結末
展開が早いと思った方すいません
もうすぐ終わりますね
4章自体はあと一つ二つ別視点を入れて終了となります
次の章からは謎解明編、さらには恋愛へと発展していく予定です
ではどうぞ
「お前たちは、この数週間で驚くほど親しい関係になったと見えるな」
そう言って陛下は私達を見た
面白くないとでも言いたげな表情...もともと私達を一緒に行動させる命令を出したのは陛下ご本人であることをお忘れなく!
ロードさんは私の肩を引き寄せた
何がしたいのか、全く理解ができない
「我々は夫婦です、親しい関係でなくては家庭は築けませんよ陛下。そろそろ陛下も身を固め将来の世継ぎを考える時ではないですか?」
「夫婦だと!?」
ガタンと椅子を倒しながら立ち上がり驚く陛下
シド団長に至っては、生きた屍の様で...本当に女性というものが嫌いなのだと思った
さらりとその手で頭を撫でられる
これが本物の夫婦であるならば糖度は120%
限界値を既に超えて更なる甘い世界を生み出していただろう
残念ながら私とロードさんの関係はこの国限定仮夫婦だ
しかも、ロードさんは周囲の反応を見て楽しんでいる傾向にある
流石は鬼畜
そうだ
陛下からの命を受けた時から今までも、ロードさんは決して優しい紳士的男性ではなかった
そこまで思い出し無性に苛々し始める
私の髪を撫で上げるその手を叩き落とす
「この様な行為、陛下の御前ですよ?――――――ダーリン」
私がそう付け足せば、陛下も私達のやり取りを理解したらしく声を上げて笑った
そんな陛下の様子につまらなそうな顔をするロードさん
あまりにも早いネタ晴らしに興味を失っただからだろう
良い反応を今尚続けているシド団長は無視だ
ロードさんの対象はあくまで陛下だったらしい
「遊びも大概にしておけ」
陛下から御叱りを受ける
「まあ冗談はここまでに致しましょう。これからどうやって本国へ帰省しますか」
「どうやら干渉の呪いとやらは完全に消えたらようだな。あとはこの国の次期王にすべての処分を任せようじゃないか。俺達は来たとき同様気づかれることなく静かに後にすればいい」
国のトップが他国からの出国のためにコソコソするなんて初めて聞いた
陛下にはプライドが無いのでないかと少し疑うくらいだ
「それが無難でしょうか」
ロードさんもまた、陛下の意見に賛同する様子
私は最後にもう一度アネッサ姉さまに会いたいと思っていた
最後の挨拶をかわしたいのだ
「足はあるのですか」
「一応上空でリュヴァーが待機している。呼べばすぐにでも降りてくるだろう」
リュヴァーを帝国は使役しているのだったわね
アンネ夫人は今頃どうしているのかと少し気になった
(このままではろくな挨拶もできず帰省してしまう...しょうがない、帰りはフゥ君にでもお願いするとしようかな)
私にはフゥ君が居るからどこへでも行ける
陛下とロードさんを見て、口にした
「申し訳ありありません、個人的にこの国のさる御方と少しばかり話がしたくて...帰りはどうにかなるでしょう、御先にあちらへ向かってくください陛下」
いつ終わるかわからないから陛下には先に戻っていてもらう
国の状況がこちらに伝わらないという状況、まあそこまで心配することはないだろうが
「――――訳ありのようだな。いいだろう、一人では流石に危険だ、シドを残らせる。リュヴァー2匹上空で控えさせておく、それでいいか」
心配...してくれているのだろうか
そう思ったが、どうせ違うだろうと頭の片隅へ追いやった
本当ならリュヴァーとかよりもフゥ君が居るからすぐに帰れるのだけれど...せっかくの陛下からの配慮だから仕方がないか。それに、シド団長の蒼白したまま治ることのない顔を見て少し休ませないといけないなと陛下も判断したんだろう
「ありがたく存じます」
深く一礼をした
一つは、今の残ると言った件についてあっさり認めてくれたこと
もう一つはこの短時間で呪いを解いてくれたことについてだ
「では善は急げと申します。いきましょう陛下」
「お前、あの宰相に一言告げていかなくていいのか」
そんな陛下の言葉にふっと笑って、そこまで親しいわけではないと言った
(嘘吐きね、古くからの大切な人のくせに)
この場合の大切な人という意味は好きという感情を通り越してのものだ
長居を危険と判断し、即座に陛下の安全を選ぶロードさんもなかなか忠犬っぷりのようだ
「では、戻るとしよう。―――なるべく早く戻ってこい、仕事は山積みだ。それにお前には教育があることを忘れるなよ」
笑って術を発動させる陛下の、なんと悪魔らしい笑顔か
ロードさんも含みのある笑い方でこちらを見ていた....最高の鬼畜ツインだよ
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―――
その後、直ぐに消え去った二人を尻目に私はシド団長の元へと駆け付ける
漸く冗談だと理解したんだろう
ゆっくりとした動作で立ち上がり、私を見据えてきた
「誑かしたな、これだから女は...」
ぶつぶつ珍しく皮肉の言葉が口から次々出てくることに対し、あえて聞こえないふりをして私は扉へ向かう
「どこへ行く気だ」
「最後の用事を果たしてきます。すぐ戻りますから、シド団長はここで待っていて下さい」
そう言ってシド団長の答えを聴く間もなく扉を閉めた
そして足は、アネッサ姉さまのいる離塔へと進められる
途中、確かに慌ただしい雰囲気にのまれそうになった
数時間前のあのどんよりとした空気はどこへ行ったのか、とても光に満ちた空間へと変貌を遂げていた
そんな光景に嬉しくなりながらも足を進める
突然
突き上げるような突風が私めがけて飛んできた
反射的にそれを避け、地に生える草木を盾にした
「――――誰だ」
明らかに私を狙っての犯行
だが人の気配はなかった...ともすれば犯人は直ぐに現れた
「黒い、猫....死んだはずの召喚士」
目の前に居たのは優雅に、しなやかに佇む漆黒の猫だった
暖かな光に包まれてもその身が優しさに包まれているわけではなく、どこまでも闇の様な黒い瞳に嫌悪した
理性はどうにもないようだった
ならば誰かが彼女を操っているのか、そう思ったりもしたがどうやらそうではなかった
近寄ってくる猫
私は、その猫を抱き寄せた
抱き寄せた瞬間、背筋がゾクリとなる
魔力を....流し込んできている
そうか、干渉という呪いは相手の体に直接自分の魔力を入れ、混ぜることによって完成する技なのか
だが残念なことに今の私には一切の魔力が無い
だから彼女の魔力を私の魔力と混ぜ合わせることができず、そのまま流れていった
(真っ黒な、猫)
何故蘇ったのだろう
猫にあっても謎は深まるばかりで、解決にはなりはしなかった
そっと離してそのまま逃げない様に木の檻で作った籠に入れる
抵抗は一切しなかった
「少しだけ、そこに居てね」
自然に生きる精霊たちに決して逃がさない様言いつけ、再び足を進める
原因となったはずの猫をそのままにしておいていいのだろうか...いや、実際猫に触れて予想が核心に変わった
あの猫は、蘇ったと言う召喚士の少女は
――――――生き返ってなどいなかった
猫という器、召喚士だった少女の体という器のなかに無理矢理繋ぎとめられた魂だ
あの猫自体は呪いを誰構わずかけるということをインプットされているに違いない
(詳しくアネッサ姉さまに聞くしかない)
私は足早に離塔へと向かった
珍しく途中で終了←
猫の件、実はそんなに4章では鍵ではなかったんです。
まあおいおいかなり重要な存在になってきますが
今回の話
消化不良があるかと思いますがもう少しおつきあいください
ここまで読んでくださってありがとうございました