第百五話 凄いの二人キターーッ!
再配置も終え、漸く内政が出来る。
うざったい討伐軍は解散し、二正面作戦にならないのは実に素晴らしい。
あとはロビー活動がどこまで出来るかだけどね。
僕が再配置の最終確認を自室でしていると後ろに気配がしたので、振り返るとそこには于吉がいた。
・・・ということは待望の優秀人材の獲得チャーンス!!
「これは于吉仙人。お久しゅうございます」
「うむ。お前さんも随分と苦労しておるのぉ・・・」
「ハハハ・・・。全く予期せぬ出来事ばかりで気苦労が絶えませぬ」
「・・・以前と口調まで違うぞ。キャラがブレておるようじゃな」
「あ、そか。于吉仙人まで口調に気をつけなくても良かった・・・」
「フクちゃんとボンちゃんの双方がいなくなったのは、やはり辛いようじゃな」
「当然でしょ。お陰で毎日が手探り状態なんですし・・・」
「ならば儂からの見舞いじゃ。このサイコロを二回振るが良い」
「えっ!? いいの!?」
「本当は一回なのじゃがな。老師には内緒にしておいてくれ」
「もっ・・・勿論です! では、いきますよ!」
サイコロの目は4と6だった。
相変わらずここだけの運だけは強いぞ!
「ふむ・・・。こういう所だけは本当に強運じゃな」
「現実に戻っても強運のままでいたいですけどね・・・」
「泣き言を言うでない。では、楽しみに待つが良い。・・・いや、すぐにでも街へ繰り出すが良い」
「えっ? もういるの?」
「うむ。それとこれは重要なことなのだが・・・」
「・・・何でしょう?」
「お土産に葛餅と茅台酒を頼む」
「よっ・・・喜んで! 今すぐお持ちします!」
葛餅と茅台酒が入った瓢箪を手に入れると、于吉は実に満足そうな笑みを浮かべた。
貴重な人材が手に入れるなら、もっと大量生産しても良いんだけどなぁ・・・。
僕が気分転換に散策したいと衛士に言うと、すぐさま周倉がやって来た。
そして何処から聞きつけたか分からないけど、おまけに司進まで来た。
周倉と優秀な養子を伴って一緒に出かけるだなんて、気分は関羽みたいだな・・・。
「それで父君。此度は何用で出かけるのです?」
「坊ちゃん。野暮ったいことは無しですぜ。偶に外に行かねぇと、幾ら親分でも身が持ちませんや」
文恭の問いに周倉が僕に代わって応えた。
なんか本当に関羽になった気分。
・・・・・・武力は1しかないんですけどね。
暫く僕が衝陽を散策していると、おかしな光景に出くわした。
見れば飯屋で男が、店の主人と言い合いをしている。
別に珍しくない光景だが、男の方が何と言うか、特徴ある言い方をしていた。
「ち・・・ち・・・違うぞ。ね・・・値段がおか・・・おかしい・・・じゃな・・・いか」
「何を言っているんだ? おめぇさん、食い逃げをしようって腹か?」
「ち・・・ち・・・違う。わ・・・わた・・・私・・・は・・・・・・そ、そ・・・そんなことは・・・し、し」
「はっきり言え! 何だ!?」
「ぶ・・・ぶれ・・・ぶれ・・・無礼にも・・・ほ、ほ、程が・・・」
「ああ! もう面倒だ! てめぇを役人に突き出してやる!」
特徴有る言い方をしている男は、文恭と同じぐらいの年齢だ。
成人して間もない頃ぐらいだろう。
・・・あ、あ、あれ? でも、その特徴のある男にオ、オ、オーラがあ、あるぞ。
・・・ど、どういう奴か見てやろう
鄧艾 字:士載 能力値
政治9 知略8 統率9 武力9 魅力7 忠義6
固有スキル 開墾 鎮撫 看破 歩兵 踏破 制圧 機略 国情 豪傑
と、と、と、鄧艾!?
よ、よ、予想以上に、つ、つ、強い!
な、何故か、く、く、口調も移っちゃってますけど!?
「お、お、親分? ど、ど、どうしやした?」
「あ、お、い、いや・・・その・・・」
「お二人とも落ち着いて下さい。どうしたのです? 父君」
「はっ!? ・・・あ、いや。ちと店の主人と話してくる」
僕は落ち着いてから店の主人と鄧艾の所へ歩みを進める。
すると店の主人は大層驚いたらしく、いきなり土下座してきた。
・・・やめてくれ。嫌な思い出が蘇ってくるから。
「どうした? 店主よ。何を言い争っておるのだ?」
「い、いや。この若僧が食い逃げしようってしていたので・・・」
「だ・・・だ・・・だから、わ・・・私・・・は・・・」
「ああ、もう良い。この若者のお代は余が立て替えておいてやる。それで不問に致せ」
「そ、そんな勿体ない! こんなおかしな奴のお代の肩代わりなんて!」
「わ・・・わ・・・私は・・・も・・・も・・・物乞い・・・で・・・で・・・では・・・」
「・・・もう良い。お代は持ち合わせがない故、後で政庁まで取りに来い。それと君は余に付き合え」
「わ・・・わ・・・私・・・が・・・ですか?」
「そうだ? 余は司護。字は公殷だ。不服か?」
「なっ・・・! め・・・め・・・滅相も・・・ない!」
こうして鄧艾のゲットに成功!
しかし、何でまた揉めていたんだろ?
で、その原因なんだけど、どうも豚足の値段が普通よりも結構、割高だったらしい。
そこで文恭が言うには最近、豚肉が高騰しているとのことだ。
ただ、これは豚肉だけでなく、他の肉も値上がりしているとのこと。
というのも、その原因は僕にあるらしいんだ。
まず肉全体が値上がりの傾向にあるのは、僕が犬の肉を食べることを禁止したから。
これで犬の肉が出回らなくなり、他の肉が値上がってしまったとのこと。
もう一つ、豚肉が高騰している理由として、餌代が高くなったということからだ。
豚に人糞を食べさせることを禁止したので、代わりに飼料となる雑穀で賄うために豚肉の価値が上がってしまったんだ。
本当に相場って連動するんだなぁ・・・。
「いや、すまなかったな。鄧艾よ。だが、余に仕えれば君の大好物である豚足なぞは毎日食べられるぞ」
「わ・・・わ・・・私の・・・ような・・・者を・・・本気で?」
「当然だ。余はこれまでも鞏志を筆頭に、数多の逸材を見出してきた。余の目に間違いはない」
「え・・・? で・・・ですが・・・」
「それとも君は余の目を疑うのかね?」
「あ・・・あ・・・ありがた・・・き・・・し・・・幸せです」
蜀を滅亡させたとはいえ、それは別に鄧艾が悪い訳じゃない。
一番悪いのは黄皓なんぞに良いようにされた劉禅だ!
なので、別に鄧艾は嫌いではありません。
・・・てか、個人的な好き嫌いで、こんな名将を登用しないなんてあり得ないでしょ。
鄧艾を加えた僕は意気揚々と更に散策に励んだ。
でも、鄧艾は4かな? 普通に考えれば6だと思うけど、4だったら6は誰だ?
僕がそんなことを考えてながら街の外れまで出ると、綿織物を売っている若者がいた。
若者は筵の上に座り、特に呼び込みもせずに必死に本を読んでいる。
そして、その若者には鄧艾と同じようなオーラが輝いていた。
紛れもない。こいつが4か6だ!
という訳で、どんな奴か見てやろう・・・。
陶侃 字:士行 能力値
政治7 知略9 統率10 武力7 魅力9 忠義9
固有スキル 情勢 水軍 弓兵 歩兵 神算 鬼謀 鉄壁 制圧 帰順
こっちが6だった!? 陶侃なんて知らないけど!
多分、晋時代以降の名将なんだろうけど!
しかも、神算、鬼謀持ちですよ!
「ま、またですかい。親分」
「元福(周倉の字)よ。これが喜ばしくなくて何であろうか・・・」
「へ?」
「鄧艾という英俊だけでなく、それに匹敵する英俊を見つけたのだぞ」
「ほ・・・本当ですかい?」
僕は周倉にそう言うと、一人でスタスタと陶侃の目の前にやって来た。
陶侃も僕に気づき、少し怪訝そうな顔つきで僕を見ている。
陶侃の品物は全て平民向けの衣服であり、僕が購入するとは思えないからだろう。
「いらっしゃい。どれにしましょう」
「そうだな。君を買いたいのだがね」
「えっ・・・? どういう意味です?」
「我が名は司護。字は公殷だ。文字通り君を召し抱えたいのだがね」
「なっ!? 私をですか!?」
「そうだ。君はそこにいる我が息子や鄧艾に匹敵する英傑だ。何故あたら英傑を埋もれさせておけようか」
「ま、待って下さい! 私には何の実績もありません! 母と共にその日暮らしの寒門の出(貧しい家柄という意味)ですよ!」
「ハハハ! それでは丁度、親孝行が出来るではないか」
「・・・い、いや、しかし・・・・・・」
「それとも、この司護に仕えるのは不服と申すか?」
「め、滅相もありません! 上使君と呼ばれる貴方様に仕えるのは名誉あることです!」
「ハハハ。それは良かった。『朝敵には仕えぬ』と申されたら余もお手上げだからな」
「い、いや・・・そのようなことは・・・」
「現在の武陵府君(張任)は、君と同じ寒門の出だ。それでもまだ疑うのかね?」
「そこまでおっしゃれては私も断る道理がありません。不肖の身ではありますが、お仕えしとうございます」
「ハハハ! これで今日は天から二物を手に入れたぞ! 真に目出度い限りだ! ハハハハ!」
鄧艾と陶侃は一応、従事中郎ということにして様子を見ることにした。
特に陶侃は帰順持ちなので、手元に置いておきたいところだ。
「父君。ちょっとお話したいことがあります」
「どうした? 文恭」
意気揚々と政庁へと戻る前に文恭が僕に声をかけてきた。
どうしたんだろう?
「今日、二人の者を迎い入れ、従事中郎にしたことに意見したき儀があります」
「何が問題だ?」
「歩君(歩騭)も先日申した通り、ここは父君が推挙する旨を巧曹従事に伝えることが先でございます」
「う・・・そうであったな。ところで巧曹従事は誰であったかな?」
「・・・しっかりして下さい父君。先日、臨賀郡の督郵であった劉先殿が抜擢されましたよ」
「ぬ? そうであったか?」
「本当にしっかりして下さいよ」
・・・ううむ。文恭にも叱られるようになってしまったか。
色々ありすぎて、どうにも間が抜けているっぽいのは否めない。
しっかりしないとな・・・。
政庁に戻ると、直ぐさま衛士が僕に言伝をしてきた。
既に陳平は帰還し、楊慮や范増が待機しているという。
これで例の密議が整った。
密議である以上、公式な場で行うのは少し問題がある。
そこで僕は三人を自室に招き、そこで密議を行うことにした。
これなら麻雀をするという名目で問題なく招集することが出来るからだ。
「楊県令に聞きましたが、何やら面白そうなことをするそうですね」
開口一番、陳平が卓に着くやいなや、そう切り出してきた。
一応、皆は麻雀しながらの雑談という形をとっている。
「他に方法が思いつかなかっただけのことよ。それで、どう切り崩していくか策はあるか?」
「田一族も確かに切り口の一つです。ですが、もっと良い切り口がありますよ」
「・・・・・・ほう? それは何処だ?」
「曹一族。即ち、曹嵩を使うのです」
「なっ!?」
思わず僕は大声を出してしまった。
それと同時に范増が「いや、ポンじゃ。ロンではない」と少し大きめの声で嗜めた。
僕は范増に軽く会釈すると陳平に詳細を聞いた。
「曹嵩殿をどう使うというのだ・・・・・・?」
「お忘れですか? 養父の曹騰は高名な宦官だったのですよ。現在でも影響力はあるでしょう」
「・・・いや、それは知っているが」
「そして、その息子である曹操は未だに小さな郡の太守です。十常侍どもに賄賂を使って息子を栄転させてもおかしくはない」
「・・・成程。そして、その資金は我らが出す訳か」
「はい。曹操は確かに油断ならぬ男ですが、我らに敵意を抱くことはまずありますまい」
「・・・うむ」
「そこで上手く曹嵩から例の件を高望に伝えるのです。さすれば趙高を妬む高望です。勝手に動くでしょうよ」
「確かに・・・」
「そして、それと同時にこちらから章陵郡の太守を新たに任命します」
「・・・しかし、そうなれば張温殿が困りはしないか?」
「その逆です。張温とすれば袁術と敵対はしたくない筈。それに江夏の劉祥の重しにもなります」
「うむ。既に章陵郡は曹操によって中々強固なものになっているしな」
「周辺の江夏蛮は我らの味方ですしね。それと曹操には豫州穎川郡の太守にでもなってもらいましょう」
「穎川郡は豊かなだけでない。袁術も狙う地だ。しかも都にも近い・・・」
「はい。それに噂によれば何進と袁術の中は険悪化しております」
「ふむ。まず何進は反対しないだろう」
穎川郡は曹操が遷都した許昌がある交通の要衝だ。
章陵郡の太守に比べたら、かなりの栄転に違いない。
しかも曹操に章陵郡を宛がったのは、形式上においては僕になっているからな。
しかし、これはかなりの賭けだ。
曹操が劉弁のことを知ったらどう動くだろう・・・。
そして、それがデブ帝の暗殺後となれば・・・。
・・・いや、待てよ。
そうなれば曹操と劉寵が接近してもおかしくはないな。
そして、その橋渡し役は僕がやれば良いだけだ。
劉寵のところには荀彧もいるし、円滑に進む筈だ。
そして劉寵も袁術とは敵対関係にある。
見えたぞ! そして、亜父よ。悪いがそれはロンだ!
しかも裏ドラも三つ乗ってバイ満だぜ!




