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ぼんやり海を  作者: a i o
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 磨かないとすぐ汚れます。


 今住んでいる家は、隣との距離が近くかつ道路にも面しているのでうかつにカーテンすら開けられません。丸見えなのです。ベランダですらそうなのですから、以前住んでいた家ではベランダに住み着く勢いだった私としては、すこし窮屈なものを感じます。


 窓。私は窓といえばどうしても学校を思い浮かべてしまいます。特に中学校。歳を重ねるにつれ、だんだんその記憶もあやふやになりますが、なぜか窓から眺めた景色だけは頭から離れません。一枚の写真のように。

 一階の教室の窓から見えた、花壇に植えられたパンジー、グラウンドの端っこ、遠くに小さく見える住宅街と青い空の切れ端。いつも同じ光景です。授業をちゃんと聞いていたのか甚だ疑問ですが、もう終わったことなので良しとしましょう。

 学校の窓は頑丈で透明な檻のようでした。チャイムがなれば飛び出せる世界も、学校にいる間は手を伸ばしても決して届かないような遠い場所に感じました。傷だらけの机に窓から射し込んだ光が泳いでいます。休み時間の喧噪と、乱暴なぐらい眩しい背中、生臭く、混乱していたあの頃。

 当時私は「疲れた」が口癖でした。いい若いもんが何を、と家族には思われていたかもしれませんが、確実に摩耗されていたのだと今でも思います。

 もう二度とあの窓からの景色を見ることがないのだと思うと、切なくもほっとします。それがあまりにも鮮明で美しかったから。美しいものは大体においてあまり優しくありません。教室の窓の思い出は、紙で指先を切るようにいつも心に薄く傷をつける、そんな感覚に陥るのです。


 なんとなくセンチメンタル。

 窓はいろんな記憶に繋がっていますね。

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