第三十六話 竹千代誕生!?
さて、8月となった。
零陵は長沙よりも湿地が多く、かなり蒸し暑い。
けど、そんなことを言っていられないことは重々承知。
今日も周倉を従えて、街の整備を指示する毎日だ。
ある日、僕が街を歩いていると、一人の男が6歳ぐらいの男の子を連れて僕に近づいてきた。
周倉は警戒したが、僕はそっと静かに目を閉じた。
パラメータチェックだよ。
劉先 字:始宗 能力値
政治7 知略7 統率4 武力1 魅力6 忠義5
固有スキル 補修 説得 登用 人相
よし、またもや知らない人だけど、登用決定。
それに初の人相持ちだ!
いつまでも悩んでいても仕方がない。
気持ちを切り替えて初心に戻ろう。
そんなことを思っていた矢先、その劉先が僕に話しかけてきた。
「貴殿が司護でございますか?」
「如何にも。余が司護だ。貴殿は?」
「劉先。字を始宗と申します。金旋の同僚で、ここで従事をしておりました」
「そうか。では、金旋と共に働いてくれぬか?」
「元よりそのつもりです。それと……」
そう言うと劉先は黙って、男の子の方を見た。
同時に僕が視線を向けると、男の子はいきなり僕に駆け寄ってきた。
すると、いきなり土下座した!
何で!? どうして!?
いや、僕のトレードマークを取られたことに驚いているんじゃないんですよ!
そして、さらに続けざまに大きな声で話してきたんだ。
「父の仇、果たして頂き、有難うございます!」
「……父の仇? 君の父上は?」
「零陵太守張羨です! 司護様!」
「何と!? 張羨殿の御子息でいらっしゃられるか!?」
「はい! 不肖の身ですが、司護様の配下として、この零陵で働かせて下さい」
「…………」
僕は固まった。何と言っていいか分らない。
けど、この子を育てることこそ、張羨さんの供養にもなる。
僕はそう思うことにした。
そして、僕はその子に頭を下げた。
「君の父上には、非常に申し訳ないことをしました。許して下さい」
「あ、いえ。そんな……司護様にそのようなことを」
「いえ。私の責任です。どうか、お許し下さい」
「許すも許さないも……困ったなぁ」
その子の困った顔を見ていたら、何故か僕は噴き出した。
僕もただ頭を下げるだけで、この後の言葉が見つからなかったからだ。
ジンちゃんを出そうにも、嫌がって出てきてくれないしね……。
「それはそうと、君を養子として迎えたい。どうであろう?」
「私を……ですか?」
「うむ。迷惑かな?」
「とんでもない! 有難き幸せでございます!」
「して……名は?」
「父君が名付けて下さい!」
はて……この場合って幼名だよね?
幼名で思いつくのは梵天丸?
いや、ダメだ! 僕に死亡フラグがビンビンに立ってしまう!
となると……他に思い当たるのは……。
いや、阿斗はダメだ! 絶対ダメだ!
で、僕は悩んだ末……。
「君の幼名なのだが……竹千代でどうだ?」
「……竹千代でございますか?」
「そうだ。……気に入らぬか?」
「いえ、余りにも珍しい名なので、少し戸惑っただけです」
「そんなに珍しいのか?」
「はい。ですが、気に入りました。絶対に間違われずにすみますしね!」
うん。他に思い当たるとしたら、日吉丸か吉法師ぐらいしかなかったのです……。
けど、別に猿顔じゃないし、あんまり凶暴にもなって欲しくなかっただけです。
だからといって、タヌキ顔でもないんですけどね。
でも、僕に子育てなんて出来るのかな?
だって僕、実質17歳だし……。
大体、子作り自体、まだしたことないし……。
キスはあるんだよ! 幼稚園の頃に一度だけ……。
それよりも子育てなんて、どうすりゃいいんだ?
勢いで養子にしちゃったけどさぁ……。
……という訳で、水鏡先生の子育て講座のお時間です!
先生、宜しくお願いします!
…………おーい。先生?
いや、マジでお願いですから……。
マジで! マジでお願いですから!
神様! 仏様! 水鏡様! マジでお願いしますだ!
「ホッホッホッ。お主が狂ったように慌てるのも、またよしよし」
「……酷いよ。本気で焦りましたよ」
「その分だと、スッカリ元のお調子者に戻ったようじゃの」
「……ええ、お陰様で。ところで張羨さんの息子さんの件なんですが」
「その者は本来、張懌という者じゃ。本来ならお主が『なんだぁ、雑魚武将かぁ』とかぬかすクラスじゃな」
「……ええ? そうなんですか?」
「じゃが、お前さんの子育て次第で名将にも良臣にもなるぞ」
「おお!? それは凄い! ……けど、どうやるんです?」
「それは色々じゃな。誰かを専任の家庭教師にするというのも良いぞ」
「……誰が良いんでしょう?」
「それは自分で決めなされ。それと固有スキルの『教育』持ちがいると確率はグンと上がるぞ」
「………誰が持っているんです? そんな固有スキル」
「有名どころでは鄭玄辺りかのぉ……」
「では、その者を召しだせば!」
「青州じゃから、まず無理じゃろうのぉ。他にもおるから探すと良いぞ。ではの」
それらしい人物かぁ……。
……誰が他にいるかなぁ?
廬植先生は絶対に無理だろうしなぁ……。
さて、どうしようかな……。
ジンちゃんやフクちゃんに相談しようと思ったけど、どっちも我が強いからなぁ……。
喧嘩になることは目に見えているので、両者の意見は聞かないことにした。
どっちかに偏っちゃうと、凄く面倒くさそうだしね……。
悩んでいても仕方がないので、僕は范増を呼び出した。
范増なら何か知っているかもしれないしね。
いや、范増には教育させませんよ。
……後々、怖いし……。
「おお、亜父よ。よく来てくれた」
「我が君。漸く立ち直ってくれたようじゃな」
「うむ。いつまでもクヨクヨしてはいられん。張羨様に申し訳ないからな」
「おお、その意気ですじゃ」
「でだ。その張羨様の御子息のことなのだが……」
「おお!? この儂に『教育せよ』とのことですな! 爺は嬉しゅうございますぞ!」
「……まだ早い。その気になるな。大体、そうではない」
「……折角、人がその気になっているものを……。で、儂に何をしろというのじゃ?」
「竹千代を教育したいのだが、良い人材はいないかな?」
「我が君も随分とまぁ……。良いじゃろ。聞けば、あちこちに出没している隠者なぞがおるが……」
「おお!? その名は!?」
「禰衡。字は正平だ。まだ成人しておらぬのが、ちと欠点……」
「却下だ!」
「即答じゃな……」
「当たり前だ! そんな者に教育なんぞされたら、竹千代のヘソが百八十度、曲がるわ!」
「それだと他は潁川の陳寔。字を仲弓と申す者がおるがの」
「どういう方なのだ?」
「齢は儂と変わりないのじゃが、人々に敬愛されていると聞くぞい」
「なら、その人物を召しだせば良いな」
「……簡単には行かぬと思うがのぉ」
「ならば余が自ら……」
「ならぬぞ! それは!」
「……ダメか? やっぱり」
「当たり前じゃ! お主も少しは配下のことを考えよ!」
「……すみません」
「まぁ、そうじゃな。まともに育てるつもりなら、暫くは蔡邕と張昭を師とさせ、顧雍を兄弟子にさせれば良かろう」
「武の方は誰が良いかと思います?」
「文武両道の士にするつもりか。ならば適任は周泰じゃな」
「周泰ですか?」
「あの者なら、いざ竹千代が襲われた際にも守れるからな。うってつけであろう」
「それもそうですね。ならば、そう致しましょう」
確かに周泰なら、自分がどんなに傷ついても守ってくれそうだからな。
僕は素直に従うことにした。
休日を選び、竹千代を連れて蔡邕の仮住まいに行くと、既に色々な家臣達が仮住まいで色々と談義をしていた。
その中には、あの女の子もいる。
本当に聡明な娘さんだ。年頃も近いし、竹千代には良い相手かも。
蔡邕の他には兄弟子候補の顧雍、そして王儁、劉先、尹黙、秦松、是儀、徐奕、桓階、金旋、趙儼、繁欽、杜襲、劉度。
錚々(そうそう)たる面子が勢ぞろいだね。
……けど、孔明が来たら全員、論破されちゃうのかな……?
大体、ほとんど二十代前後だしなぁ……。
蔡邕、張昭に竹千代の教育係を頼むと、双方とも快く引き受けてくれた。
これで当分は安泰。あとは固有スキル教育保持者を探すのみ。
……けど、禰衡だけは論外だ!
僕はまだ仕事があるので、出て行こうとすると蔡邕に呼び止められた。
話があるということだけど、どんな用件だろう?
「蔡先生。余に話とは竹千代についてですか?」
「いや、そうではない。我が君」
「では、何の?」
「大学を設立させたいのです。仏教寺院は長沙だけでなく、他の荊南三郡にも造るおつもりと聞き及びましてな」
「成程、様々な異民族にも有益になりますしね」
「それと道観の建立もお願いしたい」
「それは……まさか蔡先生の口から出るとは思いませんでした」
「老荘もまた一つの学門です。儒学だけに囚われていては、偏った思想にしかなりません」
「確かにそうです。大学で儒教、道観で道教、寺院で仏教を学べる都市は理想かと余も思います」
「おお……我が君なら分って下さると思っていました」
「いや、礼を言うのは余の方です。それよりも一つお伺いしたいことがございますが」
「何なりと」
「鄭玄先生とは面識がお有りですかな?」
「鄭玄殿ですか? 都ではお互い、良く談義をしておりました」
「そうでしたか。余も鄭玄先生と一度はお会いして、講義を受けたいものです」
「実はこのような手紙が届いております……」
手紙を読むと、そこにはこう書いてあった。
要約すると……。
賊に追われ、同胞や弟子たちと共に山に篭り、食料も少なく、困窮している。
孔融は賊討伐で陶謙、橋瑁、鮑信らとあたっているが、芳しくなく、既に弟子のほとんどを親元に帰した。
心苦しいが、最近の長沙は肥沃で、且つ繁栄していると聞く。
情けだと思って少し、融通してもらえないだろうか?
おお!? まさかのビッグチャンス!
鄭玄なんて知らないけど、きっと能力値も高い筈!
呼んでしまおう! そうしよう!
「御労しい……。鄭玄先生の名は漢広しと言えど、万民に知れ渡っている大人物なのに」
「はい。この蔡邕も困っていたところです……」
「宜しい! この荊南四郡に鄭先生をお招きいたそう!」
「えっ!? いや、しかし……それは」
「勿論、弟子の方たちもご一緒です。蔡先生。手紙を書いて下さらぬか?」
「手紙を書くのは良いですが……。しかし、どうやってお連れするのです?」
「余に考えがあります」
「ですが長江は今現在、戦いの最中ですぞ。まさか、あの揚州沖の海路を?」
「いえ、豫章郡経由ならば容易にお連れ出来るでしょう」
「……しかし、豫章郡の南昌は黄巾賊が占拠している最中では?」
「ハハハ。近頃、黄巾党は山越王と盟約を結びました。桂陽から豫章、会稽の山越王の領内を経由する形であれば可能です」
「……何と? そのようなことが可能ですか?」
「ええ、可能です。既に山越王とは交易路を確保する盟約を結んでおりますから」
「……信じられん。我が君は一体、何処からそんな事を思いつくのです?」
「民の為に働いておれば、自ずと分ります。行商人にとって交易路の確保は、命のようなものですぞ」
「しかし、それなれば我が君は、黄巾党と誼を通じていると誤解されませんかな?」
「ハハハハ。元々、賊太守です。何を今更……。しかし、四郡が手中となれば、賊州牧に格上げでしょうがね」
最初からだけど、体裁なんて構っていられない。
そりゃ勝手に他の領土への進出は今のところ、見送っているけどね。
だけど、経済政策は別なんだ。
その辺は上手くやらないと、ジリ貧になるってことを僕は知っている。
フクちゃんの受け売りによってだけど……。
ちなみに手紙は陳平に託した。
陳平なら自分一人だけでも帰ってこれるからね。
そして途中、武陵から護衛として周泰を合流させる。
でも、それだけじゃ不安なので鐘離昧もつけておこう。
帰りは陳平一人じゃないからだ。
そして、ついでといっちゃあ何だけど、新参者の劉先も行かせることにした。
人相つきの登用持ちだからね。
ついでに良さそうな人物いたらゲットしてきて貰っちゃおう。
といった所で、8月の政略フェイズ。
一気に前後半ともやっちゃおう。
8月前半の政略フェイズは
長沙は陳端が、零陵への移動を兼ねて金5000を輸送。
韓曁が銀の採掘。
武陵は厳顔が補修。周泰が青州へ出張。
桂陽も李通が補修。
零陵では
蒋欽、是儀、秦松が訴訟問題。
蔡邕、徐奕、桓階、杜襲、王儁が開墾。
劉度、金旋、張紘、顧雍が治水。
僕、繁欽、尹黙、趙儼、灌嬰、張昭が街整備。
范増、杜濩、朴胡が城郭整備。
彭越、沙摩柯、鞏志、甘寧が巡回。
周倉は僕と竹千代の警備。
陳平、鐘離昧、劉先は青州へ出張。
零陵パラメータ
農業160(1300) 商業172(1300) 堤防70 治安58
兵士数47346 城防御85(500) 訴訟2レベル
資金6002 兵糧30000
長沙パラメータ
農業1200(1200) 商業1500(1500) 堤防100 治安100
兵士数34973 城防御589(600)
資金880 兵糧28000
桂陽パラメータ
農業697(1000) 商業757(900) 堤防100 治安95
兵士数30182 城防御140(500)
資金2704 兵糧22000
武陵パラメータ
農業1200(1200) 商業800(800) 堤防100 治安100
兵士数34345 城防御366(500)
資金1867 兵糧30000
零陵の復興は流石にしんどいな……。
瓦礫を片付けるのも一苦労だ。
けど、これは僕の使命。やらなきゃ……。
後半の政略フェイズは
長沙は特になし。
武陵は厳顔が補修。
桂陽も李通が補修。
零陵は……。
蒋欽、秦松が訴訟問題。
蔡邕、徐奕、桓階、杜襲、是儀、陳端、張紘が開墾。
劉度、金旋、顧雍が治水。
僕、繁欽、尹黙、趙儼、灌嬰、張昭が街整備。
范増が城郭整備。
彭越、沙摩柯、鞏志、甘寧が巡回。
王儁が帰順。
杜濩が長沙へ移動。
朴胡が武陵へ移動。
周倉は僕と竹千代の警備。
零陵パラメータ
農業250(1300) 商業252(1300) 堤防95 治安87
兵士数48246 城防御97(500) 訴訟1レベル
資金3854 兵糧30000
長沙パラメータ
農業1200(1200) 商業1500(1500) 堤防100 治安100
兵士数34973 城防御589(600)
資金3880 兵糧28000
桂陽パラメータ
農業697(1000) 商業757(900) 堤防100 治安95
兵士数30182 城防御150(500)
資金3361 兵糧22000
武陵パラメータ
農業1200(1200) 商業800(800) 堤防100 治安100
兵士数34345 城防御377(500)
資金2567 兵糧30000
よし、目途が立ってきたぞ!
見ていて下さい! 張羨さん!
僕は必ずやり遂げます!
現在の位置情報。
長沙
張任、韓曁、杜濩
武陵
厳顔、朴胡
桂陽
李通
零陵
司護、劉度、尹黙、張昭、秦松
杜襲、蔡邕、徐奕、桓階、是儀
彭越、張紘、金旋、鞏志、蒋欽
顧雍、王儁、趙儼、繁欽、范増
灌嬰、周倉、甘寧、陳端、沙摩柯
出張中
陳平、鐘離昧、周泰、劉先
計35名




