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第十六話 げえっ! 関羽! ……の。


 4月となり、長沙は随分と発展した。

 あとは柴桑の賊を討伐して、その後は桂陽を占領すれば朝廷も僕のことを認めざるをえまい。

 ついでに曹嵩が僕の悪口を言わず、推薦してくれれば問題なし。

 悪口を言ったのは張昭ですからね!

 

 さて、4月上旬の政略フェイズの前に政庁で会議。

 僕からまず切り出した。

 

「柴桑での賊の略奪は目に余ると聞く。先日、周泰と蒋欽という名将も我が陣営に入ってくれた。時期としては申し分ないと思うが諸君はどうだ?」

 

 ズラッと並ぶ武官、文官での発言は緊張する。

 総勢、十八名だもんなぁ……。多すぎるぐらいだ。

 

「太守殿。宜しいですかな?」

「うむ。張昭。何かね?」

「柴桑への出陣はもう少し見送った方が宜しいと思います」

「……何故?」

「太守殿。敵の総勢は十万でございます」

「そんなことは分かりきっている。しかし、烏合の衆だし、水上戦の経験がない兵も多いと聞くぞ」

「ですが、それでもこちらは半数近くの兵を出さないと厳しいでしょう。そうなれば兵糧が持ちませぬぞ」

「……う、ううむ。兵四万だとすると、幾ら必要だ?」

「少なくとも兵糧20000となります。となれば、長沙の残りの兵糧は5500」

「……確かにそうだな。攻め込まれて持久戦となれば、一気に長沙を失うことになりかねんか」

「左様。ここは次の兵糧が入る9月までご自重なさいませ。それまでに出来るだけ開墾を行い、兵糧を蓄えましょう」

「……仕方ないな。他に意見のある者は?」

 

 僕がそう言って見渡すと今度は陳平が発言した。

 

「御主君。兵糧ならあるではありませんか。しかも、敵の弱体化にも繋がります」

「何? 陳平よ。どのような策だ?」

「柴桑の近くで賊が蓄えた兵糧庫のある城がございます。いつぞやと同じように奪い取りましょう」

「……そんな情報を何処で?」

「ハハハ。常に密偵を出しております。それによると、柴桑の西南、五十里(25km)ほど離れた場所にあるとのことです」

「しかし、流石に城の守りは頑強であろう?」

「兵を一万ほど常駐しているとは聞いています。城主は韓忠、副将に何儀とのことです」

「うむ。成功すれば、大きいな。まずはそれでいくか」

 

 今度は張紘が挙手をした。

 

「うむ。張紘。君の案は何だ?」

「我らだけで賊を討伐するのは、ちと難儀ですからな。ここは劉表殿にも手伝ってもらいましょう」

 

 これには周泰と蒋欽が張紘をチラリと睨んだ。

 まぁ、因縁があるから仕方ないんだけど……。

 

「……しかし、劉表殿は乗るかね?」

「柴桑の賊は劉表殿にとっても邪魔な存在です。恐らく、乗るでしょう」

「そうか、可能性はあるか……」

「ただし、使いの者が重要です。名高い王儁殿と張昭殿であれば、まとまりましょう」

 

 僕は王儁と張昭を見た。

 二人とも目を閉じて、考え込んでいる様子だ。

 

「どうであろう? 双方とも行ってくれるか?」

「この王儁。我が君の命とあれば……」

「同じく、張昭。理を説いてみせれば可能かと思います」

 

 僕は慣れた手つきで、顎鬚を擦った。

 ……いい加減にもう慣れましたよ。

 本当の僕は髭がとても薄いんだけどね!

 

 そして、会議は何とかまとまった。

 王儁と張昭が劉表へ使者に赴く。

 僕と陳平、鐘離昧、厳顔、周泰、蒋欽が二万の兵を率いて、柴桑の南にある兵糧庫がある城へ向かう。

 残りは開墾を中心に内政だ。

 

 それと教科というのを使ってみるか。

 鞏志に便利な固有スキルが着けばいいけどなぁ……。

 なお、長沙を大きくしている内に訴状が随分と溜っているので、それは顧雍に任せることにした。

 では、4月上旬の政略フェイズ開始。


農業505 商業814 堤防100 治安89 兵士数47772 城防御354

資金2272 兵糧25500


 現在の状況はこれだから……。

 まぁ、農業と商業しかないよね。普通に考えて……。

 今回、張任を留守番にさせたのは、近隣にも武陵蛮とか出てきているらしいので、念のため。

 鞏志一人じゃ、どうしても不安だしね……。

 …という訳で、秦松と尹黙に街づくり、陳端、蔡邕、是儀、徐奕、張紘が開墾。以上。

 

農業569 商業841 堤防94 治安86 兵士数27772(+20000) 城防御354

資金1272 兵糧15500

 

 うーん……やっぱり、兵糧が心許ない。

 賊から強奪しないと色々とマズい。

 領民の物を取り返すだけだから、何の問題もない以上、絶対に奪い返すぞ!

 

 二万の軍勢は一路、東北東へと向かうことになった。

 途中までは船で移送し、容易に辿りつくと思われた。

 ただ、途中から行軍するにしても湿地帯や山岳地帯が多く、迅速に移動するのは困難な場所にあたった。

 だからといって、少数にしたら兵糧を運ぶのも難儀だし、何より攻略が難しい。

 

 一週間ほどかけて、ようやく着いた敵の城は、かなり面倒な場所にあった。

 かつて戦国時代に呉の王が、山越討伐に使用した際の出城だという平山城だ。

 周りは全て、ほぼ原野で北にだけ湖が広がっている。

 幾つかの堀が、その湖から引かれた水によって堀を満たしていた。

 どうして良いか分らず、僕は陳平に聞いた。


「短期間でどう攻略すれば良いのだ? 陳平よ」

「持久戦には持ち込めませんからね。北の湖から小船を使い、中へ入って門を開けさせましょう」

「……簡単に言うが、可能なのか?」

「周泰殿と蒋欽殿を連れて来たのは、その為です。ですが、まずは城の近くで布陣しなければなりません」

「確かに夜襲をかけようにも、こう見渡しが良いと無理だしな」

「小船を使うのは当然、夜です。ですが、まずは一戦しなければ相手は怪しむでしょう」

「あまり兵を失いたくはないぞ」

「当然です。ここは仕来りに従って、誰かを一騎打ちに行かせましょう。どなたが宜しいと思われます?」

 

 そんなもん、鐘離昧しかいないじゃないか……。

 鐘離昧も「当然、俺だ」という顔をしているし……。

 周泰や蒋欽も名指しして欲しそうだけどね。

 

「鐘離昧よ。貴殿で宜しいか?」

「当然です! まずは敵将の首を討ち取って、出鼻を挫いてみせましょう」

 

 鐘離昧を先頭にして、銅鑼を鳴らしながら城へ近づくと、敵も城門を塞ぎ、抗戦の準備を整えた。

 すんなり降伏する訳ないしね……。当然だけど……。

 

「我こそは長沙太守司護の家臣。鐘離昧だ! 某と戦いを所望する者はおらぬか!?」

 

 鐘離昧の怒声が辺りを響かせる。

 しかし、敵は塞ぎ込んだままだ。

 

「やはり臆病者しかおらぬのか! 女子供相手にしか戦えないから、賊に成り下がったと思えば当然だな! 皆、笑ってやれ!」

 

 鐘離昧はそう号令すると二万の兵が一斉に笑い出した。

 ……僕の感想としては「ただ五月蠅い」としか言い様がないんだけどね……。

 

 そんな中、城門が開き、一人の若者が飛び出してきた。

 小脇に槍を構えて鐘離昧に突進して来たんだ。

 

「我こそは周倉! 字は元福! そこの大将、俺の槍を受けろ!!」

 

 えっ!? 周倉!? けど、黄巾賊って……。あああ! そうだった!

 

「面白い! 相手になってやる! 参れ!」

 

 そして、鐘離昧と周倉の一騎打ちが始まった。

 けど、僕はその様子を汗水垂らして見守るしかない。

 ……お願いだから殺さないで、鐘離昧。

 

 お互いの槍を激しく打ち合わせること十数合ほど。

「せりゃっ!」と鐘離昧が叫ぶと同時に、周倉の左肩に槍が突き刺さり、周倉はどうっと音を立てて馬から転げ落ちた。

 周倉は左肩を抑えながら立とうとするが、鐘離昧が周倉の首筋に槍を当て、決着がついた。

 

「それっ! 者ども! 周倉を捕えよ!!」

 

 急いで僕は兵達にそう叫び、周倉の身柄を確保した。

 やったぁ! 周倉もこれで配下に出来るぞ!

 けど、肝心のパラメータは……。


周倉 字:元福

政治1 知略3 統率6 武力8 魅力5 忠義9

固有スキル 歩兵 水軍 豪傑 護衛

 

 …………微妙だ。

 まぁ、護衛役にはなるのか。

これで護衛として周泰や張任を使わなくても良いと思えば……。

 

 こちらは士気が当然上がり、城内の敵兵は静寂そのものになった。

 鐘離昧は更に叫んで挑発しているが、城からは誰も出てこない。


「くそっ! 離せ! 離しやがれ!」

 

 捕縛された周倉は、鐘離昧に負わされた肩の傷が疼くらしく、顔をしかめながら僕の目の前に出された。

 黄巾賊らしく、頭には黄色い布をバンダナみたいに巻いている。

 ……似合わねぇ。違和感ありまくりだ。

 君はやっぱり大きいセレブの帽子みたいな方がシックリくるよ。

 

「縄を解いてあげなさい」

 

 僕は静かに兵士達に命じた。

 でも、怪我をしているとはいえ、飛びかかってこられたら……。

 あ、傍に周泰いるから安心だったっけ。

 

「おい! 何の真似だ! 早く首を斬りやがれ!」

「周倉とやら、君は何故、黄巾党に入ったのかね?」

「決まっているだろう! この腐った世の中を糺すためだ!」

「それで、腐った世の中を糺す為に『無辜の民を苦しめても良い』とでもいうのかね?」

「お前らだってそうだろう!? 漢王朝なんぞ最早、当てにはならん!」

「確かに現在の朝廷では無理であろう。しかし『無辜の民を苦しめて良い』ということにならん」

「お前、さっきから何を言っていやがる」

「余は長沙太守の司護である。正式な官位は持っておらんがね」

「あっ!? じゃあ、義賊太守!?」

「ハハハ。義賊でも賊は賊。変わりはない。だが、無辜の民を苦しめる行為だけはせぬぞ」

「……で、義賊太守のお前さんが、何で漢の狗になっていやがるんだ?」

「それは違う。余は漢の為ではない。民の為にやっている。故にこうして、ここにやって来たのだ」

「……それで俺にどうしろってんだ!?」

「二度と民に対し、暴挙に出ないと約束するならば、放免しよう。元々、君は暴虐の徒ではないようだからな」

「……何で分かる?」

「分かる。余は人を見る目があるからな」

「……太守様!」

 

 周倉はその場に平伏した。

 まぁ、確かに周倉はやってなさそうだしなぁ……。

 勢いで黄色い布をつけちゃったくさいしね。

 

「…何です? さぁ、お行きなさい」

「この周倉は間違っておりました! どうか、太守様の下で働かせて下さい!」

「良いのですか? だとすれば、心強い限りですが……」

「この周倉を信じて下さい!」

「……丁度、君向けの仕事がある。しかし、難儀ですぞ」

「どんな難儀でも、あっしにお任せ下さい!」

 

 僕は周倉に明け方前に城の背後にある湖から侵入し、城門を開けるよう命じた。

 周倉は驚いていたが、直に「お任せ下さい」と引き受けた。

 だって、水練で鍛えているのは知っているからね!

 

 夜になり、どちらの兵も寝静まった頃を見計らい、周倉に水泳に自信がある者を百名ほど選びぬき、与えた。

 その時、僕は周倉に静かにこう言った。

 

「周倉。その兵士達にも親兄弟はいるし、中には幼子を抱えた者がいる。頼んだぞ」

「……太守様は狡い人だぜ」

「……余が狡い?」

「そういうのを俺っちが一番、苦手なことを知っているようだ。裏切りませんよ。そして、成功させます」

「余はそういう腹積もりでは……」

「いえいえ。分っていますって。じゃあ、ちょっくら城門を開けてきます。それと……」

「何だね?」

「嫌々賊になった奴はすぐに降伏させるんで、温情をかけてやって下さい」

「そのようなことは容易いことよ。任せておきなさい」

「それともう一つ。中には女子供もいます。どうか、売り渡すようなことだけは……」

「余がそのようなことをするものか! まずは長沙に連れて帰り、それから親御さんの元に帰すまでのことよ」

「そいつを聞いて安心しやした。じゃあ、行ってきます」

 

 僕は周倉と兵士百人を見送った。

 丁度その時、傍にいた厳顔が僕に話しかけてきた。

 

「大丈夫でしょうか? 信用して良いものか……」

「厳顔よ。余を信じよ。あの者は忠節ある者だ」

「我が君よ。何故、言い切れるのです?」

「ハハハ。それは何とも言えぬな。だが、あの者が城の内情を知っているのに間違いはあるまい」

「それはそうでしょうが……」

 

 厳顔は不思議そうな顔をして僕を見ている。

 何故かと言えば「小説とかで知っているから」なんだけど、僕しかない特権だもんね!

 でも、そんな事が言える訳ないからなぁ……。

 

 一時間ほどして、城壁から松明の光が振られた。

 それと同時に城門が開いた。

 それを合図に鐘離昧、周泰、蒋欽らが一斉に城門へと雪崩れ込んだ。

 しかし、未だに厳顔は訝しがっている。


「……罠ではないでしょうなぁ?」

 

 僕が答えようとすると、それに陳平が割って入ってきた。

 

「罠ではないでしょう。罠だとすれば、周倉という者がこちらに捕まることが前提です。もしそうなら、周倉という者は自ら『斬れ』と言わず、まず許しを乞う筈ですからね」

「……ふむ。成程」

「もし、周倉という者が寝返ったとしても、罠を仕掛けるには早すぎます。ですから罠ではないのです」

「いや、流石は軍師陳平殿だ。恐れ入りました」

「恐れ入るのは私ではなく太守殿の方ですよ。このような賭けは私ならやらない」

 

 陳平はそう言ってから高笑いした。

 釣られて僕と厳顔も高笑いだ。

 

 城は一時間もしないうちに占拠することに成功した。

 韓忠と何儀は首にされてきてしまったので、僕は亡くなった両軍の兵士達と一緒に弔うことにした。

 陳平はしつこく「首を持って帰るべきです」と言ったが、僕は頷なかった。

 何故かと言えば「気持ち悪いから」です!

 しかし、それが功を制したのか、黄巾賊の兵も僕を見る目が変わったようで、降参した兵は全部、僕の兵となった。

 

 こうして僕は兵と略奪された金や兵糧、そして捕虜や人質となり、売り渡される前の女性や子供を連れて長沙への帰途についた。

 この戦いの結果。


農業569 商業841 堤防94 治安86 兵士数54379 城防御354

資金5472 兵糧65500

 

 こうなった訳だ。

 これでやっと柴桑に攻め込めるぞ!!


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