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第十八話 またもや、やっちまったなぁ……

 さて、6月となり、かなり蒸し暑くなってきた。

 この時期に開墾なんてしても、本来なら無駄なんだけど、ゲームの世界だから関係なし。

 そういう意味では本当に便利な世界なんだけどね。

 

 それじゃあ、6月上旬の政略フェイズ。

 対南昌戦は長期戦が予想されるので、兵糧が手に入る9月末、つまり10月上旬の政略フェイズまで待つことにした。

 ということで、開墾ラッシュ開始な訳だけど……。

 

 山越に援軍を要請するにしても、山越の武将って分らないんだが……。

 その辺はどうなんだろう?

 正史とか読んだことないので、いるのかもしれないけど……。

 

「何を悩んでおるのじゃ?」

「あ、水鏡先生。山越の武将って聞いたことがないんです。正史には出て来るんですか?」

「それがのぉ……。資料が全くないから、何とも言えん」

「ええっ!? じゃあ、モ武将に決定ってこと!?」

「……モ武将って何じゃ? まぁ、ここで言って良いのか分らんが、自動的にオリジナル武将が作成されるじゃろうのぉ」

「おおっ!? じゃあ、可愛い女将軍とか!?」

「お主、幻想を見過ぎじゃ……。まぁ、性別も分らんから、ないことはないかもしれんがの……」

「少しぐらい幻想見たって良いじゃないか……。むさい野郎ばっかりなんだし……」

「いたとしても、恐らく『ダッダーン!』とかじゃぞ?」

「……何です? それ?」

「……う。現実世界に戻ったら自力で調べろ」

「……はい。そうすることにします」

「よしよし。では、の」

 

 まぁ、蛮族だから武力一辺倒のキャラの可能性しかなさそうだけどさ……。

 それは兎も角、山越には誰を遣わそうかな……。

 まずは会議でもして、決めることにしよう。

 

「今日の会議は他でもない。暫く内政中心なのは、皆の承知のとおりなのだが」

「我が君。では、何を決めるというので?」

「おお、張紘。それは山越に使者を向かわせ、南昌の賊と共同して攻めるためよ」

「……山越族にですか?」

「うむ。南昌の賊には、山越の民も被害にあっていると聞く。自薦、他薦は問わぬぞ」

「それでしたら、この張紘が参りますよ」

「うむ。張紘なら適任だ。護衛として周倉もつけよう。張紘は長沙だけでなく、漢の宝となる者だしな」

「ハハハ……。相変わらず太守殿の御世辞は上手いですね」

「ハハハハ。余は正直者で通っているつもりだがね。他にないのであれば、以上をもって……」

「あいや、暫く」

 

 挙手をしたのは陳平だった。

 自分が山越に行きたかったのかな……?

 

「どうした? 陳平」

「折角ですから、ここは山越族に土産を持っていきましょう。金1000と兵糧5000ほどであれば喜ぶ筈です」

「……うむ。だが、随分と出費が嵩むぞ」

「その辺は私にお任せを。この陳平が、それ以上を獲ってきますから」

「……どうやってかね?」

「南昌の賊どもは周辺の村を略奪しております。その略奪した品を、ごっそり持ち帰れば良いのです」

「……そんなことが出来るのか?」

「輜重隊を襲えば良いだけですからね。造作もないことですよ」

「……そうか」

「私以外にも鐘離昧、灌嬰が必要ですがね。それと兵1万ほどで結構です」

「だが、君らに何かあっては困る。念のために張任と周泰を連れていくが良い」

「その両名がいれば猶更心強い。では許可して下さるのですね?」

「当然だ。それらは元々、領民のものだからな。更に難民が来るかもしれぬし、敵を弱体化させるのにも役立つ」

「ハハハッ。太守殿は仁君だけでなく、先見の明がある名君でもあられる」

「……余に世辞を言っても、給料は変わらぬぞ」

「ハハハハ! これは手厳しい」

 

 会議の場はどっと笑いに包まれた。

 でも陳平の強奪が効果あれば、持久戦に有利になる筈だからね。

 却下する理由はないと思っただけだよ。

 長沙には、それでも残りの兵が7万5千近くいるし、厳顔や蒋欽もいるしね。

 

農業886 商業1050 堤防100 治安97 兵士数84222 城防御354

資金4392 兵糧35500 訴訟レベル2

 

 これが前回までのパラメータ。

 人口のデータはマスクらしいけど、既に人口は四十万超えていそうな気がするなぁ……。

 けど、まだ流民来るかもしれないから、治安は維持しながら訴訟レベルは下げるとするか。

 いっそのこと、一気に0レベルまで下げてしまおう。

 

 使用するのは張紘、周倉、陳平、鐘離昧、灌嬰、張任、周泰だから、その他だね。

 僕と尹黙、張昭、秦松が町造り、蒋欽、顧雍、是儀が訴訟係。

 陳端、徐奕、蔡邕が開墾。韓曁が採掘。王儁が帰順としよう。

 ……そして鞏志の武力アップだ!

 

農業923 商業1106 堤防96 治安100 兵士数75122(85122) 城防御354

資金1492 兵糧20500 

 

 最早、洛陽を超えたんじゃないかな……?

 南昌という所も元々、繁栄していたらしいけど……。

 南昌の上限値も高ければ、洛陽と許昌のような二大都市に出来るかもね。

 

 そして陳平、鐘離昧、灌嬰、張任、周泰らは兵一万を率いて南昌方面へ向かった。

 考えてみれば、僕が出陣しないで留守番という形は、これが初めてだ。

 敵の総大将は張梁という大物だけど、輜重隊を襲撃するだけだから、大した奴はいないだろうしね。

 

 そういう訳で今度は6月下旬の政略フェイズ。

「どんどんやってしまおう」と思った矢先、張昭が凄い形相でやってきた。

 何か凄く嫌な予感がするなぁ……。

 

「我が君! 一大事ですぞ!」

「何だね? 張昭殿。慌てて……」

「袁術が柴桑に攻め込みましたぞ!」

「な……何!?」

「柴桑がもぬけの殻になったので『まさに好機』と思ったのでしょう」

「……して、総大将は?」

「孫堅です。副将には陳紀と雷薄。兵は五万との報告ですぞ」

「……そうか。もし、我々が南昌で戦うとして、袁術は南昌での我々と黄巾賊との戦いをどう見るであろう?」

「……そうですな。どさくさに紛れて、南昌を占拠するでしょう。そして、親族である楊賜殿や袁隗殿と共謀し、南昌太守を配下の者にするでしょう」

「我々が南昌を占拠したら、どうでると思う?」

「現時点において、我が君は正式な長沙太守ではありません。そこを突かれるでしょうな」

「我らも黄巾賊と同じ扱いにして、帝から追討令を出させるということか?」

「可能性はなくはないでしょう……」

 

 ロクなことをしやしねぇ……袁術め。

 どうせ南昌だけでなく「長沙も寄こせ」とか言ってくるに決まっているしなぁ……。

 かと言って、ここまで育てた長沙を譲るのは癪だしなぁ……。

 

「我らが南昌へ進軍しなければ、南昌の張梁はどう動くかね?」

「そのまま居座り、江夏方面に進むか、若しくは会稽辺りを目指すでしょうな」

「会稽太守と言えば、誰であったか?」

「郭異。字を元平という人物です」

「ううむ。どうしたものか……」

 

 まず僕は郭異って人を知らないんですけど……。

 名君なの? どうなの?

 ああ……ググれたらなぁ……。

 

「会稽太守の郭異殿だが、どういう人物か張昭殿。貴殿はご存じかね?」

「一言で言えば可もなく、不可もなくといったところです。それなりに人心も安定しているようですが……」

「そうか。我らのことはどう思っておるだろう?」

「そこまでは……。何とも言えませぬな。……ただ」

「ただ……何だね?」

「山越の民とも、それなりに通じている由にございます」

「では、山越を通じて、どうにかなりそうか?」

「……それも何とも言えませぬ」

 

 話が煮え切らないわぁ……。

 ただ、張昭も分らないだろうから、仕方ないんだろうけどねぇ。

 

「仕方ないな。山越の出方次第ということにしよう」

「お役にたてず恐縮です。我が君」

「張昭殿。貴殿は古の蕭何に匹敵するほどのお方だ。それに人には向き不向きがある。気にすることはあるまい」

「……この張昭。必ずや我が君のお役に立ちまする。では、仕事があるので」

「うむ。区分け整備の監督に尽力してくれ」

「ははっ!」

 

 ……鐘離昧がいたら、また微妙な顔したのかなぁ?

 ……まぁ、いいか。

 袁術というか孫堅の動向は、陳平に聞いた方が良さそうだし。

 まずは山越族の族長達に向かった張紘次第だなぁ……。

 てか、いっそ柴桑の孫堅を、配下や兵ごと引っこ抜けたらいいのになぁ……。


 そんな事を考えていたら、あっと言う間に6月下旬の政略フェイズ。

 陳平らは仕方ないとしても、張紘と周倉もまだ帰ってこねぇ……。

 そのまま留め置かれたなんて冗談じゃないよ……。

 流石にないと思いたいけどねぇ……。


 訴訟は0レベルになったし、もう悩ませるものは無くなったけど……。

 そう言えば難民問題は片付いたのかな? どうだろう?

 一応、王儁に聞いてみるか……。

 

「王儁殿。ちょっと良いか?」

「これは我が君。山越の民も武陵蛮らを始めとする民も皆、太守とのの仁徳になびいております」

「うむ。余の願いは戦いを無くすことにある。そこには漢も異民族も関係ない。ちと、理想が過ぎるかもしれませんが……」

「しかし、それこそが我らの進む道でございます」

「そうだ。で、一つ聞きたいことがあるのだが……」

「はい。何なりと」

「もう難民達は長沙周辺におりませぬか?」

「その件に関してはご安心を。既に周辺の難民は引き入れております」

「……そうか。それを聞いて安心しました」

「ですが、近隣にはまだ溢れております。特に豫章では酷い有様のようです」

「豫章郡といえば南昌がある地。それにしても……一体、豫章太守の祝括殿は何処に行ったのかね?」

「……行方を晦まして以来、何処にいるか分りませぬ」

「全く……身勝手な。前長沙府君は抗徐こうじょ殿の後を継いだ後、重税を取るだけ取ってから、区星を恐れて何処かに雲隠れとは……」

「小人としか言い様がありませんでしたな。しかし、その小人も今は何処にいるのやら……です」

「……もう良いわ。話していてムカムカしてきました」

 

 自分から知らない人の名前がスラスラ出て来るからビックリ!

 どうも、何かに憑りつかれたような不思議な気持ちで、今日に至っている。

 ま、上手くいっているからいいけどさ……。

 

 暫く王儁と雑談をしていると、今度は是儀が慌ててやってきた。

 6月下旬の政略フェイズに移行しようと思っていた矢先にね。

 

「大変です。朝廷から勅使殿が参られましたぞ」

「なっ!? ……ついに来たか。早速、お会いすることに致そう」

「……ですが、お気をつけあれ」

「どういう意味だ?」

「あの者はどうやら趙忠の派閥の者らしいかと……」

「……勅使の名は分かるか?」

「……左豊殿です」

「……そうか。宦官も曹嵩殿の義父曹騰殿や呂強殿のような者達だけであれば、ここまで天下は荒れ果てていないだろうが……」

 

 念願の長沙太守に正式任命かもしれないけど、賄賂の要請だろうなぁ……。

 それに何処かで聞いた名だと思ったら、盧植を檻車に入れた奴じゃねぇか……。

 長沙の発展ぶりを見て、幾ら要求されるんだろ……?

 僕は複雑な気持ちで、勅使と面会することになった。

 

「司護。字は公殷。此度の勅使殿との謁見、心待ちにしておりました」

「おお、苦しゅうない。しかし、長沙の発展ぶりは見事じゃ」

「これも漢の御威光の賜物でしょう」

「良く分かっておるではないか。その辺の田舎の賊と比べ、そなたには見所がありそうじゃな」

「……無位無官の身ですから、某もあまり変わりますまい」

「ホホホ。あまり遠慮が過ぎると嫌味になるぞよ」

「そのようなつもりは御座いません」

「しかし、長沙の発展に比べ、ここの政庁は質素というか……。正直、狭い上に汚いのぉ。もっと威厳のある建物にしなければ、漢の威厳も損なうぞ」

「申し訳ございません。民の為に金品を惜しみなく使ったものですから」

「……民の為のぉ。その前に、そなたは漢の臣を名乗っているのではないか?」

「……『そう有りたい』と願っております」

「ならば、その方に絶好の機会をやろう。近頃、不審火で宮殿が燃えてしまってのぉ」

「………」

「その為、帝は龍顔を曇らせておる。臣としては心苦しい限りじゃ」

「…………」

「金5000を差し出せば、そなたを正式な長沙太守に任じ、候の位をつけてやろう。どうじゃ? 悪くない話であろう」

 

 高ぇえよ!! 何だよ! それ!

 ボッタクる気、満々じゃねぇか!

 大体、手元にないし、あったとしても無理だ!

 

「そのような大金はございませぬ」

「嘘を言うでない。民からもう少し税を増やせば、すぐに貯まる筈じゃぞ?」

「現在、民は困窮しております。四公六民でも民は苦しいと言いますのに、これ以上は無理かと存じます」

「……四公六民じゃと? たわけ者か!? その方は!」

「……たわけ者かもしれませぬが、民の為、止む無く行っている次第でございます」

「『帝がお困りじゃ』と言うておるに、その方は不忠な行為を民のせいにしておる!!」

「民を労わることも、帝の勤めかと存じまする」

「貴様! 朝廷を愚弄する気か!?」

 

 ……こうなる予感はしていたよ。

 大体、金5000で済む訳ないだろうに。

 後々「もっと寄こさないと官位や太守の座を剥奪するぞ!」とか言うに決まっているしなぁ。

 首にして送りたいぐらいだけど、それはまだマズいだろうしなぁ。

 ……どうしようかな?

 けど、またもや勝手に口が動いちゃった……。

 ……もう、どうなっているの?

 

「いい加減になされよ! 朝廷を愚弄しているは貴様であろう!」

「なっ……何を申す! 勅使のわしに対して……」

「黙らっしゃい! 本来なら民の窮状を報告し、お諫めしなければならない者が、たかが宮殿設営の為にですと!」

「貴様! 何を言っているのか、分っているのか!?」

「分っております。この私を賊にしたいならおやりなさい。元々、私は漢の臣ではない」

「馬脚を現しおったな! この逆賊め!」

「漢の高祖は項羽に反旗を翻しております。それを言えば、高祖も元は逆賊ということになりますぞ!」

「……正気か!? 貴様!!」

「ええ、正気です。我らが黄巾党を降し、そのまま版図を大きくしたら、このままでは済みませぬぞ!」

「良いか! この事は全て帝に告げる! 後悔しても知らぬぞ!」

「どうぞ、おやりなさい。しかし、私を賊とするならば『貴殿は洛陽にて曝し首になる運命である』ということをお忘れなく」

 

 あ~あ……やっちゃった。

 左豊は当然、ガンを飛ばしながら帰って行った。

 けど、張角がまだ頑張っているし、どうにかなるかなぁ?


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