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我が主(マスター)に剣の誓いを  作者: 丸尾累児
第二章「静かな湖畔の森の影から」
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誕生!白薔薇騎士団の雑用係/其の弐


「クララを助けてくれてありがとう。ホントに感謝してもしきれないぐらいだわ」


「いえ、当然のことをしたまでです」



 ディートリッヒ家のお屋敷から少し離れた場所に設けられた屯所。

 僕はそこでテレジアさんと面会した。



 もちろん、アルマも一緒だ。



 客室ではテレジアさんが幼いクララちゃんに本を読み聞かせていた。室内に入ろうとした際、入り口のあたりから眺めたら横並びになった二人がすごくそっくりでビックリしたよ。


 やっぱり、親子なんだねぇ~。

 特に目元がよく似ている。きっとクララちゃんも将来は美人なんだろうなぁ~。





 そんなことより、私服姿のテレジアさんっ!





 胸元が開けた薄茶色のドレスコードに特大のアクアマリンが埋め込まれた純金製のネックレスなんてステキすぎです! そんなの見せられただけで、僕もうキュンキュンしちゃうしちゃったよ!



 なんかこういいよなぁ~。

 この前は鎧を着てた時は凛々しいって感じがしたけど、今日はホントに華やかで優雅な貴族の若奥様って感じ。

 今日は一段と美しく見える。



 気付くと片時も離さずテレジアさんを見ていた……って、どうしよう! 瞬時に目が合っちゃった!

 僕はおもわず気恥ずかしさのあまりうつむいた。


 とたんにドアが開き、ガチャガチャという音が聞こえてくる。


 ふと顔を上げてみたら、先日のメイドさんがお茶菓子と紅茶を持って室内に入ってきた。すぐに目があったけど、メイドさんはニッコリ笑っただけでカップに紅茶をついで出て行ってしまった。



「さあ遠慮なく食べてちょうだい」



 とテレジアさんに促され、紅茶を軽く口に含む。

 それから、僕は先日の件について聞きたくて話を切り出した。



「――それで犯人はどうなったんです?」


「捕まえたごろつきたちはすぐに教会騎士団の本隊に連行したわ」


「そうですか。でも、確かもう一人黒幕と思われる女の剣士がいたような――」


「残念だけど、逃してしまったの」


「え? そうなんですか?」


「あのセシルが追いかけて逃げられる女ですもの。かなりの手練れね」


「じゃあ彼の判断は正しかったってことなのか……」


「……判断?」


「実はあの場で『一般市民はすっこんでろ』とか思いっきり言われちゃいまして……」


「ああ、そういうことね。まあ確かになんの訓練も受けてないジュリアン君が追いかけてたら、返り討ちにあってたかもしれないわね」


「……うっ、やっぱり……」


「それでもジュリアン君はクララを助けてくれた恩人あることは間違いないわ。改めてお礼を言わせてちょうだい」


「いえ、そんな! 僕なんてたいしたことしてないですよ!」


「たいしたことをしたから言ってるのよ。アナタはそれだけ勇気ある行動をしたの。これはとても誇っていいことなのよ?」


「テレジアさん……」



 なんかうれしい。


 こうしんみりするつもりじゃなかったけど、人に認められるってうれしさを通り越して感動を覚えるものなんだね。

 そう思うと、目から涙があふれ出そうになった。



「うれしいです。僕なんかがお役立てたうえに夢である騎士らしいことができたなんて」


「ジュリアン君は騎士になりたいの?」


「はい! 子供の頃、身代金目的の山賊に誘拐されたところを助けてくれた騎士様がいたんです。ずっと僕はその騎士様みたいになることが夢だったので……」


「それで騎士になりたいのね」


「……ええ。だから、いろいろと超えなきゃいけない壁みたいなモノがあるんですけど、いつかは騎士になってやろうって思ってるんです!」


「なるほどね。アナタの正義感はそこから来ているのね」


「そうなんです――――あの、ところでアイツ……じゃなくて、セシルはいないんですか?」


「あの子ならいま稽古場の方にいるわ。ホントはこの場に同席させたかったんだけど、『自分には関係ない』って突っぱねられちゃった」


「そうだったんですか」


「もし良かったら、ジュリアン君から声を掛けてあげてくれないかしら?」


「……えっ、僕がですか?」


「あの子、すごく意固地で人を寄せ付けないから心配なのよ。同年代の友達も作らないし、年上のヴィラやロッテにも仲間意識以上のモノは抱いていないみたいなの」


「ああ~なんとなくわかります」



 確かにセシルならそんな風に思っていても不思議じゃないなぁ~。


 あのときのセシルの印象はまったくもって最悪――おまけにつっけんどんとしてて、なにを言っても聞かなそうだった。




 まさに誰が見たって「友達にしたくない第1位」だね。



「私としてはあの子を家族のように思っているわ。でも、セシルの接し方は軍隊の上官や仲間といった当たり障りのないといった具合の接し方なの」


「それは心配ですね」



 僕としても友達お断り……と言いたいところだけど、あこがれのテレジアさんに頼まれた手前で断るわけにも行かないし。

 う~ん、ここは引き受けるしかないよね。



「わかりました。できるだけ努力してみます」


「ごめんなさいね。こんな頼み事アナタには悪いと思ったんだけど……」


「いえ、お困りなら人助けするのも騎士の務めですし」



 まあセシルには一度礼を言わなきゃって思ってたしいいか。

 そのうえで、僕はセシルの居場所を尋ねた。



「それでセシルは稽古場にいるんですね?」


「……ええ。ここを出て、左の通路を突き当たりまでまっすぐ進めば中庭へ行く扉があるの。稽古場はその中庭を挟んで向かい側あるわ」


「了解です。では、ちょっとセシルに会ってきます」






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