前世が悪役でも、人の幸せを願って何が悪いんだ
※深夜テンションでパッと書いた駄作
※設定甘い
※ぐたぐだ
※リア充注意報発令
※作者のメンタルレベルゴミなのでキツすぎるコメントは遠慮して下さい
※でも感想くれたら嬉しいという作者のウザさ
以上の事を許容できる海のように心の広い方、そのままご覧下さい。
平田朱美には前世の記憶がある。
科学文明の現在とは違い、こちらで言うところの中世ヨーロッパのようで、科学ではなく魔法を主に文明を築かれていた世界の記憶。
つまり、ネットで流行っている異世界転生逆バージョンを経験しているという訳だ。
どんな十四歳病の設定だよと思う。イタいしいたたまれないし草不可避だ。
本当笑っちゃうよな…………。
まあ私の事なんですけど。
そう、その設定をリアルで持つ人物、それは紛れもなく私自身の事である!!
いやぁ自分でも受け入れがたい事なんだがね。思いっきり目を逸らしたいんだけどね。事実なんですわ。
しかもその前世がただの村人とかだったらまだましだったんだけど化け物級の魔力を持ち悪行の限りをつくし、人々には『悪の大魔女』だなんて呼ばれてたとかもう………黒歴史で済まされないくらいの事やらかしてるんですよ。
罪のない人を沢山殺しただろうし、それを正義とまでは思ってなかったけど罪とも思ってなかった。
まあこの地球という惑星の日本という国に生まれて、前世では得られなかった経験や価値観に触れてみて、大分丸くはなったんだけど………。
どうやら、今になってその罰が来たようだ。
「アンタ誰よ!雄介さんの何!?」
「アンタこそ誰よ!あたしは雄介さんの彼女よ!ストーカーは大人しく引っ込んでてくれる!?
」
「ハァ!?そっちがストーカーじゃない!よくもまあヌケヌケとそんな事言えるわね!だからこそストーカーなんて平気でしてるのかしら」
「何ですって!?」
「………あれー俺の記憶では十年くらい彼女なんていないんだけどなー。というか君達の名前すら知らない」
「雄介さん迷惑してんのよ!いい加減ストーカーは警察に行ってくれない!?」
「行くのはアンタでしょ!?」
「あーうん聞いてないね……」
まさか、知り合いの修羅場に遭遇するとは…………。
え?罰がそんなにショボい筈ないって?
分かってないなぁ。私、自分で言うのも何だけど大きなトラブルには割と強いんですよ。
強いといっても追い風でもガンガン突き進むような類じゃなくて、フニャフニャ受け流して収まるのを待つタイプ。後始末は、そのあとでもコツコツ出来るからね。実際、前世でもそうやって数々の困難を乗り越えてきたんだよ。ダークサイドだったけど。
しかし、こういう、ちょっと精神削られる系のトラブルが重なるのは弱いんだよなぁ。こう、自分にはどうしようもない他人のトラブルだと余計に。何も出来ない分余計精神にクる。
修羅場の中心らしき目がほぼ死んでる男、あれは有川雄介だ。知り合いどころか、昔からご近所さんでよく構ってくれた三歳年上の幼馴染みだぞ。
まあ精悍な顔立ちで昔っから恋愛に憧れがちの肉食系女子を主によくおモテになりああいったトラブルはしょっちゅうだったが………もう二十七の社会人になったというのにまだあんな事になってたのか。いや、むしろ社会人になってある程度の節度を持つ筈なのにストーカーする奴が出てきてるのか。うわ可哀相。見目が無駄にいいのも苦労するんだね。自分は目立つ顔じゃなくて本当よかったよ。
……………あ。
「………あっ」
「………!」
まずい。ハイライトがなくなった目をした知り合いと目を合わせてしまった。
あーますます気まずい。やはりこれは前世の罰なんだ。
えっと、こういう時どうするんだっけ?
目を逸らさず、ゆっくりと後退して、姿が見えなくなったところで背をむけダッシュ………あ、これ野生動物と出くわした時の対処法だ。動揺してありがちなボケをかましてしまった。
ど、どうしよ……ここは愛想笑いで会釈してフェードアウトを目指すべきか。うん。それが一番いい気がする。他人の修羅場に下手に首突っ込むと余計ややこしくなるからな。うん。昔経験してる。中学生が小学生に嫉妬するとかマジ笑えなかった。
それじゃ、悪いが失礼して………
「………誰?あの女」
あ、見つかった。やべえ。
「……何?雄介さんの知り合い?」
「まさか……あいつもストーカー?」
違います違います違います違います違います。
あーあーあー興奮状態だとあらぬ方向へ思考がぶっ飛んでっちゃうんだよねー。だから関わりたくなかったのに!
よし、プランβだ。
脇目も振らず全力ダッシュでフェードアウト!!
五十メートル八秒九の脚力なめんな!
「あっあの女逃げたわよ!」
「やっぱりあの女もストーカー……!」
ああああもう天罰いやぁぁあ!!
◇◇◇
「ごめんな、あみ……こっちの事情に巻き込んで」
「いや、いいよ。ゆうが悪い訳でもないし」
そして私が全力ダッシュでお家へ帰ってしばらくした後、有川雄介……ゆうから謝罪のメールが届いた。
別にゆうは悪くないし、むしろ何の声かけもなく全力で逃げた私の方が悪い気もするのでこっちが謝罪したいんだけど……物腰は柔らかいが案外頑固な彼はそれを良しとしないだろうから止めた。
変わりに、久しぶりにゲームに付き合ってくれとお願いし、こうして久しぶりに彼の家へお邪魔する事になって、現在に至る。
お互い実家暮らしでご近所さんというのも変わらないのだけど……お互い社会人になった事で昔より会う機械が少なくなり、久しく呼ばれなかったあだ名を呼ばれ少し気恥ずかしくなった。
あけみ、から『け』を抜いただけのあだ名は、彼意外に呼ぶ人はいない。
昔、何かの拍子に『毛が抜けるのは嫌だ』と言った時、『じゃあ名前のけを抜いておこう』と意味の分からない事を言われ、それからあみと呼ばれるようになった。
他の人がいる時にその名を呼ばないのは今でも謎だが、聞いてみると『他の人に呼ばせたくない』とまた意味の分からない事を言われたので聞き返しても曖昧に微笑まれて終わったというよく分からないエピソードがある。
まあ、仕事仕事の毎日でそんな他愛ないやり取りも少なくなった事だし、これを機会に楽しもうとしよう。
「しっかし、ゆうも大変だねぇ。社会人にもなってああいう輩が出てくるって」
「まあ不本意だけど慣れてるからね。それよりあみだよ。大丈夫だった?」
「大丈夫だって。何もされてないよ。ゆうも見てたでしょ?」
「それはそうだけど……」
「それにこうやってゲームに付き合ってもらってるんだからチャラだよチャラ」
「俺としては足りないんだけどね」
「出た。お人よし」
彼は優しい。それはもう、必要以上に。
昔からそうだ。親同士仲がいいからって遊びたい盛りの時も私のお守りを押し付けられてたのに嫌な顔一つしない。私がさりげなくそう言っても、『したいからしてるだけだ』って言って笑う。本当にやりたくない事はハッキリとやりたくないって言える人間だけど、基本人を優先させる。こういう人が、大抵人のせいで損するんだ。
「俺はお人よしなんかじゃないよ。むしろあみの方がお人よしだと思うね」
「はぁ?私が?そんな訳ないでしょ」
「昔から見て来たんだから分かるよ」
そう言ってまた目を細めて笑う。
…………私は、この笑顔に弱い。
昔、というか前世で、こういう笑い方をする人に育ててもらったから。
その人は天才って言われる程魔法の才があって、その気になれば国一つ乗っ取れるくらい力があったんだけど、とある国に仕えていつも人のため行動してた。
私は孤児だったんだけど、その人に拾われて、生活出来るように、持て余してた能力で魔法を使えるよう育ててもらった。私の師匠。私の、唯一の味方。唯一、家族だって思えた人。今なら分かるけど、前世ではあの人と一緒にいた時が一番幸せだった。
そしてその人は、使われるだけ使われてその国に殺された。彼の強大な力に恐れた人々が、反逆される前にと殺したらしい。
もう治癒の魔法でも手遅れな程にボロボロになって、なのにいつものように笑ってて。自分を道具のように使いまわした人々に、何の恨みも抱かずに、笑ってて。
こんなに優しい人を、あろう事か恐くなったからってだけで壊して幸せになろうとする人々が許せなくて。
だから、私は彼らを憎んで、恨んで、そして全部壊した。あの人はお前らに幸せも時間も命も奪われた。なら、お前らの物も全部壊してやるって。
それから、目に付く物を教えてもらった魔法で壊した。あの人はきっと悲しむだろう。人を幸せにしたいと思って使ってた魔法をあんな事に使われるだなんて。当時もそれは分かってたけど止められなかった。
そうして年月が過ぎた後、あの人を殺した国の土地三分の二は荒れ地にしたんじゃないかって頃に勇者と名乗る男に殺された。まあ当然の報いだと思った。むしろ一思いに殺してもらえて有り難かった。
死ぬ間際、あの笑顔が脳裏を掠めて、それからずっと、今まで離れずにいる。
「ん?あみ、どうした?」
「………何でもない」
彼はあの人の代わりにならない事は分かってるけど、それでもあの人に似てる彼には自分の為に幸せになって欲しい。
でも、どうすればいいのか分からない。あの人、『今が幸せ』ってしか言ってなかったし、こいつだって……。
「………ねえ、あみ」
「何?」
「俺は、ちゃんと幸せだよ?」
「………」
やっぱり。
「こうやって可愛い可愛いあみと過ごせるんだから充分すぎるくらい幸せに決まってるよ」
「………何だそれ」
ほら、そうやってまた笑う。
「そんな事言ってるからいい人見つからないんだよ。早く幸せな家庭築け独身」
「それ、あみにもブーメラン」
「私まだ二十代前半だもーん。余裕あるもーん」
「そう言ってる奴が婚期逃すんだぞ。それに来年からは前半じゃなくなるじゃないか?」
「今絶賛婚活中の全国の女性敵にまわしたね」
彼にとっての幸せって何だ。分からない。だってこいつ、ずっと笑ってるんだもん。
あぁ、どこかにいい人いないかな。こいつを幸せにしてくれる人。私じゃ分からない。だって教えてくれないから。
親友………は、どうだろう。腐れ縁はいるけど、持ちつ持たれつって感じで幸せにしてくれるかっていうのは微妙。男の人ってそんな物なんだろうか。まあ、それが一番楽そうではあるけど。
恋人………も、十年くらいいないって言ってたな。ということは十七歳くらいから?一番はっちゃける時期だろ何してんだ。まあかく言う私も告白されて試しに付き合ってみたはいいが飽きられて終わるパターンが殆ど。長く続いた人あんまいないし面倒だもんなあ。
「……ねえいい人いないの?」
「いないね。そこら辺の女性にあまり魅力は感じない」
「…………え、まさか、そちら側の」
「断じて違うよ俺が好むのは異性だからその手止めようか」
「……じゃあ、ロリ」
「でもない。全く、何処でそんな事覚えてくるの……」
「保護者か」
えぇぇじゃあどうしようもなくない?
「本当に誰かいないの?ほら、魅力を感じるまではなくとも一目置く後輩や同僚とか尊敬する先輩とか」
「んー……あ、でも、結婚して家族になってもいいくらいには好きな人は」
「いるんじゃん何で除外してるの!?」
いい人いないの?の時点で即刻言えるレベルじゃん!!何故言わない!?
「だって、あみだから」
「……………………いや、好きのベクトル違うだろ」
何だ、本気になって損したよ……。
「でも、本当にあみなら結婚してもいいよ」
「またそうやって妥協して……まあ私もゆうとなら結婚しても問題ないとは思うけれども」
「じゃあそれでいいんじゃない?」
「よくないよ何言ってんだ」
はーあ、これだから彼はいつも損な役割なんだ。
ああ、誰か、こいつを幸せにしてやってくれ。
今日もまた、何度目か分からない願いを心の中で呟く。
(後から見て)
「何だこのリア充」
感想くれたら嬉しいです(´・ω|チラッ