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天才の凡ミス

ちょっぴり怖い

 私は天才だと思いあがることにした。

 天才だから凡人のしない凡ミスをやらかすのだ。

 風呂で鼻歌どころかモーツアルトのレクイエムを歌ってしまうのも、私の行き所のない芸術的精神があふれ出たからであろうし、キッチンにある頭上の戸棚に置いた塩の袋を倒して塩まみれになったのも何と言うことは無い、守護霊が私を清めたかったのだろう。

 また、日がな一日読書に耽る余り、目を酷使したのか霞んで何も読めなくなったとき、日が暮れたことにようやく気付く。これも何と言うことは無い、時が私を置いていってしまっただけだ。


 さて、目の前に一体の死体がある。齢は四十、いや、今年で四十三であったはずだ。私の夫である男は私のベッドで安らかな眠りについている。まったく、自身の体を省みず働き過ぎるのも困ったものだ。

 私は思案する。これが犬や猫の死体ならば庭に捨てるだけでカラスが解決してくれるものの、人間の男ではどうしようもない。カラスといえど好みは有るのだから、カラスに憤るのは筋違いだろう。


 仕方が無い。私は風呂を沸かした。それから、台所で手に塩をつけ、にぎりめしを二つこさえる。味噌汁には最近値の高騰した白菜と大根を入れてやろう。金の出所は夫の懐からだ。きちんと夫に還元されているのだから文句も無いだろう。

 そうして私は時間の流れをゆるやかにした。それは難しいことでは無い。ちょっとしたコツを使うだけだ。


 夫は風呂に入る。飯を食べる。それらをあらかじめ私が用意しておけば夫はその分を睡眠に費やせるのだ。


 私は夫の妻として天才だ。天才だから凡人のしない凡ミスをやらかすのだ。誤って人を殺めるなど凡人はしないだろう。


 はてさて、夫の隣で転がっている死体を如何にしようか。


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