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第三十八話 孔明ゴッコ?

 さて11月となった。

 零陵は有能な文官たちの人海戦術で、劇的な復興を遂げようとしている。

 それなのに曹寅という邪魔者が入ってこようとしている。

 曹寅自体は怖くないけど、朝廷から任命された太守というのが厄介な問題だ。

 

 だけど、噂では曹寅の背後にいる蔡瑁が及び腰らしく、今でも江陵に留まっているらしい。

 江陵は江陵で未だに廖化ら黄巾党が頑張っているし、楊松の後始末も片付いていないだろうからね。

 結果的には、楊松を生かしておいて良かったのかもしれないけど、やっぱりスッキリしないよ。

 

 でも、それ以上にスッキリしない理由……。

 それは「何で劉備が隣にいるのか!?」ってことだ!

 同姓同名で字も同じに違いない! いや、そうであってくれ!

 少し落ち着こう……うん。

 

 そんな僕は月初めに、張羨さんのお墓参りに竹千代と周倉を連れて行くのが、恒例行事になっている。

 でも、この世界の住人って魂ってあるのかな?

 現実世界でも分らないから、何とも言えないけどさ。

 まぁ、言うなれば墓参り自体、僕の自己満足かもしれないけどね。

 それでも行かないと気が済まない。

 

 さて、僕が政庁へ戻り、自室に篭って書類仕事をしようとすると、范増が慌てた様子でやって来た。

 また何か嫌な予感が……。毎度のことですけどね……。

 

「どうした? 亜父殿。その様子では、ただ事ではなさそうだな」

「朝廷が厄介な宿題を持ってきたぞい」

「厄介な宿題?」

「長沙の太守を任命し、赴任させるそうじゃ」

「ええっ!? また十常侍か何進の手の者か?」

「それが全く違う」

「……どういう人物なのだ?」

「名は張機。字を仲景。親孝行で清廉な男じゃ」

「……成程、思わぬ人物を登用してきたな」

「今、襄陽に向かっている途中じゃ。どうする? 刺客を送るか?」

「……それについては、暫く考えさせてくれ」

「グズグズしていると、張機がやって来てしまうぞい」

「分っている。だが、時間をくれ。少し考えたい」

「……分った。君の気が済むようにすれば良いじゃろう……」

 

 范増はそう言って、大人しく下がった。

 僕は自室に入り、どうするかジンちゃんとフクちゃんに相談する。

 やはり二人の意見は対照的だ。

 ジンちゃんの意見は劉表の下に留めておくように、蒯良に頼み込む。

 フクちゃんは素直に「刺客を送りこめ」と言う。


 どっちも確かに分かるけど、フクちゃんの「刺客を送り込む」ってのはちょっとね……。

 張羨さんのこともあったし、やはり気が進まない。

 けど、劉表の下に留めておくというのも、後々面倒なことになりそうだ。

 そこで僕はある事を思いついた。

 ここは一か八か賭けをしてみよう。


 僕は王儁を呼び、ある事を持ちかけることにした。

 それは……。

 

「突然の呼び出しで申し訳ない。王儁殿」

「今日はどのようなご用件で?」

「実は長沙の太守に張機殿が決まったらしい」

「なんと!? して、我が君は如何なされるおつもりで?」

「長沙太守として迎え入れようと思っている」

「何ですと!? 真ですか!?」

「ああ、本心だ。それで、その準備を整えて欲しい」

「しかし……むざむざと長沙を渡すとは」

「王儁殿は反対かね?」

「……い、いや。確かに、それは正論とは思いますが」

「なら、良いではないか。それに、これは朝廷や曹寅への牽制にもなる」

「どういうことです?」

「真に仁者なら『太守として受け入れる』ということだからな。つまり、これによって下手な太守を今後は任命出来なくなるだろう」

「……成程。確かにそうですが……」

「長沙は既に開発し終えた。我らは長沙での役目を終えたのだ」

「しかし……皆が黙って見ていると、到底思えませぬが……」

「一番の懸念はそこよ。だから密かに劉表殿に使いをやり、張機殿を黄忠殿に護衛してもらいたい」

「おお、我が君がご執心であったという黄忠殿ですな」

「……う。陳端から聞いたのか?」

「ハハハ。はい。良く陳端君から愚痴を溢されていましたから」

「……そ、そうか。陳端には後で謝っておこう」

「まぁ、酒のつまみでもありましたから、あまり気になさることはないと思いますがね」

「……そうか。まぁ、いい。急ぎ襄陽へ使いを出してくれ」

「ははっ!」

 

 さて、吉と出るか凶と出るか、それは分らない。

 けど、今は零陵の復興が一番大事な時だ。

 零陵復興の邪魔をされないなら、長沙ぐらいくれてやる!!

 ………凄く勿体ないけどね。

 

 僕はその後、会議を開き、全員にその旨を発表した。

 当然だけど、凄くザワめいたよ。

 で、まずは張昭が僕にやや怒った口調で論じてきた。

 

「我が君! 我らの相談もなしで何故、長沙をむざむざと渡すのですか!?」

「張昭よ。我らは朝廷の臣ぞ? 本来なら、これが普通ではないか?」

「さりとて、無名の輩に渡すなぞ、言語道断です!」

「そう言うな。これがもし佞者であったら、また取り返すまでのこと」

「しかし……」

「長沙の民にとって良いことなら、それで良いではないか。我らは民を救うという名目を忘れたか?」

「……忘れてはおりませぬ。ですが……」

「……なら良いではないか」

 

 すると今度は張紘が挙手をした。

 あのぅ……僕は孔明じゃないんですけど。

 

「我が君。それでは朝廷から同じような人事をされた場合、全ての郡を明け渡すので?」

「そのつもりだ。何か不服か?」

「そりゃあ、不服でしょう。我らは何のために、今までやってきたんです?」

「民のために決まっておる。それとも君は違うのかね?」

「……い、いや。それは……」

「そうであろう? なら、問題ないではないか」

 

 次に挙手をしたのは陳端。

 表情からして凄い怒っている……。

 そりゃ、そうか……。長沙で今まで一番、仕事していたのは陳端だものね……。

 

「我が君! それでは、我らはお払い箱になるということですか!?」

「そのような事はない。劉表殿や劉繇殿に余が頼み込み、君らを茂才として採り上げる。そうすれば問題はないだろう」

「我が君はどうするおつもりで!?」

「余は梟首になるかもしれん。それはそれで構わぬ」

「成りませぬぞ! 梟首などとは!」

「ハハハ。冗談だ。だが、これで余は大人しく身を引き、張羨殿の墓守でもして余生を過ごすのも悪くない」

「………何ということを」

「ハハハ。余が金に困ったら、少し分けてくれ」

 

 そして次に挙手したのは秦松。

 もう勘弁してぇ……。

 

「……それでは我が君は、大人しく隠遁するということですか?」

「そうだ。そうなったらな」

「また蛮の連中が挙兵した時、我が君は如何されます?」

「………う」

「まさか『もう関係ない』と言って、そのまま引き籠るのですか?」

「い、いや。漢民も蛮も分け隔てなく扱う太守であったら、問題なく太守の座を譲るだけだ。そうでなければ余が目の黒いうちは渡さぬ」

 

 またまた誰かが挙手した。

 今度は顧雍だ。

 本当に孔明の気持ちが、分ってきたような気がする……。

 

「我が君。それでは賊が来た場合も無視するおつもりで?」

「黄巾党のことを余は賊と思っておらぬ。区星らの類は、余でなくとも問題なかろう?」

「と、おっしゃいますと……?」

「四郡の太守に、それぞれ茂才をする。ここには誰がいる?」

「……誰とは?」

「鐘離昧、張任、厳顔、周泰、蒋欽、甘寧、陳平、周倉、灌嬰、沙摩柯、杜濩、朴胡、彭越、趙儼、杜襲、李通、そして鞏志。皆、英傑だぞ?」

「………」

「全て余が四郡の太守に推挙する。それで問題あるまい?」

「しかし、太守らが納得しなければ……」

「そうだな。賊からの推挙はまずいか……。では、その仕事は王儁殿に任すとするか。ハッハッハッ」

 

 ふぅ……。孔明ごっこは、これで終了。

 意外なことに、これはジンちゃんじゃなく、ボンちゃんの僕です。

 ジンちゃんの今までのことを見てきたから、自然と身につきました。

 

 皆は渋々、納得したようで……。

 いや、納得してないような表情の方が多いけどね。

 けど、納得してもらうしかない。

 

 そして数日後、件の張機が黄忠と共にやって来た。

 やっぱり緊張しているようだ。

 そりゃそうだ。幾ら僕が「やれ仁君だ」と騒がれていても、賊扱いなのは現在進行中なんだしね。

 だから、まず僕は張機に膝を曲げ、礼をした。

 

「張府君。貴殿になら長沙をお任せすることが出来ます。謹んでお受け取り下さい。そして、長沙の民のために尽くして下さい」

「………」

「この司護! それが起っての願いでございます!」

「………本当に宜しいのですか?」

「如何にも! 張府君であれば、この司護以上に安寧をもたらしてくれると信じております!」

「………い、いや。待たれよ!」

 

 張機は僕の両手をとった。

 それと同時に静かに首を横に振った。

 そして僕の手に長沙の印璽を乗せたんだ。

 

「この張機。司護殿に感服しました。お受け取り下さい」

「い、いや、しかし……」

「これで貴殿が正式な府君です。何の問題がありましょう?」

「ですが、貴殿は……?」

「実は私は以前から野に下り、民の病を治したいと思っておりました」

「どういうことです?」

「ここは飢饉もなければ疫病もない。稀に見る地です。ここに私の居場所はない」

「いえ、そんな事はありません。先生一人では、無数の民を全て治すのは不可能です」

「………私に何をせよと?」

「医学校を作りたいと思います。そうすれば、より多くの民が救われましょう」

「おお……それならば。しかし……」

「金のことなら心配ご無用。出来るだけの援助は致します」

「貴殿は何というお方だ……。いやはや……」

「張先生。謹んで医学校の教授として、赴任してください」

「分りました。それと張先生というのは他人行儀。今後は字の仲景でお願いします」

「では、仲景先生。宜しくお願いします」

「分りました。貴殿も荊南四郡のこと、頼みますぞ」

「ははっ!」

 

 一か八かの賭けは大成功!

 というか予想外!

 一応、これで長沙の正式な太守ということになるのかな?

 

 あと試しに仲景先生のパラメータを見ておこう。

 どれぐらいの能力値なんだろ?

 

張機 字:仲景

特殊人材のため、表示不可

 

 どういうこと?

 ということで、さっさと出てきて下さい。

 

「お主、またもやこの儂の扱いが雑になったのぉ……」

「え? そうですか?」

「まぁ、ええわい。特殊人材は雇えないぞ」

「ええっ? じゃあ、初めから仲景先生は長沙太守には成れなかったの?」

「そんな事はない。だが、お主が特殊人材にしてしまったということじゃ」

「で、特殊人材って何?」

「内政も外征も出来ぬ。ある意味、通行人と同じじゃな」

「え~? そうなんですか?」

「ただ、特別なイベントや能力がある。張機の場合、疫病のイベントがなくなる」

「すごっ!? でも僕、吉兆あるからなぁ……」

「他にも武将が怪我した場合、早く治る。それと病などで死ににくくなる。以上じゃ」

「結構、美味しいなぁ……。じゃあ、あのシリマセンは?」

支婁迦讖しるかせんじゃ。あの者の場合は『鎮撫の効果が倍になる』じゃな」

「あまり意味はないのね……」

「そんな事はないぞい。お主が他の土地を占領した場合『良かったぁ!』とか言う時も来るじゃろう」

「芸事が未だに役に立っていませんが……」

「まだまだ、これからじゃ。焦るでない。ではの」

 

 まぁ、いいや。兎も角、これで長沙の太守にはなったのかな?

 官位はないし、正式に任命された訳じゃないから、印璽だけなんですけどね。

 でも、これで朝廷、というか十常侍や何進も少しは考えるだろう。

 ………多分、悪知恵の方だろうけど。

 

 疲れたけど、11月の前後半の政略フェイズいきましょうかねぇ。

 その前に気前よく長沙から金1000を医学校に贈与。

 そのまま長沙で仲景先生に医学校を造成してもらいます。

 ついでにちょっと申し訳ないので、寺院にも金100をお布施しました。

 さらに道観と儒学校を開設のために金1000を更に投入。

 

 武陵は厳顔が補修。

 桂陽は李通が補修。

 長沙は韓曁が銀山採掘。


 そして零陵はと……。

 蔡邕、徐奕、桓階、杜襲、是儀、陳端、金旋、張紘、王儁が開墾。

 顧雍が治水。

 僕、繁欽、尹黙、趙儼、灌嬰、張昭、秦松、劉度が街整備。

 范増が城郭整備。彭越が巡回。

 周倉は引き続き僕の護衛。

 甘寧には竹千代の武芸の先生をやってもらう。

 変な事は教えないでね。お願いだから……。


零陵パラメータ

農業853(1300) 商業767(1300) 堤防100 治安98

兵士数49146  城防御145(500)

資金3776 兵糧78400

 

長沙パラメータ

農業1200(1200) 商業1500(1500) 堤防100 治安100 

兵士数34973 城防御600(600)

資金1580 兵糧148000

 

桂陽パラメータ

農業697(1000) 商業757(900) 堤防100 治安95

兵士数30182 城防御200(500)

資金4475 兵糧89700  

 

武陵パラメータ

農業1200(1200) 商業800(800) 堤防100 治安100

兵士数34345 城防御432(500) 

資金1667 兵糧150000

 

 続いて後半の戦略フェイズ。

 武陵は厳顔が補修。

 桂陽は李通が補修。

 長沙は杜濩が金2000を零陵に輸送。

 

 で、零陵は……。

 蔡邕、徐奕、桓階、杜襲、是儀、陳端、金旋、張紘、王儁が開墾。

 顧雍が治水。

 僕、繁欽、尹黙、趙儼、灌嬰、張昭、秦松、劉度が街整備。

 范増が城郭整備。彭越が巡回。

 で、今度は鞏志が竹千代に弓を教えます。

 

零陵パラメータ

農業976(1300) 商業870(1300) 堤防100 治安96

兵士数49146  城防御157(500)

資金4646 兵糧78400

 

長沙パラメータ

農業1200(1200) 商業1500(1500) 堤防100 治安100 

兵士数34973 城防御600(600)

資金2580 兵糧148000

 

桂陽パラメータ

農業697(1000) 商業757(900) 堤防100 治安95

兵士数30182 城防御210(500)

資金5122 兵糧89700  

 

武陵パラメータ

農業1200(1200) 商業800(800) 堤防100 治安100

兵士数34345 城防御443(500) 

資金2367 兵糧150000

 

 長沙の印璽も貰ったことだし、零陵の完全復興も間近。

 あとは早く陳平達、帰ってきて……。

 いつ魚復県から攻め込んで来られるか、分らないから……。

 僕の最後のセリフが「げえっ! 関羽!」とか、マジで勘弁だから!

 

 あ、それとついでに曹操が南陽王劉岱の下に入ったという報告がありました。

 夏候惇とかゾロゾロ連れて……。

 もう何が起こっても、驚かない……訳がないだろう!?


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