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第百十八話 また転生ですか…?

 西暦197年一月、光熹四年となった。

 荊州へ使いを出し、司進やその家族、鄭玄や陳平らも続々と深圳へ入ってきた。

 深圳は既に大都市となり、今年から待望の内政フェイズが行うことが出来る。

 因みに現在の深圳は以下の通り。

 

農業0(最大値2000) 商業0(最大値2000)堤防50 治安50 兵士数25000 城防御100(最大値1000)

資金10000 兵糧50000 特殊追加効果・貿易港レベル1

 

 ん? 特殊追加効果って何だ?

 これは当然・・・。

 

「ほい。儂の出番じゃの」

「それでは老師。お願いします」

「貿易港のレベル1ごとに金が5000増えるぞい。最大レベルは5じゃ」

「つよっ! レベル1で金山と同じじゃん! でも、貿易港のレベルってどう増やせば良いの?」

「それはマスク・・・」

「先日、倭国から渡来してきた杜氏から清酒が出来たとの報告が…」

「ぬぅぅ!? そこまでやるか!?」

「…で、どうです?」

「うぬぬ…。交易する地を増やせば自動的に増えるぞい…」

「それだけ?」

「それだけと言うな。レベル3に到達するにもローマでやっとなんじゃ」

「…へ? じゃあ、最大のレベル5ってどうすれば?」

「そ、それは良く考えるんじゃな…」

 

 まさかとは思うがアメリカ大陸に到達することか!?

 コロンブスより先に到達して良いの!?

 …でも、考えてみれば先住民いるから問題ないのか。

 

 更に言えばパプアニューギニアやオーストラリアもあるんだよな。

 インドネシアやハワイだってあるし…。

 てか、既にマヤ文明とかインカ文明ってあるのかな?

 

 …どうしよう。考えただけで凄くワクワクする。

 だって、これがもし現実世界なら、アメリカは白人の国じゃなくなる可能性が大だからね。

 これがゲーム世界だとしても、ある意味において夢がある話だよな。

 

 …でも流石に無理か。その前に巨大隕石が降ってくるだろうし…。

 まずはインド、そしてインドネシアまでを考えることにしよう。

 それでも凄いことなんですけどね。

 

 僕がそんな妄想をしていると「何をしている! はよ支度せい!」と張昭に怒鳴られた。

 竣工式と新年の祝辞を天の神々を捧げる祭りがあるからだ。

 今ではすっかり慣れた手つきで礼服に着替えると、港湾近くに設けられた祭壇に向かった。

 

 祭壇には三皇五帝の像が建っており、そこから少し離れた埠頭には三皇の一人である黄帝の息子、禺猇ぐうごうの像が建っている。

 禺猇は海神として祀られている存在で、人間の頭と鳥の体が特徴だ。

 てか、中国の神々というのは、大概はそういった異形のものが多いんだ。

 

 ちょっと脇道に逸れてしまうけど、ここで三皇五帝の三皇の一人、炎帝神農について触れておくね。

 炎帝神農は神話によると、どうも長沙で没したということなんだ。

 そこで僕は炎帝神農の廟の建立を命じさせたんだけど、目的はそれだけじゃない。

 

 この炎帝神農の子孫と黄帝が争い、和解した後に漢民族が出来たというのが神話の中にあるんです。

 …と言っても、炎帝神農の子孫というのは蚩尤しゅうというミノタウロスもどきなんですが…。

 

 何でこのような事をしていると言えば、僕が産まれた長沙を聖地にするためだ。

 より宗教がかったものにすることで、更に言えば長沙王に奉じた劉廙にハクを付けさせることになる。

 そして蚩尤は軍神の意味合いも強く、軍隊の士気を鼓舞するにも都合が良いのです。

 宗教がかった戦意高揚は、いつの時代も驚異ですからね。

 

 話を元に戻します。

 祭壇には豪勢な料理や果物を供え、全ての酒を取揃えた。

 そして蔡邕や邯鄲淳らが作成した石碑を公開したんです。

 

 石碑には、まぁ色々と書き込まれているんですが、簡単に言えば…

 「両親や兄弟を大切にしましょう」とか「一日一善」とか「戸締まり用心、火の用心」とかか…?

 他にも航海の無事云々とかあるんだろうけど、未だに達筆すぎると読めないんですよね…。


 流石に今回は鳳凰だの麒麟だのが来るイベントはありません。

 ですが、一般民衆にも祝い酒を振る舞ったので、それなりに盛り上がりました。

 因みに酒の種類が増えてきたので、行商人達にも試飲させた宣伝も兼ねています。

 これで酒が名産品扱いになれば、更に儲かること間違いなしだ。

 

 三日がかりの祭りを終えた翌日、僕は鄭玄らを交えた会議を開くことにした。

 益州攻めの件は流石に僅か四人で決めて良いものじゃない。

 鄭玄、王儁、張昭らをはじめとする重鎮が納得してこそ、意味のあるものになるのです。


「確かに昨今の劉焉殿は目に余る行為が多い。さりとて、益州は攻めるに難く守りに易い。更に言えば劉焉殿は宗族でもある。それを攻めるとなると、上使君にはそれ相応の覚悟がおありですかな?」

 

 久々に王儁が僕に意見してきた。

 王儁はなんといっても最古参組の一人でもある。

 ある意味、鄭玄らと同等近い発言力を持っている。

 

「桂陽府君(王儁)よ。益州は確かに難攻不落の地である。だが、董兄弟(董重、董承)や張忠などの奸物を助け、民を蔑ろにしている。これを正すのは臣として、いや人として当然であると思う」

「…ですが、下手に益州を攻めれば僅かな可能性ではありますが、朝敵の汚名を取り消せなくなりますぞ」

「元より覚悟の上だ。余が蔑ろにされるならまだしも、民を蔑ろにするのは許しておけぬ」

「…左様ですか。ならば私が申すことはございますまい」

 

 王儁はそう言うと静かに目を閉じて黙った。

 しかし、表情は落ち着き払った感じだ。

 以前のように「僕が益州に出向いて劉焉と直に話す」とか言ったら、全力で止めにかかっただろうけどね。

 

「…儂からも申し上げたき儀がある」

「鄭別駕(鄭玄)よ。申してみよ」

「仮にもし益州を得たとして、その後の統治はどのようになさるのですか?」

「……」

 

 誰かを益州牧に任命するとなると、誰が適任かということか…。

 でも、それなりに知勇兼備で実績があるとなると限られてくるな。

 漢中郡まで進出すれば、長安まで目と鼻の先となる筈だし、それ相応の人物ではないといけないよな。

 

 一つ手があるとすれば、古参の王儁なんかを益州牧にするのも手だな。

 名声や帰順も持っているし、年齢も既に四十代ぐらいだし。

 ただ、それだけじゃ面白くないな…。

 ここは…そうだ!

 

「余に一つ提案があるのだがな…」

「どのような提案でございますかな?」

「涼州王君(劉協)を迎え入れるのはどうであろう?」

「…そ、それは」

「益州王君となってもらい、涼州牧として馬騰を立てるのだ。こうすれば…」

「断じて否でございます!」

 

 反対したのは意外にも陳平だった。

 賛成してもおかしくないと思っていただけに意外だ…。

 

「陳都督。何故かね?」

「益州を攻略するとなると、それだけ膨大な戦費や死者が出ましょう。にも関わらず、部外者に委ねるなどともっての他です!」

「控えよ! 陳都督!」

 

 これまた意外にも遮ったのは張昭だ。

 どうなっているんだ…?

 

「これは留府長史(張昭)殿。如何致した?」

「涼州王君は決して部外者ではない! 取り消すのだ!」

「これはおかしな事を言う。何故、部外者と言えぬのだ?」

「協皇子こそ皇位継承に相応しい方であろう! それを事もあろうに…」

「ハハハ! 巷では次の帝はどこの馬の骨とも知れぬ痴れ者でしょうに!」

「な、何を申すか!」

「そうではないか! 今や知らぬ者は帝ご自身だけですぞ! その帝の遺子では知れたこと!」

「うぬ!?」

 

 この陳平と張昭のやり取りに他の重臣達もどんどん発言していく。

 ただ、陳平側から見れば益州を手に入れたとして、何もしていない劉協に渡すのは確かに不満であろう。

 かたや張昭側の意見であれば、こちらは劉廙以上の錦の御旗を掲げることが出来るということだ。

 発言した僕もそれが狙いだしな…。

 

 そして、ここに来て様々な意見が噴出してしまう。

 血は繋がっていないけど、僕の孫にあたる竹千代を劉寵の養子にし、益州王にする案。

 劉廙を長沙から益州へ赴任させ、そのまま益州王を名乗らせる案。

 劉表を取り込むために次子の劉琮を迎え入れ、やはり益州王に就任させる案…。

 

 二時間ほど侃侃諤諤かんかんがくがくの議論の結果、どうにも纏まらないので、会議を後日に回すことにした。

 でも、一番意外だったのは真っ先に反対した陳平だ。

 そこで僕は陳平を個人的に私室に呼び、そのことを聞くことにした。

 

「君を呼んだのは他でもない。少し聞きたいことがあってな…」

「ああ、先ほどの件ですね」

「何故、真っ先に反対したのだ…?」

「何故だと思います?」

「…分からんから聞いておるのだ」

「ハハハ。でしょうね」

 

 全く勿体ぶりやがって……。

 一体、何を考えているんだか…。

 

「では、申しましょう。豪族や蛮人らの不満が高まってきているのです」

「…何? どうして?」

「正直な話。我が君のやり方がまどろっこしいからです」

「…しかし、交州はほぼ平定した。それに給金も滞りない筈であろう?」

「はい。その通りです。ですが、不満は兵卒だけではない」

「…どういう事かね?」

「我らが血を流して得たにも関わらず、劉協らが得るというのは、不満が出ない方がおかしいでしょう」

「……う」

「ことに最近では漢人でも漢室に敬意を持ち合わせておりません。荊南蛮や山越なら尚更です」

 

 …そうか。完全に失念していたよ。

 大義名分だけ考えていたら、そりゃそういう事にもなるか…。

 大義名分と名無しの部下達の忠誠心を天秤に掛けることまで考えなければいけないとは、本当にゲーム世界なのか疑っちまうぜ。

 

 陳平が自室から出て行くと、僕は静かに目を閉じて考えを巡らせた。

 これでは上杉謙信みたいに大義に終始しすぎて配下の謀反を誘発させる怖れがある。

 絶対にそれだけは避けなければならない。

 もっとも謙信が謀反に苛まれたのは、それだけじゃないんだろうけど……。

 

 陳平を交えてまた麻雀大会でもさせようかな…。

 僕は見学に徹していれば良い訳だし。

 范増や孔明は出ていなかったけど、楊慮は会議には出ていたんだよな。

 でも、そこでは一切発言が無かったな…。

 

 麻雀大会での相談はもう暫く見合わせてからにするか…。

 集まってきた太守とかの重臣らは十日間滞在するし、間際でも良いだろう。

 下手に助言を聞くと逆に面倒なことになりそうだしな。

 

 翌日、僕は文恭(司進の字)がいる屋敷へと向かった。

 文恭だけでなく、嫁の劉煌や柏慈(貂蝉の字)、そして双子の兄妹も来ている。

 僕の孫にあたる兄妹は既に二歳。可愛い盛りだ。

 

「二人とも大きくなったな。文恭よ」

 

 僕が兄妹の頭を撫でると文恭は和やかに頷く。

 そして、三分後ぐらいに話を切り出した。

 

「…して、今日は何用で?」

「…うむ。柏慈との間はどうだね?」

「良好ですよ。最初は戸惑いましたが、文姫(蔡琰の字)君のお陰です」

「そうか。それならば良かった」

「文姫君が柏慈に歌舞を教えておりましてね。それが自信になっているようです。特に舞の方は天賦の才と申して良いほどですよ」

 

 そら、呂布や董卓を手玉に取るほどだからな…。

 当然といえば当然か…。

 

「そうか。それなら何処へ嫁に出しても恥ずかしくはないな…」

「既に嫁ぎ先を決めているのですか?」

「…いや、それはまだだ」

「それは良かった。竹千代も小督も柏慈に懐いておりますからね」

「ハハハ。やはり余が申した通り、根は優しい娘であったであろう」

「ハハハハ。はい。流石は父君。ご慧眼です」

 

 僕と文恭がお互い笑っていると、澄んだ声で「父様」という声が後ろからした。

 見ると柏慈なんだけど、以前のような険しさはなく、穏やかな表情をしている。

 年齢は二十代前半だけど、現実世界の僕から見たら理想すぎるお姉さんですよ…。

 

「如何なさいました? 父君」

「ん…ああ…」

 

 柏慈の声でハッと我に返った。

 柏慈につい見とれてしまったのが原因です。

 

「…いや、角も取れて別人のようだったのでな」

「ウフフ…もう昔のア…私ではありませんよ」

「一人称は未だに時折『アタイ』と言いますがね」

「もう!」

 

 文恭が突っ込むと柏慈が少し赤くなってむくれた。

 そこには慶里とは違った趣きがある。

 例えるなら慶里は白百合で、柏慈は赤い薔薇みたいな感じかな…。

 

 その後、僕は久しぶりの家族団欒の食事をし、再び自宅へと戻った。

 虚しい…。凄く虚しい……。

 このやるせなさは、一体どうすれば良いのだろう…。

 

「ほい。また、しょうもないことを考えておるの」

「……老師」

「そんなお前さんにビッグチャンス到来じゃ」

「…ビッグチャンス?」

「そうじゃ」

「どういうこと…?」

「竹千代か小督に入れ替わることが出来るのじゃ」

「はぁ!?」

「で、やるのかい? やらないのかい? どっちなんだい!?」

「…ちょっ、ちょっと待って! なら、この司護の体はどうなるの!?」

「それは入れ替わった後のお楽しみじゃよ。フォッフォッフォッ」

 

 入れ替わるとして、竹千代しか選択肢はないけどさ…。

 でも、僕が入れ替わった直後、司護が心臓発作で死亡していたら大混乱だよな…。

 ……ど、どうしよう。


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