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第百三話 なんでそーなるの!?

 

 確かに名将皇甫嵩はこちらに来た。

 けど、あくまで隠居であって配下にはならないっぽい・・・。

 現状において僕は朝敵だから仕方ないけどさ。

 それにしても一体どういう風の吹き回しなんだろう・・・。

 ・・・と、そんなことを考えていると、皇甫嵩は矢継ぎ早に切り出してきた。

 

「ところで司殿よ。儂も流石に朝敵の元で隠居というのは、ちと憚るのでな」

「・・・はぁ」

「それ故、儂に策があるのだがね。認めて貰えないかね?」

「どのような策です?」

「儂はこう見えても、それなりに軍功はある身なのだよ。貴殿が信じるか信じないかは別としてな」

「滅相もありません! 将軍の功績は余も存じております!」

「ハハハ! それは良かった!」

「・・・それで策とは?」

「儂が手も足も出ないで君に負け、その上で捕虜になったことにすれば良い」

「なっ!?」

「さすればタダでさえ麒麟騒ぎなどで士気がガタ落ちの最中だ。聖上陛下(霊帝)も怖じ気づくと思うのだがね」

「・・・・・・」

 

 呆れた・・・。自分の名声や功績を何とも思わないのか・・・。

 そんなことをすれば、後世でどんな評価に分かった上での提案なんだろうけどさ・・・。

 

「それとこれはお返し致す」

「・・・は」

 

 返してきたものとは僕が張忠に宛てた偽書だ。

 もういらなくなったということか?

 

「貴殿の書は特徴がないから良いな。簡単に写せたよ」

「・・・・・・」

「しかし、ちとお人が良すぎますな。ま、それこそ貴殿が貴殿たる所以でしょうがな。ハハハ」

 

 僕もバカじゃない!

 張忠宛ての偽書には小さい穴を空けていないんだよ!

 政宗が一揆騒動を起こした際、秀吉に申し開きをするために行ったことを僕もやっているんだ!

 「バカにするな!」と言いたいが、ここは黙っておくことにしよう・・・。

 

「しかし皇甫将軍。確かに討伐軍の牽制にはなりますが、それで事が収まるでしょうか・・・?」

「問題はあるまい。何大将軍はそこそこの人望はあるが、戦さにはド素人だ。その上、長江の戦さは中原の戦さとは違う」

「それは分かっておりますが・・・」

「ならば問題あるまい。それにこのまま都におわす陛下も丸裸では、何れ豫州王に攻められるのがオチだ」

「・・・今、何とおっしゃった?」

「? 儂、何かおかしな事を言ったかね?」

「帝は無上将軍と称して討伐軍の中枢に居られますが・・・」

「なっ!? 今、何と言った!?」

 

 情勢持ちなのに何で知らねぇんだよ・・・。

 てか、知った上で来たんじゃないのか?

 

「折角、今まで儂が十常侍を使ってまで出征をせぬようしていたのに・・・」

「どういう事です?」

 

 話は黄巾の乱まで遡る。

 当初、デブ帝は西園八校尉を組織し、自ら討伐すると言い張ったらしい。

 十常侍は皆、反対したがデブ帝は強引に押し切ろうとした。

 十常侍が反対した理由は自分たちの悪行がバレる危険性が高いと踏んだんだろうね。

 

 そして、それに待ったをかけたのが皇甫嵩だ。

 十常侍との裏交渉で党錮の禁の解除と引き替えに親征を思い留まらせたという。

 ただし、十常侍らとの裏交渉は専ら張温などだったそうです。

 

「しかし将軍。何故、帝の親征を阻止したのですか? 十常侍の悪行を晒す良い機会だったのでは?」

「そうかもしれんが、下手に陛下が出征すると現場も混乱するからな。当然であろう」

「・・・確かにそうですが」

「大体だ。鉅鹿、頴川、南陽と各地で蜂起しているのだぞ。陛下がどれか一箇所に進めば、当然そこだけにほとんどの軍勢を投入することになる」

「そうですね・・・」

「そうなれば同時に三箇所の平定は無理だ。これが一箇所なら儂も止めなかったがね」

「・・・ですが、帝に十常侍の悪行を晒す好機でもあった筈。それに帝が気付けば乱も治まる可能性もあったと思いますが・・・」

「それは儂の仕事ではない。儂の仕事はあくまで賊の討伐だったからな」

「・・・・・・」

 

 こりゃダメだ・・・。

 確かに軍を率いるのは超一流なんだろうけど、政治や政局に関してはまるで興味が無い。

 皇甫嵩が晩年、董卓相手に何もしなかった理由はそれか・・・。

 

 でも、そうなると今回の親征は、十常侍らが悪行をバレないと思ったからということになる。

 確かに帝が死ねばバレたところで恐くないしな・・・。

 しかも世継ぎは偽物で、確実に傀儡に出来る訳だし・・・。

 

「参った。これで儂は役立たずになってしもうたわ。という訳で、これからはノンビリと隠居生活を楽しむことにしようかな」

「しょ、将軍! 将軍はそれで良いのですか!?」

「役立たずなんだから仕方あるまい。それに人質なんだから尚更だよな。ハハハ」

「・・・・・・」

 

 能力値凄いのに! 神算、鬼謀だって所持しているのに!

 でも、やる気が全くゼロ!

 ああ、やきもきするわぁ!

 

 でも、試しに帝暗殺計画を・・・・・・。

 いや、駄目だ・・・。他の家臣にも内緒にしている極秘事項な上に

 

「そんなこと。儂、知らんし」

 

 なんて言われたら僕の頭がおかしくなりそうだ・・・。

 やはり暗殺計画については控えておくことにしよう・・・。

 

 無責任男、皇甫嵩がカラカラ笑いながら退出した後、僕は楊慮を自室に呼んだ。

 こちらの暗殺計画も捗っていないけど、向こうの暗殺計画も未だに成就していない。

 このやきもきする状況を聞くためだ。

 

「皇甫将軍が人質として参じたとか・・・。いやはや、やはりあの御仁は読めませんね・・・」

「・・・それは最早どうでも良い。楊県令」

「良くはありません。皇甫将軍と張兄弟は因縁の間柄です。交州での共同戦線において邪魔になるかもしれません」

「・・・かといって、何も罪を犯していない人物を処するのは道義に反する」

「・・・ふむ。確かに鄭玄ら儒者達も皇甫将軍には一目を置いておりますしね」

「全く厄介な人質だ・・・。それよりも帝の件はどんな状況なのだ?」

「それが一向に造船が捗りません・・・。あの黄皓という宦官が事ある度に邪魔をする始末です」

「思っていた通りだ。・・・して、向こうの出方はどうだ?」

「それならご安心を。これ以上無い毒味役が買って出てくれましたので」

「これ以上無い毒味役?」

「南陽府君です」

「えっ!? 劉岱殿が自ら毒味役をしているのか!?」

「はい。帝に絶えず傍に付いております。故に問題はありますまい」

 

 これもまた異例中の異例だ。

 恐らく范増か楊慮が秦頡しんけつあたりに漏らしたんだろう・・・。

 当の帝本人は知らぬが仏だろうけどな・・・。

 

 しかし、そうなると更に長引くことになるよな・・・。

 こっちは只管待ち続けるしかないのか・・・。

 どうにか打開しないと頭がおかしくなりそうだ・・・。

 

「楊県令よ。何か打開策はないものだろうか・・・? このまま帝ご一行の宴会をただ只管、見続けるというのは・・・」

「・・・はい。無いこともありませんが」

「何? あるのか?」

「黄皓が差し向けた暗殺者の一人が侍女として紛れ込んでいる由」

「・・・しかし、侍女を取り調べたところで、黄皓が知らぬ存ぜぬを決め込むだけであろう・・・」

「確かにそうですが、その侍女は帝のお気に入りだそうです」

「・・・その侍女に帝の暗殺命令を帝の前で自白させるというのか?」

「・・・それは何とも。自白したところで、恐らくその者は死罪でしょうし・・・」

「・・・だが、少なくとも帝が宴会の席で殺される危険性は少なくなる・・・か」

「はい。現段階では、それが最も有効な一手です」

「・・・宜しい。引き続き内密で取りかかってくれ」

「御意」

 

 ・・・女暗殺者って誰だ?

 あっ!? ひょっとして名無しの女盗賊って奴か!?

 ・・・でも、ブスなら侍女にならんよな?

 それとも黄皓の口利きだからブスでも侍女になれた?

 てか、そもそもブスじゃない?

 ・・・もう、どうでもええわ!

 

 ・・・と、ここで十二月の内政フェイズ。

 また収入のみ・・・。

 ああ、早く内需拡大をしたい・・・。

 

農業1580(5000) 商業1620(5000) 堤防100 治安98

兵士数49133 城防御312(1000)

資金6228 兵糧153000

 

 資金が増えただけで他は変化なし・・・。トホホホ・・・。

 この状況、今年中に終わらせたかったのに・・・。

 デブ帝の宴会三昧の煽りだなんて・・・。

 

 そして、今年もあと僅か数日という頃、侍女として潜り込んでいた女暗殺者を確保したとのこと。

 その女暗殺者は僕に面会すれば全てを打ち明けるという・・・。

 火薬はないから自爆テロはないけど恐いな・・・。

 一度、暗殺されかけた身だしね・・・。

 

 ・・・という訳で皇甫嵩の時と同じくコッソリ見てみる。

 すると、そこには両手を縛られた女性が辛そうな表情をして立っていた。

 

「す・・・凄い美人だ・・・」

 

 思わず言葉が漏れてしまうほどの美人だ。

 こんな女性なら殺されても良いほど・・・。

 いや、死にたくありませんけどね!

 ・・・で、誰だ? モブじゃないと思うけど。

 

貂蝉 特殊人材

 

 嘘だろう!? なんで貂蝉なんだよ!?

 一体、何がどうなっているんだよ!?

 

「誰だい? そこで覗いているのは!? そんな所で隠れていないで堂々とツラを見せれば良いじゃないのさ!」

 

 え~・・・。貂蝉ってこういうキャラなの・・・。

 凄い美人だけど、セリフがゴリ子と少しカブるじゃん・・・。

 ま、それ以前に暗殺者という時点で納得いかないけどさ・・・。

 

「すまぬ。別に隠れていた訳ではない・・・」

 

 僕は覚悟を決めて現れることにした。

 美人だけど性格は凄くキツそうだ・・・。

 未だに貂蝉とは信じがたい・・・。

 

「・・・あ、アンタは誰さ?」

「余が司護だ」

「えっ!? アンタが!?」

「・・・うむ。見込み違いだったかね?」

「と、とんでもない! いや、さっきあんな所で変な言葉を喚き散らしたから・・・」

 

 拙いところを見られたけど、どうにかなりそうだ。

 でも、貂蝉って確か架空の筈だから王允の養女の筈だよな?

 どういう経緯でこうなったのやら・・・。

 セリフはイメージ違うけど、流石に性格は演義と同じかそれに近いだろう。

 ・・・てか、そうであってくれ!

 

「先ほどは君のような娘が、かような真似をする世の中になったことを神々に恥じておったのだ。すまぬ」

「・・・そ、そうなの?」

「うむ。しかし、君のような娘が何故そのような経緯になったのか説明してくれないか?」

 

 僕がそういうと同時に貂蝉は身の上話と経緯を事細かに説明した。(外伝67~68参照)

 ・・・聞いていてムカムカしてきました。

 全くどうしようもねぇな・・・デブ帝め・・・。

 

「苦労したであろうな・・・。余が不甲斐ないばかりに許してくれ・・・」

「そ! そんな! 司様が悪い訳ではないのに!」

「いや、余が悪いのだ。せめてもの償いに余に出来ることがあれば遠慮なく申せ」

「えっ? じゃあ・・・」

「・・・何かね?」

「そ、その・・・。よ、よ、よ・・・」

「・・・よ?」

 

 嫁か!? 嫁になるというのか!?

 性格はキツそうだけど凄い美人だし!

 ゴリ子に似たようなセリフ回しがあるけど凄い美人だし!

 呂布は恐いけど凄い美人だし!

 でも、やっとこれで唯一のヒロイ・・・。

 

「・・・よ」

「よ?」

「・・・よ」

「・・・よ?」

「養女にして下さい!!」

「!?」

 

 ウガァァァァァ!? 何だと!?

 ここまで来てそりゃないよ!

 

「ど、どうしま・・・した?」

「いや、余には慶里という養女がおった。嫁に出してしまったがね・・・」

「ええ。その事は聞き及んでおりました。なので、司様もその方が宜しいかと思いまして・・・」

「・・・・・・」

 

 ちっとも宜しくねぇよ! チッキショー!!

 慶里を項羽にくれてやったのは、これのフリってオチかよ!?

 意味が分かんねぇよ!

 

「あ、あの・・・」

「すまぬ。慶里のことを思い出してしまってな。また取り乱してしまった・・・」

「そ、それで養女にして下さるのでしょうか・・・」

「・・・余の養女で良ければ」

「ああ! 嬉しい!! お父様と呼んでいいのですね!」

 

 そう言うと貂蝉は僕に抱きついた。

 うう・・・良い香りがする・・・。

 そして豊満なその・・・胸が・・・。

 ああ・・・何てことだ・・・。

 僕にもやっと春が来たと思った矢先に・・・。

 

 あそこで「養女ではなく嫁としてどうか?」と言えば良かったのかな・・・?

 そうすれば違っていたのかな・・・?

 ああ、もう! 葛餅持ってこい!!


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