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第百二十三話 結婚ラッシュに皇帝逃亡!?

 ・・・いや、本当にこれはありえない。

 何故なら柏慈(貂蝉の字)が孫権と結婚したという話だからだ!

 年齢的には柏慈の方が五歳ほど年上みたいだけど、あまりそれは問題にならなかったらしい。

 ・・・ま、確かにそれなら袁術も手は出せないけどさ・・・。

 

 そしてこの年、各地で各勢力において婚礼の情報が流れてきている。

 まずは涼州王の劉協が馬騰の娘と結婚。

 趙雲はどうなるんだろ・・・?

 ま、それを言うなら「呂布は?」ってことになるか。


 更に曹操の娘が劉表の次男である劉琮と結婚。

 これは完全に袁術への当てこすりに近い。

 それに曹操と昵懇の仲である蔡瑁も何かしらの関与をしていそうだ。


 また、袁紹の娘が廬植の息子である盧毓ろいくと結婚。

 どうも俄に北方が緊張し出しているらしく、袁紹としては公孫瓚との関係を悪化させたくないらしいからだとか。

 意外なことに公孫度の勢力が精強になりつつあるらしいとか・・・・


 というのも、朱儁が死亡したらしく、それと同時に朝鮮半島の大部分と幽州の遼東郡から分離し、新たに燕州が設立された。

 その燕州牧に公孫度が任命されたらしいのだけど、これに袁術が関与しているんだとか・・・。

 因みに朱儁は病死らしいけど、それが本当かは不明です。

 そして、倭国陣営とは和睦が結ばれた模様。

 どうも倭建ヤマトタケルが派手に暴れたようでして・・・。

 

 あと劉寵の養女である戚氏が劉繇の長男である劉基と結婚。

 これで豫州王と揚州王の反体制同盟が完全なものになった形だ。

 というよりも完全に徐州を挟み撃ちするつもりだろう。

 因みに徐州牧には袁術の甥である袁胤が任命されたらしい。

 劉備、陳親子同盟を相手に勝てる訳がないと思うけど・・・。


 そうそう。柏慈を執拗に熱望していたデブ帝なんですが、何と言うか・・・。

 数名の側室を貰い、既に柏慈のことをどうも忘れていたようでして・・・。

 ・・・僕は一体、何をやっているんだろう・・・。

 おのれぇ! 楊松、董承の次はテメェだ! クソデブ!


「・・・兄ぃ。また変な言葉で騒いでいるぅ」

「・・・あ、小督」

「ずっと小難しいこと考えているから頭が変になるんやで。しっかりせぇやぁ」

「・・・・・・」

 

 ・・・しまった。小督がいたことを忘れていた。

 ま、でもこの癖が祖父からの遺伝みたいに思われているので、問題がない訳ですが・・・。

 

「てかさ。思うたんやけど、兄ぃも嫁さん貰わへんの?」

「ちっ! 違う! 断じて違う!」

「ほならええけどなぁ・・・」

 

 ・・・うう。早いところ何とかして嫁候補を探さないと・・・。

 じゃないと転生した意味が全くない!

 ・・・ま、それはそれで良いとしてだ。

 

「・・・そ、それよりもだな。小督」

「何や?」

「お前、その年で酒を飲むとは・・・。しかも女子の身分で・・・」

「酔えば酔うほど強くなるんやで。それがこの武術の奥義やさかい」

「いやいや・・・。言葉使いもだな・・・」

「五月蠅いなぁ・・・。ほなら、兄ぃも試しに飲んでみぃ」

 

 その直後、小督からポイと瓢箪を渡された。

 この歳で飲酒なんて何を考えているんだ!

 女の子が酔拳なんておかしいだろ! 酔拳キャラは爺限定の筈だ!

 そうでなければジャッキー以外は認めません!

 

「ええから飲めぇ!」

「う・・・ぐぐ・・・」

 

 五歳児の妹が兄貴に酒を強引に飲ませるなんておかしいだろ!

 てか、古今東西こんな妹キャラなんている訳ねぇだろ!

 色々とおかしいぞ! このゲーム世界!

 

 しかし、飲んだのは酒ではなかった。

 そう・・・これは・・・。

 

「こりゃ水じゃ!?」

「アハハハ! いくらウチでもこの歳で飲みませんよ~だ! バレたらかあちゃんに何されるかわからへんしな」

「・・・・・・」

 

 なんか映画でも「こりゃ水じゃ!」ってセリフあったな・・・。

 ま、どうでもいいか・・・。

 

 こんなやり取りを二時間ほどした後、僕は自分の部屋へと戻った。

 既に西暦二百年ということは天下分け目の戦いである官渡の戦いの頃だ。

 けど、未だに曹操は荊州の小さな郡の太守だし、孫堅は存命中であるも同様で、しかも袁術の配下に近い存在だ。

 

 やはり曹操などが大勢力になったのは、ある意味において董卓の存在があったからだろう。

 董卓がいたから土台が揺らいでいた漢王朝の統治が一気に崩れた。

 その混乱期があったからこそ、曹操は大きな勢力になった訳だろうしね。

 

 そう考えると、そのきっかけを壊したのは僕なんだろうな。

 一番のチャンスはデブ帝の親征において、デブ帝を殺しておけば確実にその混乱を招いた筈だ。

 ・・・でも、親征とは名ばかりで宴会ばっかりな上に、攻めてきたのは陶謙のバカ息子だけ・・・。

 こちらはこちらで、劉表や劉岱、蔡瑁、曹操らに気遣って積極的に攻撃しなかったし・・・。

 

「それを後悔なさっているのですか・・・?」

「あ、ジンちゃん」

 

 時折、ジンちゃんは姿を現してくれる。

 当然、頭の中でだけどね。

 

「後悔はしていないよ。あの時はあれが最善だった」

「では、何が不満なのです? 今更、始まったことではないでしょう」

「そうだけどさ・・・」

「このままあの凶賊に任せておくのも一興ですよ。あの者であれば事態を変えることは出来る。少なくともですが・・・」

「・・・嫌だよ。フクちゃんじゃ手段を選ばなすぎる。今でも殺された名無しの官吏のおじさんの顔がチラつくし・・・」

「悪戯に変革を好むということは、そういった事も必要ではありませんかね?」

「ちょ・・・ちょっと・・・ジンちゃんはフクちゃんを肯定する気?」

「あの者は法家の権化みたいな男です。例え自身の親や親友でも咎人となれば、決して容赦はしないでしょう・・・」

「・・・けど儒教、いや孔子はその場合『親を逃がすべし』と説いている」

「はい。左様です」

「・・・でもさ。皆がそんなことをしていたら社会体制おかしくならない?」

「なりません」

「・・・何故?」

「その場合、子が親を諭して罪を償わせるのが由となりえるからです。また、子が親の贖罪をすることも出来ます」

「・・・・・・」

 

 どうにも解らん。

 それは確かに理想かもしれないけど、現代日本じゃまず有り得ないでしょ。

 親が殺人を犯したら子供が死刑になれっていうことかい?

 

「ハハハ。確かにボンちゃんには理解し難いでしょうね」

「・・・当然だよ。子は親の為に生きている訳じゃないし・・・」

「ですが、普通の親なら『子に罪を償ってもらい身代わりに死んで貰おう』なんて思いませんよ」

「普通はね・・・。でも、例外もいると思うけど?」

「ええ。しかし簡単なことです」

「・・・意味が分からん」

「それは人の形をした別物だからです。故にそういう者は八つ裂きで丁度良いでしょう」

「・・・・・・」

 

 ・・・サラリと今、恐ろしいこと言いやがった。

 けど、それって凄いご都合主義なんじゃ・・・。

 

「要は子を思わない親は親とは呼べない。親を思わない子は子とは呼べない」

「・・・でもさ。親子仲が険悪な家庭なんて探せばそれなりにいると思う」

「それは本来の家庭の姿ではありませんね。従って無視して良いでしょう」

「・・・・・・」

 

 ・・・・・・ダメだ。理想主義が拗れて都合が良いことしか言わねぇ・・・。

 儒教の思想って本当にこういうことか?

 ・・・なんか間違っていませんかね?

 

「要するにです。そういう家庭を作り出さない世の中になれば良いでしょう」

「・・・ま、まぁそうだよね・・・」

「その為には教育が必要なのです。人のさがは悪である故、それを糺さなければなりますまい」

「・・・はぁ」

「学は以てむべからず。分かりますね?」

「・・・・・・」

 

 本当に儒家なの? ジンちゃんって・・・。

 ま、それ以前に仁君くさくないなぁ・・・。

 なんか変わったような気がする・・・。

 

 しかし、よくよく考えてみると、要は「腐ったミカンは捨てろ」ということなのかな?

 確かに中にはどうしようもない奴もいる。

 具体的に言えば、楊松や袁術、陶謙のバカ息子やデブ帝みたいな奴は切り捨てるしかないし。

 

 そう考えれば、纏めると基本的には普通の人々はちゃんと教育していけば自ずと世の中は良くなる。

 ただし例外の連中は「人でなし」ということになる為、早々に切り捨ててかかる。

 そんな連中は教育の施しようがないから当然という訳か・・・。

 ドライだけど、そう考えれば現実的か。

 

「当然ながら、人は誰でも間違います。それは人の性質は惰弱で本来は悪だからです」

「・・・へ?」

「故にそれを見極めることこそ重要・・・」

「ま、待って・・・。ひょっとしてジンちゃんの本性って・・・」

 

 もう分かったよ! 荀子じゃねぇか!

 てか、荀子って仁者なのか!?

 ・・・まぁ、理想論だけを掲げて何も出来ないよりは遙かにそうか・・・。

 

「ハハハ。私の正体がお分かりになられましたか」

「うん。だからフクちゃんの行動にも理解があったんだね」

「そういうことです。ただ、あの行動は法家だけに固執し過ぎている。それ故、問題なのです」

「うん。法が無ければ社会が成り立たない。だが、余りにも法で縛り付けると皆は恐縮し、発展性も見込めない」

「そういうことです。本来、庸があってこそ法も必要となる訳です」

「だよね。簡単に言えば、要はバランスってことだ。ということは、当然ながら儒の精神だけ固執するのもおかしい」

「・・・そういうことです」

 

 こっちも三年間、みっちりと鄭玄とかに叩き込まれたからな。

 周不疑もいて助かったけどね。

 

 僕も色々と勉強したので、自ずと荀子ということは分かった。

 そして、この荀子と始皇帝だけど、確かに関係性はある。

 まずそれは荀子の弟子の一人、李斯という人物が深く関わる。

 

 既に趙高が十常侍になっているのは僕も知っている。

 ということは、今後において李斯も何らかの形で絡んでくると見ていいだろう。

 現在では確認出来ていないけど、傾向からして既に存在していても不思議じゃない。

 

 それと同時に、李斯の讒言で殺された韓非も存在しているのかもしれない。

 何気に読んでいた史記のお陰でかなり楚漢戦争のことを知ることが出来たからだ。

 更に春秋戦国時代のことも憶えたけど、これは人材収集には余り役に立たないだろうな。

 でも、他で役に立つかもしれないから由としておこう。

 

「ああ、ここにおられましたか! 竹千代君」

「・・・? 如何した? 元直君」

 

 いつもは冷静沈着の周不疑が凄く慌ててやって来た。

 フクちゃんがとうとう無謀すぎる政策を打ち出してきたのだろうか・・・?

 正直、勘弁して欲しい・・・。

 

「聖上陛下が崩御されたということです!」

「えっ!? 陛下が!?」

「はい! これで情勢がどう動くか分からなくなりましたぞ!」

「・・・・・・」

 

 あのクソデブ死ぬならもっと早く死ねよ!

 最悪のタイミングじゃねぇか!

 

「・・・となると当然、弁皇子が次の帝となられるんでしょうね?」

「いえ、それが・・・」

「・・・まさか涼州王君、いや協皇子が?」

「違います。もう一人の皇子です」

「・・・・・・皇子は二人の筈ですが」

「いえ、それがもう一人。側室の一人の間に子がいたとのことで・・・」

「なんと!?」

「その皇子に帝位を継がせるとの密勅があったとのことです」

 

 そんな事をしたら何進、何皇后の兄妹らが黙っている訳がないだろ!

 いや、それ以前に十常侍らが黙っている筈がない!

 宮中で他にも暗躍していた奴がいたのか!?

 

「・・・しかし、何大将軍(何進)らが大人しく引き下がる筈がありますまい。宮中の様子はどのようなことに?」

「私も詳しくは存じておりませんが、陛下は都を逃れた由」

「・・・逃れた先は何処です?」

「それは憶測や噂が絶えない状況です。まことしやかに噂されているのは涼州ですが・・・」

「・・・・・・」

 

 もう滅茶苦茶だな・・・。

 それはそうと、ひょっとして弁皇子が偽者という噂はクソデブにも伝わっていたのかな・・・?

 それなら当然といえば当然か・・・。

 

 しかし、皇帝は何処に逃げたんだろう・・・。

 本当はこっちに逃げてきて欲しいけど、現状ではうちら逆賊だしなぁ・・・。

 同じ逆賊扱いでも異母兄の劉協の方に行くのは当然か・・・?

 劉寵じゃ先代のクソデブを嫌っているから無理だろうし・・・。

 

「それよりも元直君。気に掛かることがあるのですが・・・」

「はい。何でしょう?」

「陛下は現在、お幾つなのですか? それと供の者らは・・・」

「それも行き先同様、不明なのです・・・」

「・・・成程」

 

 如何せんこれでは情報が少なすぎる。

 ここはやはり范増に頼りたい所だけど、来てくれるかな?

 噂ではほとんど隠居状態らしいけどさ・・・。


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