表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

プロローグ end

 暫く膝の上に乗せて可愛さを堪能していたが、化け狐なのだろうこの白狐の突然の行動が気になってきた。


「どうしぃした?急に」


 背を撫でていた手を止めて、抱き上げてそう問う。正面から見た狐の顔はどことなく不服そうだ。ブランと垂れ下がっている今の状況が不満なのかもしれない。

 少し意地の悪い笑みを浮かべた。


「まさか、撫でさせた代わりに空に返せなどとは申しんせんでくんなまし」


 そう少し意地の悪く見えるであろう笑みを浮かべて言うと、グッと狐の顔が近くなって、短く柔らかい毛が唇に触れた。

 瞬間。


ボワンッ


 狐を抱えていた手が重みに耐えられなくなって外れてしまう。目の前には紫煙が濃密に充満し、視界が囚われる。突然の出来事に片手で目元をガードし、目を瞑ってしまった。

 何が……。何が起こったのか分からぬまま、数瞬経ち状況を把握する為にハッと瞼を開けた。

 まだ薄く紫煙の漂う中、視界で確認出来るものは殆どない。だがそれでも、先程までは目の前になかった存在感がすぐ傍にあった。

 驚きに身を取られていた一瞬の内に紫煙は霧散し、視界が明らかとなっていく。

 光沢の有る銀糸、上質な白い生地に、赤い色彩。そして狐と同じ色である筈の頭部に嵌った黒曜石は、忍び込んできた陽光に照らされて濃紫に光った。


「礼を言おう、名を何という」


 目の前に、まるで人間とは思えぬ美貌を持った艷男(あでおとこ)が床に手をついて此方に迫っている姿が見えた。

 現代では有り得ない、PCも携帯も電波もある、鬼火だって科学で解明されたこの時代に、

私は狐に、化かされた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ