第二十七話 一気に三人ゲット!
4月となり、すっかり春らしくなってきた。
武陵の街はすっかり元通りどころか、今まで一番発展していると断言できる。
何故そう言えるといえば、長江を伝ってやって来る行商人が皆、口々にそう言うからだ。
そのせいか北の江陵、南の零陵、益州であるが西の巴郡や牂牁郡などでも、僕を希望する住民は多いらしい。
「いやぁ、人気者はつらいねぇ」などと悠長なことを、言っていられるのも今のうちだけど。
大体、益州に手を出したら劉焉と対決せざるを得ないしね。
張任、厳顔を既に取っているから、大した問題はないと思うけどさ……。
さて、4月前半の政略フェイズ。
どうしようかな……。武陵の商業は上限値いっているし……。
まずは范増に零陵での様子を聞くか……。
「おお、亜父殿。度々すまない」
「なんですかな? 我が君。また零陵で……」
「いや、零陵の件ではあるが、そこまでのことではない」
「では、何用ですかな?」
「うむ。張羨は折れそうか?」
「あ奴も余程の頑固者ですな。民から餓死者を出してまでも、降伏しそうにないですじゃ」
「……何とそこまでか」
「ここまでとなると、餓死者が出る前に難民となるぞ。武陵、桂陽、交州辺りに離散するぞい」
「それはちと困るな……」
「だが、それも一つの手じゃぞ。あ奴の評判も今以上に下がるからの」
「そうではない。交州からの介入の恐れがある。……こうしよう。桂陽から零陵の民宛に兵糧を送る」
「成程、まずは零陵の民を手懐ける訳じゃな」
「その上で張羨へ更に兵糧攻めをしよう。そうすれば……」
「ふむ。そうなれば『そなたに貰った食糧を太守に奪われた』ということになるかもしれんのぉ」
「その後で民衆を蜂起させよう。その際には零陵の民に『領外に移住しようとする者は張羨に殺される』という噂もつけてな」
「ホホホ。それは面白いのぉ。では、手の者を早速、手配しようぞ」
「宜しく頼むぞ。亜父殿」
もう仁君なんだか、梟雄だか分かりゃしない……。
悪いのは僕じゃなくて、張羨ですからね! 零陵の皆さん!
……とだけ言っておこう。……ふぅ。
その後、僕は政庁へと行き、皆で今後の方針の打ち合わせ。
普段はいつものことなんだけど、何故か今回は嫌な予感がする。
また僕の中の僕が勝手なことをしそうな予感だ……。
「さて、武陵の現状ではあるが、商業についてはもう充分だ。どうすれば良いかな?」
「我が君。この張昭、お願いの儀があります」
「何かね?」
「私に区星、郭石の首を持参させ、荊州の劉表との和睦締結の使者として派遣させてください」
「……うむ。しかし、君にはやって欲しいことがある」
「……何ですか? 我が君」
「秦松、尹黙、劉度らと共に長沙に参り、商業をより発展させてくれ」
「では、我が君も長沙へ?」
「いや、余が自ら劉使君に会ってくる」
……また変な病気が出た。
家臣達もそう思っているよ。当然だよ。
そうしたら、やっぱり王儁が止めに入ってくれた。
無駄だろうけどね……。
「し、しかし、我が君。それは下手したら……」
「その時はその時だ。王儁殿、もしもの時は頼みますぞ」
「いけませぬ! 我が君!」
「王儁殿。君であれば、この三郡は全て纏まるであろう。なに、心配する必要はない」
家臣達は騒然となったが、僕は意に介さない。
本当に何なの? 今の僕……。
結果、僕は張任と范増を伴って襄陽郡に赴くことになった。
まぁ、まずは4月後半の政略フェイズやるか……。
長沙は厳顔の城壁補修。陳平が武陵に金1000を輸送。
桂陽では灌嬰が町造り。周倉が巡回。
武陵は治水事業が顧雍。
劉度、尹黙、張昭、秦松が長沙に移動。
蔡邕、徐奕、桓階、是儀、張紘、陳端、王儁が開墾事業。
更に鐘離昧に命じ、零陵の民への見舞金代わりに兵糧10000を輸送した。
武陵パラメータ
農業1137(1200) 商業800(800) 堤防100 治安100
兵士数44345 城防御300(500)
資金1767 兵糧55000
桂陽パラメータ
農業697(1000) 商業709(900) 堤防100 治安100
兵士数40182 城防御120(500)
資金2424 兵糧47000
長沙パラメータ
農業985(1200) 商業1162(1500) 堤防100 治安100
兵士数52273 城防御566(600)
資金1802 兵糧69000
さて、僕は区星と郭石の首を土産に張任と范増を伴い長江を渡り、まず江陵へと向かった。
現在の江陵県令や南郡太守は不明だけど、恐らく蔡瑁かその配下が代理という形だろう。
区星、郭石らは既にこの世にはいないけど、それでも盗賊は出没しているらしい。
被害は大分、減ったらしいけどね。
そして町の役人は威張りくさり、旅人や商人を脅し、たかっている光景を目にする。
成程、それで江陵でも僕を呼ぼうという声が根強いのか。
ごめんなさい。少なくとも今は劉表と事を荒立てるつもりないんです……。
でも、僕はちょっと引っかかったので、通りがかりの町民に訊ねることにした。
「失礼。ちょっと宜しいですか?」
「あ、はい。何だい?」
「お伺いしたいのですが、ここの県令殿は何と言う方です?」
「ああ、楊松様だが……それが何か?」
「ええっ!?」
何でだ!? 劉表! お前の目は節穴か!?
よりによって、そんなのを県令にしなければならない程、人材不足なのか!?
「それがどうかしましたかい?」
「い、いや。どのような経緯で楊松様は県令に?」
「ええ。前の県令様が賊に殺されちまってね。しかも、今は江夏が黄巾党やらに包囲されている非常時だって言うんで、臨時の県令って話ですわ」
「……それで、ここの県令様の評判は?」
「お前さん。立派な成りをしているのに節穴かね? この街で何を見て来たんだよ」
「……い、いや。それは……」
「今は丁度、役人が見ていないから言うけどよ。噂じゃあの県令が前の県令を殺したって噂だぜ」
「……滅多なことを」
「前の県令も駄目だったけど、今度の県令は輪をかけて酷いんだよ。あ~あ……対岸の武陵と長沙は裕福だってのにさ」
「……どうも、そうらしいですな」
「あそこの司護様にかかれば、ここもあっと言う間に裕福になるってのにねぇ」
「……そうとも限らないと思いますが」
「お前さんに司護様の何が分かるってんだい? あの方は本物の『上界の使い』さ」
「じょ、上界の使い?」
「そうとも。今じゃ仇名は『上使君』だ。古の堯か舜の生まれ変わりさ。そうに違いねぇ!」
「……そ、そうなんですか」
「おい。アンタ信じていねぇのかい?」
「……あ、はい。私は江夏から逃げて来た者ですから」
「そうか。そいつぁすまなかったな。けどよ。どうせなら長沙に逃げた方がいいぜ」
「お気遣い有難うございます。ですが、親類が南陽におりますものですから」
「そうかい。まぁ、山賊に身ぐるみ剥がされないよう、気をつけるこったね」
上使君ねぇ……。なんか、張角にでもなったような感じ。
本当は既に漢なんてどうでも良くて「これからは俺が天子だ!」とか言っても良いんだけど……。
でも、それやっちゃうと王儁とかが軒並み逃げ出しそうだしなぁ……。
黄巾党の配下が皆、波才みたいなのばかりなら良いけどさ……。
先ほどの会話を盗み聞きしていたせいか、張任の口元が少し歪んでいた。
冗談でも「上使君様」とか言わないでね。お願いだから……。
しかし、楊松が県令とは江陵の民もツイてないなぁ……。
他にも聞いたが博士仁が江陵の部隊長に任じられているらしいし……。
ウチも陳端や秦松、王儁とかが早めに来てなかったら、どうなっていたやら……。
さて、そんな感じでゲンナリしながら襄陽郡へと向かった。
孔明がいたら子供でもとっちまおうかなぁ……。
……あ、でもこの時はまだ荊州にいないんだっけ?
やっと襄陽に到着すると流石に役人の態度はマシになっていた。
といっても偉そうなのには変わりないけどね。
ただ、賄賂を要求したりとかは流石にない。
劉表も仁君なのかな? 仁君だった場合、戦いにくいなぁ……。
まぁ、今の所は和睦締結希望なんだけどさ。
だけどさぁ……このまま政庁に乗り込むにしたとして、そのまま名乗っても通してくれるかな?
こっちには印璽の書簡もないし、官位もないからなぁ……。
良さそうな伝手をまず探すしかないようだ。
仕方ないから伝手を探しながら、ここで人材を漁ることにしよう。そうしよう。
ちなみに范増には、よりここの情報を探らせる為、別行動をさせることにした。
色々と街で噂を聞きながら歩いていると、耳よりな情報が入ってきた。
何でも戦乱を避けて来た者達が集う酒場があるらしい。
そこには日々議論し、国を憂う若者たちがいるとのこと。
これは行くしかない! 早速、向かうことにしよう!
その酒場は少し小汚く、お世辞にも広いとは言えない所だった。
基本的に汚くて貧乏なほうが聖人扱いされるから、こういう場所の方がらしいっちゃあらしいのか。
僕には全く理解出来ないけどね……。
酒場に入ると人当りの良さそうな爺さんが出迎えてきた。
うん。看板娘らしい可愛い娘なんていないさ……。分っているさ……。
でも、少しぐらい期待しても良いじゃないか……。
中を覗くと早速、議論している若者らを発見。
議論しているのは三人程。見た目は……。
うん、一気にまとめて登用出来るような予感!
ここで目を瞑り、パラメータチェックだぁ!
趙儼 字:伯然
政治8 知略8 統率7 武力5 魅力8 忠義7
固有スキル 鎮撫 説得 和解 鎮静 看破 商才
杜襲 字:子緒
政治8 知略7 統率8 武力6 魅力7 忠義7
固有スキル 開墾 鎮撫 突破 鉄壁 鎮静 弓兵
繁欽 字:休伯
政治7 知略5 統率3 武力1 魅力8 忠義7
固有スキル 書家 芸事 治水 商才 説得
うおおお!!! 美味しい! 美味しすぎる!
またもや全員、知らないけど!
絶対にごっそりゲットして長沙に連れて帰るぞ!
それで僕は暫く会話を聞き、見計らってから三人の輪に入るべく行動することにした。
「失礼。お邪魔致します」
「貴殿は?」
「姓は司。名を護。字を公殷と申します」
「……どこかで聞いた名ですね」
「ハハ……。それよりも君たちの会話を盗み聞きしていたことをお許し下さい」
「いやいや。他愛もないことですよ。国が荒れ果てているのに、こんな所で話すしかないのですから」
「しかし『千里の道も一歩から』と申します。お三名は中々の英傑とお見受けしましたぞ」
「いやぁ……それ程でも」
「如何です? その才知を今からでも発揮しては」
「発揮しようも何も無名の若輩者ですし。……ここでは」
「南の長沙では問題ないと思いますが」
「確かにあそこなら……あ!?」
「……如何しました?」
「思い出した! 賊太守!」
僕に話していた趙儼はそう言うなり、席から飛び上がった。
すると他の二人も同様に、僕を幽霊にでも出会ったような眼で見ている。
「ハハハ。賊太守は酷いですな」
「何でまたこの襄陽に!?」
「劉使君に用事がございまして。先日、区星と郭石という賊を征伐した報告です」
「……そうでしたか。しかし、宜しいのですか?」
「……何がです?」
「生きてこの地から出られないかもしれないのに……」
「その時は王儁殿が統治しましょう。王儁殿なら私以上に相応しいでしょうし」
「……何というお方だ」
「この司護。お三方に、たってのお願いがございます。是非、長沙へお越しください。ご家族の方と共に」
「……し、しかし。いきなり……良いのですか?」
「私を賊と思っているのでしたら、それは間違いです。私は民の為に働いているだけです。ここに来たのも全ては民の安寧の為」
「い、いや。そういう訳ではない。いきなり何の実績もない若輩の我ら三名を……」
「私の見た目に間違いはありません。貴殿らは間違いなく、王佐の才があるお三方。ここで出会えたのは久方ぶりの喜びです」
すると三名は急に立ち上がり、僕に礼をした。
よし! これで、この三名は僕のもの!
「……この趙儼。字は伯然! 長沙に参り、民の為に起ちます!」
「同じく杜襲! 字は子緒! 必ずやご恩に報います!」
「繁欽! 字は休伯! 私も働かせて下さい!」
「おお! お三方! 私は素晴らしい宝物を手に入れましたぞ」
「この三名! 命をかけて司護様にお仕えします!」
いやぁ……大量ゲット。埋もれまくっているじゃないか。
それから江陵の皆さん、ごめんなさい。
暫く楊松で我慢してください。
僕、本当に仁君って言えるのかな……?
あ、それと……水鏡先生?
「よしよし。和解は家臣の派閥争いを無くす。鎮静は部隊が混乱した際に早く纏まる。ではの」




