表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/216

第九十二話 初心、忘るべからず

「ちょ・・・ちょっと待ってくれ」


 静寂な雰囲気を破ったのは意外にも劉備だった。

 何を言うつもりだろ?

 

「どうかしたかね? 玄徳殿」

「あのさ。オイラ、徐州牧なんだけど・・・」

 

 あまりにも素っ頓狂な発言に僕は笑いを噛み締めた。

 他の二人も劉備の言葉に吹き出すのを必死に堪えている。

 

「しかし、貴殿は正式な徐州牧ではなかろう?」

「え? あ? 印璽あるんだけど?」

「印璽があっても正式な手続きを踏んでおらぬではないか。もし玉璽を所有したとして、帝を名乗るのが許されると思うかね?」

「う・・・。しかし、公殷さんは長沙太守を名乗ったじゃないか?」

「それは赴任してきた仲景先生(張機のこと)が余に印璽を渡し、更に朝廷から後任が使命されていないからだ」

「・・・あ、そ、そうなの?」

 

 曹操は堪らず大笑いしたけど、孫堅は少し引きつった笑いをした。

 ひょっとして、袁術のことを思い浮かべたのかな?

 それはさておき大笑いした後、今度は曹操が疑問を投げかけてきた。

 

「しかし、これでは貴殿が託けて好き勝手に書いたと言われないかね?」

「うむ。そう思われても致し方ない。だが、もしそうなら『司護に禅譲せよ』と書くかもしれませんぞ」

「ハハハ。成程、確かにそうですな」

「余は正直者である故、言われた通りに書きました。正直、書き足してやろうと少しだけ思いましたがね」

「ハハハ! 確かに正直者ですな!」

 

 曹操はまた声を上げて笑ったが、よく見ると目は笑っていない。

 それでもスルーしたのは、自分にとってチャンスでもあるからだろう。

 小さい郡の太守から州牧に成るのは大きいからね。

 

 その点でいえば孫堅もそうだ。

 しかも曹操とは違い、頭痛の種から独立出来るのだ。

 そういう意味において、非常に大きいと言える。

 

「良いかね? お三方」

 

 僕は咳払いした後、まずはそう言って襟を正し、更にこう続けた。

 

「貴殿らは正しく、天から直に命ぜられたのだ。これは『世を泰平に導け』という天命でありますぞ」

「如何にもその通り!」

 

 真っ先にそう答えたのは孫堅だ。

 この時、孫堅は袁術と袂を分かつことを決心したんだろう。

 そうであって欲しい。

 

「では、誓いましょう。我ら四名。必ずや泰平の世を導かんことを!」

「おお!」

 

 本来なら、この三人は天下への覇権を巡って対峙している。

 正確には一人は孫堅じゃなく、子の孫権だけどね。

 そして、僕はその中心に立った訳だ。

 

 大きな戦さを起こさせないことが、大きな戦さで勝つよりも重要なことなのだ。

 それが何よりも重要なことなのだ。

 そのために汚いことだってやる。

 綺麗事や理想論だけで成り立たないのは、この世界も現実と同じと思うからだ。

 

 ハチャメチャな宴会や三人と共に軽い食事をしながら語り合った翌日。

 その日が五行祭の閉幕となった。

 開会宣言ほどではないけど、僕は天に向かい、感謝の意を示した。

 そして、僕は会場に来ていた人々、いや全ての人々に向かってこう叫んだ。

 

「大一大万大吉!!」

 

 うん。石田三成の旗印です。

 三成も嫌いではありません。寧ろ、好きな人物です。

 僕は東軍派だけど、だからといって三成を卑下するのは間違いだと思うだけです。

 好きだろうと嫌いだろうと、学ぶべきものは学ぶ。真似をすべきは真似をする。

 この精神こそ、発展に欠かせないものです。

 ・・・だからといって、完コピは良いとは言いませんけど。

 

 大一大万大吉を僕が叫ぶと、皆も一斉に「大一大万大吉」を叫んだ。

 皆、意味は分かってくれたかなぁ?

 そうだと良いんですけどね。

 

 そして、閉会式の翌日となり、つらい日が訪れた。

 慶里との別れの日だ。

 今生の別れではないけど、場所が場所なだけに再び会える日が来るかは分からない。

 電話もないから声を聞くことも出来ない。

 やり取りが出来るとすれば、手紙でのやり取りぐらいしかない。

 

「父君。どうかお体を大切に・・・」

「案じるな慶里。お前も子羽殿と幸せにな」

「・・・はい」

「子羽殿。くれぐれも慶里を頼みますぞ」

「お任せあれ。義父殿。俺がいる限り慶里は指一本も触れさせぬ」

「くれぐれも戦場にて連れ回してはならんぞ」

「・・・あい解った」

 

 僕は慶里と子羽に言葉をかけ、別れを惜しんだ。

 慶里には僕の知らない友人も数多くいた。

 その友人達にも別れを惜しんでいる。

 勿論、弟の司進や義妹となった劉煌も同様だ。

 

 正直な話、僕は父親として慶里に何かをやった訳でもない。

 ただ養父になり、居場所を与えただけに過ぎない。

 それでも慶里は僕を父と慕い、僕について来てくれた。

 恐らくそれは、この荊南という地が慶里を優しく癒やし、包み込んだからであろう。

 そして友人達や司進夫婦の存在が、それを補っていたのであろう。

 

 慶里は項籍と共に馬に乗ると、孫堅の一団と共に去って行った。

 何度も何度もこちらに振り返り、項籍ごしから僕を見た。

 僕も慶里も涙を堪えながら、お互いの身を案じながら・・・。

 

「行ってしまいましたね。荊使君」

「うむ・・・あ・・・」

「如何なされました?」

「いや・・・」

 

 声を掛けてきた若い女性に僕は見覚えがあった。

 誰だっけ? 確認してみよう。

 

蔡琰 字:昭姫

特殊人材のため、登用不可。

 

 ああ、道理で見覚えがあると思ったら・・・。

 あれから十年か。もっとも五年は空白だけど。

 

「確か昭姫君だったね」

「ええ。憶えておいででしたか。光栄です」

「忘れるもんか。蔡先生のご自慢の才女のことを」

「ウフフ。お世辞でも嬉しいものです」

「慶里とは親しかったのかね?」

「父の伝手でお側にて、お仕えしておりました。今後は父の手伝いでもするつもりです」

「そうかね。それとこれは個人的にだが、智云(劉煌の字)の世話もして欲しいのだが・・・」

「まぁ。豫州王君のご息女の世話役とは、とても名誉なことです」

「では、宜しいかね?」

「はい。喜んで」

 

 劉煌のことは良く知らないけれど、慕っていた慶里がいなくなるのは寂しいだろうからな。

 僕なりの配慮ですよ。これも・・・。

 

 しかし、これで僕の中からはジンちゃんフクちゃんコンビ。

 それとおおやけにも慶里がいなくなった訳だ。

 流石に寂しい限りだけど、当初に比べたら人は多い訳だしな。

 未だに名前と顔を一致させるのに、密かに脳内で確認しないといけない人物も多いんだし。

 

 祭りの後の寂しさとは良く言ったもんだ。

 これに三人がいなくなった訳だから、余計にポカンと穴が空いたように感じる。

 本当は元の世界に戻らないといけないけど、戻る時はもっと虚しさが込み上げるような気がする。

 

「しっかりして下され。まだまだ荊使君には働いて貰わなければ成りませぬ」

「え? ああ・・・。ん?」

「如何なされました?」

「そ、そうだな。陳端」

「おお、てっきり私のことをお忘れになったのかと思いましたよ」

「わ、忘れる訳がなかろう」

「ハハハ。まぁ、そういうことにしておきましょう」

「う・・・。そ、それはそうと」

「何です? また『何とかという者を探せ』と仰いますので?」

「ち、違うわ! 長沙のことが少しばかり気になっただけだ!」

「ああ。それでしたら至って平和なもんですよ」

「それならば宜しい」

「ハハハ。長沙は荊使君の生まれ故郷。それ故、統治には目を光らせております」

「うむ。それなら重畳。ただ見所のある若者がいた場合、遠慮せずに言上するように」

「は・・・はぁ・・・」

 

 陳端の顔は少し引きつっていたようだ。

 既に僕の病的な人材収集癖は曹操以上だろうからね。

 陳端の気持ちも分かる気もする・・・。

 

 そして、そんな他愛もない掛け合いの矢先・・・。

 

「おめでとう!」

「うわっ!? なっ!? 老師!?」

「本当におめでとう!」

「何がめでたいんだ!?」

「元の世界に戻れるぞ!」

「はぁ!? 突然、何を言うんだ!?」

「特殊なイベントを発生すると、クリアと見做して元の世界に戻れるという条件があったのじゃ」

「唐突に何!?」

「マスクじゃったから仕方ないのじゃよ。で、元の世界に戻る?」

「ここに来て戻れるかよ! 司進や慶里をほっといて戻れるか!」

「フォフォフォ。それもよしよし」

「もう暫く残るよ。やり残したことが多すぎる」

「恐らく展開的にグダグダだと思うんじゃがのぉ」

「言うなよ! そういうこと!」

「それもよしよし。じゃあの」

「もう無茶苦茶すぎる・・・」

 

 ここにきて元の世界にいきなり戻れるって何だよ・・・。

 てか、僕がここに来て居なくなったら、荊南はどうなるんだよ。

 画面を見て悲惨なバッドエンドだったら、やりきれないどころじゃ済まないよ。

 

「荊使君」

「・・・あ? 陳端?」

「少し安心しました。やはり荊使君は変わっておりませんね」

「・・・余は少しも変わっておらぬ」

「そうですよね! 急に訳の分からない言葉で騒ぎ立てない荊使君なぞ、荊使君ではありませんよね!」

「・・・・・・」

 

 何かすげぇディスられた・・・。

 幸い倭建が傍に居なかったから良かったものの・・・。

 

 さて、五行祭が開催された五月も終わり、六月となった。

 ここで久々の政略フェイズです。

 やり方を忘れていないかちと不安・・・。

 まずは衝陽の現状を確認してみないとね。

 

衡陽パラメータ(地所)

農業900(5000) 商業900(5000) 堤防100 治安100

兵士数45283 城防御300(1000)

資金4058 兵糧50000

 

 現状は変わっていないんだな。

 それと今回から内政に尽力出来るのは十人までだっけ。

 ただ、十倍掛け出来るので、それはそれでオイしいんだけど。

 

 現状だと衝陽には、どれだけ配置されているんだっけ?

 これも新たに確認しないとな・・・。

 

衡陽郡(地所)

荊州牧司護、太守王烈

頼恭、厳畯、来敏、国淵、桓階

杜襲、尹黙、孫乾、繁欽、秦松

張範、鄭玄、范増、許褚、司進

蔡邕、徐奕、顧雍、陳平、潁容

張紘、張昭、管寧、鄧芝、邯鄲淳

陳紀、彭越、陳羣、徐晃、丁奉

趙嫗、倭建、楊儀、楊慮、許汜

沈友、歩騭、裴潜、蒋琬、劉敏

孫資、劉巴、黄朗、李秀、鐘離権

習禎、鄧方、馬隆、張陞、呂乂

王連、廖立、潘濬

 

 多すぎるわ! 何時の間にかこんなに溜め込んでいたのか!?

 でも、十倍かけとなると金が1000必要だから、実際には四人しか使えない。

 とっとと交州を攻略し、配置転換しないと勿体なさ過ぎる。

 

 まずは商業を5000まで持っていくことにしよう。

 そうすれば金5000が毎月がっぽりと収入となる訳だしね。

 でも、すぐに九月だから兵糧も欲しい。

 う~ん・・・。悩ましいな・・・。

 

 色々と悩んだ結果。まずは僕と尹黙、張昭、陳羣が十倍掛けの商業投資ということになった。

 その結果、こんなことになりました。

 

衡陽パラメータ(地所)

農業900(5000) 商業1470(5000) 堤防100 治安43

兵士数45283 城防御300(1000)

資金58 兵糧50000


 いけね。治安が減るのを忘れていた・・・。

 ここまで減るのって、難民を受け入れた当初を思い出すな・・・。

 あまりの急激な経済発展は露骨に治安悪くなるって、現実でもそうなのかな・・・?

 

「荊使君。献策を受け入れたく」

「おお、楊県令(楊慮)。して、どのような策かね?」

「他の郡から毎月、1000の金を流入させましょう。その程度なら問題ありません」

「それ以上は駄目なのか?」

「それ以上となると、他の郡の状況が苦しくなります」

「ううむ・・・。そうか」

「何せ人件費がかなり嵩張っております。これを打破する為にも、交州攻略は早い内に行うべきかと・・・」

「・・・それは承知しておる。皆まで言うな」

「御意」

 

 そして六月後半の政略フェイズ。資金が5000あるけど、全部を商業投資って訳にはいきません。

 ・・・と思ったら月1にされていたんだっけ・・・。

 いかんな。本当に色々あり過ぎて憶えていないわ・・・。


 そうなると、来月は帰順持ちを活用しながら、治安も良くしないとな。

 王儁は太守だから異動命令は無理だけど、他の帰順持ちは異動可能か・・・。

 李秀や倭建も魅力9の帰順持ちだし、逆に兵士が潤う訳だから問題なしだ。

 でも、この帰順コンビ、仲が悪そうだけど大丈夫なのかな?

 

 その結果、桂陽郡の太史慈と賀斉、臨賀郡の趙佗を衝陽郡に配置転換。

 変わって桂陽郡に丁奉と鄧方、臨賀郡に徐晃を配置しました。

 全てを表示するとこうなります。

 

長沙郡

太守邴原

韓曁、周泰、蒋欽、陳端、周倉


武陵郡

太守張任

甘寧、朴胡、趙儼、沙摩柯、杜濩


桂陽郡

太守王儁

丁奉、徐盛、灌嬰、金旋、鄧方


零陵郡

太守厳顔

劉度、游楚、張承、是儀、鐘離昧


臨賀郡

太守満寵

李通、文聘、徐晃、劉先、李孚


衡陽郡(地所)

荊州牧司護、太守王烈

頼恭、厳畯、来敏、国淵、桓階

杜襲、尹黙、孫乾、繁欽、秦松

張範、鄭玄、范増、許褚、司進

蔡邕、徐奕、顧雍、陳平、潁容

張紘、張昭、管寧、鄧芝、邯鄲淳

陳紀、彭越、陳羣、趙佗、賀斉

趙嫗、倭建、楊儀、楊慮、許汜

沈友、歩騭、裴潜、蒋琬、劉敏

孫資、劉巴、黄朗、李秀、鐘離権

習禎、馬隆、張陞、呂乂、太史慈

王連、廖立、潘濬

 

 そして、七月となった。

 本格的に交州侵攻を開始するための戦略会議を行う矢先、とんでもない情報が入ってきたんだよ。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ