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第七十八話 6って、まさか!?

 

「私にお任せあれ。我が君」

「・・・ええと。ジンちゃんが?」

「私が上手く纏めてみせます」

「でも、ジンちゃんって儒者でしょ? 同じ反対意見じゃないの?」

「儒者だから現実と理想の区別がつかないという訳はございませぬ」

「え?」

「兎に角、私に何卒ご命じくだされ」

「・・・わ、わかった。宜しく頼みます」

 

 何故だか知らないけど、ジンちゃんの雰囲気がいつもと違う・・・。

 最近、フクちゃんを頼ることが多いから嫉妬しているのかな・・・・・・?

 

「鄭別駕に申す。董兄弟(董重と董承)は確かに帝との縁戚である。そこで余は聞きたい」

「はっ・・・」

梁冀りょうき竇憲とうけんを除いたことは不忠であるか?」

「・・・な、何を?」

「何れも帝の縁者であることは知られていよう」

「確かにそうですが、董兄弟は・・・」

「同じ穴のムジナだ。問題は都に近いか遠いかでしかない」

「・・・それでは董兄弟も同じということですかな?」

「そうだ。董兄弟は何大将軍に代わり、権勢を欲しいままにしようとしている。その野心のために交州の民は苦しみ、喘いでいる」

「それは聞き及んでおりますが・・・」

「にも関わらず。帝の縁戚ということで、我らが敬遠しておいて良いのか?」

 

 梁冀って以前、聞いたな・・・。

 確か「幼い帝を毒殺した」とかいうトンデモない奴だったような・・・。

 思わず「董卓かよ!?」とツッコミしそうになった記憶が・・・。

 

 その後、ジンちゃんが長い演説モードに入った。

 鄭玄を始めとする儒家派閥は思わず聞き入っている。

 あまりにも長いので、僕が個人的に「イイネ!」と思える箇所を抜粋しておきます。

 

 第一に、苛政を行い、民を虐待する者を許す。これは仁の欠如である。

 余が神々に請い、天下万民のために祭祀を行い、豊穣祈願をしている時に悪戯に兵を動かし、民を苦しめた。

 しかも、交州の民だけでは飽き足らず、荊州の民をもその的にしようとしているのだぞ。

 それに、そもそも余が立ったのは民を苦しめる者を罰するためだ。

 己が荊州牧になったとはいえ、根本を変えることは出来ぬ。


 第二に、不忠者を見逃し、世の災いを看過す。これは義の欠如である。

 成程、確かに董兄弟は帝の縁者ではある。

 にも関わらず、己を律しないばかりか、己の野心の為に民から搾取し、賄賂を使って佞臣どもに取り入ろうとしている。

 佞臣を肥え太らせることは、佞臣と変わりない故、これを不義と言わず何をか言わんや。


 第三に、帝がご存命にも関わらず、新たな帝を立てよう画策する。これは礼の欠如である。

 以前、董承は長沙にて『協皇太子を帝に即位させ、長沙を都にしてやる』と余にうそぶいたことがある。

 本来であれば、協皇太子を帰順させ、親子の縁を取り持つことこそ、臣の務めの筈だ。

 それを己の野心のために利用するとは、筆舌し難い以外の何物でもない。


 第四に、禍根を残すのに知らぬふりをし、現実から逃避をする。これは智の欠如である。

 帝の縁者であるという理由で見逃せば、何れは肥え太り天下を危険に晒すことになる。

 思い出してみよ。竇憲や梁冀のしてきたことは許されるべきことかを・・・。

 これを未然に防ぐことが、どうして看過出来ようか。


 第五に、己の過ちを悔いず、驕り高ぶる者を跋扈させる。これは信の欠如である。

 以前、白波賊や天帝教を名乗る兇賊だったものを重用し、略奪を働かせている。

 本来ならば彼らを律し、更生させねば成らぬ筈であろう。

 それを蔑ろにし、悪戯に天下を騒がせるのが、帝の縁者であって良いものか!

 

 己の野心で慢心し、民を苦しめる者を看過して何が臣ぞ。

 臣たる者、泰平を願い、悪を滅ぼすことが役目である。

 なのに、地位に胡座をかき、火中の栗を遠方より眺めるのは名ばかりの臣である。

 

 これより先、名ばかりの臣になることを余に薦める者は暇を与えよう。

 余が間違っており、皆が暇を請うのであれば、余が野に下ろう。

 だが、余は天に誓う。誓って余は名ばかりの臣とはならぬ。

 何故なら、名ばかりの臣とは、盗賊よりも卑しく、佞臣よりも虚ろなものだからである。

 

 盗賊や佞臣は己を律することが出来ず、知識が欠落し、哀れとしか言い様のない存在だ。

 無論、そういった者どもは滅せねばならぬ。

 だが、名ばかりの臣は己を律する振りをし、滅せられることだけを恐れ、自身の地位にのみ固執する。

 知識はあるのにも関わらず、それを使おうとはせず、己のみのために使う者のことだ。

 貴公らは余に対し、そのような名ばかりの臣に成れというのか!?

 

 これでも長いですね・・・分かります。

 言っていることは格好よさげだけど、ちょっと耳が痛いな・・・。

 遠巻きに僕がディスられている気がする・・・。

 

 一通りのジンちゃんモード演説が終わると、儒家派閥の人たちは皆、頭を垂れていた。

 暫くしてから潁川清流派閥の一人、陳羣の親父の陳紀が口を開いた。

 

「荊使君。我が父君、陳仲弓(陳寔)は隠者を生業としておりました・・・」

「陳県令。別に余は貴殿の父君を・・・」

「いえ。分かっております。我が父君も常々、悔いていたことがあります。それは『大乱を見て見ぬ振りをすることは、儒者としてあるべきことか』と・・・」

「・・・・・・」

「確かに今こそ立ち上がり、天下の災いを除く時でございます。我が亡き父君も必ずや叱咤激励したでありましょう」

「おお! 分かってくれるか!」

 

 ジンちゃんモードの僕は立ち上がり、両手で陳紀の手を取ると深く頭を垂れた。

 うん。流石に土下座ではありませんでしたよ。

 

 その直後、至る所で「董兄弟、討つべし」という声が連鎖しだした。

 重鎮の鄭玄らを見ると、和やかに頷いていた。

 文字通りの満場一致です。凄いなジンちゃん・・・・・・。

 

 それからの会議は主に交州攻略が議題となった。

 范増や陳平だけでなく、鄭玄や王烈なども積極的に案を出す。

 そして、決まったのは以下の通り。

 

 まずは士燮と区連に和議を結ばせ、交州の安定を図る。

 条件としては、今後は区連を王と名乗らせない。

 代わりに、交州から日南郡を独立させ、驩州かんしゅうと命名した上で、区連を驩州牧に任命する。

 区連には今後、南下政策を許す。

 西貢(現在のホーチミン市)までを驩州とし、港湾施設の建設を援助する。


 会稽郡太守の賈琮や豫章郡太守の張宝らと事前に会い、揚州と交州の州境を秘密裏に決める。

 この際、双方とも交州侵攻の東方からの援軍を約束させる。

 また、士燮と区連の双方にも西方からの援軍を要請する。

 

 董重が所有する蒼梧郡、南海郡、高涼郡の東半分を始めとする郡を交州から独立させ、広州とする。

 広州牧はこちらが任命する権限を持ち、更に郡を新たに新設させることとする。

 また、臨賀郡を広州に帰属させる。

  

 こんな感じです。無茶苦茶なような気もするけどねぇ・・・。

 てか、三方向からの侵攻作戦が実現したら董承は完全に詰みだよなぁ・・・。

 徐晃よると鐘繇がいるらしいし、他にも探せば良い人材がいるかも・・・。


 まだ侵攻する前だし、こんなことを決めるのは早いと思うけど、統治するには事前に決めることは重要なことだ。

 第二次世界大戦の最中にヤルタ会談やマルタ会談が開かれたことを思うとね。

 そこで、五行祭にかこつけて区連、士燮、賈琮、張宝を招き、会談を行うんだよ。


 そして最後に、それぞれの陣営に誰を派遣し、説得させるかを協議した。

 その結果、区連には張紘、士燮には邯鄲淳、賈琮には孫乾、張宝には厳畯がそれぞれ使者として派遣することが決まった。

 皆、説得持ちだし、上手くいきますように・・・。


 四月に入り、続々と武道大会の参加希望者が各地からやってくる。

 同じ荊州の劉表、劉岱、曹操からも参加希望者がいます。

 劉表からは黄忠、劉岱からは魏延、曹操からは典韋と夏侯惇!?

 これに孫策や龍且、関羽、張飛が加わるんだから、ある意味ドリームマッチ!

 因みに魏延と夏侯惇の能力値は以下の通り。

 

魏延 字:文長

政治3 知略7 統率8 武力9 魅力5 忠義4

固有スキル 機略 歩兵 弓兵 豪傑 伏兵 疾風 補修


夏侯惇 字:元譲

政治8 知略7 統率8 武力9 魅力7 忠義8

固有スキル 人相 登用 騎兵 豪傑 判官 治水 和解

 

 魏延も欲しいけど、夏侯惇はもっと欲しい・・・。てか、人相や和解まで持っているし・・・。

 夏侯惇の子供はいらないけどね。

 こっちにいる満寵といい、李通といい、本来なら魏の陣営って圧倒的に有能な人材が豊富だったんじゃ・・・。

 徐庶が閑職に追いやられたとか読んだけど、正史ではそれぐらい豊富だったということか・・・。

 それじゃ蜀が勝てる訳ねぇな・・・・・・。

 

 それはそうと、一体6の奴は何をしているんだ?

 折角、五行祭というイベントまで開いているのに、梨の礫じゃないか。

 せめてまだ登用されていない在野の豪傑でも来て下さいよ・・・。

 丁奉だけじゃ割に合わないよ・・・。

 

 でも、そんなことを考えていても時間の無駄だ。

 と言う訳で原点に戻り、護衛役のゴリ子と許褚を伴って巡回することにした。

 今までこれで何人もの人材を発掘しているからね。

 これで6の奴に会えるに違いない筈だ!

 ・・・・・・うん。フラグを思いっきり立てているつもりです。

 

 五行祭まであと一ヶ月ということで、既に衝陽の街の旅籠はほとんど客で埋め尽くされている。

 当然ながら、街の人混みも凄いことになっている。

 あちこちに屋台やら出店まで出来、様々な言葉が飛び交う。

 

「思った以上に凄いことになっているなぁ・・・」

「そりゃあ、荊使君が神々への祭祀を行うんです。当然でしょう」

 

 僕が思わず呟くと、一緒に同行している従事中郎の頼恭が答える。

 人が多いということは、当然ながら喧嘩も多くなるし、掏摸すりをする不貞な輩も出てくる。

 それでも犯罪発生率は少ない方で、これは誇って良いことだろう。

 

「・・・・・・ううむ。6の奴がいない」

「ちょっと。6の奴って何?」

「あ、いや・・・・・・」

 

 歩き疲れて思わず独り言を言ったらゴリ子に聞かれてしまった・・・。

 かなり小さい声で、しかも周りの雑音も多いのに、ゴリ子は凄い地獄耳だ。

 

「・・・うむ。易には『新たなる賢人が見つかる』と出ていた。そのことだ」

「・・・だから、なんで6なのよ?」

「・・・あ、いや。そもそも、お前に易のことが分かるのか?」

「分かる訳ないでしょ!」

 

 逆ギレは勘弁して欲しい・・・。

 そもそも僕が何故、女性が苦手という理由ですが、都合が悪いことを指摘すると感情的になる女性が僕の周りに多いからです。

 僕も確かに感情的になることはありますけどね・・・・・・。

 

 僕がゴリ子の対応に困っていると、背後から僕の名を連呼されました。

 見ると尹黙が慌てた様子で近づいて来たんだ。

 

「どうした? 文学従事中郎(尹黙の役職)ではないか」

「荊使君! 至急、政庁までお戻り下さい!」

「何があった?」

「それが報告によると奇妙な者が現れたとのことです」

「・・・・・・それだけでか?」

「いえ。その奇妙な者は荊使君が興奮した際、発せられる言葉らしきものを使うとのことで・・・」

 

 ・・・・・・どういうこと? それが6の奴なのか?

 僕が政庁に戻ると、衛兵の一人が落ち着かない様子で待っていた。

 この衛兵も僕が偶に叫ぶ日本語を耳にしていた一人だ。

 

 この衛兵から詳細を聞くと、その人物は衛兵の実家のある村の付近の洞窟に籠っているらしい。

 言葉が全く通じないだけでなく、格好もこの周辺の者ではないという。

 しかも、まだ若い女性だとか・・・・・・。

 

 僕は試しに以前、漫画で見たことがある卑弥呼の絵を描いてみた。

 すると衛兵は更に興奮し「この姿、そのものだ!」と叫んだ。

 

 ・・・・・・まさか6って卑弥呼か!?

 いや、年代的に合うかもしれないけどさ!

 でも、どうやって邪馬台国からここまで来たんだ!?

 

 ・・・・・・てか、そもそもだよ。この世界の邪馬台国って何処なんだ?

 北九州? 近畿? それとも・・・・・・?

 現実世界とは違うんだろうけど、メチャクチャ気になる!

 

 それと卑弥呼が6ということは、能力値はそれなりとしても保有するスキルが凄い筈・・・。

 じゃないと姜維や馬隆より上にはならないからね。

 天気とか操作出来るのかな・・・・・・。

 

 衛兵が言うには、この衝陽から三十里(12km)ほど離れた山麓の洞穴に隠れているという。

 早速、行こう。そうしよう。

 流石に6が卑弥呼というのは想定外でしたけどね。

 

 馬で一時間半ほど走り、洞穴に着くと、何とも言えない雰囲気がそこにあった。

 入り口は半分ほど蔦で覆われ、春にも関わらず他とは違って少し寒い。

 原因は洞窟からの空気が冷たいからなんだろうけど・・・・・・。

 

「言葉が通じる者を寄こせ! さもなければ斬るぞ!」

 

 着いた同時に洞窟から中性的な声で、そんな怒号が辺りを木霊する。

 間違いなく日本語だ!

 けど、邪馬台国の言葉って現代の日本語じゃないような・・・・・・。

 まぁ、ゲーム世界だから良いのか・・・・・・。

 

「お望み通り来てやったぞ! 危害は加えぬ! 話し合おうではないか!」

 

 念のためにゴリ子や許褚を同行させていますけど、相手は女性一人だからな。

 しかも流石に卑弥呼の武力が9とかはないだろうし。

 

「そうか! ならば一人で来い!」

 

 ・・・・・・確認しておこう。

 一応、卑弥呼で合っていますよね?

 てか、卑弥呼の武力が高いってことはあり得ませんよね・・・・・・?

 

「何をグズグズしておるか! 早くせよ!」

 

 言葉が分かるのが僕一人だからなぁ・・・・・・。

 でも、6の人材をみすみす逃すのは・・・・・・。

 

「解った! くれぐれも双方ともに手出しは無用だぞ!」

 

 僕は訝しむゴリ子らを抑え「相手は卑弥呼、相手は卑弥呼」と念じながら洞窟へ入った。

 暫く歩くと、そこには松明のかがり火で顔を照らされた美少女の顔が浮かび上がったんだ・・・・・・。

 


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