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第百十話 まだ奴が生きていた・・・

 まずは広すぎるこの地を分割することから始めることにした。

 当初の予定通りなんだけど、本来なら高涼郡西部だけであった予定は高涼郡東部も領有することになった。

 更に日南郡の北に位置する九真郡も領有するため、それ相応の人事異動が必要となってくる。

 士燮の返答はまだないけれど、そんなことは知ったことじゃない。


 そして、こちらが領有する郡の詳細はこうなった。

 南海郡東部は南海郡。地所は番禹。

 南海郡西部、及び高涼郡東部は合浦郡。地所は合浦。

 高涼郡西部は高涼郡。地所は高涼。

 海南島は朱崖郡。地所は朱崖。

 蒼梧郡は変わらず。地所も広信のまま。

 九真郡も変わらず。地所も胥浦しょほのまま。


 このうち九真郡と朱崖郡だけは焦土状態を免れている。

 とは言っても九真郡は離れているし、朱崖郡は離島なので、ほぼ手つかずに近い。

 内政値を見てみたいけど僕の現在地は合浦なので、報告でしか確認出来ない。

 

 そんな状態にも関わらず急報が僕の所に届いた。

 それは益州永昌郡、越巂郡えっしゅんぐんから交趾郡に攻め込んできたという急報だった。

 この両郡は益州の南に位置し、現在の場所で言えば昆明やその周辺ということになる。

  

 でも、劉焉の軍勢か? それとも劉普?

 そこで僕は衝陽の県令であった楊慮を新たに合浦県令に任命し、相談することにした。

 遠望持ちの楊慮なら分かるかもしれないからだ。

 

「楊県令。此度の交趾への軍勢だが、どこの軍勢であろうか?」

「報告によると元涪陵太守の張忠とのことですな・・・」

「まさか!? 彼奴め! 何処から軍勢をかき集めたのだ!?」

「張忠と董承は縁者です。それに劉焉が助力をしているとのこと」

「何のために・・・・・・」

「元々、劉焉は交州牧を希望していたと言われております。士燮が窮地となった今こそ、交趾を奪い取る手段に出たのでしょう」

 

 なんという強引な・・・・・・。

 北伐が手詰まったから南征って・・・・・・。

 あれ? それってどこの孔明?

 

「・・・それで張忠以外に気になる将はいるか?」

「はい。劉焉に属する韓信という者です」

「なっ!? かっ! 韓信!?」

「はい。古の韓信と同姓同名ですが、その実力も古の韓信にも劣らぬとか・・・」

「・・・ううむ。これは手強いな」

「はい。如何致しましょう」

「まずは早急に区連と士燮との和睦を取り持とう」

「御意。恐らく劉焉も区連に使者を送っておりましょう」

「それともう一つある。士燮は劉焉を頼り、我らと敵対すると思うか?」

「それは考えにくいですね。あくまで連中は董承への援軍とのことです」

「ならば交趾郡、鬱林郡の両郡の保障を軸に話を纏めさせることにしよう。急ぎ厳畯を使わせ」

「はっ!」

「それと区連の元に孫乾を送れ。事は急を要する!」

 

 この状況下において手を拱くことは出来ない。いや、許されない。

 そこでまずは人事を早急に発表することにした。

 これが新たな配置後の状況です。

 因みに当初の予定では南海郡に行く予定だったけど、高涼郡を併呑した形になったので、僕は中間に位置する合浦郡に行くことになりました。

 南海郡の地所である番禹にも比較的近いので、こちらの方が色々と便利という理由です。

 

荊南

荊州牧(自称) 司進 衝陽郡に所属

荊州方面都督 陳平 長沙国に所属


長沙国

長沙王劉廙 相は邴原

蒋欽、陳端、張陞、周倉


武陵郡

太守張任

朴胡、趙儼、沙摩柯、杜濩


桂陽郡

太守王儁

裴潜、灌嬰、金旋、鄧方


零陵郡

太守厳顔

劉度、游楚、張承、是儀


臨賀郡

太守陳紀

李通、李孚、劉敏、徐奕


衡陽郡(地所)

太守王烈

劉先、蔡邕、潁容、来敏、鄭玄


交州

交州牧(自称) 司護 合浦郡に所属


南海郡

太守管寧

繁欽、顧雍、張紘、習禎、沈友、潘濬、郭援


合浦郡

太守華歆

尹黙、孫乾、范増、許褚、楊慮、張昭

厳畯、倭建、李秀、祝奥、韓曁、鐘離権

趙嫗、馬隆、李楽、桓階、楊儀


蒼梧郡

太守鐘繇

杜襲、鄧芝、鐘進、呂乂、許汜、太史慈、鄧艾


高涼郡

太守張範

陳羣、趙佗、賀斉、歩騭、頼恭、陶侃、邯鄲淳


朱崖郡

太守国淵

孫資、劉巴、黄朗、甘寧、周泰、王連、丁奉、徐盛


九真郡

太守満寵

文聘、廖立、徐晃、彭越、蒋琬、秦松、鐘離昧

 

 合浦郡に多い理由は地所であり、早急に整備しないといけないからだ。

 朱崖郡は海南島のことなので、水軍を扱える甘寧、周泰、丁奉、徐盛の四人を配置。

 そして満寵は臨賀郡の太守から九真郡の太守に変更した。

 防戦にも強いオールラウンダーの満寵なら問題はないだろう。

 

 さて、あとはどうやって人を呼び込もうか・・・・・・。

 まずは祭祀を行いながら免税措置で呼び込むことにするか。

 開拓した後、三年間の免税を約束すれば難民も戻ってくるだろう。

 

 祭祀の内容は所謂、供養のことだ。

 意味も無く殺された民を祀るのは重要なことなのです。

 このような儀式を行うというのは、ある意味において宣伝にもなるしね。

 それに新たに登用した祝奥が言うには、特に罪もない将兵も多く殺されてしまったらしいので、それを弔う意味合いもある。

 

「儂からも良いかの?」

「おお、亜父」

 

 僕がボロボロの政庁と全く呼べないような所で考えていると、范増が声を掛けてきた。

 てか、完全に掘っ立て小屋なんですけどね・・・。

 

「亜父の案とあれば名案に違いない。どのような案だ?」

「名案かどうかは分からぬが、お前さんは永昌郡の西方について知っておるかね?」

「永昌郡? 益州のか?」

「そうじゃ」

 

 永昌郡の西方って確か現在のラオスとかだよな・・・。

 てか、中国じゃねぇじゃん・・・。

 まぁ、交州の半分近くは現在のベトナムではあるけどさ。

 

「永昌郡の西方がどうかしたのか?」

「うむ。以前に漢によって滅ぼされた国があるのじゃ」

「・・・初耳だ」

「儂も文献でしか知らんがの。じゃが、そこでは未だに部族間でも諍いがあるというのじゃ」

「・・・それで?」

「つまりじゃな。その部族間で破れた者達を引っ張ってくるのじゃ」

「・・・ふむ。かなりの大移動になるな。だが、やってみる価値はありそうだ」

「他にはひょう。それに日南郡の近くにある扶南じゃ。そこからも引っ張ってくれば良かろう」

 

 この頃のラオスやらカンボジアやらミャンマーの歴史なんて知らないぞ。

 世界史の授業でさえ習ってないもんな・・・・・・。

 ま、でもここのルートは確か・・・。

 

「支謙はいるか?」

「はい。ただ今」

 

 おっと、支謙は字を恭明といい、支婁迦讖しるかせんの十代の弟子だ。

 特殊人材なので、内政などは出来ませんけどね。

 

「君は驃や扶南については何か知らないか?」

「言葉は習いましたが行ったことはありません」

「ハハハ。それは確かだな。そこで君に託したいことがある」

「何でございましょう?」

「君を天竺に行かせようと思う」

「ま、真ですか!?」

「うむ。有難い経典は民の為にもなろう。金に糸目はつけぬ。大いに学んできなさい」

「有難うございます! では早速、支度を致します!」

「ついでに旅の途中、生活に難儀をする民がいたらこの地を紹介しなさい」

「宜しいので?」

「交州は土地が広い。それに余は・・・いや、我らは漢人も夷も蛮も関係ない。善行を尊び、悪行は許さぬだけだ」

 

 こうして支謙は西方へ行くことになった。

 支謙が向かうルートは永昌郡の南の外れなので、問題はない筈だ。

 三蔵法師というか玄奘法師が行く四百年前だから、時代を先取りしているとも言えなくもない・・・かな?

 

 そして七月も終わり、八月になっても未だに焦土状態からは抜け出せない。

 ただ、香港をはじめとする港湾施設は何とか開発を続け、ドッグが整備されつつある。

 このドッグさえ完成すれば台湾やフィリピンからの移民も受け入れ可能だ。

 

 聞けば既に交趾の方ではフィリピンやマレーシアなどから交易を行っているという。

 そこからの交易品の一つに僕が是非とも欲しいものがある。

 そう! それはバナナだ!

 これで僕の食べ物のレパートリーが増えるぞ!

 

 九月に入ると待ちに待ったドッグが完成し、大型外洋船の着工に入る。

 これで遠洋の島からの移民受け入れも可能となった。

 だからといって、昔の欧米みたいな奴隷貿易はしませんけどね。

 

 そしてやっと士燮と区連の使者が到着。

 士燮の方は薛綜だけど、区連の方はお初の人物。

 

葛嬰

政治7 知略6 統率6 武力5 魅力6 忠義6

固有スキル 開墾 歩兵 制圧 説得 判官

 

 まぁまぁかな・・・・・・。

 勿論、こちらに来るのなら拒みませんけどね。

 

 現在の状況は張忠と韓信らの軍勢が既に交趾郡の北東部に侵攻しつつあるとのこと。

 董承の軍勢は鬱林郡と交趾郡の郡境にある山中付近にて駐屯中。

 范増と楊慮の読みでは恐らくではあるが望海という城に向かうであろうとのこと。

 望海は地所の交趾に近く、西北に位置しており、それほど頑健な城ではないという理由からだ。

 

 士燮の軍勢は地所の交趾を中心に守りを固め、北面の張忠、董承らや南方の区連らに挟まれた状態とのこと。

 そして交趾郡の東に位置する鬱林郡は放棄しているに等しい状況となっており、ここも焦土状態だそうで・・・。

 どこまでやってくれるんだ・・・。董承は・・・。

 

 そこで薛綜が士燮に遣わされた訳だけど、意外な申し出をしてきた。

 劉彦、虞褒の両名を差し出すだけでなく、鬱林郡の割譲まで申し込んできたんだ。

 どういうことだろう・・・?

 そこでここは楊慮に訊ねてみることにしよう。

 

「その件ですか・・・。鬱林郡も董承らによって滅茶苦茶にされているからでしょうね・・・」

「・・・だと思った。しかし、本当にそれだけであろうか?」

「鬱林郡は確かに広いですが、山林が多い上に丘陵地帯も多く、開発には難航が予想されます」

「成程」

「士燮側としては、交趾だけは是が非でも守りたいのでしょう。今や交州で裕福な郡は交趾だけですからね」

「酷い話だ・・・。余に董承の尻ぬぐいをさせる気なのだな・・・」

「当然でしょう。それに我が君は最早、不倶戴天の朝敵です。我が君が倒されたとしても、後に脅されたとか何とか責任を擦り付けることも出来ますしね」

 

 どうでも良い土地だから放棄するって酷いな・・・。

 けど、広大な土地だし、切り開けば広大な農業地帯にも成り得る。

 森林も多いので、長い目で見れば利はある筈だ。

 かなり長い目で見ればの話ですけどね・・・。

 あのさ。これって巨額の負債を抱えた企業をタダ同然で貰って再建するみたいな・・・?

 

「・・・一応、会議は開くことにしよう。余の腹の内は決まってはいるが」

「・・・やはり。しかし、鬱林郡もとなりますと、莫大な出費が嵩みますよ」

「そのために荊南六郡を発展させたのだ。そう考えれば良かろう」

「しかしですね。それで荊南を増税させるとなれば・・・」

「・・・増税はせぬ。何とかやり繰りを考える」

 

 でも、増税しないで金をかき集めるとなると・・・。

 そこで僕は基金を募ることにした。

 荊南には交州からの避難民も多いので、先祖の供養を行うという名目で寄付して貰う訳だ。

 寄付というよりもお布施に近いけど、どっちも同じようなもんだしね。

 

 それよりも南海郡で太守をしていた孔芝ってどうやってボロ儲けしていたんだ?

 焦土状態ではあるけど、そこまで最初から内政値が高いとは思えないんですけど・・・。

 これは国情持ちの桓階を呼んで聞いてみることにしよう。

 

「桓督郵よ。つかぬ事を聞きたい」

「何でございましょう?」

「孔芝は随分と懐具合が潤沢だったようだ。どうやって蓄えていたのだ?」

「ああ、そこに目をつけましたか。ですが、我らが行うとなると厳しいと思います」

「・・・どういう事だ?」

「南海郡は鼈甲、珊瑚、真珠といったものが豊富に取れます。それはご理解なさっていることでしょう」

「うむ」

「・・・ですが、それらを加工する職人が先の内乱で殺されたり、逃亡中なのでございます」

「・・・やれやれ。また董承の尻ぬぐいとなるのか・・・」

「加えてほとんどが皇族や宦官の縁者による賄賂として有用されておりました」

「ちょっと待て。それでは賄賂に使用する以外、用途がないということか?」

「そうとは限りません。それらを好む者への褒美にもなりますし、豪商などにも売りさばくことは可能です」

「ならば問題はないではないか?」

「いえ。問題なのは豪商との関係が希薄なことです。皇族に賄賂を渡すことで、孔芝は中原の豪商との関係を良好にしていましたので・・・」

 

 以前は田氏などを使い、穀物などを大量に売りさばくことが出来た。

 けど、こういった贅沢品は勝手が違う訳です。

 問題は朝敵扱いされているので、大富豪の連中とパイプがある商人とどう連絡をつけるかだな・・・。

 

 いや、いっそのこと、これもインド以西の地域との交易でという手もあるか?

 しかし、向こうへの主な交易品は貴金属か絹なんだよなぁ・・・・・・。


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