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第十五話 二匹目のドジョウ

 明くる早朝、僕たち四人は広陵の外れにあるという張紘の邸宅へと向かった。

 馬で行けば一時間ほどの距離とあって、ついたのは丁度、朝日が地平線から出たあたり。

 家の門は閉まっていたので、僕は門を少し強めに叩いた。

 

「なんですかな? こんな朝早く……。野良仕事もないってのに……」

 

 寝間着姿で出てきたこの青年こそ、二張の一人張紘だ。

 僕はそう確信したけど一応、念のためにパラメータを見ておこう。

 ……違っていたら恥ずかしいしね。


張紘 字:子綱 能力値

政治9 知略8 統率4 武力1 魅力7 忠義7

固有スキル 教授 説得 開墾 治水 書家 弁舌

 

 やはり、張紘で間違いなかった。

 能力値も中々だし、言う事なし。

 あとはすんなり来てくれれば良いけど……。

 それと固有スキルの教授って……?


「それは能力値の合計が25以下の者の能力値をあげる固有スキルじゃ。それと忠義は双方ともに除くぞ」

「おお、じゃあ中々……」

「あとは『教科』とほぼ同じ。一年に一度限りじゃ。それと7以上は上げられん。最大でも6までじゃ」

「……ちょい微妙?」

「それと能力値の百倍の金がかかる。4を5にする場合は金500が必要じゃぞ」

 

 有難うございます。水鏡先生。

 呼ばれなくても率先して、出てきてくれるのは楽でいいです。

 でも、誰かに教授してもらうにも、もうちょっと余裕が出てきてからかなぁ……。

 

「何をブツクサと……?」

「あ、これは失礼……。陳端殿から手紙を預かっております。ご覧ください」

「何? 陳端? ……久しいな。どれ」

 

 張紘は手紙を読むと僕の顔をチラリと見た。

 そして、少し考え込むように顎を右手で擦ると、暫くしてから僕にこう言ってきた。

 

「……それで、君が評判の長沙太守ですか?」

「如何にも。評判かどうかは別として、長沙太守を仮の上でやっております」

「……ふぅむ。良いでしょう。行きましょう。今から支度しますので、少々お待ちを」

 

 あまりにもあっさりし過ぎている。

 ここまであっさりしていると、何だか怪しく感じるのは被害妄想からなのかな?

 そして、五分ほども掛からず、張紘は少しの荷物だけで出てきた。

 

「さぁ、早く行きましょう。急いだ方が良い」

「何をそんなに急かしているのです? 張紘殿」

「それは途中でも宜しいでしょう。ささ、早く」

 

 何故か急かされて僕は馬に乗り、一路広陵の南にある長江の港へと向かった。

 やっぱり怪しい。何か隠しているとしか思えない……。

 暫く馬を走らせてから、僕は馬上で張紘に問うてみた。

 

「張紘殿。一体、何をそんなに急ぐ必要があるのです?」

「いやぁ、あのボンボン太守から誘われていましてね……。丁度、迷惑していた所なんですよ」

「……ボンボン太守?」

「袁術っていう名門自慢が取り柄だけのボンクラ御曹司ですよ」

「……ああ!」

「袁術の奴、僕のことを趙昱さんから聞いたらしく『今すぐ出仕せい!』としつこかったんですよ」

「……しかし、良いのですか? 趙昱殿にご迷惑では?」

「迷惑も何も趙昱さんは、今は陶謙さんの所でご厄介になっていますから」

「えっ!? では、徐州へ?」

「いやいや、まずは港に向かいましょう。僕が徐州に行くか、長沙に行くかは、それからでも遅くないでしょう」

 

 随分とすっ呆けた賢者だなぁ……。

 まぁ、広陵の南の港についてから説得するしかないのか。

 けど、こちらには陶謙嫌いの張昭がいるから、彼に説得してもらおうかな……。

 

 ……で、そんなことを考えていると。

 向こう側から兵士の一団が馬を率いてやって来た。

 やばい! 張紘を強奪しに来た!?

 

 聞こえないふりして、脇道に逸れようにも脇道はない。

 脇道がないどころか両側は田んぼで、しかもそこそこ既に水が張っている。

 もうすぐ三月だから当然なんだろうけどね……。

 

「そこの一団、止まれ! 聞きたいことがある!」

 

 こっちは話したいことなんてないです!

 とか言ったところで、どうせ無理なんですけどね……。

 で、近づいて来た隊長らしき人物は……ゲッ、程普!?

 咄嗟に僕は応対しようとしたが、その前に張紘が前に出て挨拶した。

 

「これは程普殿。お勤めお疲れ様です」

「張紘殿。何処へ行くつもりだ? 貴殿は出仕するつもりではないのか?」

「いえ、これから出仕しようと思っていた矢先でして……」

「嘘をつくな! この伴の者達と一緒に、領内から出ようとしていたのではないか!?」

「いえ、ですから……、先約の方に出仕しようとしていた訳でして……」

「何? 先約?」

「はい。袁術様には大変申し訳ないのですが、既に私は『先方に出仕する』という約束があったもので」

「……それは何処の家中だ?」

「はい。この方の下です」

 

 張紘が僕を突き出した!?

 何という奴だ! 君は!

「まだ家臣じゃないから問題ない」とでも言うつもりか!?

 ……そういうことか。

 

「む? 君は昨日の……」

「……あ、これは程普殿。昨日は大変失礼しました」

「……君は誰だ? 単福というのも偽名であろう!? ふざけた偽名を名乗りおって!」

 

 ……ふざけてはいないよ。

 咄嗟に偽名で思い付いたのが、それしかなかっただけだよ……。

 

「何故、黙っておる! 正直に白状せねば、ここで捕縛せねばならん!」

 

 程普はそう言って、部下たちを展開させてきた。

 そうしたら張任が僕の目の前に出て、程普を睨み付けている。

 二人が戦っては絶対、駄目だ!

 程普対張任は見てみたい気もするけどね……。

 

「やむを得ません……。私は長沙で仮の太守をしている。司護という者です」

「何!? では、貴殿があの……」

「はい。恥ずかしながら張紘殿とは、彼の友人である陳端、秦松を通じて交流しておりました」

「………」

「私は賊と同じ扱いと聞いておりましたので、恥ずかしながら程普殿の前では偽名を使ったのです」

「……う、ううむ」

「ですが、こうなった以上、仕方のないことです。ここでお斬り下さい。ですが、代わりに孫堅殿を長沙に下向させ、太守にして下さい。孫堅殿が長沙府君となれば、長沙の民も安心することでしょう」

 

 僕はまた何を言いだしているんだ!?

 劉繇の時と同じようにいくとは到底思えないんだけど!

 お願いですから二匹目のドジョウ作戦、成功して!

 

「行くが良い……司護殿」

「……程普殿」

「今、君を斬ったり、捕縛したところで意味はない。寧ろ、その逆だ」

「……その逆?」

「今、柴桑で区星らが黄巾の連中と合流し、江夏、汝南を狙っているという噂がある。ここで長沙が混乱すれば連中の思うつぼだ」

「……なんと、区星が?」

「君は柴桑の賊にとって目の上のたんこぶだ。その君を斬ったりしたら、こちらの仕事が増える。行くが良い」

「……しかし、それでは」

「張紘殿も連れて行け。袁術様には某が上手く言っておく。なぁに、美女なら大激怒するであろうが、張紘殿なら左程、問題はない」

「程普殿、感謝致す! では、御免!」

 

 僕は全力で馬を走らせた。

 有難う、程普! いつでも僕のところに来ていいからね!!

 てゆーか、僕のところへ来ないか!?

 ……あ、袁術の配下ではなく、孫堅の配下なのか。

 

 広陵の南の港へ着くと、急いで馬を売り払い、その金で商船に乗り込んだ。

 全く、生きた心地がしなかったよ……。

 

「上手く行きましたな。我が君」

「張紘……。酷いじゃないか。僕をいきなり突き出すなんて」

「ハハハ。しかし、そのお陰でこの張紘は貴殿の配下となった訳じゃないですか」

「そういえば、徐州の方は良いのか?」

「なぁに、徐州よりも長沙の方が面白そうですからね」

「理由はそれだけか?」

「ええ、それだけです。それとも、何か問題でも?」

 

 その言葉に激しく反応したのが、張昭だった。

 船上で張昭が小難しいことを怒鳴れば、張紘は負けじととぼけたことを言い返す。

 強情家の張昭と惚けた張紘か……。

 これはこれで良いコンビなのかもなぁ……。

 

 柴桑では少し緊張したが、特にこれといったことはなく、穏便に通行することが出来た。

 船頭は「通行料が高すぎる」とボヤいていたけどね。

 

 長沙へ戻ると二月も丁度、終わり頃。

 何とか政略フェイズに間に合った。

 先に長沙に向かっていた顧雍、徐奕、是儀、蔡邕もおり、これで配下に加わったのは六名となった。

 随分と大所帯になった訳だけど、今回登用したのには武官が一人もいないんだよな……。

 ああ、程普も来てくれればなぁ……。

 

 政庁に入ると、尹黙が柴桑と武陵、零陵、江陵、桂陽についての現状を教えてくれた。

 武陵と零陵の方は武陵蛮や零陵蛮、桂陽蛮という異民族が来襲し、交戦状態に入ったらしい。

 異民族の方はかなり多く、両太守の曹寅と張羨は一時的な同盟を結んだとのこと。

 また面倒な宿題が増えた感じがするなぁ……。

 

 一方の柴桑にいる賊は長沙にちょっかいをかけたらしいが、厳顔や秦松の活躍で撃退。

 城防御を高くしておいて正解だった。

 けど、柴桑の軍勢は膨れ上がっており、その軍勢は既に十万近いとのこと……。

 多すぎるよ……。道理で程普が僕を解放した訳だよ……。

 

 江陵の周泰と蒋欽はというと、五渓蛮や江夏蛮、蔡瑁らの荊州勢、そして柴桑の黄巾賊の進出で、かなり状況が悪化しているとのこと。

 何とか説得して、こっちに来て欲しいけどなぁ……。

 水軍を扱えるのが鐘離昧しかいないから、今は喉から手が出るほど欲しいんだよ。

 そうじゃなくても欲しいんですけどね。

 

 桂陽は現在でも山越族や交州で勃発した反乱の一部の兵らによって蹂躙されているとのこと。

 桂陽をものにすれば「宮廷も懐柔策として僕に官位をよこすだろう」と陳平も言っているしなぁ。

 けど、柴桑の十万の兵を無視する訳にはいかないし……。

 

 まぁ、悩んでいたところで仕方がない。

 文官は大量にいるから、それらを使って3月の上旬の政略フェイズといこう。

 現状では……。


農業365 商業745 堤防87 治安96 

兵士数42772 城防御332

資金2058 兵糧35500

 

 こうして見ると随分と商業は発展しているなぁ……。

 あのお婆さんが僕を有難がる理由はそれかぁ……。

 固有スキルの「国情」を持っている奴がいないから最大値分らないけど、上げるだけ上げてみよう。

 

 韓曁はそのまま銀山の採掘で良いとして、僕と秦松、尹黙は商業発展の為に町造り。

 開墾要員は随分増えたから、蔡邕、是儀、徐奕、張紘を開墾にまわすと……。

 治水は顧雍と陳端あたりで

 でも、陳端はどうするかなぁ……。

 

「陳端はおらんか?」

「帰って早々、お疲れなのに精が出ますね。閣下」

「うむ。そうは言っておられんからな。江陵の周泰と蒋欽の両名だが……」

「その両名が何です?」

「我が陣営に入れたい。出来そうか?」

「……確かに現在は苦境に立たされているようですが……。我らが陣営にすんなり来るもんでしょうか?」

「張昭と陳平を同行すれば如何であろう?」

「私だけでは重荷ですが、それならば上手くいくかもしれません」

「ならば話は早い。念のため、張任もつける。では、早速行ってくれ」

「承知! 必ずや吉報をお持ち致しまする」

 

 という訳で、治水は顧雍だけと。

 王儁は帰順にしようかな……。いいや、王儁にも開墾でいこう!

 で、厳顔は補修……と。人数が一気に増えた分、大変だぁ。

 

 蔡邕、是儀、徐奕、張紘、王儁が開墾。顧雍が治水。

 僕、秦松、尹黙が町整備。厳顔が補修。これでよし。

 

農業429 商業787 堤防94 治安92 

兵士数42772 城防御343

資金1058 兵糧35500

 

 一気に金が1000も減ったぁ……。

 これで秣陵よりも大都市になったんじゃないかな?

 けど、まだ開墾の余地はありそうだから、どんどん開墾させていこう。

 

 さて、続いて3月下旬の政略フェイズ。

 おっと、その前に陳端が戻ってきた。

 

「閣下。只今、戻りました!」

「どうであった? 陳端」

「周泰、蒋欽の両名ですが、条件によっては帰順しても良いそうです」

「……条件とは?」

「彼らの家族と親族の移住。それと手飼いの軍勢の移住です」

「容易いことと言いたいが、軍勢の移住はどうすれば良い?」

「軍勢の家族共々ですので、兵糧10000必要です」

「なっ……ちと、多くないか?」

「ですが、兵5千もついてきます」

「……ならば安い! よし、条件を飲んだ!」

 

 で、こうなった訳だね。


農業429 商業787 堤防94 治安92 

兵士数47772 城防御343

資金1058 兵糧25500

 

 これで待望の周泰と蒋欽が配下になった。

 孫堅、孫策ごめんよ! でも、どうしても必要なんだ!

 いつでも袁術なんか見限って、配下ごと来ていいんだからね!

 

「周泰。字は幼平。太守殿の命により、参内しました!」

「同じく蒋欽。字は公奕。長沙太守殿の為にご尽力致しますぞ!」

「良く参った! 二人とも! 正しく貴殿らを見ると古の樊噲はんかい、季布を見るようだ」

「お世辞だと分かっていても、嬉しいもんですな。ハハハハ」

「では、この蒋欽は樊噲ですか。確かに愉快ですな。ハハハ」

「何をいう公奕。この周泰こそが樊噲ではないか!?」

「おい。幼平。こいつは幾らお前さんでも譲れないぜ!」

「二人とも喧嘩するな。ならば両名とも樊噲で良いではないか。ハッハッハッ」

 

 何でだろう? 鐘離昧が微妙な顔をしているんだけど……。

 これは僕の口であって、僕じゃない口が言っているんだ!

 ……けど、ごめんなさい。

 

 そして、二人のパラメータは……。

 

周泰 字:幼平 能力値

政治5 知略6 統率8 武力8 魅力6 忠義9

固有スキル 騎兵 歩兵 水軍 豪傑 鉄壁 護衛


蒋欽 字:公奕 能力値

政治6 知略6 統率8 武力7 魅力6 忠義7

固有スキル 弓兵 水軍 判官 遠射 火矢 歩兵


 ……うん。周泰の方が樊噲っぽい。

 けど、蒋欽には言わないでおこう。そうしよう。

 ……ところで。

 

「遠射はより遠方に射撃が出来る。火矢は火矢を撃ちやすくなる。じゃあの」

 

 水鏡先生はやっ!?

 まぁ、いいか。サクサクと3月下旬の政略フェイズいってみよう!

 僕と秦松と尹黙が町造り。

 陳端、蔡邕、是儀、徐奕、張紘、王儁が開墾

 顧雍は治水で厳顔が補修。以上!

 

農業505 商業814 堤防100 治安89 

兵士数47772 城防御354

資金2272 兵糧25500

 

 巨大都市に着実になりつつある。

 もうすぐ洛陽なんて目じゃなくなるぞ!

 そして、その前に柴桑に出陣だ!

 ……でも、10万は無理だよなぁ……。

 

現在の配下

蔡邕、是儀、徐奕、張紘、王儁、鐘離昧

周泰、蒋欽、張任、秦松、尹黙、厳顔

陳端、顧雍、陳平、鞏志、韓曁、張昭



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