昼下がりの嘘
ジャンル:会話文のみ
「ねえねえサンタさんって本当にいるの?」
「いるとも」
「空とぶトナカイも?」
「もちろん」
「じゃあ、ぼくはおにいちゃんと、おねえちゃんと、おとうとと、いもうとがほしいな。もらえるかな?」
「いい子にしていればもらえるよ」
「アニメのルーちゃんにも会える?」
「今度会いに行こう」
「約束だよ?」
「約束だとも」
「ぼく、いろんなことがフシギなんだ。いっぱいいっぱい、きいてもいい?」
「いいよ」
「雨は空がないているんだよね?」
「そうだよ」
「くもは白いクレヨンで空をとびながらかくんだよね?」
「うん」
「おひさまは明日もわらうよね?」
「きっと晴れるよ」
「ぼくたちはいつかお星さまになるんだよね?」
「遠い遠い星になるのさ」
「でもさ、おじいちゃんとおばあちゃんはずっと元気だよね?」
「もちろん」
「ママは星になっておしごとしたら、かえってくるよね?」
「そのとおりさ」
「ぼくがいい子ならはやくかえってくるよね?」
「あぁ。きっとそうだ」
「よかった。あとさ、あとさ、トラさんもゴリラさんもいなくなったりしないよね?」
「うん。みんな元気だ」
「わーい。みんな元気だ! あしたね、ようちえんのみんなとドロダンゴを作るんだ。もってかえってきていい?」
「いいよ」
「ぼくのドロダンゴ、がんばってつくるからたべてね?」
「食べるよ」
「おいしいもんね?」
「美味しい。美味しい」
「ありがとう。大すきだよ。ぼくのことすき?」
「愛しているとも」
「大事?」
「とっても大事だ。嘘じゃない」
「ねえねえ、ウソってなあに?」
「幸せな物だよ」
「ぼくもウソがほしい。ちょーだい?」
「難しいなぁ」
「そっかぁ。いつかちょーだい?」
「いつかね」
「それじゃあ、おひるねするからおやすみなさい」
「おはよう。愛しい娘よ」
息を吸って嘘を吐く。