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第八話 賊のものは民のもの、民のものも民のもの


 さて、11月になった。

 上旬の政略フェイズだけど、王儁と尹黙は張羨のところへ言ってもらうとして、他はどうしようかな?

 現段階の長沙のパラメータは……。

 

農業255 商業501 堤防84 治安93 兵士数25007 城防御287

資金412 兵糧30500

 

 資金、少ねぇ……。

 その為に区星の根城を襲うんだっけ?

 なるべく領民から金銀を奪っていますように……。

 ……って仁君がそんなこと考えていたらマズいなぁ……。

 

 そういや、鉱山を発見する採掘ってどうやるんだろ?

 おーい、水鏡先生やーい。

 

「………」

「おお、水鏡先生! 待っていましたぞ!」

「採掘のための開発には一か月かかるぞ。ついでに冶金で三倍の収入にしたいのなら、冶金を持っている者はそれで終了じゃ」

「なんだぁ……じゃあ、韓曁は置物同然じゃん」

「ついでにじゃが、鉱山は掘れる限度額がある。三倍の収入の場合、枯れ果てる速さも三倍じゃからな」

「ええっ? じゃあ、本当に臨時なものなのかぁ……」

「ちなみに採掘で鉱山を発見出来るといっても『あくまで発見出来る可能性があるというだけ』じゃからな」

「じゃあ、連続して見つからない場合とかもあるってこと?」

「そういうことじゃ。政治が高いのであれば高確率で見つかるがの。では、の」

 

 まぁ、でも今は金が喉から手が出るほど欲しいからなぁ……。

 韓曁は採掘一辺倒しかないよなぁ。

 あとは区星の根城から金品や宝物を強奪するぐらいか。

 

 外征の場合、兵一万につき金200。今回はほぼ領内付近だから前半フェイズのみということで兵糧は5000必要か。

 こりゃあ、行くしかないでしょ……。

 だって、鐘離昧、張任、厳顔を出せるんだしね。

 

 という訳で、11月上旬の政略フェイズはというと……。

 王儁と尹黙は外交、韓曁は採掘、僕と陳端、鐘離昧、張任、厳顔は遠征……と。

 留守番の秦松は町造り。鞏志はその辺で油でも売っていろ!

 かつて武官のエースだった鞏志は、既に楊松、博士仁と同じポジションだ。……随分、変わったよなぁ。


農業255 商業514 堤防84 治安92 兵士数15007(25007) 城防御287

資金112 兵糧25500

 

 ある意味、背水の陣だ……。

 ないのは兵糧じゃなくて金だけどね!

 

「では、区星の根城を攻める! 者ども! 余に続け!!」

 

 僕はそう叫び、兵を鼓舞した。

 実際はというと鐘離昧、張任、厳顔にお任せモードなんですけどね!

 で、区星の根城の場所なんだけど、桂陽との郡境付近とのことだ。

 本当は留守番していたかったけど……。

 

「太守殿が出陣してこそ、勝機が見いだせます!」

 

 なんて、張任と厳顔に急かされて止む無く来る破目になった……トホホ。

 虫に刺されるから嫌なのに……。

 この前外征した時も初めて外でその……大きい方をしていたら、毒蛇に噛まれそうになったし……。

 11月になったので、涼しくはなったけど……けど、嫌なものは嫌です!

 

 五日ほど行軍をし、韓曁が地図に記した場所へ着くと山と川しかないような所だった。

 川の幅は最大50メートルぐらいで緩やかに蛇行しており、そこの川岸に根城らしい箇所があった。

 川岸のすぐ後ろにはほぼ直角に等しいような高い崖がある。

 高さは約40メートルほどかな……?


 根城の位置が「何故、分ったか」といえば、そこに物見櫓があったからだ。

 後ろは急斜面の崖だから攻めようにも降りること自体が難しい。

 義経なら平然とやってしまうような気もするけどね……。

 唯一攻められそうな場所は一箇所で、馬防柵や3メートルぐらいの木の塀がある。

 

「略奪品を貯めこんでおく所とあって、随分と厄介な場所ですな」

 

 ポツリと張任がそう呟いた。

 敵の数は2千ほどだろうけど、確かにこれで真正面に行けば勝ったとしても被害が大きい。

 

「呑気に持久戦ともいきますまい…。覚悟を決めて攻め込みますか?」

「張任よ。それでは危険すぎる。このような場所で甚大な被害は出したくない」

「しかし、他に手立てがあるように思えませぬが……」

「ううむ…陳端。何か策はないか?」

「そのようなことを言われましても……」

 

 陳端はうつむき、それ以上の言葉は出ない。

 固有スキルの「機略」を持っているから連れてきたのになぁ……。

 あ、そう言えば機略について聞いてなかった……。

 多分、こういう時に使うんだろうと思うんだけど……。

 

わしにちと任せて下さいませんか?」

「おお、厳顔。どうするつもりだ?」

「はっ。勇士を募り、背後の崖から攻めようと思います」

「し、しかし…あの崖だぞ? 容易に降りられるとは思えぬが……」

「この厳顔、幼少期からあのような崖は上り下りしてまする。それに我が陣営には山越人の兵もおるではないですか」

「確かに山越の兵もおるが……」

「その山越の兵から自信のある者を選び、降りてみせますわい。夜明け前に奇襲をかけてみせましょう」

「くれぐれも命を粗末にするでないぞ」

「ハッハッハッ。この厳顔。このような崖如きで簡単に死ぬようなヤワな者ではござらんわい」

 

 まぁ、厳顔はまだ爺さんじゃない…っていうかまだ三十前ぐらいだし……。

 キャラ付けのせいか言葉使いが爺さんっぽいけどね。

 

 で、作戦としては厳顔が相手の根城の背後にある崖から百人の山越兵を率いて夜半過ぎに奇襲。

 張任は門手前まで千人ほどの歩兵勢を率いて忍び寄り、門が開いた時に突撃する。

 そして鐘離昧が大小の漁船に乗せた2千の兵で川を渡り、一気に殲滅という形になった。

 漁船は近くの漁師に借りただけ。ちゃんと返しますよ!

 燃やされなければの話ですけどね……。


 ちなみにこれで二度目の出陣だけど、まだ正々堂々とした戦場というのを僕は経験していない。

 いや、ずっと経験したくないから良いんだけどさ。

 けど、これから先もずっと……という訳にはいかないよなぁ……。

 

 夜半過ぎに起きた後、ずっとそんな事を考えていたら、相手の砦の小屋の幾つかで火の手が上がり始めた。

 それと同時に砦内部のあちこちで剣戟の音が聞こえてきている。

 それから数分後だろうか? 砦の門の方から松明の灯りが大きく左右に振られると、門が開いた。

 

「いくぞ! 俺に続け者ども!」

 

 それと同時に門の付近まで静かに近寄っていた張任が声を張り上げ、隊を率いて門に雪崩れ込む。

 更には「それに続け」言わんばかりに鐘離昧が船で銅鑼を鳴らしながら岸部に近づく。

 砦の中は蜂の巣を突いたような大騒ぎだ。

 規模はずっと小さいけど、烏巣の襲撃もこんな感じだったのかなぁ?

 

「閣下。上手くいったようですな。この中には恐らく区星の軍資金もありましょう」

「陳端。安心するにはまだ早いぞ。区星はこれで我らを恨み、いつ長沙に来襲するか分らないからな」

「その時は返り討ちにして、区星の首を朝廷に贈るまでです。さすれば、閣下も正式に長沙太守として任命されるでしょう」

「そういえば、君らは府君と言わず。ずっと閣下とか太守殿と言っておるな……」

「……深い意味はありません。ですが、閣下は正式な県令でもなければ刺史や太守でもないので……」

「良い良い。名称なんぞはお飾りみたいなものだ。だが、漢王朝の臣を自負するには、やはり正式に任命されないとな……」

 

 僕は今でも慣れない顎鬚を擦りながら、燃え盛る砦を見続けた。

 陳端には感慨深いような表情を見せていたけど、内心では「金がどれほど入ってくるか」しかない。

 ……ええ、所詮僕はエセ仁君ですよ! けど、資金繰りが苦しいから当然でしょう!

 

 賊の根城は一時間もしないうちに陥落。

 こちらの被害は微々たるもの。敵の捕虜は千人近くになった。

 勿論、生き埋めなんてしませんよ!

 

 敵の警備隊長は鐘離昧に出会ってしまったらしく、即座に殺されてしまったらしい。

 まぁ、名前もない雑魚だし、博士仁クラスだと思えば全然、惜しくない。

 いや……これゲームの世界だから……。

 

 この根城襲撃で金2千、兵糧2万が手に入った。

 確実に区星に恨まれることになったけど、もう区星なんて怖くないもんね!

 博士仁と楊松しかいない時に比べたら、大勢力といっても良いくらいだよ!

 で、大勝利した鐘離昧が嬉しそうな顔で僕の所へ近づいてきたんだ。

 

「やぁ、太守殿! 大勝利ですな! 何よりも某に思わぬ代物が手に入りました!」

「思わぬ代物?」

「これです! どうです? 業物でしょう!」

 

 見ると槍だった。点鋼槍と呼ばれるものらしい。

 鐘離昧が警備隊長を殺して奪った物らしいけど……。

 ……うん。取り上げたら殺されそうなので、そのまま与えておくつもりだよ。

 でも少しは気になるので、目を瞑り鐘離昧のパラメータを見ることにした。

 

鐘離昧 能力値

政治5 知略7 統率8 武力10 魅力8 忠義9

固有スキル 騎兵 水軍 豪傑 鉄壁 怒号 疾風 突破

 

 ……武力が10になっているぅ!?

 そうか……業物の武器を手に入れると武力が1上がるんだ……。

 となると、呂布は11なのかな? 12以上とかだったらどうしよう……?

 

 さて、意気揚々と長沙の城へ戻ると王儁と尹黙も戻ってきていた。

 二人とも嬉しそうな表情を浮かべているので、良い報告を期待していいのかな?

 

「王儁、尹黙。双方とも大儀であった。して、張羨殿の返事はどうであったかな?」

「はっ。張羨殿は曹寅にも何か含むところがあるらしく『同盟に応じる』とのことです!」

「おお、そうか。それは重畳ちょうじょう

 

 ……重畳って何だろ?

 勝手に言葉が口から出るから意味分らない単語まで出る。

 便利だけど何か気持ち悪いな……慣れるしかないか。

 

 さて、現在の長沙のパラメータはというと、戦利品含めてこんな感じ。

 

農業255 商業514 堤防84 治安92 兵士数25645 城防御287

資金2112 兵糧45500

 

 金2千は大きいなぁ……。根城襲って大正解だった。

 これで韓曁が金山見つけてきてくれれば零細企業から一気に上場企業だ!

 ……って感じになるのかな?

 

 11月下旬の政略フェイズだけど、どうしようかなぁ……?

 区星が襲来してきそうだから、城防御も上げるに越したことはないか。

 という訳で、僕と秦松、尹黙が町造り、厳顔が補修、陳端は治水、王儁は帰順ということにした。

 鐘離昧と張任が内政から外れるなんて贅沢だなぁ……。あ、鞏志は当然、放置のまま。

 

農業255 商業556 堤防96 治安97 兵士数26545 城防御298

資金2068 兵糧45500

 

 治安が92か。これでまた異民族とかが移住希望してきても問題ないな。

 実際、山越兵って山岳地帯の戦いでは活躍が期待出来るしなぁ。

 ……現実の移民もこうだと楽なんだろうけどねぇ。

 

 そんな事を考えていると、帰って来ました韓曁様が!

 しかも、何やら嬉しそうな表情を浮かべているし!

 金山だ! 金山だよね!? 金山って言ってくれ!!

 

「太守殿! 韓曁、只今戻りました!」

「おお! その様子だと良い鉱脈を見つけたようだな!」

「はい! 銀山が南方にありました! これも太守殿のご人徳のなせる賜物でしょう!」

 

 ………………銀山かぁ。

 でも、それでも十分と思わないとなぁ……。

 だって発見出来ない可能性だってある訳だしね。

 

 何はともあれ、これで無事に年末を迎えられそうだ。

 次もまた区星が相手か…はたまた武陵太守の曹寅か…。

 劉表、蔡瑁とはまだでありますように……。


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