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第十三話 ついでに劉繇も採用したい


 さて、是儀という逸材を手に入れた僕は、許劭の人物評を受けることになった。

 そういえば、僕はどちらの人格を評価されるんだろう?

 現実世界の僕なんだろうか? 

それとも、この世界の僕なんだろうか?

 

 どちらも僕の筈なんだろうけど、この世界の僕は体も口が勝手に働くからなぁ……。

 自分であって、自分でない気しかいないよ。

 現実世界では見知らぬ人が話しかけてきても、ただ愛想笑いを浮かべるだけなのに……。

 

 楽で良いっていえば、そうなんだけど……。

 ほら、こういうヤツってさ。「違う世界で成長していく過程がどうたら」ってのが一般的みたいなもんじゃない?

 僕の場合は何かこう……シックリこないというか……。

 

 そんなことを考えていると、いよいよ僕の順番が来た。

 …………緊張するなぁ。

 友達の手相占いでさえ緊張するんだから猶更だよ。

 

「ふむ……貴殿。名を何と申す?」

「あ、はい。姓は司。名を護。字は公殷と申します」

「………ふぅむ」

 

 許劭は僕の顔をジロジロ見る。

 思わず僕は名前を言ってしまった。

 ほら……偽名だとちゃんと占いとか出ないだろうし。

 これって占いなのか、どうなのか分らないけどね。

 

 さらに許劭は僕の顔をジロジロと見てくる。

 そして、僕の額からは脂汗がジットリと出てくる。

 気持ち悪いったら、ありゃしない……。

 ……色々な意味で。

 

「………ふぅむ。これは、ちと奇妙だ」

「……何が奇妙なのです? 先生」

「お主には三つの顔が見える。一つは何処にでもいる目立たたない凡人。もう一つは稀代の仁君の相。もう一つは……はて?」

「……三つって、どういうことです?」

「儂も初めてだ。全く、奇妙なことだな……」

「それで……何が分ったのです?」

「助言出来ることがあるとすれば『己を見失うことなかれ』じゃな」

「……はぁ?」

「だが、中々ない相の持ち主だ。どうだ? お主、劉繇殿には会ったのか?」

「劉繇殿に……ですか?」

「そうだ。儂から紹介してやろう。君は面白い相だから『家臣に取り立てても良いだろう』とな」

「え? ええっ!? いや、それはちと……」

「何だね? 不都合なことでもあるのか?」

 

 ……ここで登用されたら、これから僕どうするんだよ?

 ……というか、劉繇って本当に名君なの?

 孫策にあっけなく降参した雑魚君主なのに???

 

 僕は強引に衛兵によって連行された。

 ごめん、是儀。長沙に行っても、僕のことは忘れないで皆にこの事を伝えてくれ……。

 いやいや、諦めるのはまだ早いか……。けど、

「僕は太史慈だ! 空を飛べないから猶更、役に立たないぞ!」

 ……なんて言えないしなぁ。

 

 さて、暫くしてから僕は劉繇の前に連れ出された。

 ……意外と若い。三十代前半くらい? 少なくとも爺さんじゃない。

 けど、そんな事はどうでも良い!

 ここまで来たら覚悟を決めるしかない。

 だって、ここで斬られたら、元の世界に戻れるかもしれないし。

 ……なんていう、淡い期待でも抱いていないとやってられないよ。

 

「話は許劭殿から聞いた。君が面白い相をしているとな」

「……何処にでもいる顔だとは思いますが」

「いやいや、相といい、身なりといい、中々の人物のようだがね」

「……はぁ?」

「どうであろう? この劉繇に仕えてはみないかね? 悪い話ではないであろう?」

 

 確かに悪い話じゃない。

 けど、僕はもう博士仁と楊松しか家臣がいない頃とは違うんだ!

 あれからまだ一年も経っていないけどね!

 

「黙っていても仕方あるまい? 返事を聞かせてはくれぬか?」

「……劉繇殿!」

 

 僕はいきなり土下座した!

 そして、いきなり思っていないことを口走り始めた!?

 

「この司護! 劉繇殿に首を差し上げます!」

「……!? いきなり何を申す!?」

「ですから、長沙のことは宜しくお願いします! 長沙には王儁殿がいます! 王儁殿に長沙太守の位をお渡しするよう、どうかお取次ぎ下さい!」

「……!? では、君はあの長沙太守か!?」

「はい! ここに来たのは、この事を漢王室の血筋である劉繇殿に託そうと思って来たのです! 劉繇殿でしたら、悪いようにはしないと!」

「…………」

「ですから! どうか、この首を刎ねて宮廷にお渡し下さい! この首一つで民が救われるのでしたら安いものです!」

「こっ……このたわけ者!!」

 

 ……僕は驚いて顔をあげた。

 ……いや、もうどっちに驚いたのか分らない。

 だって、「この首、刎ねろ!」なんて自分から言わないでしょ!? 普通に考えて!!

 

「良いか! 司護殿! この劉繇はその方の首を宦官どもに売り渡すような痴れ者ではないぞ!!」

「……では?」

「君はこの劉繇を世間の嗤い者にする気か!? 見損なうな!」

「………」

「……頭を上げられよ。司護殿。この劉繇、漢の王室を守る為に、この地にて太守をしておるのだ。それは即ち、民を守る為である」

「………」

「長沙の民も秣陵の民も同じ漢の民ぞ。君を殺したところで、喜ぶのは佞臣と賊徒しかおらんではないか?」

「……しかし、私よりも王儁殿の方が太守には相応しく、且つ朝廷も任命しやすいでしょう」

「まだ分っておらぬようだな。司護殿。貴殿は既に長沙の太守だ。この劉繇からも、何れは推挙しようと思っていたところだ」

「……劉繇殿」

「さぁ、立ちなされ。儂はこの秣陵を賊から必ず守ってみせる。そして、共に漢の佞臣を討伐しましょうぞ」

「……分りました。この司護。誓って賊と佞臣を討伐してみせます」

「それで良い、それで良い。では、ささやかながら貴殿を歓待するとしよう」

 

 良かったぁ!! 劉繇が良い人で!!

 けど、何で雑魚君主なのに……。雑魚君主でも良い人ってこと???

 パラメータは……。


劉繇 字:正礼 能力値

政治8 知略6 統率6 武力5 魅力7 忠義7

固有スキル 登用 鎮撫 名声 判官 商才

 

 ……ちっとも雑魚じゃねぇじゃん!!

 え? 何で!? どういうこと!?

 ごめんなさい! 能力値は楊松に毛の生えた程度だと思っていました!!

 孫策に破れたら遠慮なく、こっちに来て下さいね!

 

 その後、僕は劉繇と、その臣である孫邵そんしょうを交えながら会談した。

 孫邵のパラメータも凄く良かった。……武力はヘボいけど。

 でも、先に見つけていれば当然、連れて帰っていたよ。

 ……けど、それなら何で太史慈を活用出来なかったんだろ?

 相性とか、そういう問題だったのかな???

 

 そして、僕は是儀を連れて、婆さんの家に帰ることにした。

 是儀は許劭に僕ほどの評価はされなかったようだ。

 許劭の人物評は意外と役に立たないのかな?

 まぁ、細かいことは気にしないでおこう。

 おかげで是儀が登用されなくて済んだ訳だし。

 ……ごめんなさい。劉繇さん。

 

 婆さんの家に帰ると、城での出来事を全て打ち明けることにした。

 婆さんはそりゃあ驚いたけど

「あたしゃあ、アンタがその辺のボンクラと違うと最初から思っていたんだよ!」

 ……だってさ。

 

 是儀を皆に紹介した後、楽しく夕食の時間を過ごしていると、陳平が妙なことを言いだした。

 始めは袁術の噂のことかと思ったんだけど……。

 

「我が君。今日はこの街で鐘離昧殿と散策しながら、噂を見聞きしていたのですが」

「うむ。陳平、何か分ったことがあるのかね?」

「いや、それが思わぬことを思い出しまして……」

「……思い出した?」

「はい。私と鐘離昧殿の記憶が曖昧なのです。前に仕えていた主君の名前がどうにも思い出せない」

「……一体、何がきっかけで?」

「確か鐘離昧殿の『拙者は馬車から子供を捨てながら逃げるような奴に反吐がでる』だったような……」

「……はぁ?」

「丁度、その時に私がふと自分の前の主君の顔がふと過ったのです。しかし、思い出せない……」

「……それは奇妙だな」

「鐘離昧殿も同じようなのです。我が君は思い当たることないですか?」

「……何故、私に?」

「ほら、いつも『夢がどうたら』とか言って、奇妙な命令をするではないですか」

「……奇妙かね?」

「ええ、奇妙です。今回の旅だって夢が原因でしょう?」

「……う。確かにそうであった」

「ですので、我が君に相談しているのです」

 

 ……でも、何と答えて良いか分らないよ。

「本来、君たちはこの時代で生きている筈がないから気にするな」

 なんていうことも言える訳ないし……。

 

「陳平よ。それは恐らく前世ではないか?」

「前世……ですか?」

「うむ。私もよく夢で前世だと思えるようなものを見る」

「……はぁ?」

「つまりだ。前世の記憶を夢で見て、そして夢で見た記憶が少しあるのだ。私からはそうとしか言えないな」

「……成程。では、どうすれば記憶が甦るのでしょう?」

「甦っても意味がない。あくまで前世での出来事だ。気にしなければ良い。今は自分の仕事をすれば良いのだ」

「しかし、それでは……」

「前世はあくまで前世。我らは現世を生きている。後悔しないように現世を生きれば良いではないか。これでも不服かね?」

「いえ……そうですな。そう致しましょう」

「陳平、それと鐘離昧。これからも宜しく頼むぞ!」

「はっ!」

 

 何とか誤魔化せたようだ。

 僕じゃない僕のおかげで……。

 けど、やっぱりシックリきていないような様子である。

 当然だよ。僕だって未だにシックリことが沢山あるんだから……。

 劉繇が結構、良い扱いとかね!

 

「何をブツクサと……ま、それもよしよし」

「あ、水鏡先生」

「何がそんなに不満なのじゃ?」

「いやね。劉繇の評価が『かなり高いなぁ』ってね。それだけなんですけど」

「……お主、正史とか知らないじゃろう?」

「え? あ? 確かにアニメを見たり、漫画や小説しか読んでないですけど……」

「……だからじゃよ。逆に演義とかでは活躍しておっても、正史では雑魚同様の連中もおるぞい」

「えっ!? じゃあ、その連中は逆に……」

「いや、それはない。このゲーム、いやこの世界は両方の良い所取りなのじゃ」

「……それって、つまり能力値のインフレが酷い?」

「それを言うな。では、の」

 

 ……けど、演義で強くて正史で雑魚って誰だろ?

 確か友達が「華雄って本当は孫堅に殺された」とか言っていたけど……。

 まぁ、いいや。だからといって、流石に関羽が雑魚ってことはないだろうし……。

 

 夕食後、僕が婆さんに徐奕と顧雍について聞いたら「知らないが、使用人に調べさせる」と言ってくれた。

 随分と気に入られたけど、この婆さん「何で僕にここまでしてくれるのだろう?」と思って聞いてみることにした。

 

「あの、少しお聞きたいことがあるのですが」

「何です? 改まって。長沙太守とあろうお方が」

「いや、大したことではないのですが、『何故、ここまでしてくれるか』とふと疑問に思いまして」

「あら、嫌だ。アンタのお蔭で長沙での商売がやりやすいからですよ」

「……私のお蔭?」

「そうですよ。前の太守の……名前はもう、忘れちまったけど、賄賂の額が酷くねぇ……」

「……そうだったのですか」

「何を言っているんですか。上にも下にも全く賄賂を使わない太守なんて、そんじょそこらにはいませんよ」

「……そういうもんですか?」

「太守様だってのに、随分と世の中が分っていないんだねぇ。まるで天界からやって来たみたいだよ」

 

 婆さんは僕の顔を見ながら、そう言って笑った。

 そうか……基本的に太守になったら賄賂は当たり前なのか……。

 嫌な世の中だなぁ……って現実世界もあまり変わりないのかな?

 

 翌日、昼ごろになり、早朝から使用人たちの捜索活動が功をせいしたので、徐奕と顧雍の居場所が分った。

 ただこれ以上、道草をする訳にはいかないので、この屋敷を後にすることにした。

 婆さんは何度も礼を言ってくれたが、お礼しなきゃいけないのは僕のような気がする。

 

 さて、徐奕と顧雍だけど、同じように僕は頭を下げまくって、力説して仲間になってもらうパターンで何とかなった。

 当然、家族も長沙に同行させる許可も出した。

 こっちの路銀は随分と出費があったけど、婆さんが僕に旅費として随分渡してくれたので、このまま江東の二張に会いに行けそうだ。

 

 あ、そうそう。徐奕と顧雍のパラメータを出さなくちゃね。


徐奕 字:季才

政治7 知略7 統率5 武力5 魅力7 忠義8

固有スキル 登用 開墾 鎮撫 補修


顧雍 字:元歎

政治8 知略7 統率6 武力4 魅力7 忠義7

固有スキル 故事 鎮撫 判官 看破 治水



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