第十七話 スナイパー鞏志誕生!?
さて、4月下旬の政略フェイズだ。
周倉も味方に出来たから、水上戦はかなり有利になったぞ。
これで柴桑に改めて出陣かな?
……と、思っていた矢先、王儁と張昭が帰ってきた。
劉表との共同戦線は上手くいったかな?
「我が君。只今、戻りました」
「うむ。王儁殿、大儀であった。……で、劉表殿は何と言ってきた?」
「江夏太守の黄祖に命じておくとのことです。ですが……」
「黄祖か……。それと何だ?」
「周泰殿、蒋欽殿の首を持ってこいと……」
「……なっ!?」
「……如何なさいますか?」
「如何も何もないわ! そのような外道な真似を、余がすると思うか!?」
「この王儁。それを聞いて安心しました」
「もう良い! 劉表如きなんぞにもう頼まぬ! この上は独力で征伐してくれようぞ!」
「それと……」
「……まだ何かあるのか?」
「先月、太守殿が留守でしたので、流民らを入れることが出来ませんでした」
「おお、流民が……」
僕は少し考えてみた。
治安はすぐに何とかなりそうだし、ここは一気に入れてみよう。
そうしないと兵士数が増えないからなぁ……。
徴兵という手もあるようだけど、無理やりすると、どうもマズくなりそうなんだよね……。
「王儁殿。触れを出すぞ。周辺の流民たちは『誰でも来い』とな」
「誰でも……ですか?」
「そうだ。武陵蛮、長沙蛮、零陵蛮、南郡蛮、江夏蛮、五渓蛮、桂陽蛮、山越族、黄巾や水賊の残党、全てを含む」
「……!? それは無茶では!?」
「無茶ではない。皆、同じく困っているのであろう?」
「……ですが、宜しいので?」
「君は反対なのか?」
「いえ、余りにも唐突過ぎたもので……」
「王儁殿。『四海皆兄弟』と申すではないか。余が触れを出すと申したのだ」
「……承知しました」
しかし、その結果が……。
農業769 商業881 堤防65 治安0 兵士数76143 城防御354
資金5472 兵糧65500 訴訟レベル4
治安0!? てゆーか、訴訟レベル4って何!?
かなり危険なんですけど!?
「お主も無茶するのぉ」
「おお、水鏡先生! 助けて下さい!」
「訴訟レベルは5になると暴動起こすぞ。さっさと下げるが良い」
「今まで訴訟レベルなんて無かったじゃないですか!?」
「レベル1までは表示されないからのぉ」
「あと、堤防まで凄く減っているんですけど!?」
「当然じゃ。難民達が自分の田畑に水を引こうとして、勝手に堤防を崩すからの」
「ええっ!? そんなの聞いてないよ!」
「それで訴訟も増えるのじゃ。幸い、お主の陣営には鎮撫持ちが多いから暴動は起こっておらぬが、時間の問題じゃぞ」
「確かに兵士数はかなり増えたけど……。キツ過ぎる……」
「ちなみにじゃが、御触れ出したままだと、次の政略フェイズまで難民が押し寄せるからの」
「じゃあ、治安がまた0になる!?」
「あまりマイナスが多いと、いくら鎮撫持ちが多くとも暴動起こすからな。じゃあの」
くっそぉ! まさか、ここまで多いなんて!
けど、難民って何人来たら……ゲッ…十万以上!?
桂陽と柴桑だけじゃなく、江陵や武陵や南昌からまで……。
おい! 蔡瑁! 曹寅!! それと、いきなり湧いて出てきた祝括!!!
てめぇら仕事しろ!!
そんな事を思っていたら、蔡邕がやってきた。
一体、何の用だと思っていたら……。
「太守殿。この蔡邕、謹んで申し上げます」
「どういたした? 蔡邕殿」
「兵糧庫を開け、兵糧30000ばかり民の為に分け与え下さい」
……多すぎです。
けど、このままじゃ、反乱起きてしまいそうな予感するし……。
「それは良い考えです。早速、門番に言ってお出ししましょう」
「感謝致します! 太守殿!」
「当然のこと。『衣食足りて、礼節を知る』と申します。さぁ、門番に余が許可したとお伝え下さい」
30000かぁ……。
一気に柴桑攻略が遠くなったなぁ……。
まぁ、いい……5月上旬の政略フェイズ開始。
治安と訴訟をどうにかしないといけないから……。
まず判官持ちは蒋欽、顧雍、是儀、秦松かぁ……。
こいつらは全員、裁判長にしてしまおう。
で、僕と尹黙と張昭が町造り、徐奕と蔡邕が開墾、張紘と陳端が治水。
王儁が帰順で……残りは全員、巡回にあたれ! 鞏志も……!?
あ、鞏志は固有スキル取得中だった……。
農業794 商業910 堤防88 治安51 兵士数77043 城防御354
資金6082 兵糧35500 訴訟レベル3
……四人も使って訴訟レベル1しか減ってないぞ!?
どういうことだ! 出て来い!
「うるさいのぉ……。訴訟レベルはレベル分につき一名必要なのじゃ。よって4レベルだと四人必要なのじゃ」
「じゃあ、次は三人でいいんだね!?」
「そうじゃが、まだ難民来るから増えるぞ。それもよしよし」
「全然、良くない!」
くっそぉ……。また消えやがった。
金が少なかったら、どうなっていたか……。
それと鞏志のパラメータでも見てみるか……。
便利な固有スキルがついていれば良いけどねぇ……。
鞏志 能力値
政治3 知略4 統率5 武力5 魅力3 忠義4
固有スキル 弓兵 罵声 狙撃
何だ? 狙撃って……?
という訳で再度、カモン!
「よりによって『狙撃』とはの……」
「おお、先生。この狙撃ってどういう効果あるんです?」
「戦場において武力が自分以下の者を、一瞬で殺すことが出来る特殊固有スキルじゃ……」
「強いけど……鞏志の武力じゃあまり……」
「……何を馬鹿なことを言っておる。お主も武力1ではないか」
「ゲッ!? ひょっとして、相手が文官や軍師とかでもアリなの!?」
「射程内に入れば、そういうことじゃの。ただし、護衛のスキル保持者が傍にいる場合は無効となる」
「……つまり、僕は張任か周倉を傍においていないと、狙撃が発動した場合、おしまい……?」
「そういうことじゃ。狙撃持ちには充分、注意しておくことじゃな。ホッホッホッ。ではの」
「………」
「それと今回だけじゃが、特別にボーナスを進ぜよう」
「ボーナス?」
「中旬フェイズじゃ。では、せいぜい頑張れ。ホッホッホッ」
……今までごめんなさい。鞏志様。
お願いですから、出奔だけはしないでください……。
けど、これで武力5以下の大将が出てきたら、鐘離昧とかじゃなくても簡単に終わらせることが……ん?
楊松。これで君の命は風前の灯のようだぞ……フフフ。
さて、色々な意味で怖いけど、続いて初の5月中旬の政略フェイズ……。
ボーナスとかいうけど、どうせなら可愛い女武将とか……。
言っても仕方ないか……。
それと確か、また難民来るんだよな……。
農業812 商業952 堤防71 治安0 兵士数82422 城防御354
資金6082 兵糧35500 訴訟レベル4
大都市になったは良いけど、スラム化が酷そう……。
訴訟レベルも4までで、何とか保ったのは良いけど……。
今回が五万らしいから、前のと合わせると十五万の難民が押し寄せてきたってことか……。
そりゃあ、訴訟も増えるし、治安も悪くなるわぁ……。
でも、これ以上に難民が増えないなら何とかなりそう。
大体が前回と同じで良いよな……。
僕と尹黙、張昭が町造り、韓曁は銀山の採掘。
徐奕と蔡邕、陳端が開墾、張紘が治水。
蒋欽、顧雍、是儀、秦松が裁判で、王儁が帰順。
……残り全部は鞏志も追加で、また巡回だ!
農業849 商業995 堤防77 治安55 兵士数83322 城防御354
資金4182 兵糧35500 訴訟レベル3
何とかなったぁ!!
けど、柴桑への出陣はまだお預けだなぁ……。
でも、これを乗り切ったということは……。
「……お主、やりすぎではないか?」
「おお、于吉道人様。待っていました!」
「まぁ、良い。では……」
「サイコロですね。分ります」
「……さっさと振れ」
出目は6だった!!! 何!? この強運!
でも、イカサマではありません!
だから呪い殺さないで!!
「おっかしいのぉ……? 本当にイカサマしていないかのぉ……」
「じゃあ、次は于吉道人様が振って下さいよ」
「……良いのか?」
「……変なのじゃなければ」
……出目は3だった。
断っておきますけど、僕はイカサマしていませんから!
「ふ~む……つまらん!」
「……どういう意味です?」
「まぁ、後々わかる。では、これにて」
于吉道人はそう言うと、また消えてしまった。
……けど、何がつまらないんだろう?
僕はその事が忘れられずにいたが、いつものように町へ出ては、町人たちと一緒に町の整備をしていた。
僕が一仕事を終え、汗を拭ったその時である。
僕に声をかけてきた男がいた。
身なりは行商人みたいだけど……。
「貴方が噂のここの太守さん?」
「……そうだが? 君は?」
「そんなことどうでもいいじゃないか。けど、こんな事をしていて、誰かに暗殺されると思ったことはないのかい?」
「それは家臣達にも良く言われるがね。こうしている方が落ち着くんだ」
嘘です! 出鱈目です!
固有スキル狙撃の話まで出ているのに、こんな所で野良仕事なんて落ち着ける訳がないです!
僕は城の中で、ゆっくり昼寝でもしていたいです!
けど、何故だか体が勝手に動くんだよ!
「本当に変わったお方だ。いやぁ、面白い。実に面白い」
「……そんなに面白いですかね?」
「中々いませんよ。そんな奇特でド阿呆な方は」
「ど……ド阿呆?」
「ド阿呆じゃありませんか。家臣の言う事も聞かず、町民の人気取りなんぞ」
「ハハハ! 君は随分と失礼な奴だな」
「ハハハハ! 家臣さん達に変わって、余計なお世話をしてしまいました!」
「でも、いい加減に誰の差し金か、教えてくれても良いのじゃないか?」
「そうですな。陳平君にちょいと頼まれてね」
「何? 陳平に?」
「ええ。で『面白そうなら配下になってやろう』と思いまして」
僕はちょっと考える振りをして、目を瞑った。
こいつが新しい人材に違いないと思ったからだ。
灌嬰
政治7 知略8 統率9 武力7 魅力6 忠義6
固有スキル 商才 騎兵 疾風 機略 捕縛 看破 制圧
滅茶苦茶強い! てか、便利!!
それに……。
「ほいほい。捕縛は敵将を捕まえやすい。制圧は砦や城を攻めた際に陥落させやすい。じゃあの」
あ、水鏡先生。もう終わりですか。
まぁ、いいや。兎も角、有難うございます。
「陳平の知り合いか。なら、話は早い」
「ええ、良いですよ。貴方の家臣になってやりましょう」
「おお! 真ですか!?」
「ですが、条件があります。今後はこのような事はしないように」
「それは……仕方ない。約束しよう」
「太守さんの約束だ。どこぞの宦官みたいに簡単に反故にしないで下さいよ」
「ああ、分った、分った。そう言うな」
こうして灌嬰が加わった。
……結局、于吉道人は何が不満だったんだ?
まぁ、いいや。余計なことを考えても意味ないし。
それに、これで堂々と昼寝が出来るしね!
で、灌嬰を加えた5月下旬の政略フェイズ
商業は1000が上限じゃないのかな?
でも、突破するかもしれないし、試しにやってみるか。
ということで僕、灌嬰、尹黙、張昭が町造り。
蒋欽、是儀、秦松が裁判係。王儁が帰順。
陳端、徐奕、蔡邕が開墾。顧雍と張紘が治水。
巡回は鐘離昧、張任、厳顔、周泰、陳平となった。
農業886 商業1050 堤防100 治安97 兵士数84222 城防御354
資金4392 兵糧35500 訴訟レベル2
ふぅ……。ほぼ元に戻ったと言っていいな……。
一時はどうなることかと思ったけどね。
でも長沙の商業の上限って幾つなんだろ???
数日後のこと、僕は灌嬰にあまり町に出歩かないように釘を刺されたので、仕方なく政務をこなしていた。
ううむ……。昼寝が出来ないじゃないか。
一応、文字が読めるように修正されたらしいから、問題はないんだけどさ。
「どのように?」だって?
日本語に見えるようになっていたんだよ。何時の間にか。
けど、気を抜くと、また読めない漢文になっちゃうんだけどね。
そのせいで相当疲れるんだよ……。
そんな感じで「期待していたことと違う」と思っていた矢先、政務室に陳平が入ってきた。
「精が出ますね。太守殿」
「仕方なかろう。『町でうろつくな』と誰かさんが、灌嬰経由で余に言ってきたんだからな」
「そう言わないで下さい。周倉や張任がいつも傍にいるとは限らないでしょ?」
「それもそうだ。良く気づいてくれた。礼を言う」
「いいんですよ。これも仕事のうちですし、ここで我が君がいなくなったら、つまらないじゃありませんか」
「そうか……。で、何だね? 何か吉報がありそうな顔つきのようだが」
「実はですね。柴桑の賊から随分と兵の脱走が相次いでいるらしいですよ」
「ほう……。それは何故かね?」
「……嫌だなぁ。太守殿が無茶をしたからですよ」
「……余が? いつ?」
「御触れを出したでしょう。『元が賊でも受け入れる』ってね」
「ああ……。それでか……」
「いやぁ、本当にお見事な采配です。こういう手で相手を崩しにかかるとはね」
「いやいや。偶々であろう。それで柴桑の賊はどうしたのかね?」
「既に柴桑にはいませんよ」
「何!? それは真か!?」
「本当です。ですが、ちと面倒なところにねぇ……」
「面倒なところ?」
「柴桑から南の南昌に大部分が移ったんですよ」
「……ということは?」
「何を寝ぼけているんです? 長沙への侵攻に全力を注ぐつもりですよ」
「……では、我が軍は完全に黄巾賊の矢面に立ったという訳か?」
「はい。江夏や汝南、淮南、廬江辺りから、今でも南昌に集結しつつあるということです」
「それよりも南昌の守りには誰もいなかったのか……?」
「あの祝括とかいう豫章太守なんですが、どうも逃げたようで……」
「また逃げたのか……」
「はい。どうも民衆からは大分、嫌われていたようですからね。祝括が逃亡したと知ると南昌の民衆は大喝采だったとか……」
「……全く。ロクな太守がおらんな。この周辺一帯は……」
「噂では十常侍の縁者らしいですしね。その前の封祁とかいう太守もそうでしたが……」
「……だが、少し矛盾してないか? 柴桑からは脱走兵が続出していたのであろう?」
「ええ。ですが、面倒なことに水賊と黄巾賊との間に、内部抗争があったらしいんですよ」
「……で、敗れた連中が『内部抗争に敗れて脱走した』という訳か?」
「しかも丁度、その頃合いに太守殿が御触れを出したっていう訳でして……」
「……なんと」
「しかも厄介なことに、南昌には張角の弟である張梁ってやつまで来たようですし」
「……人公将軍のか?」
「はい。冀州じゃあ、また張角が盛り返してきたから『今度は揚州と荊州を』ってことでしょう」
「……!? 馬鹿な! 冀州において官軍は敗れたのか!?」
「何でも盧植殿が更迭され、代わりに来た董卓ってのが、大失敗だったみたいですなぁ」
「……何ということを。朝廷は何を考えているんだ?」
「そうですねぇ。『宦官に賄賂を贈らなかった』か、或いは『宦官が黄巾賊の輩に買収された』のどちらかでしょうな」
「……南昌との戦いは長期戦になりそうか?」
「相手も既に十万を超えているらしいですし、南昌の宝物庫や兵糧庫を強奪して、祝括が貯め込んでいた金や食糧を確保したとのことですからねぇ」
「それで豫章からの難民がやたらと多かったのか……。道理でおかしいと思ったわ」
「本来なら南昌への移動中に袁術辺りが追撃する筈ですが、あの袁術とかいうボンボン太守は、自分の勢力拡大しか考えていないですしね」
「……劉繇殿はどうしている?」
「ボンボン太守を警戒して、それどころじゃないようです。廬江太守陸康と徐州太守陶謙と盟約を結んで、袁術に対抗しようとしているらしいですよ」
「こんな時に内紛を起こしている場合ではないだろう!」
「そんな事を私に言われましてもねぇ……」
「……確かにそうだが」
「それとですね。一つだけ案があると言えば、あるんですが……」
「……何かね?」
「いっそ山越王と手を結び、南昌への共同戦線を結びましょう」
「……出来るのか?」
「ええ、太守殿は山越人にも評判が良い。彼らが味方になれば楽になりますよ」
「……そうか。ならば話は早い」
「ですが、問題もあります。勝手に山越王らと手を結べば、朝廷から不評を買うかもしれませんが……」
「良い! そんな事は後回しだ!」
果たして南昌との戦いはどうなることやら……。




