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第百十一話 さよならヤマトタケル

 10月となったが焦土状態は未だに解消されず。

 劉彦、虞褒は葛嬰に引き渡し、これで何とか区連と士燮の和睦が締結される。

 とは言っても、何時また不和になるか分からないので、油断は出来ないんですけどね。

 

 交趾郡の状態もやはり対峙したままで、どちらも合戦の火蓋を切らない状態が続く。

 面倒なこと牂牁国しょうかこくの劉普が劉焉に加担しており、物資の輸送をしているらしい。

 これが長引かせている理由だけど、劉普の輸送隊を襲うとなると、これまた拗れるからな・・・。

 面倒くさい限りですよ・・・・・・。


 11月となり、次第に逃亡していた烏滸蛮や山越、漢人の流民達が戻ってきた。

 だけど戻ってきたらきたで大変だ。

 戸籍の整理だけでなく、所有していた土地に関する問題もあるからね。

 更に元から戸籍に登録されていないのも多く、中には元の所有財産を誤魔化そうとする奴もいる。

 誤魔化そうとするのではなく、ただの勘違いもいるからややこしい。

 更に通訳なども必要とされるので、手間が通常の倍以上もかかる。


 そして12月。漸く外洋艦の二隻が完成。

 艦名が欲しいと言われたので、僕は武吉ぶきつ嘉隆かりゅうと名付けた。

 由来は・・・まぁ、村上水軍と九鬼水軍の二将のことです。はい。

 

「おう! やっと出来たみたいだな!」

「ん? ああ、倭建か」

 

 進水式のおり、倭建がニヤニヤしながら後ろから話しかけてきた。

 何の用・・・ああっ!?

 

「これで俺もやっと帰れるという訳だ」

「・・・やはり帰るのか?」

「あたりめぇだ! これ以上、付き合っていられるか!」

「君がいなくなると厳しいんだがね・・・」

「俺以外にも有象無象どもが雁首揃えているじゃねぇか。あのけったくそ悪い女も含めてよ」

 

 約束は約束だ。

 だけど、初めは日本行きじゃなくてフィリピン方面行きの予定だったんだよな・・・。

 ま、でも台湾、沖縄を経由して日本に行かせれば良いか。

 それにしても倭建の離脱は痛いわぁ・・・。

 

 でも、日本との交易が行えるのは悪い事じゃない。

 糸魚川の翡翠は既に産出されているようだし、未開発の金山銀山は多数ある。

 こちらからは絹、象牙、鼈甲、珊瑚、そして鉄製品などを輸出すればガッポリ儲かる訳だ。

 青磁器などは既にあるけれど、これは需要があるかどうか分からないからなぁ・・・。

 

 とりあえず僕は贈答品として銅鏡百枚をはじめ青磁器、絹、茅台酒、象牙、祭祀用の剣などを贈ることにしよう。

 ついでに印璽も作ってやろうと思ったけど、流石にそれは控えるか。

 問題は日本に着いたとして、鉱山開発が可能なのが一人しかいないことだ。

 手放したくないんだけど、やむを得ないか・・・・・・。

 

韓曁かんきよ。君に頼みたいことがある」

「何でございましょう?」

「倭国へ渡り、鉱山開発を手がけて欲しいのだが、引き受けてくれるか?」

「ハハハ。そのようなことでしたら容易いことです。喜んで引き受けましょう」

「そうか。ならば君には東夷従事に任命するとしよう」

「ただ一つ。二人の女人の連れて行くことをお許し下さい」

「む?」

「一人は妻。そしてもう一人は義妹です」

「・・・ああ」

 

 確か義妹の方は鞏志の妻だったよな・・・。

 逆に危険なような気もするけど、それが希望なら引き留める必要はないか・・・。

 

 問題は韓曁の護衛だ。

 倭建がいるけど、日本に着いたら行動は別々になってしまう可能性が大きい。

 周倉をつけるか・・・。

 

「あっしに任せておくんなせえ」

「ん?」

 

 傍に控えていた李楽が自ら名乗り出た。

 確かに護衛持ちではあるけど、少し頼りない。

 けど、あまり人員も割けないから、一番妥当とも言えるか・・・。

 

 それともう一人、スキル説得持ちが必要だ。

 だからといって、流石に祝奥じゃちと不安すぎるよなぁ・・・。

 仕方ない。これも痛いけど、厳畯に任すことにしよう。

 鉱山開発のためだもの・・・・・・。

 

 そして年が明けて西暦196年1月、光熹三年となった。

 焦土状態は解除されけど、問題はここからだ。

 合浦郡は新たに立ち上げた郡なので、新たに都市計画を立てないといけない。

 でも、こうなったら資金は問題ないし、深圳しんせんを地所に変更して大都市にしてしまおう。

 深圳といえば現代であれば中国のシリコンバレーと言われるぐらいだしね。

 

「我が君、巧曹従事(劉先)から書状が届いております」

「うむ?」

 

 僕が政庁とは名ばかりの掘っ立て小屋で都市計画を考えていると、祝奥が登用関連の書状を持ってきた。

 倭建、韓曁、厳畯、李楽の四名がいなくなったところだ。

 鬱林郡のこともあるし、人材確保は必要不可欠だからな。

 

 書状を読むと新たに七名を登用したということだった。

 それによると、応余、仲長統、習珍、習宏、霍峻、郭攸之、輔匡の七名。

 やった! 知っている名前もあるぞ!

 しかも良い意味で!

 

 新年早々、良い報告もあるけれど、良くない報告もある。

 それは未だに交趾郡にて睨み合いの状態が続いていることだ。

 交趾は交州の中でダントツに儲かっている地だから、劉焉も引くに引けないんだろう。

 一応、交州牧の董重を助けるという錦の御旗もあるしな。

 

 2月になると今度は南海郡が焦土状態から解除される。

 逃亡していた山越の流民が大量に戻ってきたらしい。

 そして、待望の七名がやって来た。


応余 字:子正

政治4 知略5 統率5 武力7 魅力6 忠義9

固有スキル 説得 護衛 歩兵 補修 抗戦


仲長統 字:公里

政治7 知略8 統率1 武力1 魅力5 忠義5

固有スキル 弁舌 商才 故事 書家 機略 看破


習珍 

政治4 知略5 統率6 武力5 魅力6 忠義8

固有スキル 弓兵 補修 抗戦


習宏

政治5 知略6 統率4 武力3 魅力5 忠義5

固有スキル 説得 開墾


霍峻 字:仲邈

政治7 知略7 統率8 武力7 魅力7 忠義7

固有スキル 歩兵 弓兵 鉄壁 開墾 伏兵


郭攸之 字:演長

政治7 知略5 統率3 武力1 魅力6 忠義6

固有スキル 判官 治水 故事 教化


輔匡 字:元弼

政治3 知略5 統率6 武力6 魅力5 忠義6

固有スキル 歩兵 踏破 伏兵

 

 一番の大当たりはやはり霍峻だったか。

 全体的に小粒だけど、それでも増えたのは有難い限り。

 皆、まだ十代半ばなので、あどけなさは残るけど頑張って貰おう。

 

 そして、新たに加えた七名の内、仲長統が代表して僕に話しかけてきた。

 因みに仲長が姓で名が統です。

 あと習珍と習宏は兄弟とのこと。

 

「手前の生国は兗州山陽郡高平県なのですが、上使君のお話を伺い、はるばる荊南まで参りました」

「そうか。他の者は皆、荊州の出自なのによくぞ来てくれた。礼を申すぞ」

「ハハハ。実のところ、私は『上使君のような癖がある』と幼き頃から言われておりましたもので」

「何? 余に似たところ?」

「はい。私はそのような気がないのですが、突如として大声でがなり立てるとのことで」

「・・・は? ハハハ! それは感心せぬ性癖だな!」

 

 また癖のある奴が来たよ・・・。

 ま、それは良いとして、鬱林郡の人員配置もしないとな。

 問題は誰を太守にするかだよな・・・。

 という訳で会議を開くことにしよう。

 

「我が君よ。まず申し上げることがある!」

 

 いきなり張昭が怒鳴ってきた・・・。

 な、何か悪い事をした・・・?

 

「ど、どうした? 留府長史?」

「何を惚けたことを! 『どうした?』ではありませぬ!」

「は、はぁ・・・?」

「何故、地所を深圳などという辺鄙な漁村にすることにしたか聞いておりませぬぞ!」

「あ!? ああ! ・・・は、反対かね?」

「当たり前です! ただでさえ人が足りないというのに、何をとち狂ったか!」

「しかしだな。深圳は海に面し、既に造船所も完備しておる。更に真珠や珊瑚も採れ、番禹に行かなくても直に加工が出来るのだ」

「だからといって、巨額な投資をして漁村を地所にする理由にはならん!」

「それだけではない。農作物は時間を要するが、漁は時間を要さぬ。それに塩田も開発しやすく、塩を輸入しなくても良くなる」

「・・・・・・」

「これから多くの民を受け入れるには、これが重要なのだ」

「・・・ふぅむ」

「確かに相談しなかったのは余の落ち度だ。すまぬ。だが、九真郡や朱崖郡の連絡もあるし、ここしかないのだ」

 

 僕は深圳の必要性を皆の前で蕩々と語った。

 特に深圳に思い入れはないけれど、実際に貿易するのには必要不可欠なんだ。

 それに香港とは目と鼻の先だしな。

 

 皆に深圳の重要性が伝わったところで、肝心の鬱林郡の人員配置の議題となった。

 そして最終的に決まったのは太史慈だった。

 鬱林郡が最前線ということが決め手となった訳です。

 で、これが新しい配置。

 

荊南

荊州牧(自称) 司進 衝陽郡に所属

荊州方面都督 陳平 長沙国に所属


長沙国

長沙王劉廙 相は邴原

蒋欽、陳端、張陞、周倉


武陵郡

太守張任

朴胡、趙儼、沙摩柯、杜濩


桂陽郡

太守王儁

裴潜、灌嬰、金旋、鄧方


零陵郡

太守厳顔

劉度、游楚、張承、是儀


臨賀郡

太守陳紀

李通、李孚、劉敏、徐奕


衡陽郡(地所)

太守王烈

劉先、蔡邕、潁容、来敏、鄭玄


交州

交州牧(自称) 司護 合浦郡に所属


南海郡

太守管寧

繁欽、張紘、習禎、沈友、潘濬、郭援、郭攸之


合浦郡

太守華歆

尹黙、孫乾、范増、許褚、楊慮

趙嫗、張昭、李秀、祝奥、鐘離権

馬隆、楊儀、仲長統


蒼梧郡

太守鐘繇

杜襲、鄧芝、鐘進、桓階、呂乂、許汜、鄧艾


高涼郡

太守張範

陳羣、趙佗、賀斉、歩騭、頼恭、陶侃、邯鄲淳


朱崖郡

太守国淵

孫資、劉巴、黄朗、甘寧、周泰、丁奉、徐盛


九真郡

太守満寵

文聘、廖立、徐晃、彭越、蒋琬、秦松、鐘離昧


鬱林郡

太守太史慈

王連、応余、霍峻、習珍、習宏、輔匡、顧雍

 

 流石に新たに加わった十代半ばの人員を全て鬱林郡に配置はしません。

 王連が助監督役、顧雍は若い兄貴分的な役割ってところかな?

 太史慈の武勇も心強いですが、応余、霍峻の防戦コンビも中々のものだとは思う。

 

 3月になり、豫章の元黄巾の援軍は撤退。

 これは兵のほとんどが半農だから仕方ない・・・。

 てか、劉焉の方もさっさと手を引いて欲しいんだがな・・・。

 

 楊慮からの情報によると、どうやら張忠、董承らは劉焉に宝物を賄賂として贈ったらしいとか・・・。

 どうも劉焉って野心家で強欲らしいんだよな・・・。

 陶謙と同じく好々爺のイメージがあっただけに余計に違和感があるよ。

 

 交趾の士燮は区連の援軍は拒否しているしさ。

 もっとも、区連の方でも援軍は送らないんだけど。

 少しは交州牧の立場を敬って欲しいもんだ。

 ・・・でも、自称だから仕方ねぇか。

 

 4月になると、蒼梧郡の焦土状態が解除された。

 これまたボロボロの状態らしいんだけどね・・・。

 それでも内政が行えるだけマシですわ。

 

 そしてここで思わぬ朗報が舞い込む。

 揚州の大商人連中が鼈甲、真珠、珊瑚、砂糖を購入し、代わりに絹や青磁器、漆器などを売ってくれるというのだ。

 マージンは大分取られそうだけど、無いよりかは遙かにマシですよ。

 

 でも、ここで僕は范増を呼んだ。

 この鼈甲、真珠、珊瑚、砂糖のどれもが揚州でも採れるからだ。

 ということは、市場でこれらが値上がっている可能性が高い。

 

「亜父よ。聞きたいことがある」

「儂も聞いたぞい。揚州の商売人どもが渉りをつけてきたんじゃろ?」

「その通りだ。故に何か裏がありそうでな」

「フォフォフォ。やはりそれに気付いたか」

「それについて亜父は何か知っているか?」

「デブ帝が側室を大募集しておるのじゃ」

「・・・はぁ!? 今、何と申した!?」

「何皇后も既に三十代じゃ。それに次の帝位は偽者が既定路線じゃから問題ないのじゃろう」

「・・・しかし、宮中には美女も多い筈では?」

「要するに貂蝉に似た女子がおらぬのじゃろう。そこで、十常侍どもと繋がりを持ちたい豪族や商人どもが賄賂の品を集めておる訳じゃ」

「・・・呆れた」

「そう申すな。帝と縁が出来れば、それ以上の見返りがある。豪族や商人どもも躍起になっておる訳じゃ」

「だが、中原だと絹は手に入りやすいが、鼈甲、真珠、珊瑚、砂糖は数が少ない」

「そうじゃ。珍しい方が価値をつり上げやすいからな。そこで揚州の商売人どもが買い占めるという訳じゃよ」

 

 ・・・なんつーことを・・・。

 だけど、その御陰で逆にこちらの貿易の追い風となってくれる訳だからな。

 これを利用しない手はないよな・・・・・・。


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