第五十五話 色々な意味で頭痛い……。
7月となりました。それなりに蒸し暑い。
といっても、三十度を超えることは、やっぱりなさげ。
でも、そんな事はどうでもいいんだよ……。
結局、宛に来てしまったけど、大丈夫かなぁ……?
今更、心配になってきた。
でも、ここまで来た以上、弱気になった所で致し方ない。
覚悟を決めて、政庁に向かう事にした。
けど、僕自身の力じゃ到底、無理な話です。
そこで久々のジンちゃん登場! 後は任せた!
「お! お待ち下され! ボンちゃん!」
「何だよ? 天下を平和に導く手段なんだから、頑張ってくれよ」
「私には、この会談は務まりませぬ」
「じゃあ、フクちゃんに任す?」
「ワハハハ! 腐れ儒者め! とうとう、尻尾を出しおったな!」
「なっ!? 何を! 宜しい! 私が纏めてみせまする!」
「おう! 腐れ儒者が、何処まで出来るか見物だな!」
「黙れ! 凶賊!」
「双方とも止めて! じゃあ、頼んだよ! ジンちゃん」
「承知……」
流石のジンちゃんも今回は相当なプレッシャーらしい。
まぁ、そうだろうなぁ。最初は五人の王の推薦だったのが、劉寵も入れて六人だもんなぁ……。
しかも、その劉寵が一番のネックだし……。
政庁へ向かい、僕が衛兵に「荊南の司護が来たと伝えよ」と言うと、難なく迎え入れてくれました。
恐らく、蔡瑁か劉表のどちらかが、劉岱に早馬で知らせたんだろうね。
流石に衛兵は少し驚いた表情だったけどね。
「マジで来るんだ。こいつヤバくね?」みたいな……。
そして、早速の武官がお出迎え。
李典と名乗ったので、当然パラメータチェックだよ。
絶対、良いだろうなぁ………。
李典 字:曼成 能力値
政治6 知略7 統率8 武力7 魅力7 忠義8
固有スキル 歩兵 看破 捕縛 伏兵 機略 判官 補修
やっぱり良いよなぁ………。
そりゃそうだよなぁ……。
楽進とセットで来てくれないかなぁ……。
僕は李典と軽く挨拶を交し、謁見室へと向かう。
劉繇さんと知り合いになっているとはいえ、緊張するなぁ……。
けど、考えてみれば、劉岱って王忠とセットで徐州刺史時代の劉備に、コテンパンにのされた奴だよな?
しかも、張飛にしてやられて……。
けど、劉繇さんの事があるからなぁ……。
同じ様に演義とかで評価を滅茶苦茶、下げさせられたのかな?
そうなると、油断なんて土台無理な話だよね。
僕が、あれこれ考えていると、何時の間にか謁見室に着いてしまった。
しまった……。途中で、それらしいのが数人居たのに、パラメータチェック忘れた……。
けど、そんな事を言っている気分じゃないよなぁ……。
久々に凄く緊張するよ。
まぁ、ジンちゃんが上手くやってくれると信じよう。
謁見室に行くと台座に座っている人物と脇に二人居た。
座っているのは劉岱で間違いないだろう。もう一人は曹操だ。
そして、もう一人は誰だろう?
パラメータチェック開始。
秦頡 字:初起 能力値
政治6 知略6 統率7 武力5 魅力6 忠義7
固有スキル 補修 弓兵 商才 看破 抗戦 判官
ああ、南陽国左相という奴か。
それなりに良い人材だなぁ……。
どういう人か分らないけどね。
おっと、肝心の劉岱はどうかな?
劉岱 字:公山 能力値
政治7 知略6 統率5 武力5 魅力7 忠義5
固有スキル 歩兵 補修 開墾 判官 名声
それなりに……かな?
劉繇さんより少しだけ見劣りするけど、雑魚ではないな。
楊松、博士仁のしかいない頃なら大歓喜した所だけどね。
僕が勝手にパラメータによって批評していると、肝心の劉岱が話しかけてきた。
さて、ジンちゃん。頼みますよ。
「貴殿が長沙府君だな。余が南陽王の劉岱だ」
「お初にお目見えします。司護。字を公殷と申します」
「既に襄陽王君から詳細は聞いておる。難儀な事を申されておるそうだな」
「はて? 難儀な事でしょうか?」
「難儀に決まっておる……。しかし、貴殿の心遣いには感服したぞ」
「お褒め頂き、光栄に存じます」
「しかし、これは漢室の問題だ。兄弟の事は二の次にせねば成らぬ」
「いえ、南陽王君。これは漢室だけの問題では御座いませぬ。民の安寧にも関わりますぞ」
「そんな事は分っているよ。だが、余には余の事情があるのだ……」
「……どんな御事情でしょうか?」
「豫州王と名乗る劉寵殿の件よ。豫州牧の黄琬殿からも助力を頼まれておる」
「ああ、成程……」
「しかも、楊州牧の袁術殿からも再三再四、弟を説得するよう頼まれてのぉ……」
「どのような事をです?」
「それが『説得して呉王せよ』という事だ。張梁や張宝の件がある分、面倒な事よ」
「………揚州の安定の為とはいえ、出過ぎた真似を致しました。申し訳ありませぬ」
「いや、君が謝る必要はない。致し方ないことだ。それが分っているだけに歯痒いがね」
「それでしたらいっそ、私に代案が御座います」
「ほう? どのような代案かね?」
「この際ですから、私の荊州牧就任に涼州王君と豫州王君も入れてしまいましょう」
「馬鹿なっ!? 本気で言っておるのか!?」
「涼州王君は帝の御次男で在らされます。揚州王君、豫州王君の両名も連座すれば……」
「だ、黙れ! それを帝がお許しになると思うのか!?」
「ハハハハ。南陽王君にとって、帝は十二人もおられますのか?」
「何!? 意味が分らぬ!!」
「ハハハ。十常侍は十二人おりますので」
「ぶっ! 無礼な! 宦官どもなんぞ……」
「いいえ。黙りませぬ。南陽王君は十常侍を恐れておりまする。事の発端は、全てあの十常侍どもの仕業です」
「……むむむ」
「真の忠臣ならば、佞臣どもを討ち果たし、帝を奉るのが筋と思いまする」
「そんな事は君に言われないでも分っておるわ! それが出来きれば苦労はせぬ!」
「ですから、今こそ力による諫言が必要なのです。そうでなければ、また李膺殿、郭泰殿、賈彪殿らの二の舞ですぞ!」
「なっ!?」
「しかもです。十常侍らが、このまま大人しく座しているとは到底思えませぬ。劉寵殿を征伐した所で、連中の縁者が豫州にのさばるだけですぞ!」
「……いっ! 言わせておけば!」
「しかも、袁一族も狙っております。豫州で乱が起これば、またもや黄巾党のような者達が蜂起しますぞ! そうなれば、また民は失意し、漢の命運も……」
「もう良い! 皆まで言うな!」
「………南陽王君。ご無礼の数々、平にご容赦下され! この司護、民の為に! そして漢朝の為に思っているので御座います!」
そして、僕は土下座した。
ジンちゃんって土下座好きねぇ……。
しかも、頭痛いんだよ。何度も地面に頭ぶつけるから……。
けど、大丈夫なのか? これ?
怒らせちゃったみたいだけど………。
そんな時、ずっと黙っていた曹操がいきなり大笑いした。
「アハハハハ!! これは傑作だ!」
「孟徳! 何がおかしい!?」
「いえいえ。南陽王君。ここは長沙府君の言うとおりです。本来、討つべき賊は朝廷内に居ります」
「……孟徳よ。それでは汝に聞く。どうやって佞者の者どもを取り除くのだ?」
「お忘れですか? 南陽王君」
「……何をだ?」
「劉陶殿です。あの方を獄中から出すのです」
「まさか!?」
「その、まさかです。あの方を十常侍どもは恐れておりますからな」
「しかし……どうやってだ?」
「問題はそこですな………。劉陶殿が王に取り立てられなかった理由は、十常侍の猛反対があったからですしな」
……まず、問題があります。
劉陶って誰!?
久々に、この感情が湧きあがったよ……。
でも、ジンちゃんは知ってそうだな。
よし! ジンちゃんに脳内で聞くことしよう。
………驚いて大声を出さないよう注意しないとね。
「ねぇ。ジンちゃん。劉陶って誰?」
「……ボンちゃんは知らないので?」
「知らないから聞いているんだよう……。小説とかにさえ、出てこないし」
「劉陶。字を子奇。漢の王室の末裔の一人ですよ。そして、何しろ聖人なんです」
「どう聖人なんだい?」
「大雑把に言えば、帝に諫言して獄中で死去した人物です。それと太学の巨星ですね」
「しかもクド過ぎるぐらいにな。ありゃ、女に嫌われてストーカーになるタイプだぜ」
「黙れ! 凶賊!」
「………ああ、もう。フクちゃん黙ってて。でも今、獄中で死去したって……」
「史実はそうなんですが、この世界ではまだ獄中で生きながらえているようですね」
「そうなんだ。まぁ、全く史実とは違う世界だしなぁ……」
「……そうだ。思い出した」
「え? 何を?」
僕がジンちゃんに聞こうとすると、ジンちゃんは曹操に話しかけた。
……どうしたんだろ?
「曹右相殿。一つ、お尋ねしたい」
「何かね? 長沙府君」
「貴殿は陳耽殿と共に、陛下へ上奏した間柄と聞いておりますが」
「……う? ああ、確かにな。それが、どうかしたかね?」
「この際ですから、劉陶殿と同じ獄舎に居る陳耽殿の釈放も願い出ましょう」
「………どうやって?」
「幸い、今の益州牧は楽松殿です。この際、楽松殿を始めとする鴻都門学派と再び手を結び、双方の出獄を願い出るのです」
「………続けてくれ」
「そして、何進大将軍を通じて上奏し、劉陶殿、陳耽殿を出獄させましょう」
「……して、今度はその二人をどう使うのだ?」
「……涼州へ下向させるのです」
「何っ!?」
「そして、涼州の皇太子劉協様を通じて共に再度、上奏するのです。帝も必ずや気を配るに相違ありません」
「………いやはや。恐れ入った。しかし、それをやるにも問題ありますな」
「どのような問題でしょう?」
「第一に楽松は、もういない」
「………何と?」
「殺されたのだ。益州王劉焉によってな……」
「何ですと!? 何時!?」
「聞いた話だから分からぬ。羌族によってらしいがね。……だが、狙いは悪くないな。南陽王君。ここは一つ」
「待ちたまえ。右相殿」
ここで初めて秦頡が口を開いた!
御免なさい。スッカリ忘れていました……。
「そもそもだ。これは机上の空論に等しい戯言だぞ。正気の沙汰ではない」
「ハハハ。左相殿は手厳しい。では、左相殿はどうなさるおつもりかな?」
「曹右相殿。今は悪戯に行動すべきではない。漸く、中原は静まっているのだ。下手に掻き乱すのは賢明と思えぬ」
「確かに一理ありますなぁ。長沙府君はどうかね?」
変な所で振るんじゃない! 曹操!
てか、このままじゃ不味い。
ジンちゃん。御免! 引っ込んでて!
という訳で、ボンちゃんこと僕の出番。
「確かに秦左相殿の申す通り、一理ありますな。曹右相殿」
「ほう?」
「ですので、まずは五王の推薦で行きましょう。その後、残りの涼州王と豫州王について追々という事で」
「ん? 荊州牧就任に件かね?」
「左様。ただ、私としては劉表殿に荊州王になって欲しいものですので、些か不本意ですが……」
「アハハハハ! 随分と遠慮深い方だ」
「南陽王君。そういう事で如何でしょう」
「う、うむ。余も些か貴殿の提案に困惑しておるでな」
「申し訳ございませぬ」
「いや、良いのだ。少なくとも貴殿が、漢や民のことを思っていることは重々、理解出来たのでな」
「ご理解頂き有難う御座います。では、失礼させて頂きます」
僕は、その場を早々に引き揚げた。
ボロを出す前に退散だね。
そして、政庁から出ると、ジンちゃんが僕に詰め寄るように言ってきた。
脳内で詰め寄られてもねぇ……。
そして一旦、宿に戻り、ジンちゃんとフクちゃんとの話し合いをすることにした。
「何故です!? 何故もう少し、私に任せてくれなかったのです!?」
「仕方ないよ。楽松というのも既にいないらしいしさ」
「いいえ。まだ、説得の余地はありました」
「一旦、退くのも手でしょう。焦り過ぎだよ」
「ワハハハ! 腐れ儒者め。ザマァないな!」
「だっ! 黙れ凶族!!」
「フクちゃんも暴走し過ぎ。二人とも良く聞いて欲しい」
「何をだ?」
「………ふむ」
「あまり劉岱の方は当てにならない。荊州牧の方は、あくまで名ばかりなんだから、欲張っても仕方がない」
「では、どうするというのだ?」
「幸い、区連という奴が交州で暴れているし、文聘も来てくれた。ここは陳平と彭越を呼ぼうと思う」
「呼んで如何するのです?」
「二人に協力して貰い、何とかして鄭玄先生と孔融さんを助け出す」
「しかし、あの二人だけでは到底無理な話だ」
「だから、劉寵と張角の所へ赴く。二人にとって陶謙は共通の敵だし、両者の同盟には双方にメリットがある筈だ」
「二人を結ばせる気ですか……。上手く行くでしょうか……」
「劉寵は僕を殺しても何の得もない。却って不利益になる。それに僕は、袁術と敵対関係同然だから、それを利用する」
「……ふむ。確かに、それもそうだ。悪くないな」
「では、まずは范増を呼びましょう。私は控えておきます」
「いや、亜父はまだ情報が揃っていない。ここは曹操とその部下たちに聞くことにする」
「曹操に借りを作る気か? あまり得策とは思えないがね」
「曹操も僕を利用する気だから、問題はないよ」
こうして、僕は曹操と会う事にした。
配下に誰がいるか、気になるしねぇ……。
といった所で今月の政略フェイズ。
またもや、跨いじゃう感じだね……。
長沙は韓曁が銀山採掘。
桂陽は李通が城壁補修。
零陵は厳顔が城壁補修。
邯鄲淳が劉君、歩君、蒋君、竹千代に講義。
臨賀では劉先、邴原が城壁補修。
陳平、彭越が司護らと早馬で合流。
衡陽は……。
張範、趙陀が帰順。
顧雍が治水。
蔡邕、桓階、杜襲、是儀、満寵、陳端、張紘、国淵、徐奕、金旋、王儁が開墾。
繁欽、尹黙、趙儼、灌嬰、張昭、秦松、王烈、孫乾、劉度、管寧が街整備。
来敏、李孚、張承、厳畯が引き続き宿場町増設と周辺の街道整備。
衡陽パラメータ
農業746(1500) 商業739(1500) 堤防95 治安100
兵士数43983 城防御183(600)
資金5693 兵糧50000
臨賀パラメータ
農業1000(1000) 商業1000(1000) 堤防100 治安100
兵士数57244 城防御406(500)
資金2747 兵糧70200
零陵パラメータ
農業1300(1300) 商業1300(1300) 堤防100 治安100
兵士数53646 城防御438(500)
資金8260 兵糧173400
長沙パラメータ
農業1200(1200) 商業1500(1500) 堤防100 治安100
兵士数64973 城防御600(600)
資金6980 兵糧93000
桂陽パラメータ
農業1000(1000) 商業900(900) 堤防100 治安100
兵士数52282 城防御410(500)
資金7576 兵糧144700
武陵パラメータ
農業1200(1200) 商業800(800) 堤防100 治安100
兵士数44345 城防御498(500)
資金8367 兵糧135000
さて、曹操との密談かぁ……。
緊張するなぁ……。




