表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/66

《 第8話 仮面妃の新生活》


「ああっ、セシリア様! 婚礼だなんて、フェストランドは一体何を考えているのでしょう!?」

 妃の部屋に戻ると、マーヤが真っ赤な顔で駆け寄って来た。

 マーヤはまだ知らない。タヌキ親父にまんまと騙されたこと。

「マーヤ落ち着いて。全部タヌキ親父が悪いんだから」



 私は目を吊り上げるマーヤに、父様にしてやられた事。

 昨夜の皇子との会話。

 私に妃として世継ぎを生む事を望んではいないけど、公で妃としての役目さえ果たせば、後は自由に過ごして良いと言われた事を話した。

 皇子の寝起きの悪さや、抱き枕の事は黙っておいてあげたよ。約束したからね。



 ソファーに隣り合わせに座って簡単に話すと、マーヤは胸を撫で下ろしたように息を吐き出した。

「マーヤは安心しました。セシリア様が夜の務めを無理強いされてなくて。狼の餌食にならず、まだ清純な乙女のままで」

 狼と清純な乙女だなんて、マーヤってば変な例えしないでよ。



「ぷっくっく」

 思わず吹き出す。

 あら、マーヤに睨まれちゃった。

 マーヤは複雑そうな表情を浮かべた。

「仮面夫婦の件は複雑です。女の生き地獄のようで、それはそれで気に入りません」

 マーヤはフェストランドの全てが気に入らないと、首を横に振った。



「生き地獄?」

 なんだかドロドロした単語がマーヤの口から出て、私は首をかしげる。

「そうです。セシリア様との間に子をもうけないと言う事は、別の誰かとの間には子をもうけるという事ですよね?」

「まあ、そうなるんじゃないの? 世継ぎがいないと皇帝の血が途絶えちゃうからね」



 大陸一の大国の統治者が途絶える事は、色々問題だ。

 でも、皇子が自分でなんとかするって言ってたから任せれば良いんだよ。

「セシリア様は我が子を胸に抱けないどころか、一生皇宮で暮らす事になる可能性だってあるのですよ?」

「そんな先の事まで考えてないよ」



  マーヤが真剣な顔で詰め寄って来た。

 怖い、目が据わってるよマーヤ。

「そのうち世継ぎを産んだ側妃が大きな顔をするんですよ。セシリア様を陽の当たらない皇宮の奥、みすぼらしい離れに追いやるに違いありません!」

 マーヤは悔しそうに、ラルエットから持参したお仕着せのエプロンの裾で、涙を拭った。



 おーーい、マーヤ戻って来てーーっ!

 愛憎物語の読み過ぎだよ。

 本と言うものは、読む人によってとんでもない副作用をもたらすものなんだね。

「考え過ぎだよ。でも、皇子に側妃か〜」

 性格はともか、あの容姿だから恋人の一人や二人いてもおかしくないよね。

 もしかしたら、恋人を抱き枕にしてたりして。

 私はその恋人と間違われたのかも!



 その人はきっと、賢くて物分かりも良くてさらに美人。

 申し分のない人に違いないよ。

 昨夜はそんなような事、言ってたよね。

 皇子の理想の相手か、あれはきっと恋人の事かも。

 政略結婚の話がなければ、皇子はその人を妃にしたかったはず。

 政略結婚の被害者は私だけじゃないんだよね。



 受け入れているように見えて、皇子も被害者なのだから。

 恋人がいない分私の方がずっと気持ち的に楽かもしれない。

 しばらく皇子の言う通り、仮面夫婦を続けるしかないかぁ。

 そのうちきっと、何か良い方法が見つかると信じて。

 今、私は大国フェストランドにいるんだから、私は私で大国の生活を楽しまないとね!





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ