第九話 素行不良軍師来る。
さて、12月となった。流石に少しは冷えるようになってきた。
といっても、雪が降るようなことは、あまり無さそうだけどね。
山間部の方では流石に白くなっているようだけど。
情勢に詳しい尹黙がいるおかげで、そのなりに各地方からの情勢が分ってきた。
それぞれの状況を少しまとめてみようと思う。
また「誰? それ?」って気分が蔓延したけど……。
涼州では宋建と王国という賊が反乱を起こした。
続いて、辺章と韓遂もその反乱に名を連ね、北宮伯玉、李文侯らもそれに続いたらしい。
更に呼応する形で羌族の軍勢が涼州に侵入。
それにしても、王国って凄い名前だなぁ……。
漢王朝の北部では幽州の盧植と公孫瓚、并州刺史の丁原らが冀州の張角征伐に名を乗りだした。
黄巾賊の抵抗は激しく、軍勢も多いため一進一退が繰り広げられているらしい。
……って、あれ? 劉備三兄弟と呂布がここで出会っちゃうの???
青州でも冀州に連動する形で黄巾賊が反乱。長の名前は管亥。
これに対し、鮑信、孔融、橋瑁らが出陣した。
……名前見ただけで無理そう……。
益州では劉焉が州牧として赴任したとのこと。
賈龍、任岐、李権らと共に馬相、趙祗ら黄巾党を自称する反乱軍の平定に心血を注いでいる。
……もう本当に誰が誰だか……。
揚州では柴桑から廬江近辺で黄穰という者が反乱。
廬江太守陸康と秣陵の劉繇が討伐を開始。
……え? 柴桑から廬江って少し近いんじゃ……?
くれぐれもこっちに来ませんように……。
汝南では袁術が黄巾賊を駆逐した。
黄巾の賊将である劉辟、龔都、何儀、黄邵、何曼らが何処かへ逃亡したらしい。
朱儁、皇甫嵩の援軍もあったからというのもあるけれど、一番は孫堅のおかげだろうなぁ……。
南の交趾から南海にかけてでも兵士の反乱が勃発。
交州刺史の賈琮が交阯太守の士燮と共に反乱の鎮圧に乗り出す。
桂陽の南の方まで、きな臭いのかよ……勘弁してよ……。
で、最後に王都の洛陽なんだけど……。
党錮の禁の影響がどうたらこうたらと言われた。
党錮の禁って何だよ!?
けど、そんなことを言っても仕方がない。
そこで都にいた王儁に教えてもらうことにしよう。
「王儁殿。君は中央にいたから党錮の禁について詳しい筈だ。余に詳細を教えてはくれまいか?」
「え? ご存じでないので……?」
「……いや、恥ずかしながら余は元はといえば村名主の倅にしか過ぎぬ若輩者だ」
「……分りました。では、お教え致しましょう」
……ごめんなさい。完全に寝てしまいました。
要は宦官と清流派の権力争いで宦官側が勝った訳ね……。
詳しく知りたい人はググッて下さい。
僕もググりたいんだけどね……色々と。
まぁ、それなりに全体の状況が把握出来たから12月上旬の政略フェイズといこう。
現時点ではというと……。
農業255 商業556 堤防96 治安97 兵士数26545 城防御298
資金2068 兵糧45500
全部使い切っても銀山があるから給料は払えるな。
それじゃあ、政略フェイズ開始……ん?
血相を変えて王儁がやって来た。嫌な予感がする。
「太守殿! 大変ですぞ!」
「どうした? 王儁殿? 血相を変えて……まさか、区星が?」
「いえ、桂陽蛮や山越の難民達がこの長沙の噂を聞きつけて、続々と押し寄せております!」
「なっ!? ……して、その数は?」
「……三万ほどでございます」
3万って……っおい。
6千でさえ治安が30も減ったのに……。
「何故、そのような数の流民が……」
「恐らくですが、南海、予章、桂陽、蒼梧から脱出してきた者達でしょう」
「……ううむ…数が数だな……」
「如何なされますか? 太守殿……」
鐘離昧に聞いたら確実に「生き埋めにしましょう」だろうなぁ……。
……流石にそんな事は出来ないよ。
「致し方あるまい……全員、この長沙へ迎い入れよう」
「……しかし、大丈夫ですか?」
「貴殿は追い返した方が良いとでも言うのか?」
「そ、それは……」
「故事にも『窮鳥懐に入れば猟師も殺さず』と云うではないか。同じ民には違いあるまい。城門を開き、迎え入れるのだ」
どうも「志向:仁君」ということにしちゃっているから強制らしいよ……。
武陵へ向かわせて、治安ガタガタにして混乱させようと思ったのに……。
……で、難民を受け入れたらこうなった。
農業305 商業606 堤防81 治安37 兵士数29545 城防御298
資金2068 兵糧45500
おお……治安が60ほどしか減っていない……助かった。
思ったほどは減っていないな。けど、ガクブルものだよ……。
「閣下! 数多くの訴訟が舞い込んでおります!」
「ああ、秦松。その件については君に一任する。頼んだぞ!」
「はっ! では、早速!」
訴訟が結構多いらしく、秦松は一か月の間、裁判で手いっぱいになった。
そうだよなぁ……3万って多すぎるよなぁ……。
まぁ、いいや。まずは12月上旬の政略フェイズ開始……。
僕と尹黙は怖いけど町造り、王儁は帰順。
張任、厳顔、鐘離昧らは巡回、陳端は開墾、韓曁は採掘で秦松は訴訟問題係……と。
これだと不安だから鞏志も久々に巡回をお願いしよう……。
農業317 商業635 堤防80 治安72 兵士数30445 城防御298
資金1268 兵糧45500
何とか無理やり治安を70台まで引き上げたぞ!
また難民来るかもしれないから、早めに90台まで上げないと怖いからね……。
「お主、随分と名声を上げるために頑張っておるのぉ……」
「……あ、水鏡先生? じゃない…于吉道人様!?」
「うむ。このような大規模の難民をどうするか見物だったので、来たまでじゃよ」
「……そうですか。では、早速サイコロの方を!」
「……待て待て。お主、調子が良すぎるぞ」
「……え? 違うの?」
「……い、いや。そうなのじゃが……」
「では、早速振りますね! 6出ろ! 6!!!」
「あ、こら!? 折角の儂の見せ場を……」
来い! 6! スーパー武将でもスーパー軍師でもスーパー……もう、何でもいいや!
いいから、6が出やがれ!!
「……6だ! 6だよ!?」
「……お主、イカサマしておらんよな?」
「していませんって!? そんな事を仙人の前で堂々とやるような自信なんてありません!」
「……良い。もう一度振ってみよ……」
「え? でも……?」
「いいから、振るのじゃ!!」
うう……呪い殺すのはやめて下さい。お願いだから……。
仕方ないので、またサイコロを振った。
そうしたら今度は4だった。
「ふぅむ……今度も6だったら面白かったのにのぉ……」
「……6だったら……誰だったんです?」
「それは秘密に決まっておろう……では、さらばじゃ」
6の6は誰だろう……?
まさかとは思うけど、鐘離昧の元主君じゃないよな?
それなら……いや、やめよう。
心強い以上に「恐ろしい」としか言い様がない……。
その日から僕は気分良く、町造りに精を出していた。
鐘離昧が来た時みたいに、スーパー武将が訪ねてくるだろうからね!
で、僕はその日が来るのを待った。
そして、ついにその日がキターーー!
「ちょいと失敬。君は司護という者を知っておるかね?」
いきなり唐突に、この僕にそんな言葉を後ろからかけてきた。
見ると長身のイケメンだ。
恰好はどちらかというと、みすぼらしい恰好なんだけど……。
僕は人夫のような恰好しているからか、確かに太守っぽくない。
だって町民と一緒になって町造りして汗を流しているからね。
しかも、その時は井戸を作っていたし。
「ああ、知っているよ。で、その司護がどうしたんだい?」
「いやね。知り合いがその司護という人物に仕えているというんだ」
「ふ~ん……それで?」
「で、評判を聞きたくてね。まぁ、ここでは仁君と持て囃されているようだけどさ」
「……なら、多分そうなんじゃないかな? 自信ないけどね」
「それで見たところ、君がその張本人かと思ってね。声をかけてみたんだ」
「……変な事を言うね。君は……」
「変な事かね? 自分を客観的に見れる奴ぐらいが丁度良いと思っていただけだよ。僕は」
……怪しい。絶対、こいつが6の4だ。
けど、全くといってよい程、細マッチョでもない。
……武将系じゃないのかな?
そう思って僕は目を瞑って、こいつのパラメータを見た。
陳平 能力値
政治8 知略9 統率7 武力3 魅力7 忠義2
固有スキル 神算 鬼謀 弁舌 情勢 弓兵 逃亡 強奪
ゲッ……陳平!?
流石に僕でも知っているビッグネーム! 強い!
けど、気になる固有スキルがまた……。
「ほれ。さっさと来たぞ」
「あ、水鏡先生。サクサクお願いします」
「……サクサクか。まぁ、よしよし。神算は権謀の上級スキル、鬼謀は機略と看破の上級スキル、逃亡はまず捕まらない」
「それと『強奪』ってまさか兄の嫁を……」
「……そんな訳あるか。強奪は他の勢力の物資を盗みやすい」
「えっ!? どうやって!?」
「それは後々、陳平がやり方を教えてくれるじゃろう。よしよし」
「あ、それともう一つ。『権謀』と『機略』って何です?」
「『権謀』は政治的な謀略を得意とする。つまり、相手の配下武将などに謀反を起こさせたりしやすいのじゃ」
「じゃあ、『機略』って……?」
「それは戦場などでの謀じゃな。罠を仕掛けたり、惑わせたり……まぁ、色々じゃ。では、の」
……消えてしまった。分ったような、分らないような……。まぁ、いいか。
それ以上に随分とクセがありそうな性格っぽいな……当然ちゃあ当然…なのかな?
で、そんなクセの強い陳平は僕にまた話しかけてきた。
「……噂通り、君は独り言をブツクサ言うのが好きなようだね」
「すまんね。そういう癖なんだ」
「で、どうなんだね? 君は司護という人物は仁君かと思うかね?」
「そういう君は王莽や嬴政が仁君かと思うかね?」
「何だい? そりゃあ? 彼らが仁君な訳がないだろう?」
「そうだろうなぁ。けど、彼らがそう答えたら君は仁君かと思うのかね?」
「意味が分らぬが……?」
「つまりはだな。仁君かそうでないかは他人での評価でしかない。つまり司護が仁君かどうかなんていうのは、当人が『そうだ!』なんていう事は有り得ないのだよ」
「アッハッハッハッ!!」
陳平はいきなり笑い転げ出した。
それは良いんだけど、王莽や嬴政って誰だ!?
王莽は何処かで聞いたことはあるような気もするけどなぁ……。
「いやぁ、気にいった。僕は是非とも司護に仕官したくなった。まだ仕官の口はあるかね?」
「ああ、あると思うよ。僕も君が気にいったから、恐らく司護も気にいるだろうよ」
「そうか。では、この陳平。長沙の太守殿に仕えることにしよう」
こうして陳平は僕の配下になった。
それにしても忠義が2しかねぇとは……。
主君を転々としちゃっているから、仕方ないか……。
次の日、ちゃっかり何食わぬ顔して陳平は登城してきた。
まぁ、気に入らなかったら、とっとと出奔する奴だからなぁ……。
勿論、手放すなんてとんでもない話だけどね。
さて、12月下旬の政略フェイズだ。
治安が70台だけど、金も心元ないからなぁ……。
月末には金1500が入るけど、出費も大きいから治安対策は王儁の帰順だけにしておくか……。
という訳で、僕と尹黙が町造り、陳端が治水、王儁が帰順、厳顔が城の補修ということにした。
農業317 商業664 堤防92 治安78 兵士数31345 城防御309
資金1922 兵糧45500
銀山の収入って大きいなぁ……。
人数分の給料払っても、この額だもんなぁ……。
その分、いつ果てるか分らないけど……。
現在の家臣
鐘離昧・張任・厳顔・鞏志・王儁・陳端・秦松・尹黙・韓曁・陳平




