第二十五話 謀略三昧
2月に入り、未だに武陵は少し混迷の最中だ。
けど、そんなものは直に打開できる。
敵が攻めて来なければ容易いものだ。
零陵では各部族が協力し、零陵を混乱させている。
僕に挑戦状を叩きつけたのが、そもそもの間違いだ!
……とか偉そうなこと言っていると、とんでもない落とし穴が待っていそうだよなぁ……。
そんな事を思いながら、2月の前半フェイズに移行しようとしていると、その時王儁がやって来た。
「我が君、少しお話したいことがございますが……」
「おお、王儁殿。何の御用でしょう?」
「范増殿が来てからというもの、どうも我が君が変わったような気がします」
「……余がどう変わったと?」
「……具体的には申し上げにくいのですが」
「亜父殿は今や我が陣営において、貴殿と同じく必要なお方ですぞ」
「いやいや、この王儁。讒言をしに来た訳ではありません」
「……では、何を?」
「まず我が君の顔つきが以前と比べ険しくなっております。お疲れというのもあるのでしょうが……」
「余の健康ならば問題はない。それよりも今は民を安心させてやることが先決ですぞ」
「はっ。それは百も承知しております」
「ならば王儁殿は無頼の徒を改心させ、彼らを導いて下され。この司護、お願い申す」
「……承知しました。この王儁の勘違いでした。お気になさらぬよう」
王儁はそう言ってから出て行った。
確かに最近、黒いんだよなぁ。……やり口が。
ゲームの世界だから気にしても仕方ないけどね。
王儁が去った後、僕は范増を呼んだ。
いや、王儁に刺客なんぞは送らないよ!?
南昌の黄巾党の状況を聞くためだからね!
「おう、亜父殿。よく参られた」
「我が君。此度は何用ですかな?」
「実は南昌の黄巾党の動きが若干、気になってな。江夏に攻め込んでいるらしいが……」
「ほほう……。今度は南昌を手に入れるおつもりですかな?」
「いや、今はその時期ではない。零陵が先だ」
「では何故、南昌を気にするのじゃ?」
「残存兵数の確認よ。長沙に攻め込んでくる心配はなさそうだがな」
「成程、南昌は今のところ四万ほど駐屯しておりますなぁ」
「意外と多いな。江夏へは左程、軍勢を進めていないのか?」
「江夏の黄祖は殻に閉じ篭ることにおいてだけは一流じゃからのぉ……。長期戦になると踏んでいるんじゃろう。それに……」
「……それに?」
「江夏の方に南下している黄巾党軍への兵糧援助が目的であろう」
「ああ、そやつらの輜重隊を繰り出しているという訳か」
「その通りじゃ。もしかして、その輜重隊の兵糧でも奪う気かな?」
「それも面白いが、長沙からでは少し距離もあろうし、それは捨て置くことにしよう」
「で、どうするのじゃ?」
「江夏は落ちそうか?」
「蔡瑁や張允次第じゃな。早々に負けぬとは思うが、江夏が黄巾党の手に渡るとなると、ちと厄介かもしれぬ」
「汝南や淮南、それから徐州の黄巾党と連絡がとれるようになる訳だな」
「左様。まぁ、それは袁術への宿題となる訳じゃが……」
「劉表と袁術縁故の連中が、官位を餌に余を釣ろうとするという訳か……」
「うむ。我々から『代わりに兵を出せ』と言ってくるじゃろうのぉ……」
「まぁ、その時はその時だ。その場合、爵位と官位は貰ってやるとして、適当なことを言って時期を引き延ばすしかなさそうだな……」
ただ、そうなると袁術だけでなく、廬江太守陸康も苦しくなる。
桂陽や零陵では陸康の人気も高いし、見捨てるとなると僕の信頼も落ちるかもしれない。
そうなると結構、面倒なことになるのだ。
それと僕には一つだけ気になっていることがあった。
かつて武陵で追い払った区星と郭石の現状だ。
その二人は、今では南昌で黄巾党として働いていると聞いていたのだが……。
何故、気になったかというと区星と郭石も略奪行為をよくやっていた。
ところが波才の話では、略奪などの非道行為は極力させない方針らしいのだ。
となると、そのまま二人が大人しくしているとは思えない。
「なぁ、亜父殿。区星と郭石についてだが、何か分っていることがあるか?」
「あの匹夫どもか? あの二人なら南昌から手勢を連れて去り、今は長江で賊をしておるぞ」
「なんと……。荒らしている場所は?」
「江陵から柴桑にかけてじゃな。長沙と武陵の周辺は我が君を恐れて近づいて来ぬらしい」
「それで余のところに話が伝わってこなかったのか……」
「で、その匹夫どもが如何したのかの?」
「……なぁ、亜父殿よ。奴らに間者を忍び込ますことは出来るか?」
「あのような者達相手になら容易に出来るが……。どうするのじゃ?」
「まずは、なるべく江陵周辺を荒らすように仕向けさせ、同時に根城の場所を掴んで欲しい」
「……それだけかの?」
「それと同時に周泰、蒋欽の名を騙るように仕向けさせるのだ」
「……意味が分らぬな。両名ともお主の配下であろうに?」
「そうだ。だが、それでその首が劉表への手土産となる」
「……成程、今までの周泰、蒋欽のしたことを擦り付ける訳じゃな」
「江陵での二人の人気は元々高い。侠客の親分肌だからな。その偽物を討ったとなれば、余の江陵での人気も高まるというものよ」
「それと同時に江陵を無視し、江夏へ増援をさせている劉表、蔡瑁の株も落ちる……という訳か。いや、面白いのぉ……」
「そうと分ったら直に間者を潜り込ませてくれ。この件は内密に頼むぞ」
「承知した。任せてくれ。我が君」
……もっと黒くなった。
まぁ、これも仕方ないことだよ。
それにゲームだし……うん。
という訳で2月前半の政略フェイズに移行しよう。そうしよう。
長沙は厳顔の城壁補修
桂陽は灌嬰が町造り。
武陵は訴訟担当が顧雍、秦松、蒋欽
陳端、劉度が治水事業。
僕、尹黙、張昭が町整備。
蔡邕、徐奕、桓階、是儀、張紘が開墾事業。
鐘離昧、張任、沙摩柯、周泰が巡回。
王儁が帰順。
なお、范増は間者の埋伏を専念させる。
更に陳平に命じて長沙から金3000を武陵に輸送。
武陵パラメータ
農業781(1200) 商業635(800) 堤防92 治安76
兵士数50516 城防御271(500) 訴訟レベル2
資金3676 兵糧60000
桂陽パラメータ
農業697(1000) 商業661(900) 堤防100 治安98
兵士数40182 城防御120(500)
資金1554 兵糧47000
長沙パラメータ
農業985(1200) 商業1162(1500) 堤防100 治安100
兵士数52273 城防御520(600)
資金288 兵糧99000
これで随分と武陵も発展してきた。
欲を言えば、もう少し人材が欲しいところ。
てか、そろそろ荀彧とか出てきてないかな?
そんなことを思っていたら、衛兵が僕に面会を希望している者がいるという。
我ながら良いフラグの上げ方だ。いよいよ黄忠かな?
黄忠だといいなぁ……。
謁見の間に行くと二人の若者がいた。
どちらも板盾蛮だそうで……。
これは黄忠じゃねぇよなぁ……またかよ。
「よく来た。お二方。余が司護だ」
「私は巴郡の生まれで、姓は杜。名は濩という者です。お願いの儀があって参上しました」
「同じく朴胡と申します。宜しくお見知りおきを」
「して、双方とも余に何の願いがあってきたのです?」
「私、杜濩とこの朴胡を何卒、司護殿の配下にして頂きたい」
「ふむ……成程」
また知らないのが来た……。
知らない奴、多すぎ……。
まぁ、いいか。パラメータは……。
杜濩
政治3 知略6 統率6 武力5 魅力5 忠義5
固有スキル 歩兵 伏兵 踏破 補修
朴胡
政治4 知略5 統率6 武力6 魅力5 忠義5
固有スキル 弓兵 踏破 抗戦 補修
ちょっと微妙かな……。それと……。
「踏破は山岳や森林の移動が通常と同じ。ではの」
先生。最近、あまりにもつれないです……。
范増が来て爺キャラが被ったのが拗ねている原因かな?
まぁ、いいや。補修持ちだし、登用しちゃおう。
「よし、お二人は見所がありそうだ。是非とも、この司護に力を貸してくれ」
「有難き幸せ!」
「両名とも我が君に忠義を尽くします!」
少し微妙だけど、贅沢は言ってられない。
これが博士仁と楊松しかいない頃なら「大エースが来た!!」と喜んでいただろうけどね。
今や三郡の統治者だから、そりゃあ違うよなぁ……。
僕は両者を晩餐に誘い、劉焉の評判を聞いた。
すると意外と横暴なようで、賈龍と少々揉めているそうだ。
赴任した最初だけは善政を敷いていたらしいけどね。
でも、好々爺のイメージがあるから、どうもしっくりこない。
まぁ、いいや。頃合いを見て賈龍を引き抜いてみようかな?
強そうだし、そろそろ他にも張松とか法正とかが出てきそうだし。
次に漢中の話題となった。
あまり知られてはいないが、漢中でも五斗米道の乱が起きているらしい。
黄巾よりは小規模なので朝廷は無関心らしいけどね。
蘇固というのが太守らしいけど、無能らしいから……。
あ、漢中といえば張魯だった。
となると僕の知っているとおり、張魯の勢力になるのかな?
新加入の二名来たところで2月後半の政略フェイズ。
まぁ、武陵以外はいつもと同じだけどね。
長沙は厳顔の城壁補修
桂陽は灌嬰が町造り。
武陵は訴訟担当が顧雍、蒋欽
僕、尹黙、張昭、秦松、劉度が町整備。
蔡邕、徐奕、桓階、是儀、張紘、陳端、王儁が開墾事業。
鐘離昧、張任、沙摩柯、周泰が巡回。
范増、杜濩、朴胡が城壁補修。
武陵パラメータ
農業870(1200) 商業691(800) 堤防83 治安100
兵士数50516 城防御300(500) 訴訟レベル1
資金2267 兵糧60000
桂陽パラメータ
農業697(1000) 商業673(900) 堤防100 治安97
兵士数40182 城防御120(500)
資金2127 兵糧47000
長沙パラメータ
農業985(1200) 商業1162(1500) 堤防100 治安100
兵士数52273 城防御531(600)
資金2840 兵糧99000
いいねぇ……。実にいい。
また武陵から配下を大量移動させないために、一気に全部最大値にしたいところだ。
理由は当然、面倒くさいからだけどね。
あと滅茶苦茶、金がかかるけどね……。
現在、懸念材料は二つだ。
零陵の張羨と長江で暴れている区星と郭石。
零陵の方は……どんな塩梅だろ?
ということで、怖い爺さんを呼び出す。
「……亜父殿はおるか?」
「范増はここにおりますぞ。何用ですかな?」
「零陵の張羨はどんな具合だ?」
「……意外と頑張っておるのぉ。異民族らをそれなりに放逐しているようじゃぞ」
「なんと、精夫らが撤退しておるのか?」
「撤退とまではいかぬが、苦戦している模様じゃのぉ……」
「ふむ……張羨め。今までのようにはいかぬか」
「刑道栄、鮑隆、陳応、楊齢らが意外に粘るようでな」
「むぅ……その四名は雑魚の筈だが……」
「なんじゃ?」
「い、いや。まぁ、零陵は捨て置くことにしよう。して、区星と郭石の方は?」
「それ以前に江夏が荒れそうじゃぞ」
「荒れそう……? どういうことだ?」
「廬江太守陸康、そして楊州牧に任命された劉繇が江夏への援軍を決定したのでな」
「何? それは、ちとまずいな……」
「何がまずいのかの?」
「うむ。劉繇殿には借りも面識もある。余を頼って援軍の要請でもしてこられたら面倒だ」
「何じゃと? 何故、今まで黙っておった」
「関係ないと思っていたからだ。許せ、亜父殿。しかし、劉繇殿がこの時期に楊州牧になるとはな」
「恐らくじゃが、袁術を警戒する一派が働いたのじゃろう」
「十常侍か? それとも何進の一派か?」
「それはまだ分らぬ。儂も調査させてはおるが……」
「……ううむ。ここに来て面倒な」
「じゃがな。これは良い機会かもしれぬぞい」
「……どういうことだ?」
「まず、我が君が区星と郭石の首を劉表に送り、その上で江夏への増援を劉表に申し出るのじゃ」
「成程、ついでに劉表に恩を売る訳か。だが、劉表も恩を感じると思うか?」
「彼奴は張羨よりも惰弱で世間体に弱いからのぉ。問題はあるまいて」
「それなら良かろう。劉表と劉繇殿は共に漢王室の血筋。両者が余を推挙するとなれば、余も官位と爵位も得られる可能性が高い」
「ちと、その前に儂に策があるのじゃがのぉ」
「おお、亜父殿の策とは心強い。なんでしょう?」
「杜濩、朴胡、沙摩柯に零陵蛮への援軍として出すのじゃ。兵は皆、蛮兵でな」
「成程、どうせ奴らに見分けはつきませんしな」
「そうじゃ。どうであろう?」
「名案です。だが、ちと心細いな」
「何が心細い?」
「いえ、なるべく捕虜は出したくないのでな。……そうだ、亜父殿が同行し、参謀として加わってくれると有難い」
「……儂がか? 人使いが荒い君じゃのぉ……。分った。赴くことにしよう」
ああ、どんどん黒く染まっていく……。




