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第十話 新年早々やらかしました……。


 185年となった。何とか一年はもったなぁ……。

 正確には9か月なんだけどね。

 まだまだ周辺はきな臭いけど、景気よく新年ぐらいパーッといきたいなぁ……。


 そう言う訳で1月の上旬の政略フェイズは新年会と称し、宴会をすることにした。

 効果の程は分らないけど、ちょっとぐらい贅沢したところでバチは当たらないだろう。

 僕は新年早々の会議で配下にこう告げた。


「やぁ、諸君。君たちのおかげで長沙も安定してきた。これからも領民のために邁進して欲しい」

「太守殿! 明けましておめでとうございます! 配下一同、これからも太守殿の為に粉骨砕身、励みます!」

 

 一同揃っての声出しは迫力あるなぁ……。

 楊松、博士仁しかいないことが遠い昔のようだ……。


「うむ。しかし、働きづめも体に悪い。その為にも鋭気を養う為に宴会することにした。各自、存分に楽しんでくれ」

 

 僕はそう言って宴会をすることにした。

 宴会の費用は……ん? 金1100!?

 え!? 200じゃないの!? 何!? 

 僕を含めて一人につき100必要!?

 ……おのれ楊松! 僕を騙したな!

 

 ……ええ、確認しなかった僕が悪いんです。分っています……。

 けど、やたら金額が大きいと思ったら、長沙の民にもお裾分けするからなのね……。

 まぁ、民の皆さんも喜んでくれるなら、やった甲斐があったというものです……トホホ。

 

農業317 商業664 堤防92 治安78 兵士数31345 城防御309

資金822 兵糧45500 

 

 ああ、一気に資金が減ったぁ……。

 折角、宴会なんていうイベントやったんだから、可愛い女の子でも来てくれないかなぁ……?

 それすればモチベーションだって違うのにねぇ……。

 

「太守殿。何を詰まらなさそうな顔をしているんです? さぁ、この陳平の酒を飲んでくだされ」

「あ、いや……。余は下戸なのだ。……すまぬな」

「……そ、そうだったのですか? それは失敬致しました」

「良い。気にするな」

「しかし、何を難しい顔していたのです?」

「う……いや、それは……だな。周辺の状況がイマイチ芳しくないからだ」

「新年の酒の席でそれはないでしょう……」

「いや、長沙の民は喜んでくれているが……桂陽や柴桑の民を想うとな……」

「………」

 

 ああ、危なかった。「野郎ばっかでつまらない」なんて口が裂けても言えないよ。

 でも、どうせゲームの世界に転生するなら、恋愛ゲームの方が良かったのは本音だしなぁ……。

 女性や女の子もいるけど、町娘Aだの、そんなのばっかだし……。

 でもって、フラグなんて立たないしねぇ……町娘Aにでさえ……。

 

「では、我が君。今後の方針はまだ定まっていないのですか?」

「うむ、陳平。恥ずかしながら未だに定まっておらぬ」

「……本当に正直な方ですね。折角の酒の席ではありますが、この陳平が四通りの案をお教えしましょう」

「おお、君の案とは心強いな」

「まず第一の案ですが、桂陽を取り、その先の南海から交趾にかけて奪うのです」

「……な? 何?」

「異民族を手懐けながら雲南辺りまで進出するのです。益州には劉焉がおりますが、益州は未だに荒れ果てております」

「……成程」

「しかし、成都は整備すれば、この長沙以上となるでしょう。そこで覇を唱えるのです。『益州には天子が出る』という噂もございますし」

「……む。で、第二の案は?」

「第二の案は同じく桂陽をとった上で、零陵の太守張羨をけしかけ、劉表と戦ってもらいます。その背後から一気に零陵、続けて武陵を一気に併合してしまうのです」

「……張羨殿はどうするのだ?」

「あのような小人はどうでも良いでしょう。曹寅と大して違いありませんよ」

「しかし、仮にも張羨殿は正式な太守であろう?」

「劉表との戦いのどさくさで討ち死させてやればいいんです。そうすれば問題ないでしょう」

「……ちと、それは。……で、第三の案は?」

「予章の太守、南昌にいる祝括しゅくかつという者は民から嫌われており、この者を排除して南昌を抑えます」

「嫌われ者であれば、すぐに南昌は占領出来そうだな」

「ただ、問題なのはこの祝括は十常侍の縁者で、仮にも漢室から正式に任命された太守です」

「……う。それなると祝括を追い出すとなれば……」

「……そうです。正式な太守を諦めるつもりで行動に出なければなりますまい」

「……ううむ。第四の案はどうだ?」

「これはちと、下策ですけどね……」

「構わぬ。教えてくれ」

「柴桑の賊徒を駆逐し、柴桑を奪取します」

「……それの何処が下策なのだ?」

「柴桑となれば江夏や廬江に近くなります」

「うむ……それで?」

「現廬江太守の陸康は元々武陵、桂陽の太守を務めた人物で、長沙の内情もある程度、知っているかもしれません」

「……それの何が問題なのだ?」

「廬江は汝南に近く、袁術が虎視眈々と狙っていると専らの噂ですよ」

「なんだと!?」

「陸康はこの荊南四郡でも評判が高く、陸康への援軍を渋れば領民は我が君に失望するかもしれません。王儁殿も例外ではないかと……」

「……ううむ」

「だが、逆に援軍を送れば袁術の恨みを買うでしょうね。そして、援軍を出している間に劉表が攻めてくれば、ちと厳しくなりますよ」

「……確かにそれは面倒だな」

「なので下策と申したのです。一番のお奨めとしては、まずは南方を平定してしまい、山越や荊蛮、南蛮の民を使って成都で覇を唱えることですね」

 

 確かに柴桑を取るのは美味しい手段とは言えないようだなぁ……。

 袁術は怖くはないけど、孫堅は怖いしなぁ……。

 汝南の黄巾賊はそこそこ平定されちゃっているみたいだしなぁ……。

 

 でも、張角ってまだ生きているのか?

 史実だと既に死んでいるような気がするけど……。

 まぁ、ゲームの世界だしなぁ……アテになる訳じゃないかぁ……。

 

「……そうだなぁ。まずは桂陽を平定してから考えよう。それから考えても遅くはあるまい」

「それが良いでしょうなぁ。黄巾の連中は意外とまだ頑張っているようですしね」

「そう言えば、張角はまだ生きているのか?」

「死んだという噂は聞いていません。冀州の巨鹿で盧植、公孫瓚、丁原相手に頑強に抵抗しているらしいですね」

「……連携、悪そうだなぁ……」

「……何故、そう思うんです?」

「……あ、いや。そんな気がしただけだ」

「南陽方面の黄巾賊はほぼ平定したらしく、そこから皇甫嵩と朱儁、袁紹、曹操らが援軍として発ったとのことです」

 

 ……強いなぁ……皇甫嵩と朱儁。

 某ゲームじゃそこそこの能力値だったのに……。

 それなりには役に立ったけどさぁ……。

 そこに袁紹と曹操も援軍に行くんだから、張角は時間の問題なんだろうなぁ。

 しかも盧植と公孫瓚もいるんだろ? そこに劉備三兄弟がいるのかなぁ?

 そこで曹操と出会う訳か……。けど、何かやっぱり違うなぁ……。

 ああ……実情が知りてぇ……。

 

 僕以外は皆、新年会に満足したようだ。

 忠誠度という表示がないから分らないけど、それなりにアップしたのかな?

 マスクデータっぽいから確認しようがないけどね……。

 

 で、1月下旬の政略フェイズ。

 で、政庁で会議すると、陳平がいきなり発言してきた。

 

「我が君。この陳平の発言、ご容赦頂きたい」

「……うむ。で、どのようなことか?」

「聞けば近辺で荒らしまわっている区星が、二万の兵で虎視眈々とこの長沙を狙っている由、ここは先手を打って殲滅致しましょう」

「……勝算はあるのか?」

「なぁに、大将の区星と副将の郭石は共にただの匹夫です。しかも、賊兵もただの烏合の衆。造作もないでしょう」

「……うむ。では早速、出陣すると致そう」

 

 連れて行くのは鐘離昧、陳平、張任の三人。他は留守番。

 厳顔を連れて行くかどうかで迷ったけど、劉表というか蔡瑁の動向が分らないからなぁ……。

 鞏志だけだと、流石に心許ないしね……。

 という訳で長沙の守備隊長に厳顔、副守備隊長に王儁と鞏志。参謀を陳端と秦松ということにした。

 

という訳で、下旬の政略フェイズはというと……。

 僕、鐘離昧、陳平、張任が出陣、王儁は帰順、厳顔は巡回、陳端は開墾、秦松と尹黙が町造りとなった。

 しかも、今回は銀山が掘れないので、韓曁はお休みです……。

 

農業329 商業691 堤防91 治安92 兵士数12245(32245) 城防御309

資金813 兵糧35500 

 

 敵と同じ兵は二万。これなら向こうもやってくるだろう。

 野戦なら同じ条件だし、向こうは前回、根城を襲撃されたから怒っているに違いない。

 

 さて、長沙から東北東に五日ほど行軍すると大きな平原に出た。

 そして、そこで区星率いる賊と出くわすことになった。

 時刻は正午過ぎ、天気は晴れ。まるでドラマみたいな光景だ……なんか興奮するなぁ。

 そして、まずは区星が大声で僕に脅迫めいた言葉をぶつけてきたんだよ。

 

「おい! 司護という太守気取りの腐れ儒者ってのは貴様か!?」

「黙れ! 大人しく縛につけ! そうすれば命だけは助けてやる!」

「うるせぇ! 偽太守のくせして何を偉そうなことを言っていやがる! お前も俺と同じ穴のムジナだってのによ!」

「貴様と一緒にするな! 貴様は無辜むこの民から略奪し、抵抗する民は虐殺する賊ではないか!」

「ワハハハ! それなら漢王朝だって同じことだ!」

「それは断じて違うぞ!」

「やかましい! もはや漢王室なんぞ風前の灯だ! だから俺らも陳勝、呉広にならって旗揚げしたんだ! お前こそさっさと降伏しろ! そうすれば、今までのことは許してやってもいいぜ!」

「張角のことを当てにしているなら、それは間違いだ! 彼奴らこそ時間の問題だぞ!」

「何を寝ぼけたことを言っていやがる! あの腐れ儒者の首を誰か捕ってこい! 褒美は幾らでもやるぞ!」

 

 区星のその言葉に触発されたらしく、一人の如何にも山賊風の大男が馬に跨ってこちらに突っ込んできた。

パラメータを見ようとしたら、その途端……。

 

「ハッハハハハ! この鐘離昧が相手だ! 地獄で悔いるが良いわ!」

 

 鐘離昧はそう叫び、単騎でその山賊風の大男に突っかかっていった。

 ……一瞬で終わったよ。

 当然、鐘離昧の圧勝だったんだけどね……。

 

 俄然、こちらの士気は揚がり、向こうは静まり返った。

 相手が悪いよ。区星君。

 何せこちらの一騎打ち要員は、あの項羽配下双璧の一人だよ!

 

「くっそぉ! あのオカマ野郎の首を獲れ! 者ども!」

「き、貴様ぁ! この鐘離昧を『オカマ』だと!? 絶対に許さん!」

 

 ……鐘離昧に「オカマ」と呼ぶと命が危うい……と。

 絶対に言わないでおこう……うん。

 

 で、双方の軍勢は鐘離昧のそんな叫びと共に押し出してきた。

 完全な乱戦状態になったんだ。

 けど、鐘離昧が一騎打ちを制したお陰で圧倒的にこちらが優勢。

 そして後続部隊を率いるのは張任と陳平。

 相手が悪いなんてもんじゃない。

 

 こちらの押せ押せムードの中、陳平は一部隊を滑らすように、半包囲を敷くような形で右に回り込んだ。

 敵の左翼が一番弱体化していたんだろうね。

 どうも敵の左翼を取り仕切っていたのは、鐘離昧に一騎打ちであっという間に討ち取られた山賊顔の男だったらしい。

 流石は陳平。すぐに相手の弱点を見つけるのは大得意。

 敵の左翼は早い段階で崩れだし、総崩れになるのも時間の問題だった。

 

「くそっ! 退けっ! 退けぇっ!! ボヤボヤしている奴は置いていくぞ!」

 

 区星と郭石は泡を食って逃げ出した。

 鐘離昧が執拗に深追いしようとしたところで、僕は攻撃をやめさせるために銅鑼を鳴らすように指示した。

 相手の方が地理に詳しいし、鐘離昧が捕虜になったらシャレにならないからね。

 ……大丈夫だとは思うけど、念のためだ。

 

 戦いは一時間もかからない内に圧勝で終わった。

 敵は二千ほどの兵で散り散りに逃げた。

 討ち取った首は三千余り。残りは全部、降伏した。

 で、こちらの被害は微々たるものだった。

 けど、一万五千の捕虜か……多いなぁ。

 

「くそっ! もう少しで区星の首が獲れたものを! 何故、退き銅鑼なんぞを打たせたのです!?」

 

 鐘離昧が凄い剣幕でやってきた。

 オカマ呼ばわりされた怒りがまだ収まっていないらしい……。

 

「……これ以上は危険だと余が判断したからだ」

「しかし、もう少しのところで区星の首が手に入りましたのですぞ!」

「……区星はもう終わりであろう。それよりも君が、このような場所で命を落とす方が怖かったのだ」

「拙者がこのような相手に討ち取られる筈がないでしょう!」

「いやいや、油断は禁物だ。百回の勝利を挙げても、たった一度の負けで全てを失うことだってある。君も良く分かっている筈であろう」

「………」

 

 鐘離昧は何のことか直に分ったらしく、それ以上は言わなかった。

 この件は良いとして……降参した兵が一万五千か……。

 ええ、絶対に生き埋めなんてしませんよ!

 

「帰農したい者も、これからも兵として立身出世したい者も余について参れ! ただし、これからは領民の為に働くことを約束せよ! それ以上のことは言わぬ! 良いか! これからは家族、友人、そして隣人の為、そして己自身の為に戦うのだ! 分ったな!」

 

 僕はこう降参した兵達に力説した。

 凄いなぁ……固有スキルの説得。

 あれ? これは「弁舌」だっけ? どっちでも良いけどね。

 勝手に口からカッコイイ台詞がどんどん湧いてくるんだもんなぁ……。

 

 帰農する者は三千に及び、残りの約一万二千は兵となることになった。

 こちらの生き残った兵と長沙の留守番していた兵を合わせると……。

 それと賊から奪ったお金はたった200で兵糧はなし……。

 兵士が儲かった分、得したことになるのかな……?

 

 長沙:兵士数 41872

 

 多いなぁ……。でも、これで遠慮なく桂陽に出陣することが出来そうだぞ。


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