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第百七話 皇帝暗殺!? …っておい!?


 会議の翌日、僕は楊慮に案内され、共に遊学した経験のある管寧を伴って病院に訪れることにした。

 華歆を登用するためだ。

 楊慮が申すとおりの逸材なら、当然ながら陣営に加わって欲しい人物だからね。


 でも、僕には一抹の不安もあった。

 華歆が本当に極悪人じゃないかどうかだ。

 僕の知っている華歆は文字通り強制的な禅譲を行い、漢を滅亡させた人物の一人だ。


 それだけじゃない。

 記憶は少しうろ覚えだけど、何処かの作品では禅譲した後の献帝を殺すよう仕向けていたりする。

 それ以外にも皇帝になった曹丕に曹植を殺すよう助言していたりするヤバい奴だ。

 そんな奴を配下にしたら、率先して僕を帝に担ぎ出そうとするかもしれない。

 そこで僕は病院に行く途中、それとなく管寧に華歆のことを聞くことにした。

 

「管寧よ。共に遊学した経験のある君からして、華歆殿は如何なる人物かね?」

 

 管寧は少し考えた後、こう僕に言った。

 

「楊県令殿の申す通り。子魚は傑物と言っても過言ではないと思います」

「ほほう・・・。思慮深い君がそう言うのだから、それは確かなんだろうな」

「はい。それに才は間違いなく私や根矩(邴原の字)よりも上かと存じます」

「なんと・・・。それを聞けば益々招かざるを得ないな」

「徳も兼ね備えており申し分はありますまい」

 

 益々分からなくなったぞ・・・。

 ひょっとして正史準拠だと華歆は真逆ということなのかな?

 てか、そうじゃないと説明つかないしなぁ・・・。

 

 病院内に入り、挨拶に来た仲景先生と軽く言葉を交わした後、今度は仲景先生に案内されて華歆の元に行く。

 華歆がいる部屋に入ると、そこには管寧と同年代の三十代半ばほどの青年がいた。

 紛れもない。こいつが華歆だ。

 どれどれ。どんな能力値か見てやろう・・・。

 

華歆 字:子魚

政治8 知略8 統率5 武力4 魅力8 忠義5

固有スキル 国情 説得 機略 鎮撫 判官 看破 名声

 

 悪くない・・・。というか、良い・・・。

 これは性格が悪くても登用せねばなるまい。

 怖れていた讒言持ちでもないしね。

 

「おお、そこにいるのは幼安じゃないか。いや、久しいな」

 

 華歆は僕の後ろにいる管寧を見つけると管寧に話しかけてきた。

 それに対し、管寧も応える。

 

「うむ。久しいね。ところでここに来た理由だが、病を治すだけではないであろう?」

「ハハハ。流石に察しが良いな。その通りだ」

「抜け目のない君のことだ。分からない訳がないさ」

「ならば隠しても仕方ないな。こうしよう」

 

 華歆は黙っていた僕の前で拝礼した。

 これは僕に仕えてくれるということだろう。

 

「華歆殿。余のことを知っておったか・・・」

「幼安を伴ってきたということは、即ちそういうことでしょう。願わくばお仕えさせて頂きたい」

「貴殿のような高名な方が自らいらして下さるというのだ。断る道理は無い」

「有難い。この華歆。字は子魚。忠節を尽くしますぞ」

 

 これで待望の太守候補も加わってくれた。

 新参者ではあるけど名声も実績もあるし、年齢も三十代なので、張昭から咎められることもないだろう。

 

 太守候補と言えば、先頃届いた書状では鐘繇を助け出すことに成功したそうだ。

 それと同時におかしな事に、董重らの兵が高涼郡西部へ侵攻を開始したらしい。

 どうも南海郡の兵を引き上げ、代わりに士燮の領地を保有しようとする腹のようだ。

 士燮は区連とも戦っているから、これは拙い状況と言えるだろうな。

 

 しかし、これは僕にとって好機とも言える。

 ドサクサに士燮が保有する地も取ってしまえば良いからだ。

 劉彦や虞褒を匿っていたツケを払って貰う時が来たということさ。

 

 六月に入り、南海郡が降伏してきたとの報告が入る。

 これで管寧、華歆の両名を南海郡に赴任させることが可能になった。

 あとは士燮の領地を何処まで削ってやろうかな・・・。

 でも、やり過ぎると破れかぶれになり、董重と組むかもしれないから注意しないとね。

 

 そして六月の上旬のある日のこと。

 いつも通り政庁の自室にて街作りの計画書とにらめっこしながら判を押していると、衛士から捕虜が連行されたとの報告があった。

 捕虜の中には鐘繇もいるという。

 早速、登用しよう。そうしよう。


 謁見室に入ると、跪いた五人の男がそこにいた。

 さて、鐘繇以外はどんな連中だ。

 

鐘繇 字:元常 能力値

政治9 知略7 統率7 武力3 魅力8 忠義7

固有スキル 登用 看破 鎮撫 判官 機略 説得 帰順 書家 歩兵


鐘進 能力値

政治4 知略5 統率4 武力5 魅力4 忠義7

固有スキル 補修 弓兵


李楽 能力値

政治1 知略3 統率6 武力7 魅力5 忠義5

固有スキル 歩兵 踏破 護衛


祝奥 能力値

政治3 知略5 統率4 武力4 魅力4 忠義5

固有スキル 弓兵 説得 補修


郭援 能力値

政治2 知略3 統率6 武力8 魅力5 忠義4

固有スキル 騎兵 制圧 豪傑


 う~ん・・・。鐘繇以外は微妙というか何だかなぁ・・・。

 てか、確か李楽って徐晃に殺されたロクデナシだよな・・・。

 

 一応、罪状やら何やらを見てみると、問題があるのは李楽だけだ。

 けど、何故か僕が知っている話とは違い、李楽を嫌っている筈である徐晃の助命嘆願の書状がある。

 それによると、李楽が鐘繇を助けたとのことだ。

 

「李楽とやら。君は何故、鐘繇殿を助けたのだ。鐘繇殿を助ければ免責されると思ったからか?」

 

 李楽は目を瞑って特に何も言わない。

 普通ならここで命乞いをすると思うのだけど・・・。

 

「司護殿に話がある。私の話を聞いて欲しい」

 

 鐘繇が僕に話しかけてきた。

 一先ず聞くことにしよう。

 

「よかろう。貴殿の話であれば間違いはないであろう」

「有難い限り。そこにいる李楽は、確かに揚奉や程遠志などの凶賊どもと行動を共にしてきた」

「うむ」

「李楽も確かに略奪などを行っている。だが、それも生き残る為にしてきたこと。私に免じて許してやって欲しい」

「・・・・・・」

 

 僕は李楽をジッと見た。

 李楽も気配は感じているだろうに、それでも黙っている。

 

「李楽に申す。申し開きはあるか?」

「ねぇ。早く斬りやがれ。ただ、楊奉らと一緒の墓には入れてくれるな。せめてものそれだけが願いってヤツだ」

「何故だ? 楊奉は君の同胞であろう?」

「あんな奴と一緒にされるのは至極迷惑な話だ。確かに盗みは幾多もやったが、女子供まで手にかけてはいねぇ」

「ふむ・・・」

「おめぇさんがたぐまれな仁君と噂されているは俺っちも知っていらぁ。だが、命乞いの為に鐘繇さんを救った訳じゃねぇ」

「・・・では、何故かね?」

「せめてもの罪滅ぼしってやつさ。それすれば泰山府君の憶えも少しはマシだろう」

「ふぅむ・・・」

 

 僕の頭の中が光らないということは、特に含みがあるという訳じゃないか・・・。

 それに董承が讒言持ちだし、ひょっとしたら物語の李楽って董承の悪行を擦り付けられただけなのかも・・・。

 そう考えると合点がいくな。

 

「李楽と申したな。余は君の命を取ろうとは思わぬ。前非を悔いて民の為に尽くすのであれば、尽力して貰いたいがどうかね?」

「・・・宜しいので?」

「嘘は申さぬ。それとも余が信じられないか?」

「いや! かたじけねぇ! 有難き幸せにござんす!」

 

 こうして李楽も受け入れることにした。

 護衛持ちだけど心細いから、護衛持ちが全員出払った時の緊急時のみかな。

 

 他の鐘進は鐘繇の弟なので縁故採用。

 鐘繇の弟とは思えない能力値だけどねぇ・・・。

 

 同じく郭援も鐘繇の甥ということで、これまた縁故採用。

 騎兵と豪傑を持っているけど、一騎討ち要員としてはどうだろう・・・。

 ま、呂布やら華雄やらの相手をさせなければ問題ないか。

 

 そして謎の祝奥という人物。

 郭援の副官らしいけど、見事なまでの平均以下・・・。

 せめて政治が5あれば良かったけど補修もあるし当然採用。

 

 問題は鐘繇の処遇をどうするかだよな。

 太守が良いのか、それとも新たに立ち上げる広州牧が良いのか・・・。

 それについては会議をして皆の意見を聞いてからにするか。

 

 それと南海郡を東西に分けるということで、両郡の名称を決めることにした。

 これはほぼ自動に決めてくれるので、面倒でなくて良い。

 結果、東の方はそのまま南海郡。

 西の方は合浦郡ごうほぐんとし、更に西に位置する高涼郡の東部の一部を編入させた。

 あとは高涼郡で暴れている董重の残党を片付けて、そっくりそのまま高涼郡を広州に編入してしまえば良い。

 

 そして南海郡の郡都は龍川とし、合浦郡の郡都は旧南海郡の番禹にすれば良い。

 この番禹は現在の香港、マカオの北部にあるらしく、両方の港を建設するにあたって重要な地となることは必定だ。

 ま、香港もマカオもほとんど手つかずに近いらしいので、相当な出資金を用意しないといけないけどね。

 

 それと同時に今度は交易船の開発も手がけないとな。

 大型のジャンク船で充分だとは思うけどね。

 ただ、そのジャンク船もある程度の改良は必要だ。

 

 それと海南島に灯台も造らないとな。

 ルキッラから聞いたんだけど、この世界において灯台は既に存在しているんだ。

 とは言ってもエジプトのアレクサンドリアにですけどね。

 

 灯台建設は海南島だけじゃない。

 台湾、琉球、そして日本にも建設し、どんどん交易航路を発展させていく。

 日本には確実に金や銀、そして翡翠がある。

 未だ手つかずの佐渡金山、石見銀山、駿河や甲州の金山、それに奥州藤原氏の繁栄の元を築いた東北の金山。

 糸魚川の翡翠は既に生産体制に入っているらしいが、それは交易で手に入れれば良いだけだ。

そして鉱山はジャンジャン山師を送り込んで、採掘してしまえば良いのだ。

 

 所詮はゲームの世界だ。

 売国奴呼ばわりなんて恐くないぜ!

 現実の過去だったら考えてしまうところだけどね・・・。

 

 僕は憶えている限りの周辺地図を描き、それを試しにルキッラに見せた。

 ルキッラは僕の顔を驚愕のあまり暫く強張っていたよ。

 

「ど・・・何処でこれを・・・」

 

 ルキッラがそう訊ねてきたので、僕は余裕の表情でこう答えた。

 

「余が神々に会っているのは君も知っていよう。その知識を受け取ったに過ぎない」

「・・・ねぇ。提案があるんだけど」

「何かね?」

「いっそ、この地から離れてローマに来ない?」

「・・・はぁ!?」

「そ、そうしましょ! この地で屯するよりも、その方が貴方のためよ!」

「・・・な、何故、余のためなのだ?」

「貴方がローマ皇帝に成ればいいのよ! 私の夫となり、再びローマ統一を・・・」

「ま、待て。余にそんなつもりは毛頭ない」

「報せによると、コンモドゥスが殺されたのよ!」

「何だと!? ローマ皇帝が殺された!?」

「そうよ! この好機を物にしない手はないわよ!」

「・・・・・・」

 

 ・・・いや、無理! 絶対に無理!

 古代ローマ帝国の知識なんてゼロだし!

 何故かラテン語は話せますけどね!

 他に山越や荊南蛮の言葉やサンスクリット語も話せますけどね!

 これも自動翻訳スキルのお陰ですけどね!

 

「それに関しては聞かなかったことにする。それは良いとして、有能な航海士を招きたいのだがね」

「・・・考え直す気はない?」

「ない! それは余に死ねと言っているのと同じだ!」

「残念ねぇ・・・」

「君も今の生活に不満はなかろう。兎も角、航海士を頼むぞ」

「・・・分かったわよ」

 

 ああ、驚いた。いきなり何を言い出すかと思ったら・・・。

 けど、話に聞くとコンモドゥスって凄い剣闘士でもあったらしい。

 項羽や呂布との一騎討ちを見たかった気もするけど、流石にそれは無理だよな。

 

 さて、華歆や鐘繇も来たことだし、広州に関して人事異動を考えなければならない。

 そんな時、衛士から僕に謁見したいという少年がいるという報告が入った。

 聞けば水鏡先生こと司馬徽の推挙だという。

 

 まだ少年で司馬徽の門下だとすると、想像出来る人物はただ一人。

 そう! 鳳雛の異名をとる龐統のことだ!

 これでまた我が陣営は発展するぞ!


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