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第五十八話 竹千代に築山殿が?

 前回の続きです。

 悠長に人材発掘している余裕ないので、下手に滞在して内政指示が出来ません。

 ……てか、荀彧とられているしね。

 

 で、その荀彧だけど、溜息ついてばかりだ。

 どういう事だろう?

 憂鬱なイケメンを眺める趣味は僕にはないので、聞くことにしたよ。

 

「如何致した? 荀彧殿」

「いや、豫州王君は貴殿の申し出を受け入れるだろう。必ずな……」

「では、何故?」

「但し、それをやると朝敵の誹りは免れぬ。討伐令の取り下げは不可能となる」

「ああ、その事でしたか」

「簡単に言わないで頂きたい。貴殿は賊扱いが長いから屁とも思わないであろうが、これは忌々(ゆゆ)しき事ですぞ」

 

 荀彧キツいなぁ……。

 まぁ、気持ちは察しますけどねぇ。

 

「ハハハ。これは痛い所を突かれましたな」

「笑い事では御座いません。折角、討伐令の取り下げを水面下で行っている最中に……」

「ほほう。して、望みの方はあるのですか?」

「それが困った事に、極めて難しい状況なんですが……」

「十常侍に賄賂は渡してないのですか?」

「冗談ではない! 司護殿ともあろう方がそのような事を!」

 

 荀彧は声を荒げて机を叩いた。

 周りは皆、僕達の方を向いたんだ。

 すると、ヒソヒソとこんな声が……。

 

「ええ? 賊太守だって?」

「そんなまさか……。どうせ、また騙りだろ?」

「しかし、一緒に居るのは従事の荀彧様じゃねぇか。という事は、やっぱり……」

 

 僕は急いで飯も食べずに飛び出した。

 金だけは置いていったよ!

 だから食い逃げじゃありませんよ!

 食べていないけどね!!

 

 同じように荀彧と周倉も飛び出した。

 陳平、范増、彭越は置いてけぼり。

 まぁ、落ち合う宿は決めていたしね。

 そして、暫く走った後に、僕は追いかけてきた荀彧に話しかけた。

 ジンちゃんお願い! 上手く取り成して!

 

「荀彧殿。あの場所で貴殿とあろうお方が……」

「す、すみませぬ。つい興奮してしまい……」

「ハハハハ」

「何を笑っているんです?」

「やはり貴殿も人の子だと思いましてな」

「何を戯れた事を……。しかし、先ほどの事は……」

「ああ、そうですね。続きをしましょうか。ここなら丁度、人はいない。周倉よ。周辺を見張っていてくれないか」

「へい。親分」

「………親分?」

「ハハハ。荀彧殿。私は色々な呼び名があるんですよ」

「……本当に変な御仁だ。貴殿というお方は……」

「民と同じ目線でなければ、民の気持ちは分りませぬ。上で見下ろすだけが政治ではありませんぞ」

「………」

「ハハハハ。私は元々、確かに賊と言われていた者です。ですから、漢の忠臣という訳ではない。そこはお許し頂きたい。荀彧殿」

「………」

「ですから黄巾党の言い分も分りました。勿論、民の言い分もです。故に私は申し上げたい」

「………はい」

「朝敵という汚名を被り、民の為に戦う事は、これ即ち仁の道に違わぬ。私はそう思います。そして今迄、そう信じてきました」

「………ううむ」

「別に私は漢室を途絶えさせるつもりは毛頭ありませぬ。しかし、民に害するのであれば、容赦は致しません」

「貴殿は『逆賊になっても良い』……と?」

「ハハハ。私は元々、漢の臣下ではありません。故に逆賊呼ばわり筋合いはありませんな」

「……貴殿はそれで良いでしょうが」

「荀彧殿はどうなのです? 豫州王君は帝に相応しくないとお考えか?」

「滅相な事を!? あの方は素晴らしい方と思いますが、道理に反します」

「それは、今までは章帝の流れで来たことが原因ですかな?」

「………はい」

「確かに豫州王君は章帝君の父君である明帝君の末裔でありますな。しかし、別に『章帝君の血筋で無ければならない』という法はないでしょう?」

「………そうは申しましても」

「貴殿は荀卿様の末裔でしょう? ならば貴殿に聞くが、今の帝は礼に則ったものですかな?」

「……確かに違うでしょう。ですが、それは佞臣の類に利用されているに過ぎませぬ」

「では、豫州王君や揚州王君らへの討伐令も同じ事でしょう。佞臣の思惑に相違ない」

「それとこれとは……」

「おや? 違いませんか? では、荀彧殿は何が帝の勅命で、何が佞臣の命令か判断出来るというので?」

「………」

「荀彧殿。真の忠臣とは君子が誤った道に進んだら、それを糺す事こそが真の忠臣の筈ですぞ。糺せないというのであれば、貴殿は忠臣ではないのですかな?」

「分りました……。実は私も迷っていたのです……」

「荀彧殿。数々のご無礼お許し願いたい。ですが、これも……」

「民の為……でしょう。分っておりますとも。……宜しい。貴殿を豫州王君に御引合せ致しましょう」

「感謝致す。荀彧殿」

 

 こうして僕は、荀彧の案内で陳国の政庁へ行くことになった。

 政庁へ入ると、今迄とは違う雰囲気がピリピリと伝わってくる。

 何故なら、今迄の王は俄かに即位した王だからだ。

 今回の劉寵は生まれながらの王であり、その分、厳かな感じがするんだよ。

 

 緊張してか、落ち着いて擦れ違う陪臣のパラメータが見られない。

 パラメータを見る時は、一旦気分を落ち着かせてないと無理なんだよ。

 自分から興奮している時は、自分のペースで落ち着く事が出来るけどね。

 けど、これは違う。

 何とも言えない雰囲気なんだ……。

 

 僕は謁見の間に通されると、そこにはどっしりと座る王の姿があった。

 齢の頃は三十代後半ぐらいかな?

 やっと少し落ち着いてきたので、ここはパラメータを見てみる事にする。

 

劉寵 能力値

政治7 知略6 統率8 武力8 魅力8 忠義5

固有スキル 開墾 補修 弓兵 狙撃 遠射 火矢 名声 

 

 名君だけど、随分武闘派だなぁ……。

 少し心許ないけど、武力8の狙撃は怖いです……。

 なので、ここはやっぱりジンちゃんで!

 

「ハハハハ! よく来てくれた! 長沙府君! 待ち侘びておったぞ!」

「恐れ入ります……。豫州王君」

「……して、余に会いに来た目的を教えてくれ。何が望みだ?」

「………」

「黙っていても分らないぞ。荊南から、わざわざ余に会いに来たのだ。物見遊山ではあるまい」

「では、申し上げます。青州との同盟を切に望みます」

「しかし、青州牧の孔使君(孔融のこと)は陶謙に虜囚となっている筈だ」

「そうではありません。豫州王君に新たに青州牧を任じてもらい、その者との同盟を結んで頂きたい」

「ほう? で、何者かね?」

「大賢良師張角です」

「ウワハハハハ! それは傑作だ! 確かに余は朝敵だしな!」

「豫州王君としても、悪い話ではありますまい」

「うむ。そうすれば揚州王君とも同盟も結べそうだしな。悪くない話だ」

「流石は名君の誉れ高い豫州王君です」

「ワハハハ! 見え透いた世辞は良い。それでは早速、手の者に青州牧の印璽を作らせるとしよう」

「あ、それつきましては提案したき儀が御座います」

「ほう? どんな提案かね?」

「孔融殿を助け出す為に、ご助力を願いたいので御座います」

「何? どうやって?」

「はい。私に策が御座います。但し、それには豫州王君のご助力が必要なのです」

「何? 面白い。詳しく申せ」

「陶州牧の所には、李膺殿と竇武殿を騙る不届き者がございます」

「うむ。その話は余も既に耳にしている。馬鹿げた話よな」

「はい。そして陶州牧は、その両名を大事な客人として、匿っております」

「……その場所が分ったのだな?」

「はい。まだ確定しておりませんが、恐らくは琅邪国ろうやこく莒県きょけんです」

「あそこか……。しかし、今は隣接しているとはいえ攻め込めぬぞ」

「いえいえ。あくまで陽動してくれるだけで良いのです。それと同時に青州からも陽動させるよう、説得致します」

「そこで手薄になった莒城きょじょうを攻めるのか? して、その後はどうする?」

「人質交換を行います。孔融殿や鄭玄殿を始めとする投獄中の者達と交換するのです」

「ほほう……。成程な」

「そして、孔融殿から正式に青州牧の印璽を手に入れ、それを張角殿に渡すのです」

「ワハハハ! そうすれば曲がりなりにも正式な青州牧という訳か!」

「……左様です。如何でございましょう?」

「ハハハハ! 気にいったぞ! だが、我らはあくまで陽動の兵しか出さぬ。それで良いな?」

「はい。充分で御座います」

 

 何とか劉寵に同意してもらった。

 ついでに同盟も組んでしまおう。そうしよう。

 そうすれば袁術に対しての重しになるからね。

 でも、よく笑う人だな。

 笑い方が凄くワザとらしいけどね……。

 

「それと我らと誼をお願いしたい」

「それは願ってもいない所だ。余から持ちかけようとした所よ」

「はっ! 恐悦至極にございます」

「して、貴殿は嫁がいなかったよな。幸い余には娘がいる。いや、養女や娘しかおらぬ」

「………は?」

「一番上の養女は既に決めておるのだが、貴殿には余の四女をだな……」

「い、いえいえ。話が見えませぬ」

「何を申す? 姻戚を結べば、より強固な関係になろう? それとも余の娘では不服か?」

「……あ、いや! そういう訳では……」

 

 困った! 非常に困った!

 これが公になれば曹操、めっちゃ怒りそうだ!

 でも、僕が外戚かぁ……。

 いやいや……。でも、やっぱり知らない人とは無いわぁ……。

 

「何を遠慮しておる? 仮にも余は明帝君の血脈だぞ。余の血筋では不服なのか?」

「そ、そうでは御座いませぬ。私は黄帝君に『天下平定まで妻を持たぬ』と誓ってしまったのです」

「何ぃ? そんな話は聞いた事がないぞ」

「い、いや。私も初めてお話しましたので………」

「本当に変仁君の噂通りだな……。まぁ、良いわ」

「で、ですが。私には一人だけ養子が御座います。その養子の妻であれば……」

「そうか。それでも良かろう。では、折を見て荊南に下げ渡す故、頼むぞ」

「ははっ!」

 

 ごめん! 竹千代!

 築山殿みたいな人じゃないから許して!

 ………多分。

 

 何とか劉寵との謁見が終わった僕は疲れたせいか、そのまま帰った。

 他の家臣達のパラメータを見るの忘れちゃった……。

 まぁ、丁原いないから呂布もいないし、どうでもいいかなぁ……。

 

 そしてその事を、范増をはじめとする陳平、周倉、彭越に話すと皆、大喜び。

 まぁ、これで漢との縁が出来たからなぁ。

 今の所、朝敵の方だけどね。

 

 あとは青州へ急ぐのみ。

 交州がきな臭いから、落ち着いて人材収集出来やしない……。

 それに念のために琅邪国の莒県に行かないと……。

 あ、今は琅邪国ではなくて琅邪郡か。

 どっちでも良いけどね。

 

 さて、まずは陳国の東にある沛国を目指した。

 といっても沛国も王がいないから、今は郡なんだっけ?

 ややこしいなぁ……。

 

 しかも、その沛郡なんだけど、これまた面倒くさいんだよ。

 というのも、徐州のすぐ近くで、お隣は徐州の小沛だからね。

 まぁ、豫州とか徐州とか、そういうのはあまり関係ないのかも……。

 大体、楊州牧を名乗っている袁術も勢力伸ばしているし……。

 そのせいで、この沛郡もいまや劉寵の勢力ではないんです。

 劉寵としては苦々しい思いで一杯でしょうけどね。

 

 そして、そのせいで沛郡も荒らされてしまっています。

 最近では陶謙の庇護を良い事に、天帝教の賊たちが劉寵の勢力下の場所で略奪を行っているらしい。

 そのせいで、また流民が出始めているらしい。

 何やってんだよ……陶謙。

 

 そんな中、ある宿屋で面白い情報を入手した。

 なんでも偉く強い農夫が天帝教団の賊に立ち向かい、侠客を率いて抵抗しているとのこと。

 場所が判明しているし、ここは会いに行かない訳にはいかない。

 早速行こう。そうしよう。

 

 そして滅茶苦茶強い農夫とかいうのがいる譙県しょうけんにやって来た。

 各農村は皆、武装して天帝教の賊徒を警戒している。

 僕達も「スパイじゃないか?」と疑われる始末だ。

 

 けど、そんな時に役だったのが、劉寵から貰った手形だった。

 これで何とかスパイ容疑を晴らし、その農夫へと向かうことが出来たんだ。

 

 僕は劉寵の使いと称し、武装した山麓にある村へと招かれた。

 そこに数人の侠客らしい連中の真ん中に筋骨隆々の若い大男が居たんだよ。

 身長は僕よりも低いんだけどね。

 それでは早速、パラメータチェックだ!!

 

許褚 字:仲康 能力値

政治1 知略5 統率7 武力9 魅力6 忠義10

固有スキル 豪傑 歩兵 鉄壁 護衛

 

 やったーーー!!! 許褚だぁ!!!

 しかも、丁度良い時に来てくれるぞ!

 そうと分かれば早速、登用を持ちかけよう!

 

「おお! 君はひょっとして許褚君ではないかね!?」

「何でオラの名前を知っているんだ? おめぇさんは劉寵様の何だ?」

「ハハハ。確かに手形は豫州王君のものだ。しかし、豫州王君の配下ではない」

「じゃあ、袁術様かい? まさか陶謙の手の者でもねぇよなぁ……」

「何れの者でもない。荊南の司護。その本人ですよ」

「ええっ!? アンタがあの賊太守!?」

「はい。今ではすっかり、その仇名が定着していますが一応、長沙の太守です」

「こ、こりゃ魂消たまげた。何でこんな所へ?」

「黄帝からの夢のお告げで、ここへ来て『許褚なる者を召しだせ』との申し出を受けました」

「ありゃあ!? じゃあ、あの噂は本当だったのかい!?」

「ハハハ。詐欺などでは御座らぬ。正真正銘の司護です」

「でもよぉ。オラの父ちゃんと母ちゃん。村の皆はオラがいねぇと……」

「それでしたら、全て荊南で引き受けましょう。今でも人手が足りないくらいだ」

「おお!? けど、旅費が足りねぇ……」

「途中、私の手紙を劉寵殿の従事である荀彧殿にお見せなさい。そこで必要な額を工面してくれるでしょう。後にその分をお返しすれば良いですから」

「おおっ!? 流石は本物の司護様だ! オラの命、アンタに全部預けますぜ!」

 

 こうして許褚と、その手下の元農民侠客の百数十人が僕の配下となった。

 許褚は勿論だけど、この元農民の侠客が凄く有難い。

 これから孔融らを助ける鍵になるからだ。


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