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第百三十一話 僕流の解決策

 まず歩錬師とその母親は後々として老師には龍となってもらい、まずは降臨する演出をしてもらうことにしよう。

 加えて何か七星宝刀とは別の物を貰う形をとろうか。でも、何がいいだろう?

 

 答えはすぐに出た。南方総都督の印璽だ。

 天子ではなく、文字通り天から授かったことにすれば権威は保てるはず。

 漢室の権威は失墜するだろうけど、既にド底辺だし構うことはない。

  

「なんと? 儂にそのような物まで作れじゃと?」

「流石に誰かに作らせる訳にはいかないからね」

「・・・ううむ。龍に化けるだけじゃなく、この老体にそこまでせよとは・・・」

「少しはクリアさせるのに手伝ってよ。定期的に色々な種類の酒も用意するし」

「・・・ううむ。じゃがのぉ」

「今、蜂蜜酒の製造も着手しているんだよね。出来上がったら、一番に・・・」

「なっ!? は! 蜂蜜酒とな!」

 

 何故か老師は蜂蜜酒に食いついた。

 これが決め手となり、印璽の製作もこれで問題なしと。

 

「じゃがのぉ。印璽の製作にはちと時間がかかるぞい」

「どれくらい?」

「そうじゃな。数ヶ月というところじゃろう」

「そんなに!? もっと早く作れるでしょ!」

「簡単に言いなさんな。三文判を作る訳じゃないのじゃぞ。それなりの格式があるには、それなりの物を用意する必要があるんじゃ」

「・・・わかったよ。出来るだけ早くね」

 

 篆刻てんこくが出来る職人は既にいるけど、依頼する訳にはいかない案件だしな。

 こちらも祭り以外にやることもあるし、待つことにしよう。

 

 翌日、僕は皆を集め、新たな祭りとフクちゃんが使っていた酷吏についての会議をすることにした。

 そしたら祭りのことは兎も角、酷吏のことが出るわ出るわ・・・。

 フクちゃんめ・・・。必要悪ということで放置させていたのかもしれないけど・・・。

 

「ええい! 先ほどから聞いておれば、皆好き勝手に司総督君のことを何と心得る!」

「黙らっしゃい! 呂典校! 全て真実を申し上げておるだけだ!」

「黙るのは貴殿だ! 留府長史(張昭)! 私は忠実に司総督君の指示に従ったまでのこと!」

 

 呂典校という人物がどうやら酷使の親玉らしい。

 司総督君というのはフクちゃんこと司政のことなので、フクちゃんの威を借りて好き放題いた人物なんだろう。

 だから張昭のカミナリも屁でもないのだろうね。

 

 けど、この様子じゃ名無しの文官じゃなさそうだ。

 見た目はまだ若く二十代らしいし、どんなヤツなんだろ?

 他にも酷吏サイドが二人いるらしいけど・・・。

 

呂壱

政治7 知略6 統率1 武力1 魅力1 忠義3

固有スキル 讒言 判官


曁豔きえん 字:子休

政治5 知略5 統率1 武力3 魅力1 忠義2

固有スキル 讒言 登用


徐彪

政治5 知略6 統率2 武力2 魅力1 忠義3

固有スキル 讒言 登用

 

 まさかの讒言もち三人衆。

 フクちゃんめ。いつの間にこんな連中を登用していたんだ・・・?

 能力値は新しい郡を作るのには良いけど、讒言でかき回されたらシャレにならん。

 

 本当はすぐにクビとか更迭とかしたいところだけど、そうはいかないらしい。

 何故かというと、この三人に迎合している名無しの官吏が多いからだ。

 しかも司政の名で行っているので、下手なことをすると司政の権威失墜になりかねない。

 

「フクちゃんも酷い宿題を置いていったものだ・・・」

 

 僕は思わず小声で呟き、天井を見上げた。

 恐らくフクちゃんは頃合を見て、この三人に責任を取らせる形で自身の悪評を払拭させる腹づもりだったんだろう。

 世論なんて感情論で簡単に操作できるようなもんだしな。

 

 会議を終えた後、僕は范増を招いた。

 范増もこの三人により、殺される一歩手前までいった一人なのは承知の上でだ。

 

「亜祖父よ。会議でのことは既に聞いているとは思うが・・・」

「聞いたわい。まさかとは思うが、楊松のようなことはせんじゃろうの?」

「当然だ。下手なことをしたら何進や十常侍らに良い口実を与えるだけとなろう」

「その通りじゃ。しかし、陳平や満寵らにまで責任が問われかねんから気をつけねばなるまいて」

「そこが一番の問題だ。だからといって追及を疎かにしたら、張昭や鄭玄らの反感を招くであろう」

「うむ。分かっておるのであればそれで良い」

「・・・となると、ここは性急ではなく、丹念に証拠集めしたほうが懸命か?」

「そうとも限らんのぉ・・・」

「どういうことだ?」

 

 范増が申すには中原で俄に妙な噂が広がっているという。

 なんでも司政がこもった真の理由は、司政が漢室やそれに伴う面々の一族への呪詛ということらしい。

 バカバカしい噂ではあるけど、そういうのが信じられてしまう世界だ。

 僕もそういうのを利用している訳だから、こればかりは仕方けどね。

 

「しかし、なんでそんな噂が流れているのだ? 首謀者は趙高か?」

「いや、そうでもないらしいわい」

「・・・じゃあ、誰が?」

「広めているのは一介の若造の魏諷ぎふうという者らしいが、その黒幕がおるじゃろう。恐らく・・・」

「恐らく・・・・・・?」

「張良と儂はみておる」

「えっ!? 何故!?」

 

 僕は思わず声を上げた。

 張良がそのようなことをするメリットはないし・・・いや、待てよ。

 あるとしたら・・・。

 

「亜祖父よ。張良は中原の連中を南征させ、その間に洛陽を陥落させる魂胆か?」

「普通ならそう考えるじゃろう。じゃが、儂は違うとみておる」

「・・・・・・では、どういうことだ?」

「司政、そしてお主を亡き者にしようとする算段じゃ」

「なっ!?」

 

 意味がわからん! どうしてそうなる!

 僕が張良になんか悪いことをした!?

 

「そう喚くな。あくまで儂の憶測でしかすぎぬ」

「しかし、何故? 突拍子もないではないか」

「ない訳ではない。司政と面会した時、彼奴めの表情が変わったのじゃ。その時は気のせいと思ったがの」

「・・・まさか」

 

 フクちゃんは始皇帝の嬴政だったよな。

 ということは、因縁浅からぬ嬴政とあったばかりに、張良の記憶が蘇ったということか?

 確か張良は嬴政を殺すのに30kgの鉄槌を投げつけて殺そうとしたよな・・・。

 

 張良がどんだけ嬴政に恨みがあるのかは知らないけれど、張良が黒幕だとすると多分それだけじゃないんだろう。

 僕の陣営と何進や十常侍、袁氏の陣営の共倒れを望み、その後を劉協が出張るという筋書きじゃないかな?

 漢室に呪いをかけるという云々の噂は、劉寵は大丈夫だとしても、劉表、劉岱、そして劉繇さんあたりが怪しくなるかもしれないし・・・。

 

「ただ、こればかりは闇雲に動く訳にはいかぬ。亜祖父よ。まずは魏諷を探ってくれ」

「わかったぞい。儂もこればかりは勘でしかないしの」

「うむ。頼む」

「それからお前さん、今以上に周囲に警戒を怠らないようにの」

「何故だ?」

「未確認だが不穏な動きがあるようじゃ」

「それは内か? 外か?」

「どちらともじゃな。お前さんを殺したがっておるのは、以前よりも数が増しておるでの」

「やれやれだ・・・」

「それとどうも刺客が既に領内に入ったらしい。くれぐれも用心することじゃ」

 

 件の讒言もち三人衆は、ある程度の証拠をでっち上げでも対処できそうだ。

 ただ下手にそれをやると、ちと面倒なことにもなりかねない。

 疑心暗鬼に駆られた有象無象の連中が反乱を起こしかねないからだ。

 

 ならば、馬鹿でかいでっち上げを起こすしかない。

 僕を狙う刺客を取り押さえ、その責を取らせるのが手っ取り早い。

 問題は刺客の情報が未だに皆無というところか。


「孔明と元直はおるか?」

 

 范増との密談から数日後、僕は孔明(諸葛亮)と元直(周不疑)の両名を近習の相談役として召しだした。

 孔明はこの時、まだ十九歳。元直に至ってはまだ八歳。

 しかし、元直は既に稀にみる神童として知られていて、更に現在の僕に歳が近いという利点がある。

 成人していないから能力値は未だ不明ですけどね。

 

「これは総督代理。何用ですかな?」

 

 開口一番、孔明が微笑しながら答えた。

 手には既に羽扇を持っており、風格も出てきた感じだ。

 この羽扇は同じあざなである胡昭という人物から頂いた物らしい。

 

「減税したのは良いが未だに民の生活が困窮しているという。物価は確かに上昇しているが緩やかのはず」

「はい。稲を始めとする穀物の相場は安定しております」

「ならば何故、そのような訴状がくるのだ?」

「民の流入を受け入れたまでは宜しいのですが、塩の増産が追いついていないのです」

「塩も鉄も専売を禁止した筈だが。それとも塩田開発が進んでいないと申すか?」

「それもありますが、益州からの塩の商人の流れが止まっております」

「なんと・・・」

「加えて沿岸部の塩田開発を邪魔する賊徒の輩も跋扈しております」

「・・・ふぅむ。現在の塩官令は誰だ?」

「岑昏という者です。丞は陳声。双方とも曁豔殿が茂才した人物ですが・・・」

「なに? 岑昏?」

 

 どこかで聞いたことある名だな・・・。

 そうだ。呉の孫晧に仕えていた宦官だったような・・・。

 この世界では宦官じゃないのか?

 

「私の勝手な憶測だが、その者らは不正に塩を高額にし、暴利を貪っておるのではないか?」

 

 すると周不疑が僕の問いに答えた。

 

「まず間違いないでしょう。しかし、決定的な証拠が乏しい以上、迂闊に検挙する訳にはいきませぬ」

「うむ。どうすれば尻尾を掴むことが出来よう」

「如かず。塩商人の実態を暴き、売り上げを全て没収すれば宜しいかと」

「・・・ふぅむ」

 

 吉宗が暴利を貪っていた商人に行ったやり口と同じ手法か。

 その金を祭りに使うことにすれば、一石二鳥になるな。

 

「それともう一つ」

「他にもまだあるのか?」

「はい。どうも塩の闇商人もいるとの噂です」

「ほう?」

「そして塩の出所に董承、張忠らが絡んでいるかもしれません」

「なっ!?」

 

 あいつらめ。益州と交州の境周辺で活動しているという情報があると思ったら・・・。

 益州の塩商人を牛耳り、ここでの収益を佞臣どもと折半していたってことか・・・。

 こりゃ思ったよりも闇が深そうだな・・・。

 

 塩田開発も不平不満がある一部の烏滸蛮の連中が邪魔していて捗っていないらしいしな。

 その連中も董承、張忠らと示し合わせているんだろう。

 ならば纏めて手を下すまでだ。

 

 ただ面倒なことに、司政が漢室を呪っているという噂を劉焉が信じきっているらしい。

 三男の劉瑁が精神病を患って病死したからだ。

 この事が必要もないのに劉焉を怯えさせる結果となっているという。

 

 それだけじゃない。

 袁紹の末っ子、袁術の側室、そして何進の息子と立て続けに病死や殺害されているとのこと。

 これらが原因で司政が呪って災いを招いているというデマを、より拡散する結果となってしまっている。

 よって、劉焉をこちら側に引き寄せるというのは無理ということだ。

 

「祝奥を呼べ」

 

 後日、僕は祝奥を呼び出した。

 史璜は残念なことになったが、これ以上無意味な犠牲者を許す訳にはいかない。

 

「総督代理、お呼びで?」

「うむ。烏滸蛮の梁龍や董承、張忠らの動向は何か知っているかね?」

「士元殿(龐統)と楊県令(楊慮)が密偵を使い、秘密裏に情報収集させている件ですな」

「何? で、どこまで情報を掴んでいる?」

「あの二人も何処まで確証を得られているのやら・・・」

「ふぅむ・・・」

 

 あの二人が未だに確証を得られていない?

 いや確証の一歩手前だから、逆に用心して秘匿していることも考えられるな。

 それと陳平らにも影響が及ぶ危険性があるから、未然に陳平らへの関与を匂わせる証拠を消している可能性もある。

 

 僕は品行方正をそこまで家臣に求めちゃいない。

 そりゃ品行方正にこしたことはないけど、幾ら品行方正で働き者でも、無能者なら迷惑でしかない。

 そして勝手な解釈で正義漢ヅラし、勝手な行動する部下は敵よりも誅殺するしかない。

 

「賢者は歴史に学び、愚者は経験で学ぶ」

 

 良く言われる言葉だけど、タチが悪いことに経験で学ぶことすら出来ない大バカの方が多かったりする。

 そして、そんな大バカを利用するのが、小狡い酷吏だったりするワケだ。

 僕は愚者ではあるけれど、それ未満の大バカにはなりたくない。

 

「祝奥よ。よく分かった。下がってよい。余に考えがある」

「御意」

 

 これはあくまでフクちゃんの宿題だ。

 ならばフクちゃんのやり方を踏襲し、片付けるまでのことよ・・・。

 僕流にアレンジした形でね・・・。


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