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第七十三話 メンテナンスは、もうこりごり

 さて、何とか楊慮も味方になったことだし、会議を開いて今年初の衝陽の政略フェイズをやるとするか。

 凄く久々だし、やり方を忘れていないと良いけどな。

 まずは衝陽太守の王烈を呼び出すことにしよう。

 

「何ですかな? この忙しい時に」

「ああ、それは済まない。ところで会議を開きたいのだが・・・・・・」

「はい? 何のためにですかな?」

「・・・何のためにって。決まっておろう。予算会議だ」

「だから何のです?」

「・・・この衝陽のだ。他にあるのか?」

「・・・全て五輪の五月開催に集中するため、予算も人も注ぎ込んでおるのにですか?」

「・・・えっ?」

「それだから多忙だというのに、何をお考えか!?」

「・・・す、済まぬ」

「ああ忙しい! 忙しい! 詰まらんことで呼び出さないで下され!」

「・・・・・・」

「おっと、折角ですから荊使君。あの破廉恥女をどうにかしてくだされ」

「ゴリ・・・じゃなかった。趙媼のことか?」

「・・・あれも問題ですが、瑠吉羅ルキッラ殿のことです」

「・・・瑠吉羅殿の何処が破廉恥なのだ?」

「良いからお会い下され。このままでは洒落では済みませぬ」

「・・・わ、分かった」

「それでは失礼致す。ああ忙しい! 忙しい! 猫の手も借りたいぐらいだわい!」

「・・・・・・」

 

 めっちゃ嫌味混じりに怒られた・・・・・・。

 豊洲やら築地やらの問題もないし、既に競技場はほぼ出来上がっているのに、何でそんなことになるんだ?

 ・・・と思って調べてみたら、多目的施設と道路整備を更に増設させるそうで・・・・・・。

 まぁ、好景気が続けば無駄にはならんのですが、突貫工事になるから費用がかなり嵩むそうです・・・・・・。

 

 多目的施設だけど、当然これは屋内競技だけでなく様々な運用目的があるそうです。

 現時点では五輪後に各地の植物の品評会が行われるとか・・・・・・。

 平賀源内が確かそんなことをしていたな・・・・・・。

 

 他にも何とグルメグランプリまで開催予定!

 これで待ちに待ったカレーが食べられそう!

 ・・・・・・けど、この時代のカレーってどんなのだろう?

 グリーンカレーとか苦手なんだよね。まぁ、ココナッツがどうしても苦手というか・・・・・・。

 ピザや酢豚にパイナップルとか理解出来ないのと同様ですよ。

 ココナッツやパイナップル自体は嫌いじゃないんだけどねぇ・・・・・・。

 ・・・・・・なんか、随分ズレちゃったな。話を戻そう。


 けど、これで六月まで内政に専念出来ないのか・・・・・・。

 ええい! これもゴリ子のせいだ!

 ・・・・・・まぁ、勢いでやっちゃったのは、僕なんですけどね。

 それは兎も角、マジでルキッラは何をしでかしたんだろう? 

 

 呼び出されたルキッラは、艶やかな絹のドレスをめかし込んできた。

 うん。全く中国っぽくない感じのだよ。

 ローマというかギリシアみたいな感じのだけどね。

 厚化粧な上に髪はかなり盛っていて、その上、宝石を散りばめたティアラとか身につけているし・・・・・・。

 

 まぁ、どちらかというと破廉恥というよりケバい感じかなぁ?

 破廉恥という格好じゃないと思うけど。

 少なくとも褌姿のゴリ子よりは遙かにマシです・・・・・・。

 

「これは荊使君。この私に何の用かしら?」

「うむ。王府君(王烈)から叱責されたのだが、君は何かしたのかね?」

「おかしいわね? 何もしておりませんが?」

「心当たりはないというのかね?」

「・・・・・・ああ、ひょっとしてあの件でしょうか? 確かに鄭玄殿は青ざめていたような気がするし・・・・・・」

「あの件?」

「その前にですが、行われるのはオリンピックで宜しいのですよね? 荊使君」

「・・・・・・そのつもりだが?」

「私は正当なオリンピックに則り、正式な競技の格好をすべきと主張しただけです」

「・・・・・・本当にそれだけかね?」

「はい! それだけです! ユピテルに誓って嘘は申しておりませぬ!」

「・・・・・・そうか。因みに正式な衣装というものは、どのような格好なのかね?」

「・・・・・・衣装? 意味が分かりませぬが?」

「・・・・・・え?」

「全裸に決まっておりましょう! 筋骨逞しく、そして美しい裸体の男達が競い合うのですよ! これほど興奮するものがありましょうか!」

「・・・・・・ぜ、全裸?」

 

 王烈が憤慨していた理由はそれか!

 大体、マッチョなおっさんが全裸でレスリングとか、一体誰が得するんだ!?

 ・・・・・・ああ、目の前にいる人ですね。分かります。このエロババァめ・・・・・・。

 

 このエロババァはそれだけでなく「公衆浴場も全裸でかつ混浴にすべき」という主張までする始末。

 現在、公衆浴場は専用の薄めの衣服を着衣したまま行うという形をとっているからだ。

 しかも、湯船がある訳ではなく蒸し風呂で、汗は有料の個室スペースで洗い流すという形式をとっている。


 僕は一応、荊州牧ということで専用の湯船があるから、公衆浴場には行ったことはないんですけどね。

 沐浴というのは、やはり慣れませんよ・・・・・・。

 それでも体は米のとぎ汁で洗うしかないから、これでも我慢しているつもりです・・・・・・。

 

「ちょっと! どういうことだい! このド助平!!!」

 

 ルキッラがやたらと力説していた途中、急にゴリ子が出現した!

 タダでさえややこしいのに、これ以上ややこしくするんじゃない!

 

「趙部曲長(ゴリ子のこと)。唐突に何かね?」

「この花も恥じらう乙女の裸を皆の前で見せようだんて! アンタ正気かい!?」

「・・・・・・うむ。誰も見たくないよな」

「な、何ですって!?」

「あ、いや。今、丁度そのことで話していたのだ」

「なら早く、取り下げなさいよ!」

「・・・・・・君が言うまでもないわ」

 

 僕がルキッラの方を振り向くと、あからさまにゴリ子を侮蔑した眼差しで見ている。

 ・・・・・・嫌な予感しかしない。

 そう思った矢先、ルキッラはゴリ子に口出し始めた・・・・・・。

 

「安心なさい。女には衣装があるわよ。ただ問題がありますけどね」

「問題ですって?」

「片方の乳房を露出したぐらいよ。ただ、貴方の場合は化け物瓜みたいな胸だし、特例として・・・・・・」

「ばっ!? 化け物瓜だぁ!?」

「あら? 本当のことでしょ?」

「この淫乱年増! もういっぺん言ってみろ!」

「だっ! 誰が淫乱年増ですって!?」

「本当のことだろうが! いや、違うな! 淫乱ババァだ!!」

「キーーーッ!! この下卑た化け物猿がぁ!!」

「何だと!? テメェ! ブッ殺す!」

 

 はい。どっちも事実ですね。分かります。

 明日は晴れるかな? 晴れるといいな・・・・・・。

 うん。あくまでゲーム世界なんですが、久々の現実逃避です。

 ・・・・・・なんて言っている場合じゃない!

 

 僕は大声で助けを叫ぶと、丁度良いことに徐晃と許褚が急いで駆けつけてくれた。

 どちらも凄い豪傑の筈だけど、この二人のやり取りはやりにくそう・・・・・・。

 金切り声を上げる更年期ヒステリー年増と、激高してがなり立てるメスゴリラが相手じゃ仕方ないか・・・・・・。

 偶に起こる野球やサッカーの時のような大乱闘の末、落ち着いた時を見計らい、僕はこう宣言した。

 

「あくまで『郷に入らば郷に従え』と申す。西方では全裸かもしれぬが、ここは違う。よって着衣をし、競技を行うべし」

「しかし、荊使君。それではオリンピックとは・・・・・・」

「では、瑠吉羅ルキッラよ。これからオリンピックと言うのはよそう。これより五行祭と命名する」

「・・・・・・」

「神々と万物の源となる即ち、木、火、土、金、水に感謝し、平和を祈る祭りとする。これで問題あるまい」

「・・・・・・ですが」

「もう決めたのだ。これにて一件落着」

「・・・・・・はい」

 

 何とか終着点に辿り着いた・・・・・・。

 五行思想って未だに良く分からないけど、ここに来て既にもう十年以上いますからね。

 ただ、現実世界に戻っても、全く意味がない知識ですが・・・・・・。

 

 解決し終わると、僕はゲンナリしながら自室に向かった。

 五月まで五行祭の期間だから、政略フェイズ開始は六月からということになる。

 折角、洛陽以上の規模になる都市なのに、手を拱いているのは何とも歯痒い限りだ。

 

「ホッホッホッ。また、凄いことをおっぱじめたのぉ」

「・・・え? あ? うわぁ・・・・・・」

 

 タダでさえゲンナリしている所を、追撃するように老師が出現。

 まさか、泣きっ面に蜂じゃねぇよなぁ・・・・・・?

 

「最近、冴えておるのぉ。その通りじゃ」

「何だよ。今度は・・・・・・」

「これからは郡一つにつき、内政が担当出来るのは十人までとなったから。それじゃヨロシク」

「待て! 話が違うだろ!」

「何が違う?」

「タダでさえ遅れるんだぞ! それなのに『十人まで』って!」

「今までのお主のやり方は負荷が掛かりすぎるんじゃよ」

「いやいやいや・・・・・・。そのために五年をスッ飛ばしたんだろ!?」

「正確には五年と五ヶ月じゃがな」

「え?」

「お主が五行祭をやろうとやらなかろうと、五ヶ月間分の追加メンテナンスが必要らしい」

「じゃあ、王烈が言っていたのは・・・・・・?」

「如何にも。セリフがちょいと変わっただけじゃ。本来なら五行祭ではなく、新都市計画で政略フェイズが飛ばされておる」

「・・・・・・呆れた」

「そう言うでない。大体、本来ならば儂を含めて皆、成人しておらぬ年齢だし」

「はぁ!?」

「開始は西暦183年からじゃろ? 今年は西暦に直すと194年じゃ。つまり、そういうことじゃな」

「・・・・・・え?」

「儂を含めて皆、記憶がインプットされておるんじゃ。だからあざなを憶えておらんという症状も出るわけじゃな」

「な、何だって!?」

 

 じゃあ、何かい!? 僕が張羨さんを見殺し同然にしたのも設定上ってことかい!?

 ・・・・・・でも、考えてみれば、そういうことになるか。

 だぁ!? 意味が分からん! 運営、ちゃんと仕事しろ!

 

「まぁ、そういう訳じゃので・・・・・・」

「待てーーい!!」

「何じゃい?」

「もう謝罪はどうでも良いが、賠償を要求する!!」

「・・・・・・賠償は良く分からぬが、補填はあるぞい」

「・・・・・・どんなの?」

「何と西暦300年まで生まれた人物なら、配下に出来るビッグチャンスがある!」

「・・・・・・それで? 大体、西暦300年って確か、既に三国志の時代じゃないような・・・・・・」

「そんなことまでは知らんわい。それと後で于吉が来るがの。その時に二回、サイコロが触れるというビッグチャンスじゃぞ」

「・・・・・・それだけ?」

「え? 不服かの?」

「大ハズレだらけ・・・とかじゃないだろうね?」

「それはない筈じゃ・・・・・・」

「・・・・・・本当?」

「・・・・・・多分」

「おい!!」

「いや、ハズレは多分じゃが、あると思うぞい。じゃが、そのハズレの内容は、儂には分からんからのぉ・・・・・・」

「・・・・・・つまり?」

「基本、この手の担当は于吉と左慈じゃから」

「・・・・・・え? 左慈? 今まで出てきてないけど?」

「偶に于吉に化けていたり、勝手に范増やらを派遣しておる」

「ええっ!? そうなの!?」

「・・・・・・うむ。そのせいで、ちょっと面倒なんじゃがの」

「・・・で、今回は于吉仙人が来る訳ね?」

「左慈の方が良いのかの?」

「そりゃそうでしょ。范増の存在が、どれだけ有り難いか分かりゃしない」

「ただ、奴は『悪戯好きのアバンギャルドな性格』じゃからのぉ・・・・・・」

「・・・・・・ア、アバンギャルドって」

「まぁ、今後のサイコロ人材イベントは、于吉と左慈が交互に出る。楽しみにしておけ」

「そんなことよりも、十人までの制限はナシで・・・・・・」

「・・・・・・決定事項じゃ。諦めよ。じゃあの」

 

 もう訳が分からないよ。この世界・・・・・・。

 でも確かに、あくまでゲーム世界だからなぁ・・・・・・。

 まぁ、圧縮やらメンテナンスが終われば、少しはマシになってくれるのかなぁ・・・・・・。

 

「あ、言い忘れておったわ」

「何? 今度は・・・・・・」

「内政担当一人につき、十倍掛けが可能になったぞい」

「・・・・・・十倍掛け?」

「今まで、金100までだったのを、一人で金1000を使用することで、効果も十倍にすることが出来るのじゃ」

「ええっ!?」

「少しはやる気が出てきたかの? では、今度は正真正銘で・・・じゃあの」

 

 それなら話は違ってくるぞ!

 改めて衝陽のパラメータを見てみよう!

 

衡陽パラメータ(地所)

農業900(5000) 商業900(5000) 堤防100 治安100

兵士数45283 城防御300(1000)

資金4058 兵糧50000

 

 ・・・・・・ううむ。それでも商業を最大値までするには遠いな。

 けど、僕が金1000を消費すれば、一気に商業が150アップだからなぁ。

 それに、荊州は郡を新たに設置することが、まだまだ出来そうだし。

 新設した郡に十人派遣して、どんどん発展させていけば良いのか。

 今後も人材を増やして経済規模を増やしていけば、更にどんどん優位になれる筈・・・。

 

 僕がそんなことを考えていると、不意に背後から気配がした。

 ・・・・・・ということは、当然!

 

「久しいのぉ。相変わらずのようじゃな」

「これは于吉仙人。お待ちしておりました」

「・・・・・・うむ。老師から聞いておると思うが」

「ささ。サイコロを・・・・・・」

「それよりもじゃな。儂よりも左慈の方が良いのかな?」

「えっ!? い、いきなり何を・・・・・・」

「・・・・・・ふむ。まぁ、良いわ。では、二つ振るが良い」

「・・・・・・因みにですが、ハズレってあります?」

「そうじゃなぁ。今回は1がハズレ、2が楚漢、3から6は当たりじゃな」

「因みに姜維はどの目でしょう?」

「姜維は3じゃな。それと1は黄皓・・・しまった! バラしてはいかんかった!」

「・・・・・・1は出ないように。てか、出たら真っ先に殺す!」

「いきなり物騒じゃのぉ・・・・・・」

「当然でしょ! 蜀が好きなら、漏れなく黄皓は見つけ次第、真っ先に殺しますよ!」

 

 そして、出した目は何と!

 4と6って・・・・・・いや、当たりなんですけど。

 

「お主、不満そうじゃのう・・・・・・」

「姜維が欲しかったのに・・・・・・」

「双方ともに姜維以上の人材じゃよ。贅沢を言うでない」

「えっ!? マジですか!?」

「それにまだ機会はあるじゃて。この先も仁政を心がけておればのぉ・・・・・・」

 

 于吉仙人はそう言うと、そそくさと消えてしまった。

 姜維以上なのが、あと三人って誰なんだろ・・・・・・?

 気になるなぁ・・・・・・。


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