第二十四話 最近、お腹周りが黒いんです……
186年となった。えっと元号で言えば中平三年ってやつかな?
けど、黄巾賊が平定されていないので、光和九年ってことになります。
新年早々、零陵太守張羨からは返信が届き、そこにはこう書かれていた。
要約すると……。
貴殿の和睦の取り成しは感謝致す。
しかし、貴殿は賊ゆえ討伐せねばならぬ。
二月まで待つので、降伏するなら今のうちだぞ。
全く、曹寅といい、張羨といい、ロクな太守がいやしねぇ……。
近くに劉繇さんのような立派な太守はいないのかねぇ……?
うん。ちょい少しまで雑魚だと思っていたけど、それは内緒で……。
新年会はささやかなものにして、去年みたいに大々的には行わなかった。
朝廷から派遣されてきた太守が二人死んだしね。
どうせ楊松もどきだろうけど、それでも祝うのはまずいしさ……。
ぶっちゃけ「金が厳しい!」というのが正直なところだけどね。
さて、新年早々だけど、僕は范増を呼んで他勢力の状況と今後の指針について相談することにした。
ついでに現段階での他の状況を説明しようと思う。
范増がきたので、より詳しい内容が分かるようになった。
刺客も放てるし、范増のネットワークって一体……。
第一に幽州地方で勃発した張純、張挙と烏桓族らの反乱だ。
代郡まで侵攻してきた張純、烏桓族らを、まずは廬植、公孫瓚が劉備三兄弟らを率いて撃退。
ここでやっと劉備が話に出てきたけど、黄巾賊が相手じゃないのね……。
けど、あくまで押し戻しただけで、状況は膠着状態。
これに朝廷が新たに楽浪郡の太守として公孫度を任命、事態の打開を図るつもりらしい。
第二に冀州では、袁紹と曹操らが張角ら冀州黄巾党の残党と対峙しこれを撃退。
冀州全域から完全に黄巾党を追い出したが、その残党はまたもや青州、兗州方面へと逃走した。
だが、そこで青州近辺で活動していた管亥らと合流。
青州の北海から兗州の泰山にかけて黄巾党の勢力が拡大されている模様。
これに徐州の陶謙と北海国の相の孔融、さらに派遣された皇甫嵩らが戦闘を開始した。
張角、君は何時になったら死ぬのかな……?
第三に涼州では、韓遂、辺章、王国、宋建らに馬騰が合流。
これらに対し董卓が派遣され、現在もなお拮抗状態が続いている。
なお、董卓への援軍として、元黒山賊の帰参したばかりである張燕が加わった。
……賊の張燕が帰参したということは、僕にもまだ見込みがあるのかな?
第四に益州では、黄巾党を名乗る馬相と趙祇が賈龍によって鎮圧された。
さらに劉焉が西の羌族との和睦に合意。
益州従事である賈龍と共に平定へと向かっているらしい。
第五に交州の蒼梧郡において觀鵠と蘇馬らが敗走。
これで交州も少しは安定すると思われる。
だが、南交州でも不穏な動きがあるとのことで、予断を許さない状況とのこと。
第六に揚州において袁術が廬江太守陸康との和睦に応じ廬江から兵を退いた。
理由は汝南の黄巾党が活発化したからと思われる。
袁術と陸康の和睦後に汝南の劉辟、龔都、孫夏、馬元義らが率いる黄巾党が袁術軍の孫堅、張勲らと衝突。
現在でも膠着状態に陥っている。
第七に荊州北部の南陽では黄巾党が敗走しだした。
南陽太守秦頡と朱儁、張超らが黄巾党に加わった趙慈を討ち果たし、なおも追撃をしている。
この南陽で敗走中の趙弘、甘洪が率いる軍勢が江夏の黄巾党と合流するのは時間の問題と思われる。
第八に豫章郡南昌にいる張梁、波才率いる黄巾党は江夏に攻撃を開始。
江夏太守黄祖と蔡瑁、張允がこれと戦闘状態に入る。
……僕はどっちを応援すれば?
まぁ、高みの見物を決め込みますけどね。
大体、状況は飲み込めたので、さらに范増に聞いてみようか。
「大体の状況は分った。亜父よ。確かに昨今、漢は苦しい立場と言えるな」
「うむ。本来ならば既に懐柔策として、我が君には何らかの称号が来ている筈じゃが」
「なのに未だに来ず……だ。やはり宦官どもと袁術を支援する一派の妨害か?」
「袁術は南昌から引き揚げましたからな。その点は問題ない筈じゃ」
「……となると、やはり宦官どもか」
「いや、それだけではありませぬぞ」
「……反宦官どもでないとすると、まさか劉表か?」
「御察しの通り。そして、劉焉じゃ」
「……何故、劉焉殿まで余を煙たがるのだ?」
「劉表と同じく、我が君を警戒しているらしいぞ。それに……」
「それに?」
「以前、我が君は陳端らを益州に派遣したとか……。その事を劉焉に告げた者がいるそうじゃな」
「……何!? それで警戒しているのか!?」
「うむ。益州に探りを入れていた理由が曖昧ですから余計じゃろうのぉ……」
別に益州を取りに行くためじゃないよぉ!
張任、厳顔を取りに行っただけだよぉ!
まぁ、それも劉焉にとっちゃあダメージか……。
「しかし、何処から余が陳端を益州に派遣したことが……」
「楊松と博士仁じゃよ。あの二人は今、何食わぬ顔して劉表の下におるぞ」
「またあの二人か……」
「うむ。あの二人は陳端と面識があり、陳端が武陵を通過する際に益州へ向かうのを見たとのことじゃ」
「……ううむ。それで手の者に後をつけさせたのだな」
「何故、消しておかなかったのだ? 邪魔者は容赦なく消さねば覇道は見えてきませんぞい」
「過ぎてしまったことだ。……許せ」
でも、劉焉まで僕を警戒し出したのかぁ……。
結構、離れているとはいえ、厄介だなぁ……。
「そういえば亜父よ。益州といえば、今の巴郡太守が確か蔡瑁の……」
「蔡瑁の親族である蔡琰じゃの。じゃが、巴郡は未だに乱れておるし、何といっても広い。蔡琰ではどうしようもないと思うぞい」
「あの辺りは確か板盾蛮の土地も多い筈だが」
「左様……。まさか、板盾蛮の者達を扇動させるのか?」
「いや、まずは零陵の方が優先だ。今、板盾蛮を扇動させるには人手が足りないし、こちらにも疑いが掛かりやすい」
「では、どうなさる?」
「それよりも板盾蛮の様子はどうなのだ? 劉焉や劉表に靡いているのかね?」
「靡くも靡かないも、劉焉も劉表も赴任したばかりじゃし、馬相の一件で大分、疲弊しておるぞい」
「しかし、兵は勇猛であろう?」
「それどころではないと思うぞ。何せ馬相に加担した一派と賈龍に加担した一派が戦ったそうじゃから」
「では、こうしよう。板盾蛮に恩をくれてやろう」
「どうするのじゃ?」
「余の得意技だ。板盾蛮の難民達をこの武陵で受け入れる」
「……なんと!?」
「何れ益州や荊州へ攻める際に役だってくれるだろう。急ぎ使者を送ろう」
「しかし、板盾蛮と武陵蛮には因縁があるぞ。大丈夫かの?」
「もう二十年以上も前のことだ。どうにかなるであろうよ」
なんか僕の外の僕というか……。
そいつも黒くなってきているし……。
でも、板盾蛮と武陵蛮の因縁って一体?
僕が板盾蛮の難民を受け入れることが武陵で知れ渡ると、武陵中が騒然となった。
やっぱり凄い因縁がありそうだなぁ……。
で、僕のところに凄い形相の沙摩柯が僕のところへ来た。
うう……鐘離昧と張任の後ろに隠れたい。
「我が君! 噂は真か!?」
「ああ、板盾蛮の難民を受け入れるということか? 真だ」
「どうしてそんな事を!?」
「余は度々、山越の民も武陵蛮も分け隔てなく受け入れておる。板盾蛮も同じことよ」
「しかし、奴らとは昔……」
「色々あったことは知っておる。君らと長沙蛮のこともな」
「……う」
「だが、君らも長沙蛮を受け入れたであろう? 何故、板盾蛮が例外でなければならぬ?」
「そ、それは……」
「あれから二十年も過ぎたのだ。いい加減に蟠りは捨てよ」
「それが我が君の命であれば……」
……本当に何があったんだ?
聞きたくても聞けないしなぁ……。
教えろよ……黒い僕。
まぁ、こんな形で1月上旬の政略フェイズ。
板盾蛮の難民は下旬に来る予定なので、どうにかしておく必要があるな。
周倉には桂陽から金3000と兵糧30000の輸送を担当させよう。
長沙は厳顔の城壁補修、韓曁が採掘。
桂陽は灌嬰が町造り
武陵は顧雍、張紘、秦松、陳端、劉度が治水事業。
僕、尹黙、張昭が町整備。
蔡邕、徐奕、桓階、是儀、王儁が開墾事業。
鐘離昧、張任が巡回。范増が城壁補修。以上で!
武陵パラメータ
農業581(1200) 商業497(800) 堤防98 治安100
兵士数24071 城防御259(500)
資金4184 兵糧90000
桂陽パラメータ
農業697(1000) 商業637(900) 堤防100 治安95
兵士数40182 城防御120(500)
資金1205 兵糧47000
長沙パラメータ
農業985(1200) 商業1162(1500) 堤防100 治安100
兵士数52273 城防御497(600)
資金826 兵糧99000
よし、これで板盾蛮の難民の受け入れ体制完了だ!
しかし、受け入れている最中に攻め込まれたら厄介だな。
劉表は江夏に援軍を出している最中だから、問題ないとして、どうしよう……。
僕は政務の休憩中には外に出て、小さな池の中を見ることが多い。
ここ武陵というか荊南は、冬でもそれなりに温かく、鯉や鮒も元気そうに泳いでいる。
そんな鯉達が泳いでいる様を、僕は静かに見守るのが日課みたいなもんだ。
その日も静かに水面を見ていた。
不意にその時、僕の頭の中にある考えが浮かんだ。
その瞬間、水面を見ると……水面に映った僕の顔は、不敵で怖い笑みを浮かべていたんだ。
そして、その時に僕は大声で亜父范増を呼んだ。
「よく来てくれた。亜父よ」
「如何されましたかな? 我が君」
「あの零陵太守張羨の動向が気になっていたところだ」
「……ははぁ。彼奴めが板盾蛮の難民が来た際に、混乱に乗じて攻め込む可能性ですな? しかし、零陵は動けないと思いますがの……」
「確かに動けないとは思う。だが、万が一ということもある」
「……如何なさるおつもりかの?」
「桂陽蛮、長沙蛮、五渓蛮らの精夫らに伝えよ。零陵にて一暴れして欲しい……とな」
「……先日の和睦を反故にされるのか?」
「それは零陵蛮と張羨に宛てた和睦だ。一応『天命に誓う』と書いてしまったのでな……」
「成程。今度は彼らに零陵を……」
「うむ。彼らも零陵の汚吏には恨みがあろう?」
「それは当然あるがのぉ……。しかし、零陵の民の恨みを買いかねませんぞ?」
「零陵の民には『この武陵に避難してくれば何人も助ける』と御触れを出せ」
「しかし、それでは武陵が混乱しませんかの?」
「なぁに、同じ難民ではないか。四海皆兄弟だぞ。ハッハッハッハッ」
「確かに少し危険かもしれませぬが、面白いかもしれませんなぁ……」
「ついでに精夫らに『零陵の汚吏のせいでこうなった』と零陵の民らに喧伝させよ。そして『民は殺してはならん』とな」
……おい、僕。仁君の君はどこ行った?
まぁ、確かに張羨はムカつくけどさぁ……。
でもこの頃、随分な暴走し過ぎてきていないか?
零陵の荊南蛮らに指示を出したところで、1月下旬の政略フェイズ。
問題は武陵がどうなることやら……だね。
で、問題の結果パラメータがこれ。
武陵パラメータ
農業678(1200) 商業549(800) 堤防45 治安0
兵士数48716 城防御259(500) 訴訟レベル4
資金4184 兵糧90000
板盾蛮と巴郡、零陵の避難民で計十万以上らしい……。
けど、僕には自信がある!
だって、あの時よりかは大分マシだから!
長沙は厳顔の城壁補修
桂陽は灌嬰が町造り、周倉が巡回
で、問題の武陵は……
訴訟担当は顧雍、秦松、蒋欽、是儀
張紘、陳端、劉度が治水事業。
僕、尹黙、張昭が町整備。
蔡邕、徐奕、桓階が開墾事業。
鐘離昧、張任、沙摩柯、周泰、鞏志が巡回。
王儁が帰順。范増が城壁補修。以上で!
更には難民のために兵糧庫から30000の兵糧を施しのために出した。
ばらまき戦術で民衆の心をゲットさ!
……誤魔化すために、何処かで同じことをやっている国がありそうだけどね。
武陵パラメータ
農業716(1200) 商業592(800) 堤防77 治安40
兵士数49616 城防御271(500) 訴訟レベル3
資金2776 兵糧60000
桂陽パラメータ
農業697(1000) 商業649(900) 堤防100 治安100
兵士数40182 城防御120(500)
資金1654 兵糧47000
長沙パラメータ
農業985(1200) 商業1162(1500) 堤防100 治安100
兵士数52273 城防御519(600)
資金3388 兵糧99000
板盾蛮と武陵蛮の民とで、少し揉め事もあったようだけど、どうにかなった。
というのも零陵の避難民が「これも全ては漢の汚吏のせいだ!」を喧伝してくれたから。
その中には、ちょっとだけサクラも混じらせているけどね。
そのお陰で板盾蛮と武陵蛮に、お互いに共通の敵を認識させたことにより過去の蟠りも一蹴され、一つになりつつある。
どこの世界も共通かもしれない。お互いの敵がいれば協力し合うってことは……。
けど、何か悲しいような気もするけどね……。