第四十七話 謎のスーパー武将。登場
さて、9月です。
臨賀郡だけに構っていれば良いから楽でいいけど、南の交州が気になります。
臨賀郡は目と鼻の先ですから、行商人の噂は直に流れるんです。
何でも朱儁の子である朱符って実は会稽郡出身なんだとか……。
朱儁も会稽の生まれだったのね……。知らなかった。
まぁ、そんな事は良いとして、同じ会稽郡の劉彦、虞褒という人物を登用したらしいです。
問題は、その両名でして、何でも赴任直後から重税を課したとか……。
もう、何やっているんだよ……。
それ以上に交州牧になった朱符は「いつか天下泰平の為に司護を討伐してくれん」とか、周りに吹聴しているとか……。
僕の中のフクちゃんが大喜びですよ。全く……。
そして、范増に命じて交州の天帝教について調べたところ、既に布教活動が行われているそうです。
それと同時に弾圧されているそうです……。
あの許汜とかいう奴は、それでここに来ていたのか……。
殉教者にはなりたくないのね。わかります……。
気持ちを整理して、僕が今月の政務をしようとすると「外交の使者が来た」と衛兵が僕に告げた。
誰かと思って聞いてみると「交趾郡の韓玄」だってさ。
まぁ、会ってみるとしようかね。
謁見の間に向かうと若い文官がそこに畏まっていた。
流石におっさんじゃないか……。
どれ、パラメータは……。
韓玄 能力値
政治5 知略4 統率5 武力3 魅力5 忠義6
固有スキル 補修 罵声
………ある意味、丁度良い人材かな?
まぁ、来たら都市開発部門に抜擢してやろう。
思っていたよりも、随分と強いけどね。
「長沙府君。お初にお目通りします。韓玄と申します」
「うむ。交趾府君の使者とか。何用かね?」
「はい。まずは、我が主から預かりました書状をご覧ください」
以前は陳端とかに読んで貰っていたけど、今では読めるようになった。
この能力、現実世界に持ち帰りたいけどねぇ。
で、その内容なんだけど……。
先日、交州牧となった朱符が交州各郡に対し、過大なる増税を命じた。
「背けば討伐する」との事なので、もし軍勢を差し向けてきた場合、援軍を要請したい。
もし、そうなった場合。いっその事、蒼梧郡並びに南海郡を手中に治めてはどうか?
さすれば、より発展が見込めるものと思う。
要約すると、こんな感じ。
どうしたもんかなぁ?
まぁ、増税の原因は僕に原因がありそうだけど……。
「ふむ。して、韓玄とやら、君に訊ねたいことがある」
「はい。何で御座いましょう?」
「蒼梧郡には士壱殿がいると聞いたが……」
「士壱殿は現在、日南郡の府君で御座います。また、我が主、士燮の御兄弟である士䵋(しかい)殿は鬱林府君、士武殿は高涼府君で御座います」
「ちと、聞きたいのだが……」
「はい」
「士一族は朝廷の認可を受けて太守になっているのか?」
「……お恥ずかしい話ですが、違います」
「どういうことだ?」
「朝廷から太守になる者が、下向されていないのが現状です」
「また、どうして?」
「そこまでは、ちと……。恐らくですが、朝廷は今やそれ所ではないのでしょう」
「それで何故、賈琮殿を罷免したのか……」
「朝廷のやる事はサッパリで御座います。大体、越人をまるで分っていません」
「……もう良い。余も以前は君らと同じようなものだ。いや、今でもか」
「御納得して頂けましたか?」
「言いたい事は分った。だが、これは直に返答が出来るものではない。後日、使者を使わす故、今日のところは……」
「畏まりました。では、失礼させて頂きます」
交州と戦さかぁ……。
まぁ、でも増税で民衆の支持が離れているところだしなぁ……。
しかし、親父の七光りで州牧になったのに、ロクな事しちゃいねぇや……。
僕は、この件につき会議することにした。
大体、このままでは民衆に天帝教信者が、交州で増産される可能性があるからね。
先手を打たないと、とんでもない事になりそうだし……。
「今日、諸君に集まって貰ったのは他でもない。交州についてだ。いつも通り、忌憚ない意見を述べてくれ」
「では、まずは某が失礼して述べさせて頂きます」
「おお、灌嬰か。君の意見は?」
「某は交州攻めに賛成で御座います」
「……うむ」
「そもそも我が軍は、広く民衆の為に働いております。不用意に増税し、民を甚振る佞臣は討伐すべきと存じます」
「確かにそうだな……」
「あ、いや。待たれよ」
「王烈か。貴殿の意見は?」
「某は反対に御座います」
「また、どうして?」
「朱符殿が、我が領内に攻め込むと決まった訳ではありませぬ。まずは様子を見た方が宜しいでしょう」
「確かに、それも一理ある」
「私も宜しいですかな?」
「む? 張範殿か。当然です」
「まずは朱刺君に使いを出してはどうでしょう? それからでも遅くはないかと……」
「しかし、使者が斬られたら、どうするのですか?」
「これは張昭殿。そうですな。やはり弁舌に長けた者でないと、まずいでしょうな」
「では、誰か立候補する者はおらぬか?」
僕は周りを見た。
………誰もいねぇし………。
でも、流石に今回は僕も行きたくないなぁ……。
「差し出がましいようですが、私が参りましょう」
「おお、邴原。良いのか?」
「ハハハ。また我が君が『それなら余、自ら行くぞ』と無茶を言い出しかねませんから」
「ハハハ……。しかし、大丈夫なんだろうな?」
「御心配、召されるな我が君。いきなり斬首という事はないでしょう」
「……うむ。しかし、万が一という事もある。密かに彭越、徐盛の二名に命じ、屈強な山越兵と共に潜り込ませることにしよう」
「有難き幸せ。彭越殿と徐盛殿であれば心強い」
……という訳で邴原が朱符への親睦の使者と行くことになった。
お願いだから無事に戻ってきてね……。
人材は一人でも多い方が良いのです。
………だけど、楊松、博士仁なら遠慮なく斬るぞ!
会議が終わると衛兵が、また僕の所にやって来た。
忙しいなぁ……。今度は何だろ?
「我が君に仕官したいという者が参っております」
「……名は?」
「趙佗と申しておりますが……」
「……趙佗だと? ……はて?」
まぁ、いいや。政治4でも……。
でも、どんな奴なんだろ?
僕が謁見室に向かうと、既にその趙佗という者がいた。
齢は三十代ぐらいかな?
さてと、パラメータチェック……。
趙佗 能力値
政治8 知略8 統率9 武力7 魅力9 忠義5
固有スキル 判官 鎮撫 帰順 機略 制圧 歩兵 看破
なんじゃあ!? こりゃあ!?
古の者!? でも、聞いた事ありませんよ!?
超ググリてぇ!!
「貴殿は?」
「趙佗と申します。立札を見て参りました」
「……おお。で、余に仕えたいと申すか?」
「はい。宜しければですが」
「……本当に君が、余に仕官してくれるのであれば、今日という日が余にとって真の吉日だ!」
「はっ! 有難き幸せ! 必ずや武勲を立てて見せます!」
滅茶苦茶凄い奴が来たぁ!!
マジで誰だか知らないけど!
一気にテンションが上がったよ!
さぁ、こうなってくると、まずは臨賀郡の開発を急がないとね。
邴原の方は心配ないと思うけど、やはり心配なのには違いない。
趙佗というスーパー武将来たけど、だからといって「邴原がいらない」ってことには、ならないから。
流石に、いきなり斬られる事はないと思うけど……名声持ちだし……。
さて、邴原がちゃんと戻って来ると信じて、今月の政略フェイズ。
今月は待望の兵糧が入ってくるしね。
長沙は韓曁が銀山採掘。杜濩が臨賀郡に金3000と兵1万を輸送。
桂陽は李通が城壁補修。
零陵は、これまた周泰が竹千代の武芸指導。
臨賀も大体、前回と変わらずかな。
蔡邕、徐奕、桓階、杜襲、是儀、陳端、張紘、満寵、王儁、金旋が開墾。
僕、繁欽、尹黙、趙儼、灌嬰、張昭、秦松、王烈、孫乾、管寧、劉度が街整備。
劉先、范増が城郭整備。
張範、賀斉、趙佗が帰順。顧雍が治水。
そして周倉は相変わらず僕の護衛です。
それと鞏志が桂陽に移動ね。
衡陽建設には
陳平、張承、頼恭、鐘離昧、邯鄲淳、厳畯
残り三か月。
臨賀パラメータ
農業502(1000) 商業453(1000) 堤防84 治安90
兵士数26100 城防御71(500)
資金4336 兵糧90200
零陵パラメータ
農業1300(1300) 商業1300(1300) 堤防100 治安100
兵士数53646 城防御361(500)
資金6660 兵糧173400
長沙パラメータ
農業1200(1200) 商業1500(1500) 堤防100 治安100
兵士数44973 城防御600(600)
資金3980 兵糧183000
桂陽パラメータ
農業1000(1000) 商業900(900) 堤防100 治安100
兵士数32282 城防御310(500)
資金7476 兵糧164700
武陵パラメータ
農業1200(1200) 商業800(800) 堤防100 治安100
兵士数54345 城防御498(500)
資金2767 兵糧175000
そして9月の終わりに邴原が戻って参りました。
……良かった。本当に良かった。
僕は邴原を喜んで迎い入れた後、相手の出方を聞いてみた。
「それで邴原よ。朱符は何と言ってきた?」
「それが、恭しく応対しただけでした」
「………それだけか?」
「はい。本当にそれだけです」
「………重税の件や天帝教については聞いてみたか?」
「どちらも『特に答える必要はない』との事でした」
「………ふぅむ」
やっぱり、何か怪しいよなぁ……。
ということで一時、潜伏させていた彭越にも聞くことにした。
「向こうの様子は、どんな塩梅だ?」
「ここだけの話。かなりの兵を集めていやすぜ」
「何? やはり、そうか……」
「重税を課して『払えない所は兵に仕立てる』って寸法でさぁ」
「……成程。住民の評判はどうなんだ?」
「良い訳ねぇでさぁね。表立ってはねぇが、徐々に怨嗟の声は広がっていやすよ」
「天帝教の連中は?」
「それは一応、いますがね。それと太平道を布教している連中もいますんで」
「何? 真か?」
「へい。間違ぇ御座いませんや。何でも南海郡や会稽郡でも太平道は活動しているらしいんで」
「南海郡と豫章郡は目と鼻の先だ。おかしくはないか……」
「一応、豫章郡にも探りを入れた方が……」
「うむ。確かにそうだ。別に『布教活動をするな』とは言えぬが、時期が悪い……」
何かが、おかしいよなぁ……。
そう言えば、何曼の奴が死ぬ前に「張闓がどうたら」とか言っていたような気が……。
こりゃあ、張宝辺りと会談しなきゃいけないかなぁ……?
僕は考えても仕方ないので、取りあえず范増を呼んで更なる情報を聞くことにした。
本当に亜父は便利だ。
あの隋何とかのトレードはマジで今でも考えられないよなぁ……。
で、ここは当然、フクちゃんに出番を与える。
「亜父よ。交州の状況なのだが……」
「うむ。分っておる。天帝教の連中じゃろう?」
「そうだ。何か他に分ったことはないか?」
「ちと時が足りぬ。もうちょい、時を頂きたいのぉ」
「それもそうか。では、そのまま続けてくれ。他に分った事はないか」
「蒼梧郡太守の史璜、南海郡太守の孔芝の両名は朱符の言いなりじゃな」
「両名はどんな人物だ?」
「どちらも可もなく不可もなくの詰まらぬ連中じゃよ。平時では良いのであろうが、今だと力不足じゃな」
「そうか。では、朱符の言いなりと考えて良いか?」
「そう考えた方が良いじゃろう。それと着々と軍備を増強させておるから、目を離すのではないぞ」
「分っておる。いざとなれば、先手を打つまでだ」
「その前に下準備を怠らないよう注意するのじゃぞ」
「当然だ。だから、張宝と会談をすることにした」
「ほほう。豫章黄巾党どもと示し合わせるつもりか」
「情報では黄巾党も布教をしているらしいからな」
「それはちと、眉唾じゃがのぉ……」
「どういうことだ?」
「劉繇が太平道の布教を、揚州のみとする触れを出したばかりなのじゃ」
「なんと!? 楊州王がそんな事を? よく、張宝が黙って受け入れたな」
「帝への申し開きを容易にする為の手段じゃろうな。流石に太平道の布教禁止は無理じゃろうしの」
「……待てよ。朱符が軍勢を整えている目的はひょっとすると……」
「……うむ。会稽かもしれぬ」
「しかし、山越の部族王らが黙っておるまい」
「うむ。そこで朱符は、こちらに同盟を持ちかけてくるかもしれぬぞ」
「まさか……。そんな事は……」
「ないとは言い切れぬ。奴は曲がりなりにも朝廷から交州牧を命じられた者じゃ。しかも、奴は自信家よ」
「その場合、どう交渉してくると思う?」
「荊州牧への推挙とかじゃろうな。奴は親父と違い、小賢しい真似を使ってくるらしいからのぉ」
「今更、荊州牧なんぞ……。大体、焦和がおるではないか」
「あんな小者、どうにでもなるじゃろう。事実、劉表と劉岱は、あの小者を泳がしておる最中ではないか」
「劉表と劉岱が示し合せているのか?」
「先日、蔡瑁と曹操が何処ぞで密会をしたらしい。内容までは分らぬが、恐らく焦和の件でじゃろう」
「……成程。大体、読めてきたわ。それで焦和をどうすると思う?」
「そこまでは情報が少ない以上、分らぬわい。だが、何れ罠を仕掛けるじゃろうのぉ……」
「面白い。どんな罠か見物だ」
「……北と東、南も様子見となると西はどうするつもりじゃ?」
「そっちも様子見だ。こちらは内政に感けておけば良い。果報は寝て待つに限るしな」
「ホッホッホッ。果実は熟れた方が美味いしのぉ」
「その通りだ! アハハハハ!」
フクちゃんがストレス溜っている分、滅茶苦茶ドス黒いんですけど……。
現在の位置情報。
長沙
張任、韓曁、杜濩
武陵
厳顔、朴胡
桂陽
李通、鞏志
零陵
周泰、沙摩柯
臨賀
蒋欽、国淵、甘寧、桓階、劉先
杜襲、賀斉、尹黙、満寵、趙佗
金旋、孫乾、繁欽、彭越、邴原
秦松、劉度、王烈、張範、徐盛
蔡邕、徐奕、王儁、顧雍、趙儼
是儀、陳端、張紘、張昭、管寧
灌嬰、司護、范増、周倉
衡陽建設中
厳畯、邯鄲淳、鐘離昧、張承、陳平、頼恭




