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九月の桜  作者: 七ノ夏
6/8

多目的室

もう長い間つかわれていないこの教室は、どこか埃っぽいにおいがする。ろくに掃除もされていないのだろう。

でも、人目につかなくて、中庭に見おろせる場所はここだけなので、文句はいえない。

「璃子、見て。来たよ」

隣で茉莉花まりかがさわいでいる。窓の下をのぞくと、たしかに彼女の黒髪が見えた。

「あっちも、ほら」

「ほんとだ」

ちいさなふたつの人影が中庭の端と端から歩いてくる。すこしずつ、すこしずつ近づいていく。

「もうすぐ、だね」

嬉しそうに声を弾ませて、茉莉花が言う。どう見たって楽しんでいるようにしか思えない。やっぱり連れてこなきゃよかったか、とすこし後悔する。

あたしが考えたのだから、責任持って一部始終を見届けます。胸を張ってそう言った茉莉花を頼もしいと思った私は、どうかしていたのだ。

「璃子?」

「うん、そろそろだね」

私はスケッチブックを広げた。それはこの間、藤野がほうっていったもの。

すこし考えて、私は最後のページをやぶった。びりびりと心地よい感触がして、スケッチブックからひとつの紙片が離れる。

私は深く息をした。

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