で触れただけでである。
天桐は何が起きたのか理解出来ていない。
謎の黒フードは天桐の左腕を掴んだ。
??「お前たちの決戦の場はここではない。ここは引いてもらう。」
黒木「勝手なことを言うな!犯罪を犯した異能者を逃がすわけにはいかない!お前も一緒に捕らえる!!」
黒木は構える。だが、黒フードが黒木の頭を左手で触れただけで、黒木はマンションの外に飛ばされ、正面にある外壁に叩きつれられ血を吐いた。
進藤は黒木を助けに向かう。
黒フードは何事もなかったかように天桐と共にその場から消えた。
黒い煙を残して・・・。進藤は壁に叩きつけられぐったりしている黒木を抱え病院に向かった。
病院には何故か神崎がいた。
だがそれに構ってる暇はなく、すぐに緊急入り口から入れさせてもらい、神崎の計らいで集中治療室に黒木が運ばれる。
黒木があんな状態で病院に運ばれてきたことの説明を、神崎は進藤に求めた。
神崎「進藤、何があった!」
進藤「天桐っつー異能者を捕らえようとした時、突然黒いフードつきローブの奴が現れた。そいつが天桐を連れ去ろうとしたから、まずは俺が黒炎竜って技を放った。だが、左手で簡単に消滅させられた。黒木は逃がすわけにはいかない!と、黒フードに向かっていったが、黒フードに触れられただけで吹き飛ばされてあのザマさ。」
神崎「そんなことが・・・。その黒フード、性別はわかるか?」
進藤「いや、わかんねぇ。顔も見えなかった。」
神崎「そうか。」
進藤「そういやあんたは何やってたんだ?」
神崎「私は警視庁で情報を集めていたのさ。今のところ、日本全国だけで異能者の数は300人を越えている。各県警などが対処しているが、対処しきれていないのが現状だ。」
進藤「そんな劇的に増えたのか?そうだ!黒フードの情報を調べてくれないか?なんでもいい。ちっさなことでもいいから何か情報があったら教えてくれ。」
神崎「わかった。出来る限り情報を集めてみよう。黒木のことは任せていいか?」
進藤「ああ、任せてくれ。」
神崎は進藤と別れ病院から出る。携帯をポケットからとりだし、電話をかける。
神崎「あぁ俺だ。黒フードの情報を集めてほしい。あぁ、黒木って知ってるだろ?あいつがやられてな。勝手に殺すな!ん、あぁ。すまんが頼む。」
神崎は電話を切り車に乗り込む。鍵を差して回す。エンジンをかけたその時、神崎の車は爆発炎上した。
神崎は即死だった。
それを病院の屋上から見る二つの影があった。黒木の治療が続くなか、外から爆発音が轟いた。進藤は慌てて外に出た。
そこには爆発炎上した神崎の車があった。
進藤は自ら炎に包まれている車に近付き中にいた黒焦げになった人を運び出した。
恐らくこの黒焦げになった人が神崎だと悟った進藤は泣き崩れた。
一緒にいた時間はほんの少しだが、共に戦う仲間だった。
神崎は非能力者で、戦闘などには参加出来ないが、裏で情報収集などしてくれていた仲間だ。その仲間を失った悲しみに耐えられなかった。
その光景を病院の屋上から見る二つの影。
どちらもフードを被り黒いローブで全身をおおっていた。
??「兄さん、裏でごそごそしてた神崎は死に、そして黒木は重症。任務達成かな?」
??「あぁ。盟主の命はこれだけだ。」
??「進藤に関しては何も言われてないけど、何もしなくていいの?」
??「しなくていい。我らが盟主から指示がないかぎりは何もするな。」
??「りょーかいりょーかい!」
??「戻るぞ」
??「はーいっ」
黒ローブの二人は屋上から姿を消した。
二人が姿を消して少ししたのちに消防車が到着した。
そのあとに続いて警察も到着。
警察は、泣き崩れている進藤に話を聞くべく、近寄ってきた。進藤は近寄ってきた警察官に、異能者を捕らえるために協力してること。捕らえようとしたら黒ローブが現れて黒木が重症を負わされたこと。
神崎と別れたあとに爆発音が聞こえたから直後の現場は見ていないことを話した。
警察官は全てメモに書きうつしたあと、礼を行って去っていった。
進藤は重い足を引き摺りながら未だ手術中の黒木のところへ向かった。
それから五時間が経過した。手術室のランプが消え、黒木が運び出されてくる。
手術担当者からの説明によると、頭蓋骨骨折、あばら骨5本が折れていて肺に折れたあばら骨が刺さっていたそうだ。
意識が戻る確率はかなり低いということを聞いた進藤は苛立ちを隠さず病院の壁に拳をおもいっきり叩きつけた。
拳の皮が破れ血が出てくる。そんなことはお構いなしに何度も壁を殴った。
近くを通りがかった看護師に止められ治療を受けさせられた。
治療中、進藤は今後どうするかを考えていた。
黒木も神崎もいない。この状況だと進藤は単なる犯罪者に逆戻りということになる。
いくら警察庁から認可を受けているとは言え、進藤を見張る相手がいないのだ。
だがあの黒ローブを放っておいたままでは、またいつ事件が起きるかわからない。
一人ででも動くべきか。そう考えていた時、一人の男が近付いてきた。
身長は170後半ぐらい。黒いスーツを着こなした男。
スーツの男は進藤に話しかけてきた。
螺那「君が進藤恭丞かな?」
進藤「そうだが、あんたは?」
螺那「私は警視庁異能者対策室室長の螺那だ。」
進藤「螺那?変わった苗字だな。で、その螺那さんが俺に何のようだ?」
螺那「黒木が重症、神崎は殉職したと聞いてね。警察庁から、進藤を異能者を捕らえる為に一時的に協力してもらうことにした、と報告を受けているんだが、間違いはないかい?」
進藤「あぁ、そうだ。」
螺那「了解した。黒木警部があの状態の為、今後は我々警視庁が君の身柄を預かることになった。あぁ、安心してくれ。再逮捕ということではない。協力関係はそのままだ。だが、一人で活動させるわけにはいかなくてね。こちらから一人つけさせてもらうことにした。」
進藤「その俺の監視役はどこにいる?」
螺那「もうすぐくるはずだが・・・。来たな、紹介しよう。彼女は竜閃奏巡査だ。彼女も異能者で、能力は閃光だ。」
竜閃「はじめまして!竜閃奏巡査です!これからよろしくお願いいたします!」
進藤「堅い。」
竜閃「えっ?」
進藤「もっと肩の力を抜け。言葉も堅い。もっとフランクにいこうぜ?」
竜閃「し、しかし・・・。」
進藤「俺はかたっくるしいのは苦手なんだ。まぁ、無理にとは言わねぇが。」
竜閃「ど、努力します・・・。」
螺那「話はついたようだな。進藤、もし異能者を捕らえた場合は警視庁異能者対策室まで連れてきてくれ。」
進藤「ああ、わかった。」
螺那「うむ、頼んだぞ。竜閃、進藤の足を引っ張らぬようにな。」
竜閃「はっ!!」
螺那「では私はこれで失礼するよ。」
竜閃「お疲れ様です!」
螺那は、来た道をそのまま戻っていった。
進藤は、竜閃という新しい相方を得た。
だが、黒木の状態が気になる進藤は、たまには黒木の様子を見に来ようと思っていた。進藤は竜閃の能力について気になった。
進藤「竜閃、あんたの能力は閃光つったな?どういったことができるんだ?」
竜閃「閃光の能力は主にレーザー系になります。あとは目眩ましなどですかね。」
進藤「それだけか?」
竜閃「そうですね。ただ威力は相当凄まじいと思いますよ?」
進藤「どれぐらいだ?」
竜閃「こないだ警視庁管轄のある浮き島の異能力実験場で、螺那さんに本気で撃てって言われたので、全力で撃ったら浮島がなくなりました。」
進藤「え。それ職員とか大丈夫だったのか?」
竜閃「進藤さんの“煉獄”の件があったので、全員浮島から避難してからやりましたので怪我人はいませんよ。浮島は無くなりましたが。」
進藤「そうか。」
竜閃の能力“閃光”は、異能の中でも上位にあたる。
その力は絶大で、進藤の火(炎)と比べるならば天と地ほどの差がある。
竜閃はまだその一部しか使えていないが、全ての力を解放し最高の能力を発動すれば日本列島がまるまる地上から消えることになる。
それほどまでに協力な異能力が“閃光”である。
進藤「で、これからどうする?」
竜閃「今日は休みましょう。時間も時間ですから。」
進藤が病院内にある時計を見ると、既に20時を回ったところだった。
さすがにこの時間から動くのは厳しいので、竜閃の提案を受け入れ、一度竜閃と別れた。
進藤は黒木の病室に入り、黒木の眠るベッドの横に椅子を置き座る。
意識の戻らない相方に進藤は語りはじめた。
神崎が死んだこと。警察庁から警視庁に身柄が移動になったこと。新しい相方が出来たこと。
そして、目覚めたらあの黒ローブを倒そうと、ベッドで生死の境をさ迷う黒木に話しかけた。場所は不明。辺り一面真っ暗闇。その暗闇に立つ人影が10人。
その10人が視線を向ける先に人影が1つ。
?「任務完了しました。
?「あれっ?盟主さまは?」
?「盟主様は多忙な方だからな、こちらにはいらっしゃらない。」
?「じゃああれは?」
?「ホログラフだ。」
?「ふーん。そうそう、皆はどうだったの?」
?「なんの問題もない。全ては計画通りだ。」
?「その計画に1つ障害がある。いや、3つと言うべきか。」
?「障害?お前は日本担当だったな。」
?「あぁ、対した障害ではないが、一応耳に入れておこうと思ってな。」
?「そうか。」
?「お前たち、揃っているな。盟主様から新たな任務だ。まずアメリカだが、自称革命軍を黙らせろとのことだ。」
?「了解した。」
?「次にロシア。テロリストを消せとのことだ。イギリス・フランス・中国も同様とのことだから気を引き締めていけ。」
?「あぁ。」
?「最後に日本。自衛隊本部を急襲しろ。」
?「了解。」
?「はいはーい。」
?「全員気を引き締めて任務にあたれ。以上!」
指示を与えていた者が声を張り上げて最後を締めくくったと同時に10人の者達は一斉に散開した。
既に部屋の中には誰もいない。闇が広がるのみ。そこに光が射し込む。その光は徐々に増え、部屋全体を照らし出した。
そこに一人の男がいた・・・。