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第九十一話 乱痴気騒ぎ

 開会式や孫堅らとの謁見の翌日。

 早くも武闘大会の予選リーグ戦が開始される。

 予選リーグの上位がトーナメント戦に出場出来る訳だけど、当然ながら死のグループが発生します。

 因みに死のグループの面子ですが・・・・・・。

 

 項籍、夏侯惇、黄忠、そしてゴリ子・・・。

 

 一位通過は当然、項籍だろうけど二位通過は予想出来ない・・・。

 ま、ゴリ子が予選落ちなのは由としよう。

 優勝したら、またトンデモないことを言い出しかねないからね。

 項籍がいる以上、まず無理ですけどね。

 

 グループ分けされているので、他にも見所が満載のカードがあります。

 例を挙げれば龍且対鐘離昧、倭建対関羽、張飛対孫策、甘寧対魏延と、まぁ夢のカード満載です。

 因みに漢鐘離こと鐘離権は「ワイは疲れるのがイヤや」と放言しましたので、棄権ということになりました。

 てか、ヤマトタケル対関羽なんて、完全に神の世界じゃん・・・。


 でも一番、面白かったのは張飛対孫策かな?

 当人達の試合もそうだったのですが、客席で孫堅と劉備の激しい応援合戦が繰り広げられたのです。

 結果、張飛の辛勝だったのですが、大はしゃぎする劉備は孫堅の凄い形相を見た途端、一瞬で黙りました。

 

 で、十日ほどかけて予選リーグを勝ち抜き、トーナメント戦に勝ち進んだのは以下の八人です。

 一位通過が項籍、鐘離昧、太史慈、関羽、張飛、甘寧、夏侯淵、許褚。

 二位通過が黄忠、龍且、倭建、孫策、周泰、徐晃、楽進、典韋、魏延。

 司進は残念ながら関羽のグループとなり、予選敗退・・・。

 夏侯淵のグループなら何とかしれなかったけどなぁ。

 でも不正は出来ないので、仕方がないね。

 

 そうそう。トーナメントですが、項籍が断トツ圧勝を重ね優勝しました。

 そりゃそうなるわな・・・。

 呂布がいれば面白かったかもしれないけど、こればかりはねぇ。

 

 項籍は優勝すると、例の雷鳴に似た大声で天を仰いだ。

 そして天に向かって、こう叫んだんだ。

  

「見たか! 鞏君! 俺は宣言通りに優勝したぞ! そして、ここで誓う! 俺は天下泰平のため、君の意思を受け継ぐ! それが俺の弔いだ!」

 

 鞏志は決して無駄死なんかじゃない。

 強制的に留守になったとはいえ、理由を聞くと僕にもやはり責任はある。

 当初、来た僕だったら確実に「鞏志の代わりに項羽なんてラッキー!」なんて思ったのだろうけど、今はそう思わない。

 

 だって皆、生きているから・・・。

 その辺の子供だって能力値なんて表示されないけど、生きているから・・・。

 ジンちゃんやフクちゃんだって、生きているから・・・。

 そして、その命を出来るだけ多く守るのが、僕の生きている理由だから・・・。

 

 他には弓術大会や腕相撲大会、馬術大会などもあり、思いの外、盛り上がりました。

 因みにですが、項籍は武闘大会以外、出場しておりません。

 じゃないと、優勝を全部かっ攫うからね・・・。

 

 弓術大会の優勝は黄忠で、楽進や沙摩柯など破り見事優勝。

 流石は僕が当初、長沙で陳端に命じて探索していただけある。

 ・・・そう思うと、めっちゃ悔しい。

 

 腕相撲大会は張飛と許褚の決勝戦が白熱しました。

 ゴリ子も参戦しましたが、初戦で張飛に当ったのは運がない。

 運も実力の内ですからね。

 

 馬術大会での優勝は意外なことに夏侯淵!

 灌嬰のサシも一歩及ばずで、灌嬰は三位でした。

 てか、曹操! 爪黄飛電を貸すなんてドーピング同然だろ!

 ま、二位の劉備も的廬を使って参加していましたので、仕方ないんですがね・・・。

 レース展開の最後は、逃げる劉備に追う夏侯淵という構図となりました。

 史実でもしょっちゅう追われて逃げていたのかな?

 それで黄忠が夏侯淵を討った時に大喜びしたとか?

 

 他にも様々な競技がありましたが割愛します。

 羅列するとキリがないんですよ・・・。

 それに一番の盛り上がりは競技ではないのです。

 そう。項籍と慶里の結婚式なんですよ!

 

 閉会近くとなり、項籍と慶里の挙式は実に派手なものとなっていた。

 荊州牧の娘とはいえ養女だし、相手の官職は裨将軍に過ぎない。

 それでも王族の挙式同然のようなイベントになっている。

 項羽と虞美人の最後を思うと、何か堪えきれない気持ちが湧いてくる。

 心なしか、何時の間にか僕の目から涙が零れていた。

 

「お父上・・・・・・」

「う? ああ、いかんな。折角の目出度い日に涙なんぞ・・・」

「私は嬉しゅうございます。お父上が私を娘として受け入れてくれたお陰で、私はあの人の下に行けるのですから・・・」

「ハハハ。お前の花嫁姿を見ていると、お前を妻として迎え入れなかったことを悔いるような気がしてきたよ」

「まぁ・・・。フフフ。それは残念でしたわね」

「残念なものか。こうして余は、天下一幸せな父親と成れたのだ」

「それを言うなら、私こそ天下一幸せな娘でございます」

「うむ。だが、我らだけ享受する訳にはいかぬ。皆、善人はそうなるべきだ」

「・・・そうですわね。それがお父上のお望みですものね」

「そうだ。そのためにも慶里。お前が子羽を導くのだ」

「お父上も心配性ですね。あの方なら既に大丈夫ですよ」

「余もそう思う。だが慶里よ。良いか。人の心とは移りやすいものだ。そのことを良く肝に命じるのだぞ」

「はい。私はお父上ほど強くはありません。ですが、父上の志は引き継ぎたく思います」

「いやいや。今生の別れではない。すまんな。つい説教じみたことを・・・」

「いえ、お父上らしゅうございますよ」

 

 僕は慶里の涙を拭くと同時に「お互い祝いの席で涙は禁物だ」と告げ、慶里は嬉しそうに小さく頷いた。

 僕が父親になった時、こんな感じになるのかな?

 でも、その前に女性と話す時に上がる癖をどうにかしないとな・・・。

 

 僕は慶里の手を引き会場に赴くと、新郎の項籍を始め沢山の人が参列していた。

 本来なら面倒な六礼というものがあるのですが、省略しました。

 その理由は「天が既に認めたから!」の一言で片付きました。

 

 でも、流石に拝堂成親をしない訳にはいきません。

 本来なら新郎の家でやるのが習わしだけど、鳳凰が降り立った場所なら問題はないということで。

 異例中の異例ですが、本来なら新郎の家で行うものだから、仕方がないのです。 

 

「一拝天地!」

 

 現実の結婚式、とは言っても所謂「ホテルの結婚式場」での牧師さんの役目に就いた鄭玄が声を上げる。

 項籍と慶里は跪き、天空と大地に向かって拝礼をする。

 そして、拝礼を終えると両者ともゆっくりと起立した。

 

「二拝高堂!」

 

 それを合図に項籍と慶里はまた跪き、僕と孫堅に拝礼をする。

 僕は両者に静かに頷き、ただ微笑むだけに徹する。

 涙が出そうになるが、約束は守らないとね・・・。

 

「夫婦対拝!」

 

 起立した後にまた跪き、両者はお互いに向い合って拝礼をする。

 更に後列にいる大勢の兄弟達、友人達に一人ずつ拝礼をしていく。

 両者とも本当の親兄弟はいない。

 だけど、項籍には義理の弟である孫策や周瑜がいるし、慶里にも文恭や義妹となった劉煌がいる。

 ある意味、似た境遇なのは偶然の一致なのかな?

 

 一連の儀礼を終えると会場を後にし、別に設けた宴会場へと移された。

 既に多くの御馳走や酒が用意され、そこには荊南の家臣団だけでなく、曹操や劉備、張宝を始めとする太守たちやその家臣団も含まれていた。

 僕があまりの多さに嘆息すると、脇にいた司進が僕に話しかけてきた。

 

「姉上は幸せですね」

「うむ。そうだな文恭(司進の字)」

「ええ。何せ今度はちゃんと父上がいるんですから・・・」

「うっ! す、すまぬ!」

「ハハハ! もう勝手に放浪はしないで下さいよ。留守番して心配するのは、もう懲り懲りです」

「・・・う、うむ」

 

 軽く司進から嫌味を言われました。

 僕が悪いんじゃないのに・・・。

 あ、でも勝手に劉寵の娘との縁談を進めた責任はあるのか・・・。

 

「それはそうと、この場にて改めて挨拶を」

「む?」

「智云。挨拶なさい」

「・・・はい」

 

 司進に則されて前に出てきたのは成人して間もない美少女だった。

 成人して間もないと言っても現代なら未成年ですけどね。

 王族の娘とだけあって、結構な美少女ですよ。

 

「劉煌。字は智云と申します。義父様。お会いしとうございました」

「・・・う、うむ。帰郷して半年近く経つのに会えずに申し訳なかった」

「ウフフ。気にしてはおりません。文恭様と慶里様がお優しいので・・・」

「それならば良いが、慶里はもう荊南の者ではない。これからは余にも頼ってくれ」

「はい・・・」

 

 応対は凄く大人しかったけど、意外と強気なのは慶里から聞いていた。

 でも、そんな感じには見えなかったな。

 二人きりになったら豹変するのかもしれないけど。

 

 そして、祝宴が始まった。

 この祝宴は遠目から見ても非常に感慨深いものだ。

 厳顔と張任を相手に談笑するのは黄蓋と程普。

 郭嘉、陳宮らと同席しているのは徐庶と周瑜。

 お互いに優勝を語り合う黄忠と夏侯淵。

 互いの健闘を称え合う倭建と関羽。

 そして、何故か目も合わさない楊儀と魏延。

 

 ま、まぁ「最後のはオチかよ!」とツッコミたいが、細かいことは触れないでおこう。

 蜀では犬猿の仲だったけど、お互い初見でも何か感じとったとか?

 

 僕は自ら客人らに酒を注ぎ、まだ能力値を確かめていない奴を見ようとした。

 しかし、神経を集中する前に悉く誰かに話しかけられ、笑顔で応対せざるを得ない。

 うう。黄蓋を始めとする孫堅配下の能力値が見たいのに・・・。

 

「おう! 婿殿! 決着をつけるぞ!」

 

 唐突に誰かが大声で叫んだ。

 見ると張飛が項籍の前にいる。

 何か悪い予感がする・・・・・・。

 

「おう! 虎髭! この項籍、逃げも隠れもせぬ!」

「良く言った! じゃあ勝負だ!」

「うむ! では、表へ出ろ!」

「待て待て! 勝負とは酒で勝負だ! 祝いの席で得物をぶつけるほど、俺は無粋じゃねぇ!」

「何!? 酒で勝負だと!」

「おうよ! どちらかが天下一の大酒飲みか勝負だ!」

「ワハハ! 面白い! その勝負乗ったぞ!」

 

 違った意味で悪い予感が的中した・・・。

 両者は酒樽を抱えると、一気飲みをし出したんだ。

 てか、体の何処にそんなに入る場所があるんだ?

 

「ふぅ! まだまだだ! 二戦目いくぞ! 婿殿!」

「当たり前だ! 嫁の前で逃げはせぬ!」

 

 嫁の前だからこそ逃げてくれ!

 慶里が困っているじゃないか!

 しかも、その両者の前に立ちはだかったのは、何と鐘離昧・・・。

 既に少し酔っているし、もう悪い予感しかしない・・・。

 

「私も参加させよ! 虎髭!」

「何だ!? 別嬪さんには悪いが、これは男同士の勝負だ!」

「何だと! 私は男だ! 今からその証拠を見せる!」

 

 そういうと鐘離昧はいきなり下半身を脱ぎだした。

 やめてくれ! 慶里の前だぞ!

 てか、項籍が激怒する・・・・・・。

 

「ワッハッハ! こいつは愉快だ! 少しは大きいようだが、まだまだだな!」

「何だと!? 婿殿とはいえ我慢出来ぬ! それなら証拠を見せろ!」

「おう! 俺の大きさに目を見開くが良いぞ!」

 

 だから、慶里の目の前でやるんじゃないっ!

 慶里が真っ赤になって俯いているだろ!

 婿なら少しは気遣え!

 

「面白い! 俺にも参加させて貰おう!」

 

 僕の近くにいた倭建が唐突にそんなことを言い出した。

 同じ中性的な容姿の鐘離昧に触発されたんだろう。

 だが、そんなことに対抗意識を燃やすなよ!

 

「馬鹿! やめなさい!」

 

 倭建が行こうとすると、双子と言われてもおかしくない李秀が止めた。

 ま、気持ちは凄く分かる・・・。

 

「何だよ! お前には関係ねぇだろ!」

「関係大ありよ! その顔でそんな下品なことをやられたら、私が表に出られないじゃないの!」

「面白ぇ! じゃあ、出られないようにしてやる!」

 

 その瞬間、倭建は突如、下半身を脱いだ!

 もう、何をやっているんだ・・・。

 

「ばっ!! バカァ!!」

 

 顔を塞ぎながら脱兎の如く李秀は逃げ出した。

 それを高笑いし、堂々と見せびらかす倭建・・・。

 一部の神社関係の人。ごめんなさい・・・。

 てか、なんというセクハラ・・・。

 無礼講にも程がある・・・。

 

 僕は見ていられなくなり、三人を連れ出して別室に向かった。

 その三人とは曹操、劉備、孫堅のことだ。

 三人は当然、不思議そうな表情を浮かべたが従ってくれた。

 

 別室に行くと、僕は衛士に「例のものを」とだけ告げた。

 衛士は小さく頷き、小瓶に入った酒を持ってきた。

 小瓶には丁度、三口分だけ入っている。

 

「荊使君。わざわざ、その酒のためだけに我らを呼び出したのか?」

「孟徳殿。それもありますが、それだけではありません」

「・・・では、何故」

「まずはこの酒をお飲みください。これは鳳凰が口を付けた残りの酒です」

「なっ! 何ですと!?」

「貴殿らに是非とも召し上がって頂きたく用意させました」

「いいのかい? いや、文台さんや孟徳さんは兎も角、オイラにまで・・・」

「玄徳殿。遠慮とは貴殿らしくもない」

「いや、だって。何か違うじゃないか」

「違いませぬ。貴殿らは特別です。その理由をお話しますが、まずは一献どうぞ」

「う、うむ。しかし、三口となると貴殿は?」

「文台殿。お気遣いは無用です。余は禁酒の誓いを立てております」

「そうであったか・・・。では、折角のご厚意。有難く頂戴いたす」

 

 三人はグイッと酒を飲むと、余程美味しかったらしく、満足そうな表情を浮かべた。

 それと同時に、僕は三人の前に書を広げた。

 そしてそれは、范増と一緒に練った偽の天からの詔だったんだ。

 

「これを御覧下さい。これは天が鳳凰を通じ、余から帝に送るよう命じた詔です」

「なっ・・・何と。では、これは鳳凰が書いたと?」

「書いたのは余ですが、鳳凰の口から余に書くよう命ぜられたので、そのまま書いた次第」

「・・・して、何故なにゆえ我らにこれを見せたのだ?」

「良くご覧なさい。貴殿らは何れも州牧として任命されたのです」

「むっ!? た、確かに・・・。だが、これは・・・」

「孟徳殿。如何致した」

「荊使君。いや、余も貴殿を字で呼ぼう。公殷殿。このようなこと、帝が見る前に宦官どもの目に触れたら」

「それは問題ありません。今この場にて封をします。そして、これを帝以外の者が開ければ、その者は三族に渡り天の怒りに触れます」

「むぅ・・・」

「故に帝以外に見たのは我らだけです。宜しいですな?」

 

 僕が言い終えると三人は黙り込んだ。

 三人とも各々が複雑な表情を浮かべたんだ。


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