第二十二話 兵も使わず、武陵とったどー!
10月となった。現在、長沙と桂陽は左団扇と言っていい。
この復興事業が漢全体に伝わり、各地の英傑がこぞって長沙、桂陽に向かっている。
…………とかだと良いなぁ。
南昌では現在のところ、兵士が五万ほど常駐しているが、特に主だった行動はしていない。
それどころか、随分と開発に尽力したらしく、兵糧などもそれなりに入ってきたそうだ。
飢饉がなかったのが幸いだったらしい。
僕の固有スキル「吉兆」に感謝せぇよ!
本当に吉兆のお蔭か分らないけど……。
そんな呑気に思っていたのも束の間、政務室の扉が開いた。
汗だくになって入ってきたのは尹黙だ。
また面倒なことを言ってくるんだろうなぁ……。
「我が君! 一大事ですぞ!」
「毎度のことだ……。今度は何だ?」
「武陵蛮が他の刑南蛮らと共に蜂起し、零陵、武陵を襲っている由にございます!」
「……何だと!? して、両太守は!?」
「張羨殿は城に篭り、防戦中とのこと! 曹寅殿は劉表殿を頼って江陵へ落ち延びたとのことです!」
「……早まったことを。仕方がない。まず零陵を攻撃している精夫(長)に伝えよ。『今すぐ兵を退け。近々、余が出向く』とな」
「……して武陵の方は?」
「それは余が自ら出向く。馬を引け」
無茶だろう!? おい、やめろ! この僕!
……と言っても体が勝手に動くんだよなぁ。
どういうシステムなんだよ……これ。
僕は慌てる尹黙を押しのけ、外に出て馬に乗ろうとした。
その時、王儁が慌てて外へ飛び出して来た。
恐らく尹黙に聞いたんだろう。
お願い! 王儁! 僕を止めて!!
「おやめください! 我が君!」
「おう、王儁殿。後の事は頼みますぞ」
「何をしに武陵へ参るというのですか!?」
「決まっているだろう。武陵蛮の精夫に会いに行く」
「そんな無茶な!?」
「これは余が自ら招いたことだ。余がまごついているから彼らが蜂起したのであろう?」
「何を馬鹿なことを……」
「では、急ぐのでな。これにて御免!」
そう言って僕は馬で走りだした。
何なの……僕は?
まぁ、そんな状態だけど、10月上旬の政略フェイズ開始。
長沙は厳顔がまたもや城壁補修。
韓曁は採掘。
桂陽は王儁が帰順。顧雍が治水。
尹黙、張昭、灌嬰、秦松が町の整備。
蔡邕、桓階、陳端、是儀、張紘、徐奕が開墾指導。
桂陽パラメータ
農業697(1000) 商業565(900) 堤防100 治安92
兵士数40182 城防御120(500)
資金3202 兵糧77000
長沙パラメータ
農業985(1200) 商業1162(1500) 堤防100 治安100
兵士数52273 城防御442(600)
資金3002 兵糧129000
政略フェイズは僕がいてもいなくても出来るから便利。
……とか言っている場合じゃない。
そんな僕は数日をかけて馬を走らせ、武陵へと一路走らせていった……。
その際に幾度か野宿をした時、夢の中で幾多もの光景が鮮明に見えたんだ。
その中では司護ではなく、王登と僕は呼ばれ、義勇兵を引きつれて戦っていた。
王登は漢の横暴な役人に嫌気がさし、謀反を起こした。
武陵蛮や長沙蛮などとも手を組み、反乱は過熱していった。
しかし、その反乱は馮緄や度尚といった名将らの手により鎮圧され、王登と名乗っていた僕は自刃した。
これは長沙を始めとする荊州の歴史なのかな?
いや、今回の夢はクッキリ見えたけど、毎度必ず夢を見ている気がする。
天女様とかは出てこないけどね……。
でも、その時に知らない名前や単語とかを記憶しているような気がするんだよね。
新手の睡眠学習ってことなのかな?
凄く便利な能力かもしれないなぁ。
現実世界にも持って行けたらいいのになぁ……。
そうしたら夢で暗記出来ちゃうのに……。
その前に現実世界に戻れるのか、そっちの方を心配しないといけないんだけどね……。
既に武陵は武陵蛮らの手に落ちていた。
多少の略奪はあったようだけど、それ程凄惨といった状態ではない。
僕の姿を見た屈強なそれこそ蛮族っぽいマッチョな兵士が僕を呼び止めた。
「おい! そこのお前! 馬から降りろ!」
「武陵蛮の精夫殿に会いに来た。何処におられる?」
「何だと!? お前は何者だ!?」
「長沙の司護が会いに来たと伝えてほしい」
「なっ……。長沙の司護……様?」
それを聞いた周りの蛮族兵の様子が一変した。
どうやらここで命を落とすことはなさそうだ。
……けど、危険なことには違いない。
表面上の僕は恐らく涼しい顔をしているけど、本当の僕は冷や汗ダラダラだよ……。
武陵蛮の兵に付き添われ、僕は武陵の城の中へと入っていった。
意外と城は傷ついてはいない。
恐らく曹寅は早い段階で城を捨てていったのだろう。
……もしかして、配下に博士仁と楊松しかいなかったとか?
それなら僕も逃げるよなぁ……。
謁見の間に入ると、既に屈強な若者が上座の椅子に座っていた。
どうやらこの若者が精夫なんだろう。
そこで僕は目を瞑った。
パラメータ見ないといけないからね。
沙摩柯
政治1 知略5 統率7 武力9 魅力5 忠義6
固有スキル 弓兵 歩兵 豪傑 蛮勇
えっ!? 沙摩柯!?
甘寧を討った沙摩柯なの!?
それと……。
「蛮勇は相手への攻撃が二割増幅するが、防御が一割減るぞ。よしよし。ではの」
はい。先生有難うございました。
それはそうと、そんな沙摩柯がギロリと僕を睨んでいるんですけどね。
一発殴られた時点で僕、終了だと思うんですけど……。
「よく来た! 司護様! 貴方が我らの新しい主だ!」
沙摩柯は大声で叫ぶと、周りの兵も雄叫びをあげた。
でも、この展開はまずいんだよなぁ……。
「貴殿が精夫殿でいらっしゃるか?」
「如何にも! 沙摩柯と申します! 貴方様が太守となれば、この地も安心だ!」
「早合点してもらっては困る。そもそも余は長沙の太守ではない」
「……!? どういうことです?」
「正式に朝廷から選ばれた太守ではないのだ。故に余にはこの地を治めることは出来ぬ」
「しかし、貴方様は既に長沙と桂陽を治めているではありませんか?」
「それは一時的なものだ。正式に漢の太守が来れば、その座を明け渡すつもりだ」
「……そ、そんな」
「まぁ、この首は飛ぶだろうが……。だが、余が責任をもって応奉殿のような方を頼んでみるつもりだ」
また、何を言っているんだよ……僕。
てか、下手したらここで首を斬られるんじゃないの?
「あいや! 待たれよ! その儀には及ばず!」
突然、また沙摩柯が叫んだ。
そして、矢継ぎ早にこう話してきたんだ。
「貴殿は既に漢に帰順しているのだろう? なれば貴殿とて漢の朝臣と同じこと!」
「しかし、正式には……」
「それ以上、言うな! これは我らの総意! 我らが貴殿を漢に推挙するのだ!」
「……言っている意味が分っておるのか?」
「分っておる! 我らの選んだお方を太守にする! それの何が悪い!?」
「………」
……何も言えなくなってしまった。
要するに僕は「選挙で選出されました」みたいなこと?
「お気持ちは分った。これ以上のことを言っても無駄のようだ」
「……では!?」
「致し方あるまい。この司護、この地の安寧に尽力する!」
僕がそう言った瞬間、どっとこの城内、いや領内が湧いた。
何処まで悪政を布いていたいたんだ? 曹寅は?
まぁ、いいか。早速、この武陵のパラメータを見てみよう。
武陵パラメータ
農業228(1200) 商業193(800) 堤防60 治安20
兵士数22271 城防御223(500)
資金1500 兵糧30000 訴訟レベル4
もっと、まともな内政しておけよ……。
てか、本当に楊松と博士仁しか配下いなかったのか?
それなら納得だけど……。
「聞きたいことがある。沙摩柯よ」
「何かね!? 我が君」
「……ここで働いていた官吏は知らないか?」
「博士仁と楊松、刑道栄とかいう奴らは逃亡した! 他の官吏は皆、殺した! それと最初から牢獄に入っているのが一人だ!」
「……その者に会わせてくれないか?」
「承知!!」
そうして一人だけ青年が縄で縛られて連行されてきた。
僕は青年の縄を自ら解くと、静かに目を瞑った。
えっと、パラメータは……。
劉度
政治5 知略4 統率3 武力2 魅力6 忠義5
固有スキル 商才 治水
……劉度かよ。
けど、荊南四大雑魚君主の割には使えるなぁ……。
よし、採用するか。
「君は名を何と申す?」
「劉度だ! この賊め! 早くこの首を刎ねたらどうだ!」
「……教えて欲しい。君は何故、逃げなかったのか?」
「官吏たるもの、どうして民を捨てて逃げることなんぞ出来ようか!?」
「……しかし、太守曹寅殿は既に逃げ落ち延びているではないか?」
「その者は太守の器でなかっただけのこと。これで気が済んだであろう?」
「いや、まだ気が済んだ訳ではない。何故、そんなに死にたがる?」
「我は漢の朝臣ぞ! 賊に降る訳にはいかぬ!」
劉度のくせに中々、格好良いじゃねぇか……。
良く見たら冷や汗をダラダラ垂らしているのにさ。
でも、その気持ち良く分かる! 良く分かるぞ!!
僕は睨み付ける劉度の縄を解き、微笑みかけた。
……武器とか隠していたら、どうするの?
けど、そんなことをお構いなしに、僕は劉度に話しかけた。
「立ちなさい。劉度殿。そしてこの武陵の為に働いてください」
「何を血迷うたことを!?」
「余の為ではない、漢と武陵の為に言っている。新たな武陵府君がくるまで、この地で働けば宜しいではないですか?」
「……ああ、貴殿が何故、漢の朝臣ではないのだろうか」
これで沙摩柯と劉度が配下になった訳だけど、まだ足りねぇ……。
てか、桂陽も手に入れたのに人材取れなかったしね。
他の四大雑魚君主の能力値もそれなりなのかなぁ……?
まぁ、いいや。今回の10月下旬の政略フェイズはどうしようかな?
まず武陵を立て直さないとまずいので、長沙と桂陽からごっそり移動させよう。
長沙には厳顔、陳平を置き、桂陽には灌嬰と周倉、残りは武陵へ移動……と。
さらに長沙から周泰と蒋欽が移動のついでに輸送担当で金3000と兵糧30000を命じる。
武陵では僕と劉度が町の整備、沙摩柯が巡回。
長沙では厳顔が城壁補修。
桂陽では灌嬰が町造り、周倉が巡回。これでよし。
武陵パラメータ
農業228(1200) 商業208(800) 堤防60 治安26
兵士数22271 城防御223(500)
資金4708 兵糧60000 訴訟レベル4
桂陽パラメータ
農業697(1000) 商業577(900) 堤防100 治安97
兵士数40182 城防御120(500)
資金3579 兵糧77000
長沙パラメータ
農業985(1200) 商業1162(1500) 堤防100 治安100
兵士数52273 城防御453(600)
資金2564 兵糧99000
しかし、何だって武陵の訴訟レベルが4もあるんだ?
で、劉度に聞いたら楊松とその仲間が多額の賄賂を要求したり、訴訟を踏みにじっていたそうで……。
いやぁ……本当に楊松を解雇しておいて良かった。
しかも、楊松の奴は事あるごとに曹寅に僕の悪口を言っていたとか……。
なんでも僕が賊を使って略奪していたとか……?
ふざけんなよ! 楊松! 僕は武陵での略奪は命じていないぞ!
江陵のは……あくまで兵糧船だけだからね!
家臣らが武陵へ到着すると、家臣達はこぞって涙して僕を称えた。
いやぁ、僕も生きて会える確信がなかったからなぁ……。
幾ら武陵蛮らが僕を崇めていたとしても「嘘つけ!」の一言で斬られていたら終わりだったしね。
あとは零陵の諸蛮族かぁ……。
どうしたもんかねぇ……?




