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来世で劣等生やってます。  作者: 海野叶衣
第1話 劣等生の日常
4/8

4

 ――『LOVE SKILL』とは、超能力者を集めた学校、フィラリス学園を舞台に、美しい少年たちと恋をする……まぁ、よくある乙女ゲームである。主に生徒会メンバーを相手に、主人公“松山香織”が少しずつ仲良くなっていく。


 それぞれの少年たちには各々暗い過去だったり、人になかなか言えなかった悩みがあるのだが、主人公は持ち前の真っ直ぐな性格でそれらの問題をキャラクターと一緒に乗り越え、それがきっかけで2人は惹かれあい……。と、今考えればなかなか王道なストーリーだった。

 しかし王道であるからこそストーリーが整然とされており、分かりやすくて私は結構好きだったのだ。



 生まれた時から身体が弱く、なかなか退院できず暇を持て余していた私のために姉が買ってきてくれたゲームで、私が初めてプレイした乙女ゲームだった。姉も乙女ゲームをしたことはなかったらしいのだが、口コミで人気だったのと、イラストが綺麗だったことからこのゲームを選んだらしい。


 ゲームとは言え、誰かと話している気分になれて寂しさは薄れたし、何より主人公の前向きな言葉に何度も励まされた。正直、格好いい男の子たちよりも主人公の香織の方が好きだったくらいだ。

 可愛い容姿や凛々しさ、強気な性格など、私の持っていないものをもっている彼女に、ずっと憧れていた。






 ――残念なことに、私は病気が悪化して、そのまま死んでしまった。

 最期に見た涙を浮かべる両親や姉の姿に胸が痛んだが、いつか私がいないことに慣れて、また笑ってくれたら嬉しいと思う。前世の家族の、柔らかく暖かいあの笑顔が、私は本当に好きだったのだ。




 ……と、ちょっとしんみりしたところで、死んだ後(・・・・)の私の話をしたいと思う。




 若くして生涯を終えた私がまず感じたのは、人生を終える寂しさと、安らぎ。――そして、すぐにやってきたのは、息苦しさだった。

 私は思わず泣いた。おぎゃあと。そして聞こえてきた言葉に、驚愕した。



「おめでとうございます、元気な女の子ですよ!」



 ――どうやら私は、死んで間もなく、次の人生を歩みだしたようだった……。





 その後、前世の家族とはまた違った優しさのもとすくすく元気に育った私は、前世であまり運動をしなかったせいかとてもトロかった。せっかく生まれ変わったのに。身体が元気になれば華麗に走れるんだと思っていた私は、走るたび増える生傷に不貞腐れて、完全にインドアな子どもになっていた。

 ちなみに、今も外出はあまり好きではない。家でまったりするのが好きである。


 既視感を覚えたのは、学園に入学するときである。

 最初はどこかで見たことある雰囲気だなーくらいのものだったのだが、廊下で見かけた綺麗な顔に思わず固まってしまった。すでに赤い髪に赤い目、幼くも整った顔立ちで目立ちまくっていた彼――和泉先輩は、2つ年下の私たちの学年でもよく噂されていたように思う。


 それ以来意識して周りを見てみると、和泉先輩だけではない。生徒会副会長の竜胆(りんどう)先輩や、生徒会会計の野々宮先輩もいた。また1つ年上には、生徒会書記の猪原(いのはら)先輩までいる。イケメンばっかり。もはや恐怖すら感じる。


 そこで私は確信した。この学校が、あの(・・)フィラリス学園であること。

 そして、この世界が『LOVE SKILL』の世界であることを。




長い間放置していてすみませんでした。

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