表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/216

第四話 呪い殺すのは勘弁ね……

 

 さて、7月となった。

 もっと暑い! クーラーないから蒸し風呂みたいだよ!

 普通ならTシャツと短パンなんだけど、王儁に

「太守なら太守らしい恰好をお願いします」

 なんて言われちゃっているからなぁ……。

 

 てかさ。最近、温暖化とか現世界で言われているけど、この時代とあまり気温が変わらないよ!?

 教えて偉い人!!

 多分、ゲームの世界だから意味がないとは思うけど……。

 

「暑い中、精が出るのぅ。よしよし」

「『よしよし』じゃないですよ! ゲームの世界なんだから気温何とかなりません!?」

「何ともならぬ。仕方ないことじゃな」

「う~……。ところで全然、イベントって起こらないじゃないですか?」

「何を言っておる? 吉兆なら既にもう使用したではないか?」

「はぁ!? 意味、分らないんですけど!?」

「本来なら既に疫病と台風に長沙がやられておるぞ? 何事もなかったのはまさしく吉兆じゃないのかの?」

「じゃあ、他の所では既に災害が起こっているので?」

「この辺ではお主の吉兆が幸いとして起こってはおらん。代わりに青州の辺りではとんでもないことになっておる」

「うわぁ……。けど、それは僕のせいじゃないよう」

「その通り。他人の不幸は蜜の味じゃな」

「物騒なこと言わないでください」

「ホッホッホッ。よしよし」

「ところで黄忠は何処にいるか分らないんですけど……」

「そのような者は長沙にはおらんぞい」

「ええっ!? 何で!?」

「それは後程、分かるのではないかの?」

 

 本当に何処にいるんだ? 黄忠……。

 高札も名声もあるのに陳端以外来ていないし……。

 

「人材の多くは北の方に集中しているからの。そう易々と来ることはないぞい」

「つまり、途中で登用されちゃっているって訳ですか?」

「その通り。お見事な答えじゃ。よしよし」

「ああ、もう怒る気もないよ……。暑いし……」

 

 僕が暑さで項垂れていると、陳端が喜び勇んで来た。

 何か良い事あったのかな?

 

「閣下! 朗報ですぞ!」

「如何いたした? 陳端」

「はっ! この長沙に逸材がいました! しかも二人です!」

「おお! して、その両名の名は!?」

「はっ! 韓玄と金旋です!」

「………」

 

 もしもーし、陳端君。君の目は節穴かね!?

 確実にそれは逸材じゃない筈だ!

 南荊州の雑魚君主1号2号じゃないか!

 

「ほっほっほっ。そう言うでない」

「水鏡先生。どういうことです?」

「能力値が見えるのはお主だけじゃ。仕方なかろう」

「でも、だからといって……。登用だって持っているのに」

「登用はあくまで誰でも声かけるだけじゃよ。良いか悪いかを見極めるには、さらに固有スキル『人相』が必要なのじゃ」

「そっかぁ……。じゃあ、また謎の人物が来た場合、楊松みたいなのも『逸材ですぞ!』とか言うのかぁ……」

「それもよしよし。ではの」

 

 少し考えるふりをして、僕は陳端に言うことにした。

 けど、陳端は両名を逸材とか思っているんだろうなぁ……。

 

「陳端よ。今、我が陣営の資金は苦しいのだ……」

「は……。それは分りますが……」

「もう少し様子を見ることにしよう。両名にはすまぬがな」

「……それが閣下の思惑なのであれば致し方ありますまい」

「しかし、黄忠であれば即決だからな。くれぐれも黄忠は頼むぞ」

「……御意」

 

 陳端は肩を落としてトボトボと引き下がった。

 ごめんよぉ。でも、楊松と博士仁しかいない時なら登用していたんだろうなぁ……。

 フッ……逸材に囲まれているのもつらいもんだぜ。

 あ、鞏志だけは別だった……。

 

 それはそうと7月上旬の政略フェイズをしないとな。

 現在の長沙はこれかぁ……。

 

農業219 商業332 堤防88 治安61 兵士数17935 城防御287

資金915 兵糧15000

 

 治安がやっぱり低いよなぁ……。鞏志も使わざるを得ないか……。

 頼むから強い将軍来てよ……。黄忠じゃなくてもいいからさぁ。

 で、僕と秦松がまた町造り、陳端は開墾。鞏志は見回り。王儁は帰順……と。

 

農業231 商業360 堤防86 治安72 兵士数18835 城防御287

資金415 兵糧15000

 

 うう……金が……金が尽きてしまう。

 治安も良くなってきたし、次の政略フェイズは鞏志を休ませよう。

 あとは武陵への援軍かぁ……。兵力は随分、増えたんだけどなぁ……。

 

「ちと良いか?」

「あ、これは水鏡先生? って、うわぁ!?」

 

 いや、後ろを見ると水鏡先生じゃなかった。

 同じく爺さんだけど見たこともない爺さんだ。

 いきなり後ろから何なんだよ!

 

「失礼。ご老人。貴殿は……?」

「わしか? わしは于吉じゃ。太守殿」

 

 うわぁ……孫策を呪い殺した人だ。

 何でこんなところに……。くわばらくわばら。

 

「道人の噂はかねがね聞いております。この若輩者にどうかお力添えを!」

「いや、わしはただの旅人じゃ。そんなに大層なものではない」

「……して、長沙には何をしに……」

「民を愛する領主がいると聞いての。どんな顔か見に来たまでよ。感心感心」

「は……はぁ? それだけですか?」

「なんじゃ? 褒美でも欲しいのか? こんな爺から」

「あ、いや。そういう訳では……」

「いやいや。顔にそう書いておる。仕方ないのぉ……。このサイコロを振るが良い」

「サ……サイコロ……ですか?」

「うむ。サイコロじゃ。それで何が出るかの」

「……ちなみに出した方が良い出目とか教えて頂けると……」

「それは出してからのお楽しみじゃ」

 

 ……爺キャラこんなんばっか。

 同じ爺キャラでも黄忠さんは違うだろうけど。

 ……あ、でもまだ爺じゃないか。

 

「で、では……振りますよ」

「うむ。何が出るかな♪何が出るかな♪」

「何でその歌を……」

「細かいことを気にしていると長生き出来ぬぞ」

 

 ……孫策を呪い殺した人に言われるとシャレになりませんよ。

 どうか「元の世界に戻る」でありますように!

 

「うりゃっ! 出目は6です!」

「ううむ……。そなた本当に強運の持ち主のようじゃな」

「よ、良かったんですか!? それで、何が起こるんです!?」

「果報は寝て待て…じゃよ。それじゃあの」

 

 ……するとフッと消えてしまった。

 効果ぐらい教えろよ!

 面と向かって叫びたいけど、もういないし!

 でも、呪い殺されたら嫌だからしないけどね!

 ああ、もう疲れたし。今日は寝よう。そうしよう……。

 

 で、翌日となった。

 さぁ、今日もクソ暑い中、町造りに精を出すぞ! 畜生!

 僕は町に赴き、人夫の皆さんに声をかける。

 そして、何故か自分も一緒に汗をかく。

「何で僕が……」とか思うんだけど、体が勝手に動くんだよ……。

 

 けど、民の印象は良いらしく、それが人気取りの一つとなっている……らしい。

 どうも、そういう設定とかにされているようだ。

 そして、昼食はいつも凄く辛い炒飯みたいなやつ。

 始めは嫌だったけど、今ではすっかり慣れました。トホホ……。

 ああ、早く元の世界に戻ってケーキでも食べたいなぁ……。

 

「本当に精が出ますね。太守殿」

 

 突然、飯を食べている時に、結構な美人さんが近づいて来た。

 しかも、随分と身長が高い……僕のタイプじゃない。ごめんなさい。

 でも、男の恰好をしているな……男装?

 齢はまだ若そうだけど……誰だろ?

 

「いやぁ。本当に民と一緒に汗をかいているとは」

「……失礼ですが貴殿は?」

「拙者ですか? 拙者は姓を鐘離。名を昧と申す。変わった太守殿がいると聞いてやって来ました。ハハハハ」

「……鐘離昧しょうりまい?」

 

 急いで目を瞑りパラメータを見る。


鐘離昧 能力値

政治5 知略7 統率8 武力9 魅力8 忠義9

固有スキル 騎兵 水軍 豪傑 鉄壁 怒号 疾風 突破

 

 待望の武官というかスゲェ将軍がキターーー!

 あの出目6というのはコレだったのね!

 有難う于吉仙人! 君はどこぞの爺さんと違って良い爺さんだ!

 

「そうか。で、余に何か用はあるのかな?」

「民と働く太守殿ですか。拙者、気にいりました。仕官の口はまだありますかな?」

「あ、あります! ありますとも!」

「それは良かった。ここまで来てなかったら、また消えるまでのことですからね」

 

 陳端よ! 逸材とはこういう者を言うのだ!

 よく勉強せぇよ!

 ……と言っても、無駄なのは分っているんですけどねぇ……。

 

 まぁ、何だ。これでやっと武陵に援軍が送れるよ。

 区星の能力値は分らないけど、鐘離昧ほどじゃあないだろうし。

 けど、鐘離昧って聞いたことはあるけど……?

 

「お主、本当に凄い運じゃの……」

「わぁ、水鏡先生。待望のスーパー将軍ですよ! けど、鐘離昧って何処かで聞いた名前なんですが……」

「お主、先ほどこの爺の悪口言っておったからのぉ……」

「い、いや……。滅相もない!」

「まぁ、それもよしよし。鐘離昧じゃが実は三国志には出てこない武将じゃ。楚漢戦争の項羽配下で一、二を争う猛将じゃな」

「え? じゃあ、何で???」

「俗に言う隠しキャラじゃ。于吉のイベントでお主が6を出したからじゃ」

「そうだったんだ……。俄然、やる気が出てきました」

「断っておれば二度と出てこなかったんじゃがのぉ……」

「冗談じゃない! こんなスーパー武将を誰が放逐するか!」

「ま、普通ならせんわな。ホッホッホッ」

「ところで隠しキャラって、まだいるんですか?」

「それは教えないぞい」

「じゃあ、せめて鐘離昧の固有スキルだけでも」

「仕方ないのぉ。騎兵と水軍は得意な兵科。豪傑は一騎打ちの必需品。鉄壁は攻撃を受けた際に二割ほど損害が軽微になる。怒号はザコ武将がビビる可能性がある。疾風は兵が早く移動出来る。突破はこちらが少ない兵でも退却がしやすい。じゃあの」

 

 こうして僕はスーパー将軍の鐘離昧を手に入れた。

 見た目、綺麗な人なのに狡いよなぁ……。

 そう言えば僕も魅力が高いから美男の筈なんだっけ?

 僕の容姿ってどういうのかな?


 身長197cm 体重79kg

 面長で目は細長く、色白。漆黒の顎鬚は筆のように滑らかで美しい。

 耳は大きく、鼻はややワシ鼻で若干細め。

 

 ええと……これ魅力高いの? てか、男前なの!?

 二十歳で顎鬚って何だよ!?

 どうせなら鐘離昧みたいな方が良かったよ!

 

「不思議な方ですね。何をブツブツとおっしゃっているんです?」

「あ、いや。独り言が癖でしてな……」

「そうです……か。いや、本当は拙者が仕官したらご迷惑かと……」

「と、と、と、とんでもない! 三顧の礼を尽くすどころか五顧でも十顧でも!」

「冗談ですよ。しかし、本当に変というか、愉快な太守殿だ」

「いやぁ、めでたいめでたい。本来なら宴会を開いて歓迎したいところですが……その……」

「その……なんです?」

「いえね。国庫の中がその……分りますか?」

「ハハハ。お気遣いご無用。むしろ、国庫がないのにドンチャン騒ぎをしたがるような輩は反吐が出ます」

「そうでしょう。そうでしょう」

「特に我が子を馬車から捨てて『自分だけが助かろう』なんていう輩は八つ裂きにしたいぐらいです!」

「……は、はぁ?」

「あ、これは取り乱しました。申し訳ない」

 

 えっと……「馬車から我が子を捨てて」って誰だろう?

 劉備そんな事をしてないよね? あれ?

 まぁ、いいや。後で思い出すかもしれないし……。

 

 さてと……7月下旬の政略フェイズか。

 鐘離昧も来たし、武陵へ区星を倒しに行かせるか……。

 で、一万の外征には金200と兵糧10000が必要か。うむむ……。

 仕方ない。変な悪評立てられそうだし、行くとするか……。


「それでは軍議を開く。今、武陵は賊将区星のために喘いでいる。武陵の太守曹寅殿には確かに恩義はない。しかし、だからといって武陵の民を犠牲にするというのは筋違いだと思う。皆の意見を聞かせて欲しい」

「この王儁。太守殿の御言葉に感銘を受けました。長沙の民だけでなく、武陵の民まで救ってくださるとは……」

「僭越ながら、この鐘離昧。早く太守殿のために手柄を取りたいと思っていました。来た早々、こんな機会を得ることが出来るとは」

「ハハハ。この陳端。早く鐘離昧殿の戦ぶりを見てみたいと思っていた矢先です」

「この秦松も同意見にござる。賊将区星討つべし!」

 

 鞏志だけ発言がないか。別にいいや。何か少し不満そうだけど。

 もしかして、自分が総大将になれると思っていたのかな?

 

「では、余自ら兵一万の指揮をとる。副将は鐘離昧と鞏志、参謀は陳端、とする。王儁殿、秦松と共に留守を頼みますぞ」

「心得ました。命に代えても守ってみせます」

「では、出陣! 区星を討ち取るぞ! 皆の者!」

「おおう!」

 

 政略フェイズ下旬の行動。

 王儁が帰順、秦松は町造り。


農業231 商業373 堤防86 治安80 

兵士数9735(10000は外征中) 城防御287

資金475 兵糧5000


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ