第七十七話 南下政策、秒読み開始
前回の続きです。全く劉備のスケベ根性には呆れたものですよ・・・。
さて、どうしようかな?
狼狽えていれば、関羽が「兄者!」って怒鳴ってくれるかなぁ・・・・・・?
「その方、いい加減になされよ!」
僕が劉備に押されていると、意外な人物が怒鳴った。
怒鳴ったのは孫策だったんだ。
それに対し、劉備は素っ頓狂な声で孫策に話しかけた。
「へ? 何で? あ、ひょっとして君も慶里君を?」
「ちっ・・・違う! 違うが・・・」
「じゃあ、どうして?」
「けっ・・・荊使君が困っているのを見過ごせないだけだ!」
「え? じゃあ、何かい? お前さんが慶里ちゃんを貰い受けるってことかい?」
「そ・・・それは違うが・・・・・・」
「何ともハッキリしねぇなぁ。大体、何で袁術の家中のお前さんがここにいるんだい?」
「・・・・・・」
「・・・まさかとは思うが、本当は袁術の刺客じゃねぇのか?」
「ぶっ! 無礼者!! 某がそんなことをする訳がなかろう!」
「じゃあ、目的を言いなよ。お前さんは何しに来たんだぁ?」
何気に劉備が孫策を問い質しております。
お調子者だからか、自分の立場が上と見るとメッチャ強気でやんの・・・・・・。
何かこっちの調子まで狂いそうだわぁ・・・・・・。
因みに関羽は困惑しているような表情を浮かべ、張飛はヘラヘラと笑っている始末ですよ。
でも、どうしようかぁ・・・。
孫策も何か隠しているだろうし、試しに鎌でも掛けてみるか。
「そこまでだ。徐使君。いや、玄徳殿」
「何だよ? 単さんも気になるんじゃないのかい?」
「・・・気にならないと言えば嘘になる。が、伯符君も事情があろう。それと、せめて字の公殷で頼みます」
「それもそうだな単さん。・・・・・・いけね」
「ハハハ。玄徳殿らしい。それと慶里のことなんだがね」
「おっ!? どうする気だい?」
「もう暫く猶予をくれないか。まだ正式に相手が決まってはいないが、今年中に答えを出すつもりだ」
「ええっ!? じゃあ、オイラにも可能性があるんだね?」
「・・・確約は出来ぬがね。それに本来であれば、少なくとも貴殿は正式な徐州牧ではないしな」
「えっ? 何で?」
「正式に朝廷から任命はされていないであろう? まぁ、それは陶応殿もあまり変わりないが、少なくとも事後承諾を得ている」
「それを言っちゃあ、おしめぇよ・・・」
「余も昔とは違い、逆賊の扱いではないのだ。許せ。それと近い内、揚州牧と会談を設けるつもりでいるしな」
「おや? またどうして?」
「江夏郡の帰属問題についてだ。江夏郡の侵攻の差し止めと引き替えに、慶里との婚姻の話が出るかもしれぬし・・・」
そこで僕は思わずチラッと孫策と周瑜を見た。
周瑜はポーカーフェイスを決め込んでいるけど、孫策の表情はやはり強張っている。
分かりやすいなぁ・・・・・・。
「まぁ、慶里については以上だ。それよりも、今宵はささやかであるが、食事を楽しんでくれ。余は酒を飲めぬが・・・」
「はっ・・・お気遣い感謝いたします」
劉備よりも先に関羽が受け答えた。
勿論、張飛はニンマリと嬉しそう。
劉備は不服そうだけど、諦めてもらうしかない。
武道大会には孫策に次いで関羽、張飛もエントリー。
これで呂布と項羽もエントリーしてくれれば、夢の武道大会なんだけど・・・。
それと6の奴もエントリーするのかな?
てか、関羽と張飛をエントリーさせて、徐州は大丈夫なのか?
気になるので、劉備にちょっと現状を聞いてみよう。
「そうそう。玄徳殿」
「単さ・・・じゃない、公殷さん。何だい?」
「雲長殿、翼徳殿といった万夫不当の猛者を出場させてくれるのは有難いが、徐州は大丈夫なのかね?」
「ああ、袁術の奴はそれどころじゃないからね」
「どういうことだ?」
「何でも近い内に上洛するらしいぜ。それで郡境では停戦状態なんだ」
「なっ・・・何でまた?」
「何皇后に妹がいるだろ。その妹が袁紹のガキか袁術のガキのどちらかに嫁ぐらしいぜ」
「それは初耳だ・・・・・・」
「何皇后の妹となれば、さぞかし美人ってのもあろうが、それ以上に帝の縁戚になるからな」
「ふぅむ・・・・・・。確かにそれが真なら、徐州にかまけてはいられんでしょうな・・・・・・」
「だろう? 袁紹の方も上洛して都で一悶着って訳だ」
「しかし、何皇后の妹となれば、何大将軍(何進)の妹でもありますしな・・・」
「そういうことだな。もし、何皇后の妹が袁紹の息子の嫁となれば、袁氏の家長は袁紹っていうのが濃厚になっちまう」
でもさ。何皇后の妹って、今まで何処にも嫁がなかった訳?
虞を残している僕が言うのも何なんだけどさ・・・・・・。
劉備は知っているのかな・・・・・・?
「玄徳殿。つかぬ事を聞くが、何皇后の妹君とは、どのような方ですかな?」
「ああ。何でも十常侍の張讓の倅の妻だったとか・・・」
「何ですと?」
「で、張讓の倅ってのが先頃死んだから、空き部屋になったという訳らしいぜ」
「・・・・・・」
空き部屋って酷い表現だな・・・・・・。
でも、確か袁紹も袁術も宦官は嫌いだと思ったけど・・・・・・。
それと張讓の倅って少し違和感はあるけど、曹操の親父のことがあるから特に驚きはしません。
僕もここに来てからというもの、十年以上は経ちますからねぇ・・・。
まぁ、五年間は空白なんですけどね。
その後は他愛もない雑談に終始し、晩餐は終わった。
最後まで劉備と孫策がぎこちなかったのは、言うまでもありませんね。
そして、双方ともに客用の宿泊施設へとご案内。
孫策、周瑜にも自由を保証しました。手紙のやり取りも含めてです。
さぁ、どう出るかな・・・・・・?
一頻り終えた後、僕はまた范増を呼んだ。
袁一族の動向を聞くためにね。
と言うわけで、フクちゃんモードでゴー!
「亜父よ。夜分遅く済まぬな」
「年寄り扱いが酷いのぉ・・・」
「なぁに、亜父はまだまだ若いぞ。これからも働いて貰わねば困る。それにだ。未だに妾の数は二人もおるのだろう?」
「たわけ! 二人ではない! 五人だ!!」
「ワハハハハ! そうであったか!」
「で、何用じゃい?」
「劉備が先ほど、袁術が上洛したという話をしていたのだが・・・」
「ああ、そのことか。真実じゃ」
「今までどうして言わなかった」
「お主が居ない間に進められておったし、我らの陣営ではどうにも関与は出来ぬからのぉ・・・」
「確かに朝廷への工作は不十分だな。それはそうと、我らは袁紹、袁術のどちらに肩入れした方が良いであろう?」
「何皇后の妹を袁術の倅に嫁がされたら、王允や董卓らは少しやりづらいであろうのぉ・・・」
「何? 王司徒にも関わる問題なのか?」
「・・・うむ。少し面倒なのじゃよ」
范増が言うには、袁術を支持する楊彪と、袁紹を支持する王允に清流派も二分されているということだ。
董卓と涼州牧となった韓遂の間を王允が取り持ち、更に袁紹、丁原らを抱き込むことで、北方の派閥連合を掌握するつもりらしい。
対して楊彪側はというと、州王というものは認めないものの、折衷案で劉焉、劉繇らを取り込むというのだ。
具体的に言えば、劉焉を益州牧にし、その子供の劉範などを蜀王にするという形だそうで・・・。
劉繇の方はというと、まず揚州を南北に分け、揚州牧を袁術に、揚州の南部を蘇州とし、蘇州牧を劉繇にという形らしい。
因みにですが、劉協と劉寵はそのまま朝敵扱いとのことです。
「随分と煩雑な流れだな。亜父よ」
「平穏に見えて、その実情は四面楚歌じゃからのぉ・・・。州王どもも纏まることは難しいしの」
「劉協と劉焉は盟約を結んだと聞いたが・・・」
「一応はのぉ。劉焉の陣営から張魯が離脱し、劉協の陣営からは韓遂が離脱したから、仕方なく手を結んだだけのことじゃい」
う~ん・・・分かりづらい・・・・・・。
しかも、水面下では何進と何苗の血の繋がらない兄弟同士で、妹の何皇后を抱き込もうという始末。
何苗は元々、何皇后と仲が良く、デブ帝に口添えして貰おうと躍起になっているらしい。
現時点では、外戚と宦官の権力争いに袁兄弟が関わろうとしているという形だ。
一見、僕とは無関係のようだけど、交州の董重、董承兄弟も外戚だから無関係ではないんだよね。
まぁ、権力闘争から爪弾きされた存在なんですけど・・・。
翌日となり、予選会場に行こうとすると、また訪問者がやって来た。
何でも益州の牂牁国からエントリー希望者がいるそうで・・・。
謁見室に向かうと、既に三人の若者達が畏まっていた。
一人は武人。二人は使者って感じかな・・・。
どれ? どんな連中か見てやろう。
劉曄 字:子揚
政治9 知略8 統率6 武力6 魅力8 忠義7
固有スキル 発明 機略 登用 判官 看破 名声 情勢 弁舌
魯粛 字:子敬
政治8 知略8 統率7 武力7 魅力8 忠義8
固有スキル 商才 機略 看破 名声 弓兵 説得 教育 弁舌
龍且
政治3 知略5 統率8 武力9 魅力6 忠義7
固有スキル 騎兵 歩兵 豪傑 怒号 疾風
・・・お、オイしい。オイし過ぎる・・・。
三人ともゲットしてぇ・・・。
そんな事を僕が思っていると、レアスキル「発明」の所有者である劉曄が畏まりながら話しかけてきた。
「謁見の儀、有り難うございます。荊使君」
「・・・うむ。牂牁国はお変わりないかね?」
「今のところはですがね。南蛮の勢力が依然、蜂起しておりますが、小競り合い程度です」
「成程。で、此度の件だが・・・」
「まずはご挨拶に。以前からご挨拶に伺うつもりでしたが、荊使君がいらっしゃいませんでしたので」
「・・・う、うむ。それはすまなかった・・・」
「いえいえ。荊使君には荊使君のご事情もありましょう」
「・・・して、用件は何かな?」
「龍校尉を武道大会とやらに参加させて頂きたい。牂牁国随一の豪傑でございます」
「そのようなことは容易きこと。こちらこそ願いたいところだ」
「それともう一つございます・・・」
「何かね?」
「我らと交州牧との橋渡し役に一役買って頂きたく・・・」
「待たれよ。董重殿と我らは現在・・・」
「あ、これは失礼。士州牧のことです」
「・・・はて? 士燮殿は正式な州牧ではありませんが・・・」
「大将軍(何進)らにとって邪魔な外戚派閥を交州に押しつけただけです。どうでも良いでしょう」
「しかし、そんなことを勝手に行ったとしても大丈夫なのかね?」
「大事の前の小事です。問題はありませぬ」
「・・・大事ですと?」
「涪陵郡の張忠のことです。以前からですが、奴の私兵が郡境にて乱暴狼藉を働いておりまして・・・」
「成程。それで南の士燮殿と懇意にしようという訳ですか」
「はい。士州牧勢力下の鬱林郡は、我が牂牁国の南に位置します。更にその鬱林郡と武陵郡は交易も盛んですよね」
「うむ。そのおかげで我が荊州も潤っておりますが・・・」
「幸い、我が牂牁国は良質の花椒(山椒の一種)が取れます。我らはこれを特産品とし、方々に売りさばきたいのです」
「ふむ。交易の拡充は我らにとっても有益だ。士燮殿も同じであろう」
「流石は荊使君。話が早い。真に噂通りの名君であられる」
「ハハハ。世辞を言っても何もありませんぞ」
この話は僕にとっても大歓迎だ。
何故なら、士燮と董重は交州を巡って争っており、士燮とより強いパイプが構築されれば、董重の領地への侵攻も容易くなる。
それから劉曄らと暫く歓談した後、僕は范増を呼んだ。
一つ気がかりなことがあったからだ。
そして当然、フクちゃんモードに切り替えます。
「牂牁国の件、聞いたぞい。これで西は張忠だけとなったようじゃの」
「うむ。まずは一段落だ。董承の勢力は東半分とは言え、交州は広いからな」
「・・・して、儂を呼んだのは何故じゃ?」
「交州全体を安定させたい。それには区連と士燮の確執を取り除けねばならぬ」
「成程、確かにのぉ・・・。それで、どうするつもりじゃ?」
「まず、士燮の情勢を聞きたい。即ち、西交州の情勢だ」
「揚州天帝教の残党や、前交州牧の朱符らの残党らが区連の陣営に加わっておる」
「そ奴らに士燮との確執はないのか?」
「ない。ただ、区連から奴らを離反させるとすると、少々時間は掛かるぞい」
「別に区連を除くつもりはない。下手に除いたら越人どもの統制が取りにくくなるであろう」
「フォフォフォ。その通りじゃ」
「それに士燮が我らに対し、永久に追従する保証もない。区連は楔として置いておくが吉であろう」
「分かっておるではないか。となると、双方に和解を持ちかけるのかの?」
「今はそれが最善の策であろう。それでも互いに牽制しあえば、我らの東交州の統治は容易となる」
「・・・ほほう。ついに動くか」
「うむ。交州を東西で二分し、東を広州とする。それに臨賀郡を加え、広州牧も我らで決める」
「朝廷の意向はどうするつもりじゃ?」
「無視する。当然だな」
「それはええじゃろ。ただ一つだけ、問題があるぞい」
「当ててやろう。鄭玄らであろう?」
「その通りじゃ。儒家連中は大義に煩いからのぉ」
状況から判断すれば、董兄弟が勢力下に置いている蒼梧郡と南海郡は、既に攻略可能だ。
この二つの郡は広すぎるんだよ。
だからこの郡らも分割しないと、統治は難しいだろう。
それに、このゲームのシステム的にいえば分割した方が、総合的な内政の上限値も高くなるだろうしね。
僕は鄭玄ら重鎮らを招集し、会議を開くことにした。
当然、交州侵攻と、その後の統治についてだ。
そして、開口一番。僕は范増に言ったことと同じことを申した。
「・・・して、今後の方針であるが、そのように決めたいと思う。意見はないか?」
「荊使君。宜しいですか?」
「鄭別駕(鄭玄)か・・・。良い。申してみよ」
「今回の件は確かに交州牧に非があります。ですが、朝廷を無視して州を分割するなどと言うことは・・・」
「・・・やはり反対か。反対意見のある者は他におるか?」
挙手をしたのは、やはり儒家の面々だった。
主な理由としては、今後こちらに対し、朝廷から疑念を持たれる可能性が大きいというものだ。
さて・・・どう論破しようかな・・・。




