表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
九月の桜  作者: 七ノ夏
4/8

踊り場、2

「あ、そうだ。ねえ、璃子。あれ、今でもできるの?ふうってしたら、剥がれてしまうやつ」

「え?ああ、できてしまうね。なぜか」

うつむいて璃子は言い捨てた。

いつの頃からか、しらないけれど、璃子にはちょっとかわった特技があった。鉛筆や水彩絵の具、色ペンなど、たいていの『手がき』のものを紙から剥がすことができるのだ。それも、吐く息ひとつで。

璃子が紙にふっと息を吹きかけると、書かれた文字や絵はひらひらと空を漂い、ぱちんと弾けるように消える。

どういう科学的原理がはたらいてそうなるのかなんて、さっぱりわからないし、そんなことはあまり気にしたこともなかった。でも、璃子は自分の息をひどく気にしていて、絵が好きなのに美術部に入れないでいる。

誰かの絵を剥がしてしまったら悪いから、といっていた。

「璃子、それ、すっごく役にたつよ!でも、それでいいの?」

「え、どういうこと?」

璃子は大きく瞬きをした。わけがわからないという様子で。

「だから璃子は、不思議な、二度と巡りあわないような、かわった事件を起こせるけど、藤、じゃなくってその友達を応援していいの?」

あたしは璃子の目をじっと、見つめてきいた。璃子は床に視線をおとした。昼休みの喧騒が近くなる。

「わからない。けど、あいつの絵を見れないのは、たまらなく嫌。だから、私にできることなら、なんでもする。さっき、言ったじゃない」

顔をあげて、璃子はきっぱりと笑う。

底抜けにあおい空みたいに、はればれとした表情だった。

きっと、璃子は大丈夫だ。

十数年、側でみてきたあたしがいうのだから、間違いなんてある余地すらない。あたしはさっきの思いつきを話すことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ