表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/216

第六十三話 孔明って……え?

 前回の続きです。

 本当にジンちゃん上手くやって下さい。

 いや、本心では虞美人との萌え展開は大歓迎な筈なんだけどさぁ……。

 でも、本当にどうする気だろ?

 

「……ところで君の名は?」

「虞と申します」

「……そうですか。して、名かあざなは?」

「……姓しか憶えていないのです」

「……成程。余程、不憫な思いをしたのですね。そのせいで……」

「申し訳ありませぬ」

「いや、君が謝る必要はない。謝らなければならないのは私の方です」

「何故です?」

「私がこまねいるしかなく、貴方のようなか弱い人を助けることが出来ないでいる。それ故です」

「……そ、そんな」

「……ですので、こうしましょう。君を私の養女とします。故に私が名付け親となる」

「ええっ!?」

「……不服ですか?」

「……いえ、そうではありません。しかし、何故……?」

「君は優しく賢そうな娘さんです。折を見て君に相応しい人を世話する事にします」

 

 えっと、この世界の僕ともそんなに年齢に差がないんですけどね……。

 まぁ、でも良いか……。これで項羽対策が可能になった訳だし。

 でも、名前かぁ……。どんな名前が良いのかな?

 

 虞利鼓ぐりこ虞羅端ぐらたん虞諾山ぐだくさん……。

 ダメだ。変な名前しか出てこない……。

 まともな名前じゃないと項羽に殺されそうだし、どうしよう………。

 なので、ジンちゃんが虞美人との応対している間、僕は必死に考えた。

 その結果が……。

 

「ところで君の名だが……」

「ええ。如何様な名も受け入れます」

「名を麗主れいす。字は慶里けいりにしようと思うのですが……」

「……虞麗主。字は慶里…ですか?」

「そうです。お気に召しませぬか?」

「いえ、珍しい名前だったものですから……。けど、父君が名付けて下さったお名前ですし……」

「気に入らなければ……」

「そ、そんな事はありません! 父上!」

 

 こうして虞美人こと虞麗主は僕の養女となった。

 どこかの勢力に項羽がいた際は「連環の計に必要」という扱いになるのかな?

 あと名前の理由だけど、完全にウロ憶えです。

 苗字が「ケーリィ」だったが「ケリー」だったかも憶えていないぐらいだし!

 美人で有名だった人らしいけど、ググれないので分りません。

 

 虞美人の方は何とか落ち着いたので、今度は蘭陵城攻略会議。

 ただし、僕は見ているだけです。

 范増、陳平、彭越らに丸投げで問題ないからねぇ……。

 僕なんて口出しするだけ無駄ですよ。

 しかも城内に入り込んで戦うなんてトンデモない話です。

 太史慈、許褚がいる時点で武力1の僕なんてお呼びじゃないですよ。

 

 それから僕は慶里と周倉と一緒に蘭陵近郊の安い宿屋で過ごすことにした。

 三日後、孔鮒を囮に使った作戦は成功し、彭越が目出度く孔融、鄭玄らを救出。

 流石は元盗賊、脱獄させるのもお手の物。

 ついでに糜竺もついてきたし!

 孔融は一度、青州に行って貰わないといけないけど、糜竺が来るならいいか……。

 

「お望み通り、助け出してきやしたぜ。司護の親分」

「おお、彭越。でかしたぞ。天下の名士を救う事が出来たのは、正しく天下の喜びでもある」

「他の連中は逃げた曹宏らを追っておりやす」

「そうか。天下の災いとなる佞臣をゆるす訳にはいかぬしな」

 

 僕は彭越に連れられてきた四人を見た。

 それでは、ここでパラメータチェックです。

 

鄭玄 字:康成 能力値

政治9 知略6 統率1 武力1 魅力8 忠義7

固有スキル 教育 教科 和解 名声 故事 人望


孔融 字:文挙 能力値

政治7 知略6 統率4 武力2 魅力7 忠義8

固有スキル 教科 名声 弁舌 説得 故事 看破


糜竺 字:子仲 能力値

政治8 知略5 統率3 武力5 魅力7 忠義9

固有スキル 商才 開墾 治水 弓兵 騎射


趙昱 字:元達

政治7 知略5 統率6 武力2 魅力8 忠義9

固有スキル 教育 鎮撫 治水 名声

 

 糜竺が一番便利だなぁ……。

 何故か弓兵とか騎射まであるし……。

 

 僕がパラメータを調べていると鄭玄が話しかけてきた。

 ここはジンちゃんで対応しよう。

 

「これは名高い賊太守殿ですな。わざわざお助け下さり誠に有難うございます」

「いえいえ。鄭先生ほどの名士の苦難を見過ごすのは、天下の為に成りませぬ。当然のことでしょう」

「ハハハハ。儂は老い先短い身ですぞ。貴殿の方こそ御身を労わりなされ」

「生憎、民の為となると見境なく性質タチでして……」

「しかし、なんですな。こんな老いぼれにそこまでして下さるとは、荊南の民に申し訳ないわい」

「なんの。蔡邕先生も心配なさっておいででした」

「ほう? 先頃の話では伯喈(蔡邕の字)殿も確かにご貴殿の領内に居るとは聞いておりましたが……」

「近頃では陳紀先生も含め、邯鄲淳先生、潁容先生も首を長くして待っておりますぞ」

「その三名もおるのか……。子厳(潁容の字)までもいるとは、いやはや驚きを隠せんわい」

「この司護。天下の為に鄭玄先生をお招きに上がりました。どうか、我らと共に荊南にお出でください」

 

 ……まぁ、大嘘も良い所ですね。

 けど、結果が伴うなら動機はどうでも良いと思う。

 で、鄭玄とやり取りしていると鄭玄の後ろから声がした。

 

「君が司護か?」

「これは孔融先生。お会いしとうございました」

「一応、助けてくれたことには感謝する」

「有難き幸せ」

「……して、君の目的は何かね?」

「単刀直入ですなぁ……」

「そりゃあ当然であろう。それだけで、わざわざ荊南から我らを救い出しに来たとは到底思えぬからね」

「では、率直に申しましょう。孔融先生には張角殿にお会いして頂きたい」

「なっ……!? 何?」

「それだけでございます」

「ちょっと待て。何故、私が張角と会わねばならぬのだ?」

「孔融先生と張角殿は知己の間柄とお聞き及びしておりますが?」

「昔のことだ。それに張角は逆賊ではないか……」

「しかし、真の逆賊は十常侍や外戚の何進ではございませぬか?」

「……随分とハッキリと申すね。十常侍は兎も角、何進大将軍までとは……」

「……それが事実なのでございましょう」

「そうかもしれぬが、それと私が張角と会うのには関係ないぞ」

「いいえ。関係は大有りです」

「どういう事かね?」

「先ごろ、張角殿は青州牧に任命されました」

「ば、馬鹿な……。正式にか?」

「正式にではありません。豫州王君にです」

「劉寵殿か……。道理でおかしいと思った」

「はい。それで……」

「それで青州牧の印璽を渡し、正式な形で張角を青州牧にしようというのか?」

「その通りでございます」

「………断る」

「何故ですか?」

「何故って……。そんな事をしたら増々、朝廷の権威を損なうではないか」

「しかし、既に袁紹殿は冀州牧に、袁術殿は楊州牧になっておりますぞ」

「それは正規の手続きを踏襲しておるであろう?」

「はい。そして更に袁紹殿は青州を、袁術殿は豫州を狙っております。何れも朝廷を軽んずる行為ですぞ」

「……そうかもしれぬが、それは賊が蔓延っておる故であろう」

「賊が蔓延っているからではありません。汚吏、酷吏が蔓延っているからでございます」

「………」

「董太后や何進、十常侍の縁者どもが蔓延っているからでございます。黄巾党はきっかけを作っただけに過ぎず、元凶は朝廷内にあります」

「……それでは君に聞く。漢王朝は滅びるべきかね?」

「漢王朝が滅びたとしても徳もない者が帝になるのは天命に背きます。故に新王朝(王莽が建てた王朝)は滅びました」

「……続けたまえ」

「現段階において例え帝が退位したとしても、徳のある者が帝位に就けると思えませぬ。それ故、まずは佞臣を悉く排除するのが先決です」

「………」

「佞臣どもを排除した上で、それでも帝が目を醒まさない場合は退位して貰うしかございますまい」

「その後はどうするのだ?」

「そうですなぁ……。それは話し合って王族の中から選ぶより他にありますまい」

「……で、君は劉寵殿を推すのか?」

「今のところ分りません。それに順序から言えば、まずは弁皇子でしょう」

「……これは意外だな」

「そうでしょうか? 私は元々、村名主の小倅にしか過ぎません。ですので、政争は他の方々にお任せします」

「……それは、ちと無責任ではないかね?」

「私が出張ったら出張ったで、どうせ『田舎の小倅が生意気な』と陰口叩かれた上に、私の意向を全く無視したものになるでしょうしね」

「……ふぅむ」

「それならば、私は外から様子を見て『民の為にならぬ』と判断した時に行動を起こすまでです。その方が睨みを効かせる事が出来ましょう」

「ハハハハ。確かに『下手をすれば大軍勢が雪崩れ込む』と警戒させた方が良いかもしれぬな」

「私は宮中の事など全く知りませぬ。生兵法は大怪我の元です」

「その上『賊扱いが長かったから宮中でも誹りを免れん』となれば成程、納得だね」

「お分かり頂けましたか」

「うむ。その点は理解出来たよ。だが、青州牧の印璽を渡すこととは別だぞ」

「それは張角殿とのお話合いでお決め下され。私はあくまで孔使君を助けだし、青州に御送りするだけですから」

「君は青州には行かぬのかね?」

「はい。誠に勝手ながら我が領内のことがございます。海岸に船を待たせているので、そこで孔使君は北へ向かってもらいます」

「そうか。確かに青州牧の仕事は長い間、放置したままだ。このまま放逐する訳にはいかぬしな」

 

 次に僕は糜竺を見た。

 鄭玄は来てくれそうだけど、糜竺も来てくれるかな?

 

「貴殿は……」

「別駕従事の糜竺。字は子仲と申します」

「確か貴殿は陶使君の……」

「はい。我が主君は徐州牧でございます」

「それならば、我らと共に参られよ。獄生活にはもう飽きたであろう」

「いえ、それには及びません。この糜竺。やはり主君を裏切ることは出来ませぬ」

「ああ……。貴殿は正に忠義の士と呼ぶに相応しい……」

「お褒めに預かりまして恐悦至極。ですが、もう獄に入れられることも無いと思いますので……」

「……どういう事ですかな?」

「某の知り合いに字を孔明と申す者がございます。その者が既に参り、我が君の眼を醒めさせている事でしょう」

「えっ!? 孔明!?」

 

 ど、ど、ど、どういう事!?

 もういるの!? 年代、おかしくない!?

 でも、ここ徐州だし……。

 

「孔明君を御存じなのですか?」

「い、いや……。そ、そうですか。しかし、どうやって……」

「孔明君はまだ若いですが、徳と智謀があり、何でも天帝教のカラクリを解き明かしたとか……」

「……そうですか。して、そのカラクリとは?」

「そこまでは某も分りません。ですが、孔明君であれば必ず成し遂げてくれましょう」

 

 マジでどういう事だ!?

 確かに孔明なら、意図も簡単に出来そうだけどさ!

 しかも、趙昱も陶謙の下から離れないという。

 この頑固な忠義者め!

 鄭玄しか来ないなんて……トホホ。

 

 孔明のことが凄く気になるけど、僕らは蘭陵を後にすることにした。

 向かうは安東衛あんとうえい近くの海岸だ。

 そこに二隻の船が停泊し、僕達を待っているという。

 陶謙の軍勢は未だに敵か味方か分らない状況だし、天帝教の追手も気にかかる。

 曹宏は取り逃がしたみたいだけど、そんな奴の為に犠牲が出たら元も子もないからね。


 暫く数日をかけ、蘭陵から東の方角へ歩みを進めていくと、途中で天帝教徒の軍勢が見えた。

 軍勢は約五百。こちらの約五倍という状況だけど……。

 

 場所としては、ほとんど平原で所々に麦畑があるぐらい。

 けど、収穫は既に終えているので、部隊を展開するには好都合。

 でも、それだとこっちに不都合なんだけどなぁ……。

 

「……ううむ。どうにかして、やり過ごすことは可能かな?」

「ご安心下され。私に策がございます」

「ほう? 陳平よ。どのような策だ?」

「鳴り物を鳴らしながら堂々と進むのです」

「……な、何?」

「ハハハ。面喰うのも分ります。最近では鳴り物を鳴らしながら黄帝をたたえる歌が天帝教徒の間で流行っているそうです」

「成程。そいつらに化け、やり過ごすのだな?」

「はい。まぁ、バレそうになったら、隙をついて皆殺しにしましょう」

 

 相変わらず爽やかに物騒な事を言うなぁ……。

 ま、陳平らしいちゃあ、陳平らしいのか。

 と言う訳で、僕をはじめ范増や虞も含め、それらしい恰好をした。

 なんか、昔の映画で見たことあるけど、幕末に「ええじゃないか」って騒いでいたヤツっぽい。

 

 意外と范増は乗り気で、年甲斐もなく陽気に踊っている。

 なんか、別の一面を見たって感じ……。

 で、こちらはその軍勢に向かって陽気に笛や太鼓を鳴らしながら、堂々と近づいていった。

 確かに、ここまであからさまだと疑いの眼差しも晴れるのかも……。

 

 因みに虞は男装し、半分は汚い女装している。

 ……てか、女装した方が別の意味で怖い。

 鐘離昧がすれば似合いそうだけど、口に出したら殺されそうだなぁ……。

 

「おい! そこのお前ら!」

 

 敵の隊長らしいのが声をかけてきた。

 旗には「程」の文字がクッキリと。

 まさか、程遠志か……。嫌な奴に遭遇したなぁ……。

 

「へぇ。何でしょう? 大将さん」

 

 范増がノリノリで受け答えをする。

 このまま范増に任せるとしよう……。

 

「何だ? お前らは?」

「へぇ。うちらは黄帝様に豊作を感謝して、これからお参りに行くところでございますだ」

「そうか。で、怪しい者達を見なかったか?」

「怪しい者ですけぇ? どんな連中でしょ?」

「一人は虞という絶世の美女だ。あろうことか天帝教の巫女であるにも関わらず逃げ出した不逞の女よ」

「へぇ!? そんな罰当たりな……。くわばらくわばら」

「……本当に見てねぇだろうな?」

「嘘なんてトンデモねぇ事ですだ! 黄帝様の祟りなんぞ、儂らは御免ですだよ!」

 

 范増……お前ってやつは……。

 けど、凄く貧乏そうな長老が似合っているし……。

 

「ハハハ。中々、信心深くて結構なことだ。では、天帝に仕える我らに対する行為は分っているよな?」

「当然でございますだ。ささ、僅かばかりですが、お受け取り下され」

 

 范増はそういうと金の入った袋を渡した。

 まぁ、下手に攻撃するよりも、こっちの方が無難だしねぇ。

 

「うむ。良い心掛けだ。では、虞とかいう娘が居たら真っ先に知らせろよ」

「へへぇ! 肝に銘じておきますだ。若い衆にも良く言って聞かせますだ」

 

 板についた范増の演技で何とか虎口の脱出に成功。

 下手に戦うよりも戦わない方が無難だからね。

 映画とかだと途中でバレて戦う破目になるんだろうけどさ。

 

 ついでに相手の武将を見てやろう。

 程遠志だと思うんだけど……。

 

程遠志 能力値

政治1 知略4 統率6 武力8 魅力3 忠義3

固有スキル 豪傑 歩兵

 

 やっぱり程遠志だった。

 能力値は悪くないけど、雇用はまず無理だろうね。

 ついでに虞美人はというと……。

 

虞麗主 字:慶里 能力値

特殊人材のため表示不可。

 

 やっぱり能力値は表示されないかぁ。

 まぁ、当然なんだろうけどねぇ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ