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第百六話 すぐに都を追い抜くぞ!

 結局、なんだかんだで僕はドベでした・・・。

 そんなことはどうでも良いけど、問題は曹嵩とどう接触するかだよな。

 現在、曹嵩は隠居して生まれ故郷の豫州沛郡の譙県にいるとのことだ。

 ここは現在、劉寵と袁術が覇権を争っている場所の一つだが小康状態なので、今のところはまだ平和らしいけど・・・。

 だけど曹操が頴川郡の太守となれば、そのまま頴川の許昌に居を移すだろう。

 そうなれば曹操も頴川の防衛に尽力する筈。

 

 これで徐州などでの大虐殺などはまずないだろう。

 尤もその要因の一つとなった張闓は交州にいるらしいけどさ。

 流石に袁術も曹嵩を殺すような指示はしないだろうけど、念には念を入れないとな・・・。

 

 しかし、曹嵩の元に誰を送るか・・・。

 僕は一計を案じ、その人物に託すことにした。

 それと同時に、あのこともその人物に暴露することにしよう・・・。

 

「な!? なんですと!? 本気で申しておるのですか!?」

 

 暴露した相手とは馬日磾ばじつたんのことです。

 解放し、僕の協力者となって貰うには、それ以外いませんからね。

 

「本当のことです。故に趙高は協皇子の殺害を計画した。幸い未遂となりましたが・・・」

「い、いや・・・そんな馬鹿な・・・」

「録尚書事(馬日磾のこと)が信じられないのも無理はない。ただ、これが真実です。神々に誓って嘘は申さぬ」

「・・・ううむ」

「孝桓皇帝陛下(桓帝)もその事を案じておられました。それ故、余の夢の中に現れて七星剣を託したのです」

「・・・とても俄には信じられぬ」

「余も当初はそうでしたからな。無理もないでしょう。しかし、このままでは漢室は確実に途絶えますぞ」

「・・・・・・」

「しかも相手は王莽以上の極悪人だ。恐らく他の皇族を皆殺しして自身の血族のみを後継にするであろう・・・」

「・・・して、確たる証拠はあるのですか? 司護殿」

「残念ながら未だに状況証拠のみだ。しかし、貴殿も身に覚えがある筈だが・・・」

「確かに弁皇子の様子がある日を境に変わりましたが・・・」

「実の親でさえ見分けがつかないのだ。他の者では致し方あるまい」

「・・・それで如何様にするおつもりで?」

「貴殿は曹嵩殿と親しいかね?」

「曹嵩殿ですか? かの御方は温厚篤実で慎ましい人物です。太尉なった時も下々の者に分け隔てなく接しておりました」

「うむ。実は余もひょんな事から拝謁したことがある」

「おお、真ですか」

「そこで貴殿にお願いがある。貴殿を釈放する故、中途で曹嵩殿にこの書状を届けて欲しい」

「この書状は・・・?」

「・・・・・・実は」

 

 僕は覚悟を決めて高望とのパイプ役を引き受けて貰う旨も伝えた。

 馬日磾はまたもや大声を上げて驚いたけど、すぐに覚悟を決めた表情になった。

 

「・・・宜しい。確かに私が高望と接触するには些か不具合が生じます」

「・・・余もこのような事を頼みたくありませぬ。ですが、今は悠長にしていられませぬ」

「私も高望と共に曹操殿を頴川府君に推挙するよう尽力致します」

「大丈夫ですか・・・?」

「何の。それしきの事であれば怪しまれますまい」

「ならばよしなに。くれぐれも悟られることの無きよう・・・」

「ハハハ。いざとなれば、この皺首が飛ぶだけです。ご安心めされよ」

「・・・・・・」

 

 僕は許褚の帰還を待って、再び馬日磾の護衛をするよう指示した。

 許褚は少し訝しがったけど、生まれ故郷に凱旋も出来るわけなので、素直に従ってくれた。

 

 あと曹操が栄転するとして、次の章陵郡の太守を早急に決めなければならない。

 朝廷からも太守を赴任させてくるかもしれないけど、それらは無視しないといけない。

 そうじゃないと折角、江夏太守の劉祥がこちら側に靡いたのに、日和る可能性が出てきてしまう。

 ましてや袁術側の人物が赴任してきたら尚更だ。

 

 それはそうと、まずは交州東部をさっさと平定しないとな。

 現在、交州方面は援軍として更に彭越、太史慈、賀斉、鐘離昧、趙儼、倭建、沙摩柯らを派遣するよう指示している。

 軍勢の数は既に十万以上なので、このまま交州で蜂起した反乱軍と臨賀、豫章、会稽の援軍と共に併呑出来るだろう。

 

「ほい。失礼するぞい」

「うわっ・・・。老師?」

 

 自室で籠っていたら、呼びもしないのにまたもや老師登場。

 于吉なら良いのに・・・。

 

「お主に朗報があるのでのぉ」

「僕に朗報? じゃ、サイコロ・・・」

「待て待て。違うわい。そうじゃなくてじゃな・・・」

「何なの?」

「何と三ヶ月纏めて内政が出来るようになるぞい」

「・・・どんな利点が?」

「三ヶ月間、郡に留まらないといけないのじゃが、内政の効果が三倍から四倍になるんじゃ」

「・・・?」

「つまり季節ごとだと普通なら三回までじゃろ」

「うん」

「それが季節で纏めてだと四回分相当となる訳じゃな。どうじゃ。お得じゃろう」

「・・・臨機応変に出来ないけど、確かにお得だな」

「ただし、商業や開墾を上げた分、治安と治水にも気をつける必要があるがのぉ」

「それはもう大丈夫。帰順持ちも随分と増えたしね」

「よしよし。じゃあの」

 

 ・・・ということは、纏めてやるには三月まで無しか。

 ・・・とか言っていたら二月も終わって三月になった。

 特にやること無かったし、別に良いか・・・。

 

農業1580(5000) 商業1620(5000) 堤防100 治安98

兵士数49133 城防御312(1000)

資金6228 兵糧153000

 

 現在の状況はこうだ。これに三倍の収入と他の五郡から3000ずつ加算される訳なので・・・。

 合計すると26088か・・・。

 

 僕が一人で行う場合、十倍した金額を更に三倍することになる。

 つまり僕だけで金額3000が消費される計算だ。

 更には治安も60も減る計算になるから、それ相応の帰順持ちが必要になるね。

 

 色々と考慮した結果、僕と張昭、陳羣が十倍掛け商業投資。

 新たに加えた鄧艾と国淵が十倍掛け開墾。

 そしてこれまた新たに登用した陶侃と趙佗。

 さらに呼び戻した李秀が帰順。

 最後に張紘、顧雍が治水事業。

 

農業2700(5000) 商業3340(5000) 堤防96 治安90

兵士数52733 城防御312(1000)

資金8088 兵糧153000

 

 いきなり凄い発展を遂げたぞ!

 これならすぐに洛陽を追い抜ける!

 そして僕は既に荊州牧じゃないから、次に香港に地所を置いて貿易都市の発展も可能だ!

 うぉぉ! 俄然、やる気が出てきた!

 

 四月に入り、猛烈な発展を遂げている衝陽は更に賑やかとなっている。

 ゲームの中の世界とはいえ、ここまであからさまに発展するものかね。

 そんなことを思いつつ、僕は家族団欒の一環として新製品のチーズケーキを皆で味わう。

 

 少し気になっていた貂蝉だけど、意外にも劉煌の家庭教師役の蔡琰が良い緩衝材になっている。

 史実ではかなり苦労したらしい蔡琰だけど、ここでは至って幸せそうなもんだ。

 良い伴侶を見つけてあげないとな・・・。

 

 ・・・って僕の立場はどうなんだよ。

 日曜日の夕方にやる某長寿演芸番組の某落語家みたいじゃないか・・・。

 

「父君。何をお考えで?」

「・・・あ、いや」

 

 僕がボンヤリとチーズケーキを眺めていると、司進が話しかけてきた。

 さて、どう返そうかな・・・。

 

「幸い衝陽は既に都を凌駕するまでに漕ぎ着けてきた」

「はい。それ故、巷では父君に次代の王朝を・・・」

「待て。何度も申したが、余にそのつもりはない。平定した暁には山へ登り、静かに隠遁するつもりだ」

「それは良く存じております。しかし、太学の若い学生達は頻りに訴えております」

「・・・それは其方が鎮めさせてくれ。其方も太学の学生の一人であろう」

「心得ております。しかし、神々を怖れず父君に追討令を発するというのは、既に漢室も末期だと思いますが・・・」

「確かに末期かもしれぬ・・・」

「・・・では」

 

 本当にどう切り返そうか・・・・・・。

 下手なことを言ったら、また叱られちゃうよね・・・。

 劉煌や貂蝉の手前、格好悪い所は見せたくないし・・・。

 ええい! ままよ! どうにでもなれ!

 

「余も人の子であり、男である。だが、それ以上に大切なものがある」

「・・・父君?」

「余は既に神々に誓ったのだ。故に自らを戒めねばならぬ」

「・・・・・・」

「司家は既にお前が継いでくれるし、しかも腹にも既に子がいるではないか。余はそれだけで満足だ」

「・・・本当にそれで宜しいのですか?」

「民が平穏に暮らす以上の他に大切なことがあるか? その為に余は律しているのだ。良いか文恭よ」

「・・・はい」

「若い者は兎角、軽挙妄動に駆られることも多い。それを戒めるのがお前の役目だ」

「分かりました。肝に銘じておきます」

「ハハハ。それで良い。正しくお前は余が所持している中で一番の宝物だ」

「有難き幸せにございます・・・」

 

 ・・・畜生。格好付けたはいいけど、もう「本当は貂蝉を嫁にしたい」なんて言えなくなったぜ・・・。

 有難うよ・・・。完全にトドメを刺してくれて・・・。

 

 血気盛んな若いインテリ連中が騒ぐのは今も昔も万国共通か・・・。

 ま、僕も本当は十七歳なんですけどね。

 血気盛んではありませんが、やたらと理想や主義主張を唱えることが好きじゃないだけです。

 

 そして四月に入り、交州の状況は少し膠着状態になった。

 どうも悪路が多い上に密林が多く、そこで難儀しているらしい。

 意外にも董承らは砦を多く増設し、持久戦に持ち込もうとしているようだ。

 

 恐らく士燮、区連らが仲違いし、西から攻め込めない状況だからだろう。

 折角こうならないように会談までしたのに、全く足を引っ張ってくれるよ・・・。

 

 しかし五月に入ると、漸く蒼梧郡が陥落。

 太守であった史璜しこうは戦死した模様。

 どんな人物だったんだろう?

 気になるけど、こればかりは仕方ないな・・・。


 陳平らも派遣しようと考えたけど、蒼梧郡が陥落した以上、今いる連中に任せた方が良いだろう。

 それよりもまずは蒼梧郡の安定化を優先しないといけない。

 太守を誰にしようかな・・・・・・。

 

「皆を集めて欲しい。早急に会議を開く」

「御意」

 

 僕は衛士に命じて蒼梧郡の太守を決める会議を開くことにした。

 一応、皆の意見を聞かないとまた司進に怒られちゃう。

 張昭の雷の方が恐いけどね。

 

「各自揃ったな。それでは蒼梧府君を決めたいと思う。自薦他薦ともに構わんぞ」

 

 僕はなるべく声を上ずらせないよう注意しながら言葉を発した。

 というのも、いざという時はジンちゃんやフクちゃんが助けてくれるから落ち着いていられたのだ。

 しかし、もうその二人は既にいない。

 

「オホン。それでは儂から推挙する人物がおります」

「留府長史(張昭)か。誰だ?」

「実績と名からして諌議大夫殿(管寧)が適任と思われます」

「・・・うむ。諌議大夫であれば不足はなかろう。他に意見ある者はおるか?」

 

 僕が見渡すと、一人だけ挙手をしていた者がいた。

 楊慮だ。誰を推すんだろう・・・。

 

「楊県令か。君の意見は?」

「はい。某は鎮郡従事殿(張範)を推挙致します」

「むむ。鎮郡従事をか?」

「はい。諌議大夫殿も宜しいのですが、まだ若干まだお若い」

「ハハハ。君ほどではないがね」

 

 僕と楊慮とのやり取りに出席していた諌議大夫の管寧が最後にそう言って笑った。

 少し気分を害したのかな?

 

「いや、諌議大夫殿でも確かに申し分はありません」

「それでは何故かね?」

「諌議大夫殿は次に制圧する南海郡の府君が宜しいと存じます」

「ほう?」

「当初の案では南海郡は広すぎるので、東西に分割させる予定でおります」

「うむ」

「そこで南海郡の西部に私が推挙したい人物と共に、南海郡の東部を諌議大夫に任命して貰いたいのです」

「・・・まて。その人物とは誰かね?」

「諌議大夫殿と共に遊学し、親しい人物です」

「・・・ほう?」

 

 僕は管寧を見た。管寧は少し首を捻っている。

 というのも、共に遊学した人物というのは長沙の太守である邴原だからだ。

 まさか、邴原を転任させるというのか・・・?

 

「楊県令殿。それでは君に聞こう。私とかねてから親しい人物とは何方かね?」

「ハハハ。子魚殿のことですよ」

「なっ!?」

 

 管寧は楊慮とのやり取りで声を上げて驚いた。

 誰のことだ? 子魚って・・・。

 そんな奴、僕の陣営にいないぞ?

 どういうことか、楊慮に聞いてみよう。

 

「誰のことを言っているのだ? 楊県令」

「我が君は知らないのですか? 丁度、養生のため衝陽に来訪している人物を」

「知らないから君に聞いておるのだ」

華歆かきん。字は子魚。先の郎中でしたが、病のために職を辞したそうです。紛れもない高名な人物ですよ」

「な、何だと!?」

 

 華歆って確か献帝を脅して禅譲を迫った極悪人じゃねぇか!

 隠れていた皇后の髪を無理矢理引っ張ってつまみ出したり、曹植を殺そうとかした・・・。

 でも、そんな極悪人と管寧って親友なのかよ・・・?

 

「それは真かね? 楊県令」

「嘘を申しても仕方ないでしょう。この上は我が君、自らが華歆殿を訪ね、早々に召し抱えるべきです」

「ふぅむ・・・」

 

 僕は再び管寧の顔を見た。

 少し渋い表情だけど、本当に親しいのかな・・・。


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