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《 第3話 いざ、フェストランドへ! 》

操作ミスで単体投稿しちゃった、《 2.5話 》をまるっとコピーし、新たに《 3話 》として本文へ割り込み投稿しました。内容は以前の《 2.5話 》と変わりません。


 少し開けた馬車の窓から爽やかな風が流れ、草木の匂いを運んできた。

  外を眺めると遥か前方に丘が見え、その上にはフェストランドの皇都フェーバリの街を囲む城壁らしき物が見えた。



「マーヤ、やっと皇都が見えてきたよ」

 フェストランドの領地に入って数日、今日は朝から田園に草原地帯しか見ていない。

 まとまった建物を見るのは久しぶりだ。

 侍女のマーヤに明るく話しかけたんだけど、キッと鋭い視線が返ってきた。

「セシリア様はのんき過ぎます。陛下に言われるまま顔合わせなんかに参加して。婚姻の意思がないのならどうしてもっと拒否なさらないのですか!」



 濃茶の髪をきっちりと後ろで一つに束ねた真面目侍女マーヤ。

 小さい頃から行儀見習いとして王宮に上がり、私の侍女をしてくれてる。

 私にとっては五人目の姉のような存在。

 心配性で今回の私のフェストランド滞在をいまだに大反対しながらも、こうしてついて来てくれたのだけど。



「まあまあ、落ち着いて。婚礼を挙げに行くんじゃないんだから。単なる顔合わせなんだよ」

「マーヤは心配なのです。セシリア様が周りに言いくるめられて、婚姻を結ぶ羽目になるんじゃないかと」

 父様の粘り強さに負けた前科ありだもんね。

 流されて話を進めちゃうんじゃないかって、マーヤがそう思うのも理解できるよ。

 マーヤには私の目的を言っておこう。



「今回のフェストランド行きを承諾したのには訳があるんだよ」

「わけですか?」

  目をぱちくりさせるマーヤに私はにっと笑う。

「私がこのまま大人しく父様の言う事を聞くわけないじゃない」

「マーヤにはよくわからないのですが?」

 マーヤは私が大人しく顔合わせに応じたと思い込んでるみたいだけど。



「父様の説得がダメなら、話を持ち出してきた皇帝に、今回の政略結婚の話しを諦めてもらえば良いんだよ」

「簡単に引き下がってくれるでしょうか?」

 私はマーヤの両手を取って不安を和らげるようにぎゅっと握る。



「大丈夫だって! 被害者は私だけじゃないんだよ」

「それはフェストランドの皇子の事ですか?」

「皇子の姿絵を見た限り、真面目そうな感じがしたから、皇子もきっとこんな政略結婚バカげてるって思ってるよ」

 政略結婚の発端が昔の利き酒勝負、なんてバカバカし過ぎるからね。

 マーヤが真剣な表情を浮かべた。

「真面目な方なら父帝の言葉に従い、セシリア様と婚姻される可能性もあるのでは?」



 そうか。父帝に逆らえない可能性もあるのか!

 そこまで考えてなかったよ。

「皇子がセシリア様をお気に召して婚姻の話しを先に進められる可能性もあるのですよ?」

 これまたマーヤの鋭い指摘。

 でも、それは大丈夫。

「その可能性はないから心配いらないよ」



 私ってラルエット五姉妹の中で一番目立たない存在だもの。

 私はあいにくと、綺麗な令嬢を見慣れているだろう皇子の興味を引く容姿はしてないからね。

 なんだか自分で言ってて虚しいけど、平凡顏万歳!



 マーヤの考えは違ったらしい。

「可能性大ありです! 皇子が夜、部屋に忍んで来たらどうするのです!?」

 どうしたらそんな発想が出てくるのか……。マーヤ、物語の読み過ぎだよ。

 限りなくゼロに近い可能性を話し合ってもまったく意味ないと思うんだけど、マーヤは過保護でちょっと親バカならぬ姉バカ、侍女バカだからね。

 話を元に戻そう。



「とにかく皇子に合わない事には皇子の意思はわからないでしょ? 話はそれからだよ

 マーヤはまだ納得がいってないって顔だけど、私はやれるだけの事はやりたい。

 それがたとえ無駄だろうと。動きたい。

 やれるだけの事をやってダメなら、その時は潔く諦めるつもり。

「だからこのフェストランド訪問は無駄どころか婚約解消のチャンスだって思えば良いんだよ」



 父様達に勝手に自分の運命を決められるなんてゴメンだもん。

 利き酒勝負だよ。生涯の伴侶を酔っ払いの賭けで決められるなんて冗談じゃないんだから。

 ましてや両国の頂点に君臨する人間二人が、利き酒勝負で戦が勃発!

 なんてそこまで考えなしじゃないはず。

 ねっ、と念押しすると、マーヤが渋々頷いてくれた。



「わかりました。婚約を解消してラルエットに帰りましょう!」

 私は一人じゃない。マーヤという力強い味方がいるんだから。



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